40 / 212
第一章 転生者二人の高校生活
ヌルヌル相撲と二人三脚
しおりを挟む
翌日は土曜日であった。公立の高校は大半が休みであったものの、私学であるカラスマ女子学園は今日も授業が組まれている。
四限までではあったものの、放課後にはクラブ活動や補講があったりと変化はあまりない。
授業後に玲奈は生徒会へと来ていた。通常は週に二日しか集まることなどないのだが、今週は既に三度目である。新学年になっただけでなく併合について話し合う必要があり、臨時の開催となっていた。
「本日の議題も共同開催についてです。提案書は理事たちにも好評でありまして、共同開催の演目は体育祭で決定しております。そこで体育祭を成功させるため、次に我々が行うべきこと。それは体育祭のプログラムを話し合うことであります。どのような競技を選択するのかも我々生徒たちが決めていかねばなりません」
武道学館には実行委員の選抜を依頼していた。当のカラスマ女子はというと余計な雑務を生徒たちに与えないようにと生徒会長の恵美里と副会長の小乃美が率先して手を挙げ、更には一騎打ちに負けた玲奈と付き添いだった舞子が委員に参加している。
「玲奈さんが昨日武道学館のリストを持ち帰っております。委員だけで話し合っても良かったのですけれど、一応は目を通してもらおうかと思いまして集まっていただきました」
配られたプリントは武道学館が作成した体育祭のプログラムだ。ざっと見たところ問題はなかったのだが、役員たちはある一点が気になってしまう。
「会長、この二人三脚は本気なのでしょうか? 体育祭というには幼稚に感じますけれど」
早速と書記の木幡秀美が聞いた。小学校の運動会で行うイメージ。完全に浮いている二人三脚がどうにも理解できない感じだ。
「秀美殿、奴らはただ女子と触れ合いたいらしい。本来ならそのリストはとても見せられるものではなかった。だから私が大幅に手を加えたのだ。しかし、奴らのやる気を促すためにも二人三脚だけは認めることにした……」
玲奈が経緯を説明する。元々のリストにはヌルヌル相撲やアクロバティック組み体操なるものがあったことを。彼らはそれらを混合競技としていたのだと。
「ヌ、ヌルヌル相撲ですか……?」
恵美里が唖然として聞いた。意味合いはそれとなく理解できたけれど、とてもじゃないが理事たちに披露できるものではない。
「私は一つくらい希望を叶えてやりたいと考えています。責任を持って指導するつもりであり、私は実際の競技にも参加し目を光らせます。また両校の交流なのですから、少なからずこういった競技の必要性もあるでしょう。絶対に風紀を乱すような事態は起こさせませんのでどうか認可していただきたく存じます」
義理などなかったが、武道学館生は自ら体育祭について考えていたのだ。内容は褒められたものではなかったけれど、彼らのやる気を玲奈は評価していた。
「まあそうですね……。共同開催の前提は交流ですから確かに必要性があるかと思います。特に練習が必要というわけでもなさそうですし、一応はリストに入れさせてもらいましょう。問題は学園側に参加希望者がいるかどうかですけれど……」
「殿下、それなら提案がございます。奴らは腐れ脳みそのクズ高校でありますが、スポーツや格闘技の分野では名を馳せています。そこで奴らに色々とプレゼンをしてもらい、我々が人気投票をするのです。その人気上位者を二人三脚の参加者とすれば、気まぐれで参加しようとする生徒が現れるかもしれません。また体育祭直前まで人気投票を受け付けておれば、奴らのやる気を削ぐこともないでしょう」
昨日から考えていたのか玲奈が具体案を出した。無作為に相手が決まるようでは二の足を踏むだろう。しかし、相手が男前で固められているのならば、物好きが参加しようとするかもしれない。
「ああ、確かに参加者がイケメンだったら問題ないかも! ウチは女子校だし出会いに餓えているからね。寧ろ参加希望者が殺到するかもしれない」
舞子が賛成と手を挙げた。お嬢様学校ではあったけれど、そこは年頃の女子高生。甘い男女交際を夢見る者も少なくはなかった。
「なるほど、玲奈さん考えましたね? わたくしたちに選択権があるのなら、怪物のような男の子が相手になる可能性はありませんし……」
「その通りです。ただ基本が豚箱のような学校ですので事前調査をした結果、十人にするのか二十人にするのか決めたら良いかと思います。それにより悲劇は回避されるでしょう」
玲奈の話に拍手が巻き起こった。消極的であった秀美でさえ良い案であると手を叩いている。
「早速と私は武道学館生の写真入り名簿を入手してきます。ご期待ください!」
何だか玲奈は面白くなっていた。皆で作り上げる体育祭。きっと楽しいものになるはずと疑わない。併合には絶対反対の立場であった彼女はもうどこにもいないようだ。
玲奈は会議を中座し武道学館へと急ぐ。何しろ一八と来田は特訓中なのだ。主導する者が不在であれば直ぐに済む用事も時間を要してしまうだろう。
四限までではあったものの、放課後にはクラブ活動や補講があったりと変化はあまりない。
授業後に玲奈は生徒会へと来ていた。通常は週に二日しか集まることなどないのだが、今週は既に三度目である。新学年になっただけでなく併合について話し合う必要があり、臨時の開催となっていた。
「本日の議題も共同開催についてです。提案書は理事たちにも好評でありまして、共同開催の演目は体育祭で決定しております。そこで体育祭を成功させるため、次に我々が行うべきこと。それは体育祭のプログラムを話し合うことであります。どのような競技を選択するのかも我々生徒たちが決めていかねばなりません」
武道学館には実行委員の選抜を依頼していた。当のカラスマ女子はというと余計な雑務を生徒たちに与えないようにと生徒会長の恵美里と副会長の小乃美が率先して手を挙げ、更には一騎打ちに負けた玲奈と付き添いだった舞子が委員に参加している。
「玲奈さんが昨日武道学館のリストを持ち帰っております。委員だけで話し合っても良かったのですけれど、一応は目を通してもらおうかと思いまして集まっていただきました」
配られたプリントは武道学館が作成した体育祭のプログラムだ。ざっと見たところ問題はなかったのだが、役員たちはある一点が気になってしまう。
「会長、この二人三脚は本気なのでしょうか? 体育祭というには幼稚に感じますけれど」
早速と書記の木幡秀美が聞いた。小学校の運動会で行うイメージ。完全に浮いている二人三脚がどうにも理解できない感じだ。
「秀美殿、奴らはただ女子と触れ合いたいらしい。本来ならそのリストはとても見せられるものではなかった。だから私が大幅に手を加えたのだ。しかし、奴らのやる気を促すためにも二人三脚だけは認めることにした……」
玲奈が経緯を説明する。元々のリストにはヌルヌル相撲やアクロバティック組み体操なるものがあったことを。彼らはそれらを混合競技としていたのだと。
「ヌ、ヌルヌル相撲ですか……?」
恵美里が唖然として聞いた。意味合いはそれとなく理解できたけれど、とてもじゃないが理事たちに披露できるものではない。
「私は一つくらい希望を叶えてやりたいと考えています。責任を持って指導するつもりであり、私は実際の競技にも参加し目を光らせます。また両校の交流なのですから、少なからずこういった競技の必要性もあるでしょう。絶対に風紀を乱すような事態は起こさせませんのでどうか認可していただきたく存じます」
義理などなかったが、武道学館生は自ら体育祭について考えていたのだ。内容は褒められたものではなかったけれど、彼らのやる気を玲奈は評価していた。
「まあそうですね……。共同開催の前提は交流ですから確かに必要性があるかと思います。特に練習が必要というわけでもなさそうですし、一応はリストに入れさせてもらいましょう。問題は学園側に参加希望者がいるかどうかですけれど……」
「殿下、それなら提案がございます。奴らは腐れ脳みそのクズ高校でありますが、スポーツや格闘技の分野では名を馳せています。そこで奴らに色々とプレゼンをしてもらい、我々が人気投票をするのです。その人気上位者を二人三脚の参加者とすれば、気まぐれで参加しようとする生徒が現れるかもしれません。また体育祭直前まで人気投票を受け付けておれば、奴らのやる気を削ぐこともないでしょう」
昨日から考えていたのか玲奈が具体案を出した。無作為に相手が決まるようでは二の足を踏むだろう。しかし、相手が男前で固められているのならば、物好きが参加しようとするかもしれない。
「ああ、確かに参加者がイケメンだったら問題ないかも! ウチは女子校だし出会いに餓えているからね。寧ろ参加希望者が殺到するかもしれない」
舞子が賛成と手を挙げた。お嬢様学校ではあったけれど、そこは年頃の女子高生。甘い男女交際を夢見る者も少なくはなかった。
「なるほど、玲奈さん考えましたね? わたくしたちに選択権があるのなら、怪物のような男の子が相手になる可能性はありませんし……」
「その通りです。ただ基本が豚箱のような学校ですので事前調査をした結果、十人にするのか二十人にするのか決めたら良いかと思います。それにより悲劇は回避されるでしょう」
玲奈の話に拍手が巻き起こった。消極的であった秀美でさえ良い案であると手を叩いている。
「早速と私は武道学館生の写真入り名簿を入手してきます。ご期待ください!」
何だか玲奈は面白くなっていた。皆で作り上げる体育祭。きっと楽しいものになるはずと疑わない。併合には絶対反対の立場であった彼女はもうどこにもいないようだ。
玲奈は会議を中座し武道学館へと急ぐ。何しろ一八と来田は特訓中なのだ。主導する者が不在であれば直ぐに済む用事も時間を要してしまうだろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~
スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」
悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!?
「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」
やかましぃやぁ。
※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる