18 / 212
第一章 転生者二人の高校生活
再び武道学館生徒会役員室へ
しおりを挟む
新年度とはいえ三日目ともなれば目一杯の授業が組まれていた。加えてカラスマ女子学園では放課後の補講があったりと長期休暇の余韻すらなくなっている。
生徒会役員たちは臨時の会議を開くということで全員が集まっていた。概ね新年度の注意事項を確認する内容であったが、最後の議題は前日から持ち越された話に他ならない。
「それで理事長とお会いした件ですけれど……」
恵美里が滑らかとは言えない口調で切り出す。この時点で役員たちはある程度察していた。好ましくない話が続くことを。
「やはり併合は絶対であって、併合した両校を壁が遮るのは許可できないとのことです」
想像通りの内容であった。そもそも共和国議会による決定であって、生徒会に理事会を納得させられるはずもない。
「残念ですが全ては決定事項とのこと。あと本年度の交流について念押しされております。玲奈さん、昨日は奥田会長と面会できましたでしょうか?」
昨日のお使いについて問われる。玲奈は確かにカラスマ女子学園の提案を伝え終えていたけれど、その提案はアネヤコウジ武道学館の校風にそぐわないと却下されていた。
「それが文化祭自体は存在するようですが、奴らは知性を持たぬ畜生故に有名無実化しておるみたいです。代案として体育祭を提案されております」
玲奈は昨日の話し合いについて語る。文化祭を共同開催しても無駄であると。誰も登校しないのであれば交流などできない。
「体育祭ですか……」
深い息を吐く恵美里を見ると好ましくない提案であるのは明らかだ。というのもカラスマ女子学園には体育祭など存在しない。彼女たちが催しているのは魔道批評会であって、肉体的な競争などしていなかった。
「はい会長! 体育祭なんて無理です! 存在しないものをする必要はないかと思います。行事として両校に存在する文化祭しかあり得ません!」
書記の木幡秀美が言った。付き合う必要はないと。双方の年間行事にある文化祭しかないのだと。
「あたしも体育祭なんて嫌だなぁ。運動は苦手だし……」
続いて宮之阪舞子が発言する。彼女は個人的な理由を述べただけだが、玲奈を除く役員の全員が大きく頭を上下させた。
「私も反対です。行事が増えると受験勉強にも差し障りがありますし……」
副会長の大和田小乃美もまた反対に投じている。生徒会役員は全員が騎士学校を目指しており、彼女は受験対策が疎かになることを危惧していた。
「まあですよね……。玲奈さん、わたくしも申し訳ないのですけど、体育祭には反対です。時間的余裕もありませんし、練習もしないで開催するわけにもなりませんので」
最後に生徒会長の七条恵美里が反対をする。どうしてもアネヤコウジ武道学館の提案は難しいとのこと。開催するからには全員で取り組むべきと考える彼女は一定の予測をし、その結論に従って反対に投じていた。
「殿下、であればどうしましょう? 聞いたところによると奴らは体育祭以外の行事に興味がないようです。それ以外を提案したとしても同じ結果になるかと存じます」
「そうですねぇ。そもそも校風が異なりすぎますから……。正直に理事会が期待する交流は不可能かと考えます。ここは武道学館側に折れていただきましょう。形だけでも文化祭を共同開催する方向で……」
余計な行事を増やすのは生徒たちのためにならない。恵美里は妥協案として武道学館側に展示などを求めないつもりである。形式上だけの共同開催を提案しようと考えた。
「無理をお願いしますので本日はわたくしが武道学館へと向かいます。玲奈さん、ご同行お願いできますか?」
「もちろんです、殿下! このところ連日に亘って締め上げておりますから何の問題もございません!」
玲奈の返事に恵美里は笑みを浮かべる。流石に一人で武道学館へと向かうのは恐ろしい。中学時代に全国を制した玲奈が同行してくれるのは本当に有り難かった。
「あたしも行くよ。数で押し切られないように!」
勇敢にも舞子も手を挙げた。玲奈が参加しなければ同行など口にできなかっただろうが、安全が保証されるのなら文化祭の共同開催を推し進めたいと考えている。
参加を表明した舞子に恵美里は感謝を伝えた。人数は多い方がいい。丸め込まれないためにも口数で勝負しなければならないのだから。
「それでは解散とします。玲奈さんに舞子さん、よろしくお願いします」
会議はこれにて終了となった。アネヤコウジ武道学館へと向かう三人を残して役員たちが生徒会室をあとにしていく。
いざ決戦の場へと向かう。玲奈は新しい竹刀を手にしていた。昨日の戦闘には少しばかり不満がある。一八に助けられただけでなく、玲奈が倒すはずだった二頭目のガーゴイルを一八が仕留めてしまったから。
一暴れできそうな予感。彼女は小さく笑みを浮かべている。
生徒会役員たちは臨時の会議を開くということで全員が集まっていた。概ね新年度の注意事項を確認する内容であったが、最後の議題は前日から持ち越された話に他ならない。
「それで理事長とお会いした件ですけれど……」
恵美里が滑らかとは言えない口調で切り出す。この時点で役員たちはある程度察していた。好ましくない話が続くことを。
「やはり併合は絶対であって、併合した両校を壁が遮るのは許可できないとのことです」
想像通りの内容であった。そもそも共和国議会による決定であって、生徒会に理事会を納得させられるはずもない。
「残念ですが全ては決定事項とのこと。あと本年度の交流について念押しされております。玲奈さん、昨日は奥田会長と面会できましたでしょうか?」
昨日のお使いについて問われる。玲奈は確かにカラスマ女子学園の提案を伝え終えていたけれど、その提案はアネヤコウジ武道学館の校風にそぐわないと却下されていた。
「それが文化祭自体は存在するようですが、奴らは知性を持たぬ畜生故に有名無実化しておるみたいです。代案として体育祭を提案されております」
玲奈は昨日の話し合いについて語る。文化祭を共同開催しても無駄であると。誰も登校しないのであれば交流などできない。
「体育祭ですか……」
深い息を吐く恵美里を見ると好ましくない提案であるのは明らかだ。というのもカラスマ女子学園には体育祭など存在しない。彼女たちが催しているのは魔道批評会であって、肉体的な競争などしていなかった。
「はい会長! 体育祭なんて無理です! 存在しないものをする必要はないかと思います。行事として両校に存在する文化祭しかあり得ません!」
書記の木幡秀美が言った。付き合う必要はないと。双方の年間行事にある文化祭しかないのだと。
「あたしも体育祭なんて嫌だなぁ。運動は苦手だし……」
続いて宮之阪舞子が発言する。彼女は個人的な理由を述べただけだが、玲奈を除く役員の全員が大きく頭を上下させた。
「私も反対です。行事が増えると受験勉強にも差し障りがありますし……」
副会長の大和田小乃美もまた反対に投じている。生徒会役員は全員が騎士学校を目指しており、彼女は受験対策が疎かになることを危惧していた。
「まあですよね……。玲奈さん、わたくしも申し訳ないのですけど、体育祭には反対です。時間的余裕もありませんし、練習もしないで開催するわけにもなりませんので」
最後に生徒会長の七条恵美里が反対をする。どうしてもアネヤコウジ武道学館の提案は難しいとのこと。開催するからには全員で取り組むべきと考える彼女は一定の予測をし、その結論に従って反対に投じていた。
「殿下、であればどうしましょう? 聞いたところによると奴らは体育祭以外の行事に興味がないようです。それ以外を提案したとしても同じ結果になるかと存じます」
「そうですねぇ。そもそも校風が異なりすぎますから……。正直に理事会が期待する交流は不可能かと考えます。ここは武道学館側に折れていただきましょう。形だけでも文化祭を共同開催する方向で……」
余計な行事を増やすのは生徒たちのためにならない。恵美里は妥協案として武道学館側に展示などを求めないつもりである。形式上だけの共同開催を提案しようと考えた。
「無理をお願いしますので本日はわたくしが武道学館へと向かいます。玲奈さん、ご同行お願いできますか?」
「もちろんです、殿下! このところ連日に亘って締め上げておりますから何の問題もございません!」
玲奈の返事に恵美里は笑みを浮かべる。流石に一人で武道学館へと向かうのは恐ろしい。中学時代に全国を制した玲奈が同行してくれるのは本当に有り難かった。
「あたしも行くよ。数で押し切られないように!」
勇敢にも舞子も手を挙げた。玲奈が参加しなければ同行など口にできなかっただろうが、安全が保証されるのなら文化祭の共同開催を推し進めたいと考えている。
参加を表明した舞子に恵美里は感謝を伝えた。人数は多い方がいい。丸め込まれないためにも口数で勝負しなければならないのだから。
「それでは解散とします。玲奈さんに舞子さん、よろしくお願いします」
会議はこれにて終了となった。アネヤコウジ武道学館へと向かう三人を残して役員たちが生徒会室をあとにしていく。
いざ決戦の場へと向かう。玲奈は新しい竹刀を手にしていた。昨日の戦闘には少しばかり不満がある。一八に助けられただけでなく、玲奈が倒すはずだった二頭目のガーゴイルを一八が仕留めてしまったから。
一暴れできそうな予感。彼女は小さく笑みを浮かべている。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~
スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」
悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!?
「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」
やかましぃやぁ。
※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる