家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第3部 見捨てられた令嬢、伯爵邸で咲く

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それから数日かけて、私はセドリックに、侍女から聞いた話を少しずつ尋ねてみた。

「お母様、毎日歴史書や地図を見てお勉強なさっていたのね。」

そう切り出すと、セドリックは少し眉をひそめた。

「ああ、そのことか。」

なぜか、少し呆れたような口調だった。

「母はね、父のことになると、他が見えなくなるんだ。子どものころからずっとさ。小さい頃なんて、図書室にこもりきりで、僕や姉と遊ぶことなんて滅多になかったよ。」

少し寂しそうに笑った彼の表情に、胸が締めつけられる気がした。

あの温かくて優しいお母様にも、別の顔があったのだ。

「でも、お母様なりに一生懸命だったのね。」

「そうだな。……父に愛されようと必死だったのかもしれない。」

セドリックの言葉が、妙に胸に残った。

この家に嫁いで初めて知る、グレイバーン家の家族の姿。

「私も勉強しようかしら。」そう言うと、セドリックはすぐに首を横に振った。

「止めた方がいい。」

「まあ、どうして?」

「図書室にある書物なんて、全部読んでたら一生終わってしまうよ。」

あまりにも真面目な顔をして言うから、思わず私は吹き出してしまった。

「それよりも、僕との甘い時間を過ごした方がいい。」

新婚だからか、セドリックは私に対してとても積極的だ。

けれどそれが不思議と嫌ではなく、むしろ胸がきゅんとする。

「夫人の務めは、跡継ぎを儲けることだとマリーナが言っていたわ。」

そう言うと、セドリックは目を丸くして笑った。

「マリーナめ……。」

セドリックは、少し細い目で私を見つめた。

「子供は産んでほしい。できれば男子を。」

セドリックは真剣な眼差しでそう言った。

「分かっているわ。」

私は静かに頷いた。

お母様もそのプレッシャーにずっと耐えてきた。

実際、私と妹しか生まれず、男子は与えられなかったけれど、

それでも母は一度も弱音を吐かなかった。

けれど、セドリックは違った。

「でも……無理に子供を産まなくてもいいと思っている。」

その言葉に、私は思わず彼の顔を見つめた。

その瞳には、深い悲しみがにじんでいた。

「……お姉様が出産で亡くなったからね。」

そうだった。

私は、彼の姉が命をかけて子を産んだことを、侍女たちから聞いていた。

母になれた喜びの前に、彼女は命を落とした――

「彼女は、子供が欲しいと願っていた。僕たち皆が喜んでいた。だけど……」

そこまで言うと、セドリックは言葉を詰まらせた。

「怖いのね。」
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