不誠実なカラダ 【R18】

日下奈緒

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第2章 所詮体と心は違うもの

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私は快楽に負けて、あろうことか、部長の首に腕を回す。

まるで、恋人達の情事のようだ。

「ここまでだ。」

快楽の途中で、部長は私から離れた。

首にしがみついていた私の腕も、宙に浮いたまま。


「どうして?」

「高杉が、虚しくなるだけだろう。」

そう言って部長はバスタブから出ると、シャワーを浴びながら、体を洗い始めた。

それを見て、私もバスタブを出る。


部長の体はまるで、洗練された彫刻のようだ。

筋肉は割れてはいないけれど、細くなるまで鍛えているのが分かる。

私は、ボディソープを泡立てて自分の体に着けると、部長の体を後ろから抱きしめた。

「何をしてるんだ?」

「部長の体を、洗ってあげてるんですよ。」

私は手で胸やお腹を洗うと、背中は私の胸で擦った。


「高杉は、本当にエロな。」

「それ、誉め言葉ですか?」

背中を粗方洗い終わると、今度は部長の前の方に、移動した。

「なんだかこう言う事してると、恋人同士みたいですね。」

私は泡がついたまま、部長の体を抱きしめた。

すると部長は、私の体を引き離した。


「部長?」

「こう言う事は、しないでくれ。」

「えっ?」

私は、部長を見上げた。

「……好きになられたら、困るんだよ。」

私の胸に、チクッと何かがささった。


部長は何もなかったように、体を洗い流して、さっさとお風呂場を去ってしまった。

一人残された私は、またバスタブに戻った。

温かいはずなのに、寒い。

両足を組んでも、温かくならない。


「……ヒックッ。」

寂しい。

部長をセフレに選んだのは、どこかで、この人だったら心の隙間を埋めてくれるかもしれないと、思ったから。

でも、埋まらない。

心の隙間は、好きな人じゃないと埋められないの?

私の隙間を、埋めてくれる人は、いないの?

泣きながら、私は自分の惨めさを恨んだ。

数分経って、部長がバスルームのドアをノックした。

「高杉、大丈夫か?」

私の涙が、ピタッと止まった。

カチャッとドアが開いて、部長がバスルームに入ってくる。


バスタブに小さく縮こまっている私を見て、部長はもう一度、バスタブに入ってくれた。

「はぁーあ。風呂はいいな。」

そう言って、両手でお湯をすくい、顔を洗った。

「特に女と入る風呂は、天国に近い。」

私は、不覚にも笑ってしまった。

「うわっ。笑ってる。」

「だって、部長が変な事言うから。」

「変かな。」

「変ですよ。心とだったら、分かるけれど。」

わざとそう言うと、部長は私を抱き寄せた。


「悪かった。今の俺の目の前にいるのは、高杉おまえなのに。」

胸がキュンとなる。

「いいですよ。そんな無理しなくても。」

私は部長から離れると、バスタブから出た。

すると突然、部長が私を後ろからお姫様抱っこした。

「ちょっ……部長っ!」

お姫様抱っこなんて、今までされた事がない。

恥ずかしさのあまり、足をバタバタさせる。

「暴れるな。落とすぞ。」

「はい。」

一応大人しくしているけれど、心臓はドキドキしていて、うるさい。


そして部長はそっと、私をベッドに寝かせた。

急いで巻いたタオルを、スルッと脱がされる。

「……綺麗だ。」

私は横を向いた。

「俺がなんでおまえの申し入れを受けたか、分かるか?」

「……知らないです。」

「高杉が、俺の好きな体をしているからだよ。」

部長の方を見ると、髪を洗ったのか、目に前髪がかかっていて、色気が倍増している。

こんな人に、私、抱かれているの?

目を瞑っても、胸がドキドキしている。


「高杉。おまえの体、俺に堪能させてくれ。」

そう言うと部長は、いつものように、私の体を舌で這いずる。

「今日はここも、楽しませて貰うか。」

「えっ?」

部長は、私の足を開くと、そこにあるモノをピチョピチョと舐め始めた。

「ああっ……あああっ……」

今迄付き合った男でも、こんなに気持ち良くなった事がない。

私は完全に、部長の術中にはまっていた。


「はぁ……なかなか、イかないな。」

部長が口元を拭く。

「……ごめんなさい。」

なんだか、自分が不感症のような気がして、嫌になった。


「でもよく考えてみたらそうだよな。好きでもない男に抱かれても、イク訳がないか。」

「……そうですよ。」

私は、自分がそう言う体質なんだと、諦めた。

「高杉。」

「はい?」

振り向いた部長は、色気を帯びた目で、私を見つめていた。

「おまえは、いい女だよ。」

「部長……」

「今は、おまえが欲しくてたまらない。」

そう言った部長は、一つに繋がると、奥まで激しく突いてきた。

「ぶ、部長っ!」

今迄感じた事のない快感が、体中を駆け巡った。
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