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第3部 見捨てられた令嬢、伯爵邸で咲く
⑧
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それから数日かけて、私はセドリックに、侍女から聞いた話を少しずつ尋ねてみた。
「お母様、毎日歴史書や地図を見てお勉強なさっていたのね。」
そう切り出すと、セドリックは少し眉をひそめた。
「ああ、そのことか。」
なぜか、少し呆れたような口調だった。
「母はね、父のことになると、他が見えなくなるんだ。子どものころからずっとさ。小さい頃なんて、図書室にこもりきりで、僕や姉と遊ぶことなんて滅多になかったよ。」
少し寂しそうに笑った彼の表情に、胸が締めつけられる気がした。
あの温かくて優しいお母様にも、別の顔があったのだ。
「でも、お母様なりに一生懸命だったのね。」
「そうだな。……父に愛されようと必死だったのかもしれない。」
セドリックの言葉が、妙に胸に残った。
この家に嫁いで初めて知る、グレイバーン家の家族の姿。
「私も勉強しようかしら。」そう言うと、セドリックはすぐに首を横に振った。
「止めた方がいい。」
「まあ、どうして?」
「図書室にある書物なんて、全部読んでたら一生終わってしまうよ。」
あまりにも真面目な顔をして言うから、思わず私は吹き出してしまった。
「それよりも、僕との甘い時間を過ごした方がいい。」
新婚だからか、セドリックは私に対してとても積極的だ。
けれどそれが不思議と嫌ではなく、むしろ胸がきゅんとする。
「夫人の務めは、跡継ぎを儲けることだとマリーナが言っていたわ。」
そう言うと、セドリックは目を丸くして笑った。
「マリーナめ……。」
セドリックは、少し細い目で私を見つめた。
「子供は産んでほしい。できれば男子を。」
セドリックは真剣な眼差しでそう言った。
「分かっているわ。」
私は静かに頷いた。
お母様もそのプレッシャーにずっと耐えてきた。
実際、私と妹しか生まれず、男子は与えられなかったけれど、
それでも母は一度も弱音を吐かなかった。
けれど、セドリックは違った。
「でも……無理に子供を産まなくてもいいと思っている。」
その言葉に、私は思わず彼の顔を見つめた。
その瞳には、深い悲しみがにじんでいた。
「……お姉様が出産で亡くなったからね。」
そうだった。
私は、彼の姉が命をかけて子を産んだことを、侍女たちから聞いていた。
母になれた喜びの前に、彼女は命を落とした――
「彼女は、子供が欲しいと願っていた。僕たち皆が喜んでいた。だけど……」
そこまで言うと、セドリックは言葉を詰まらせた。
「怖いのね。」
「お母様、毎日歴史書や地図を見てお勉強なさっていたのね。」
そう切り出すと、セドリックは少し眉をひそめた。
「ああ、そのことか。」
なぜか、少し呆れたような口調だった。
「母はね、父のことになると、他が見えなくなるんだ。子どものころからずっとさ。小さい頃なんて、図書室にこもりきりで、僕や姉と遊ぶことなんて滅多になかったよ。」
少し寂しそうに笑った彼の表情に、胸が締めつけられる気がした。
あの温かくて優しいお母様にも、別の顔があったのだ。
「でも、お母様なりに一生懸命だったのね。」
「そうだな。……父に愛されようと必死だったのかもしれない。」
セドリックの言葉が、妙に胸に残った。
この家に嫁いで初めて知る、グレイバーン家の家族の姿。
「私も勉強しようかしら。」そう言うと、セドリックはすぐに首を横に振った。
「止めた方がいい。」
「まあ、どうして?」
「図書室にある書物なんて、全部読んでたら一生終わってしまうよ。」
あまりにも真面目な顔をして言うから、思わず私は吹き出してしまった。
「それよりも、僕との甘い時間を過ごした方がいい。」
新婚だからか、セドリックは私に対してとても積極的だ。
けれどそれが不思議と嫌ではなく、むしろ胸がきゅんとする。
「夫人の務めは、跡継ぎを儲けることだとマリーナが言っていたわ。」
そう言うと、セドリックは目を丸くして笑った。
「マリーナめ……。」
セドリックは、少し細い目で私を見つめた。
「子供は産んでほしい。できれば男子を。」
セドリックは真剣な眼差しでそう言った。
「分かっているわ。」
私は静かに頷いた。
お母様もそのプレッシャーにずっと耐えてきた。
実際、私と妹しか生まれず、男子は与えられなかったけれど、
それでも母は一度も弱音を吐かなかった。
けれど、セドリックは違った。
「でも……無理に子供を産まなくてもいいと思っている。」
その言葉に、私は思わず彼の顔を見つめた。
その瞳には、深い悲しみがにじんでいた。
「……お姉様が出産で亡くなったからね。」
そうだった。
私は、彼の姉が命をかけて子を産んだことを、侍女たちから聞いていた。
母になれた喜びの前に、彼女は命を落とした――
「彼女は、子供が欲しいと願っていた。僕たち皆が喜んでいた。だけど……」
そこまで言うと、セドリックは言葉を詰まらせた。
「怖いのね。」
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