家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第4部 舞踏会の招待

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私は驚いてセドリックを見つめた。彼がここまで素直に気持ちを口にするのは、珍しいことだった。

「私なんて……伯爵夫人として、まだまだ至らないところばかりなのに。」

するとセドリックは、私の手をそっと取って微笑んだ。

「だからこそいいんだ。完璧じゃない君が、努力をして、真っ直ぐに向き合ってくれる。その姿に、僕は何度も救われている。」

胸の奥が温かくなり、私はその言葉に静かに頷いた。

——そう、私はこの人の妻でいられることを、誇りに思う。

不思議と周囲の人々の視線が、明らかに変わったのを感じた。

あのデュラン公爵夫人に認められたことで、成り上がりの伯爵であるセドリックにも、そして私にも、貴族たちは一目置くようになったのだ。

そして私とセドリックが、会場の隅をゆっくりと歩き始めた頃だった。

ふと奥の方から、鋭い視線を感じた。

——ルシアだった。

妹は、まっすぐ私たちに向かって歩いてきた。

歩みはゆっくりだが、その目は私たちを射抜くように真剣だった。

「ルシア。」

私は思わずその名を呼ぶ。するとルシアはセドリックの前で立ち止まり、小さくお辞儀をした。

「グレイバーン伯爵。……お兄様と、お呼びしてもよろしいでしょうか?」

少しだけ戸惑ったように、けれど穏やかにセドリックが答えた。

「どうぞ。」

人々の視線が集まる中で、ルシアは礼儀正しく、丁寧に挨拶をした。

あの傲慢な態度は消えていた。

まるで別人のように、彼女は……一歩、距離を詰めてきた。

「お姉様、やってくれたわね。」

その声には、嫉妬と苛立ちが滲んでいた。

「何を?」

私が静かに問い返すと、ルシアは私の全身を睨むように見て、吐き捨てるように言った。

「そんなドレス着て……宝石もたくさんつけて……まるでお姉様は、皇太子妃にでもなったおつもり?」

その目は、怒りとも悲しみともつかない、複雑な感情を湛えていた。恨みのこもった視線が、鋭く私を突き刺す。

「私がどれだけ努力して、ようやくこの世界に立てたと思ってるの……?」

――何が、彼女をここまで追い詰めたのか。

私は返す言葉を探しながら、ただ妹の揺れる瞳を見つめた。姉妹である私達の間に、いつの間にか深い亀裂が生まれていたのだ。
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