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第一章 転生者二人の高校生活
踏み出す一歩の重さ
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玲奈がいなくなった席で一八はラーメンを啜る。しかし、幾ばくもなく彼は退店を促されてしまう。
「兄ちゃん、悪いが閉店だ。この金はあの嬢ちゃんに返しておいてくれ……」
どうやら玲奈は無理矢理に代金を手渡したらしい。店の都合でもなかったのだが、店主は代金はいらないと口にする。
「じゃあ、また食いに来るよ。今度も超特盛りでな!」
「ああそうしてくれ。店を出て西へ進んだ先に避難シェルターがある。急げよ」
とてもいい主人であった。シェルターがロックされるまで十分しか猶予がないのだ。一八が店を出ると同時に店主はシャッターを下ろした。
先に店を出た一八。急がなければならないというのに彼は店先に突っ立ったままだ。
「玲奈……」
こんなにも臆病になっていたことを一八は知らされている。かつてはベルナルド世界全体に戦争をしかけた彼なのだが、今はたった二匹のガーゴイルを相手に臆していた。
「俺はなんてざまだ……」
対人戦は無敵を誇っている。だが、それは試合での話だ。
どのような大会も優勝していた一八は強さに自信を持っていた。それこそ前世と変わらぬ強さだと自負していたのだ。しかし、魔物が現れただけで震えるだなんてオークキングであった頃とは似ても似つかない。自身の評価は完全に過大であり、現在の一八は臆病者に成り下がっている。
「ちくしょう……」
自然と唇を噛む。震えるだけで一歩ですら進まぬ足。一八は力一杯に両足を叩いた。頭では分かっているのだが、どうしても意志通りには動かなかった。
「動けっていってんだろっ!」
自分だけが避難するだなんて絶対に駄目だと思う。玲奈は攻撃力のない竹刀を武器に飛び出していったのだ。幾ら魔力を流そうともガーゴイル相手に長く持つはずがない。
一八は玲奈が心配だった。けれど、今も彼の両足は微動だにしない。恐らくシェルターへと向かうつもりなら簡単に走り出せたことだろう。
「おい、まだいたのか!? あと数分もないぞ!?」
店じまいをした店主に一八は声をかけられる。急がなければ二人共が取り残されてしまうはずだ。
一八は長い息を吐く。この機会を逃せば避難は難しくなるだろう。店主についていけば間違いなくシェルターへと入れるはず。だが、一八は店主に対して首を振っていた。
「おっちゃん、先に行ってくれ。俺は腹を括る必要がある。切羽詰まらなきゃ動けねぇ弱虫なんだ。逃げ道が塞がれたのなら、きっと俺の足も進むべき方向に歩み出せるはず……」
店主は一八の話を理解できなかったけれど、急げよと言い残して走り去っていく。もう数分もないはずだ。願わくば店主が間に合うようにと祈りながら一八はそのときを待った。
『避難警報! キョウト中央ブロック内シェルター、強制ロックまであと三十秒。逃げ遅れた方は速やかにブロック外へと移動してください。繰り返します……』
再び放送が流れた。もう間に合わない。だとすれば一八が取るべき行動は一つ。竹刀一本でガーゴイルに挑んだ幼馴染みを助けるだけだ。
「まさか玲奈を守ることがあるなんてな……」
前世からは想像すらできない。殺し合った相手を助けに行くだなんて。しかし、一八は笑みを浮かべていた。本当の意味で人族になれるような気がしたから。
「人のために戦うのも悪くねぇ……」
ようやく緊張を解いた両足を力一杯に叩き、一八は気合いを入れた。武器は鍛え上げられた肉体のみ。けれど、一八は走り出している。
今行くぞ、玲奈!――――。
「兄ちゃん、悪いが閉店だ。この金はあの嬢ちゃんに返しておいてくれ……」
どうやら玲奈は無理矢理に代金を手渡したらしい。店の都合でもなかったのだが、店主は代金はいらないと口にする。
「じゃあ、また食いに来るよ。今度も超特盛りでな!」
「ああそうしてくれ。店を出て西へ進んだ先に避難シェルターがある。急げよ」
とてもいい主人であった。シェルターがロックされるまで十分しか猶予がないのだ。一八が店を出ると同時に店主はシャッターを下ろした。
先に店を出た一八。急がなければならないというのに彼は店先に突っ立ったままだ。
「玲奈……」
こんなにも臆病になっていたことを一八は知らされている。かつてはベルナルド世界全体に戦争をしかけた彼なのだが、今はたった二匹のガーゴイルを相手に臆していた。
「俺はなんてざまだ……」
対人戦は無敵を誇っている。だが、それは試合での話だ。
どのような大会も優勝していた一八は強さに自信を持っていた。それこそ前世と変わらぬ強さだと自負していたのだ。しかし、魔物が現れただけで震えるだなんてオークキングであった頃とは似ても似つかない。自身の評価は完全に過大であり、現在の一八は臆病者に成り下がっている。
「ちくしょう……」
自然と唇を噛む。震えるだけで一歩ですら進まぬ足。一八は力一杯に両足を叩いた。頭では分かっているのだが、どうしても意志通りには動かなかった。
「動けっていってんだろっ!」
自分だけが避難するだなんて絶対に駄目だと思う。玲奈は攻撃力のない竹刀を武器に飛び出していったのだ。幾ら魔力を流そうともガーゴイル相手に長く持つはずがない。
一八は玲奈が心配だった。けれど、今も彼の両足は微動だにしない。恐らくシェルターへと向かうつもりなら簡単に走り出せたことだろう。
「おい、まだいたのか!? あと数分もないぞ!?」
店じまいをした店主に一八は声をかけられる。急がなければ二人共が取り残されてしまうはずだ。
一八は長い息を吐く。この機会を逃せば避難は難しくなるだろう。店主についていけば間違いなくシェルターへと入れるはず。だが、一八は店主に対して首を振っていた。
「おっちゃん、先に行ってくれ。俺は腹を括る必要がある。切羽詰まらなきゃ動けねぇ弱虫なんだ。逃げ道が塞がれたのなら、きっと俺の足も進むべき方向に歩み出せるはず……」
店主は一八の話を理解できなかったけれど、急げよと言い残して走り去っていく。もう数分もないはずだ。願わくば店主が間に合うようにと祈りながら一八はそのときを待った。
『避難警報! キョウト中央ブロック内シェルター、強制ロックまであと三十秒。逃げ遅れた方は速やかにブロック外へと移動してください。繰り返します……』
再び放送が流れた。もう間に合わない。だとすれば一八が取るべき行動は一つ。竹刀一本でガーゴイルに挑んだ幼馴染みを助けるだけだ。
「まさか玲奈を守ることがあるなんてな……」
前世からは想像すらできない。殺し合った相手を助けに行くだなんて。しかし、一八は笑みを浮かべていた。本当の意味で人族になれるような気がしたから。
「人のために戦うのも悪くねぇ……」
ようやく緊張を解いた両足を力一杯に叩き、一八は気合いを入れた。武器は鍛え上げられた肉体のみ。けれど、一八は走り出している。
今行くぞ、玲奈!――――。
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