家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第1部 売れ残り令嬢と、成り上がり伯爵の縁談

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晩餐の席は、格式ばらずとも上品な雰囲気で整えられていた。

重厚な長テーブルの両端に父とセドリック・グレイバーン伯爵が座り、母と私はそれぞれの隣に位置した。

メイドたちが静かに料理を運び、銀のカトラリーが控えめな音を立てる。

「エルバリー家のお食事は、想像以上に洗練されていますね。」

セドリック伯爵は軽やかにワインを傾けながら言った。

「それは光栄ですわ。」

母が笑みを浮かべて応じる。

私はといえば、姿勢を正し、食器を扱う手元に意識を集中させていた。

何を話していいのか分からない。

ただ、醜態だけはさらすまいと、公爵令嬢としての矜持を忘れないよう努めていた。

するとふいに、セドリックがこちらに視線を向けた。

「クラリス嬢は、落ち着いておられますね。年齢よりもずっと、大人びた印象を受けます。」

「そう見えるのなら、伯爵がそう感じさせてくださっているのでしょう。」

自然と返した自分に驚いた。声も、震えていなかった。

セドリックの目元が僅かに和らぐ。

「さすがは、公爵令嬢といったところでしょうか。今日お会いしたばかりですが、安心感があります。」

「恐縮です。けれど、私はとても不器用なんです。特に……人付き合いが。」

言葉を濁すと、彼はすっとワインを置いた。

「気になっているのは、そばかすのことですか?」

私は息を呑んだ。その単語を彼の口から聞くとは思っていなかった。

だが彼は、からかう様子もなく、ただ穏やかに私を見つめていた。

「ええ、まあ……ずっと、それで……」

「気にしなくていい。」

淡々とした声。でもその言葉に、妙に真実味があった。

「僕は正直なところ、容姿に執着はありません。公爵令嬢が誰であっても、形式的な結婚に過ぎなかった。でも、今日あなたと話して、少し考えが変わった。」

「考えが?」

「あなたは、ご自身を過小評価している。だが、少なくとも私は、あなたの態度に品を感じた。そばかすがあっても、あなた自身の価値は損なわれないと僕は思います。」

思わず目を伏せた。これまでの誰よりも、率直な言葉だった。

優しさではなく、評価としての。

その時、父が合間を縫って話題を切り出した。

「それで伯爵。結婚式の日取りですが、十日後ということで。」
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