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第1部 売れ残り令嬢と、成り上がり伯爵の縁談
⑩
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晩餐の席は、格式ばらずとも上品な雰囲気で整えられていた。
重厚な長テーブルの両端に父とセドリック・グレイバーン伯爵が座り、母と私はそれぞれの隣に位置した。
メイドたちが静かに料理を運び、銀のカトラリーが控えめな音を立てる。
「エルバリー家のお食事は、想像以上に洗練されていますね。」
セドリック伯爵は軽やかにワインを傾けながら言った。
「それは光栄ですわ。」
母が笑みを浮かべて応じる。
私はといえば、姿勢を正し、食器を扱う手元に意識を集中させていた。
何を話していいのか分からない。
ただ、醜態だけはさらすまいと、公爵令嬢としての矜持を忘れないよう努めていた。
するとふいに、セドリックがこちらに視線を向けた。
「クラリス嬢は、落ち着いておられますね。年齢よりもずっと、大人びた印象を受けます。」
「そう見えるのなら、伯爵がそう感じさせてくださっているのでしょう。」
自然と返した自分に驚いた。声も、震えていなかった。
セドリックの目元が僅かに和らぐ。
「さすがは、公爵令嬢といったところでしょうか。今日お会いしたばかりですが、安心感があります。」
「恐縮です。けれど、私はとても不器用なんです。特に……人付き合いが。」
言葉を濁すと、彼はすっとワインを置いた。
「気になっているのは、そばかすのことですか?」
私は息を呑んだ。その単語を彼の口から聞くとは思っていなかった。
だが彼は、からかう様子もなく、ただ穏やかに私を見つめていた。
「ええ、まあ……ずっと、それで……」
「気にしなくていい。」
淡々とした声。でもその言葉に、妙に真実味があった。
「僕は正直なところ、容姿に執着はありません。公爵令嬢が誰であっても、形式的な結婚に過ぎなかった。でも、今日あなたと話して、少し考えが変わった。」
「考えが?」
「あなたは、ご自身を過小評価している。だが、少なくとも私は、あなたの態度に品を感じた。そばかすがあっても、あなた自身の価値は損なわれないと僕は思います。」
思わず目を伏せた。これまでの誰よりも、率直な言葉だった。
優しさではなく、評価としての。
その時、父が合間を縫って話題を切り出した。
「それで伯爵。結婚式の日取りですが、十日後ということで。」
重厚な長テーブルの両端に父とセドリック・グレイバーン伯爵が座り、母と私はそれぞれの隣に位置した。
メイドたちが静かに料理を運び、銀のカトラリーが控えめな音を立てる。
「エルバリー家のお食事は、想像以上に洗練されていますね。」
セドリック伯爵は軽やかにワインを傾けながら言った。
「それは光栄ですわ。」
母が笑みを浮かべて応じる。
私はといえば、姿勢を正し、食器を扱う手元に意識を集中させていた。
何を話していいのか分からない。
ただ、醜態だけはさらすまいと、公爵令嬢としての矜持を忘れないよう努めていた。
するとふいに、セドリックがこちらに視線を向けた。
「クラリス嬢は、落ち着いておられますね。年齢よりもずっと、大人びた印象を受けます。」
「そう見えるのなら、伯爵がそう感じさせてくださっているのでしょう。」
自然と返した自分に驚いた。声も、震えていなかった。
セドリックの目元が僅かに和らぐ。
「さすがは、公爵令嬢といったところでしょうか。今日お会いしたばかりですが、安心感があります。」
「恐縮です。けれど、私はとても不器用なんです。特に……人付き合いが。」
言葉を濁すと、彼はすっとワインを置いた。
「気になっているのは、そばかすのことですか?」
私は息を呑んだ。その単語を彼の口から聞くとは思っていなかった。
だが彼は、からかう様子もなく、ただ穏やかに私を見つめていた。
「ええ、まあ……ずっと、それで……」
「気にしなくていい。」
淡々とした声。でもその言葉に、妙に真実味があった。
「僕は正直なところ、容姿に執着はありません。公爵令嬢が誰であっても、形式的な結婚に過ぎなかった。でも、今日あなたと話して、少し考えが変わった。」
「考えが?」
「あなたは、ご自身を過小評価している。だが、少なくとも私は、あなたの態度に品を感じた。そばかすがあっても、あなた自身の価値は損なわれないと僕は思います。」
思わず目を伏せた。これまでの誰よりも、率直な言葉だった。
優しさではなく、評価としての。
その時、父が合間を縫って話題を切り出した。
「それで伯爵。結婚式の日取りですが、十日後ということで。」
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