オークと女騎士、死闘の末に幼馴染みとなる

坂森大我

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第一章 転生者二人の高校生活

実技試験

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 一八と玲奈は二人して集合場所であるグランドへと来ていた。既に大勢の剣士たちがそこには集まっている。
「玲奈さん!」
 ここで玲奈は来田と出会ってしまう。先ほどの会話があったあとだ。流石に気まずいけれど、無視するわけにはならない。

「雷神、貴様は宿泊組か?」
「ええまあ。事前に予約すれば無料でしたので……」
 来田が試験を乗り越えるのは不可能だった。実技試験もさることながら、筆記試験も彼には枷となっている。実技で取り返す予定の一八とは根本的に異なっていた。

「来田、これで本当に最後だ。思い切って行け。何の後悔も残すな」
「一八さん、こんなに頑張れたのは生まれて初めてです。学んだ全てを出し尽くしたいと思ってます」
 一八と来田はフィストバンプを交わした。一年にも満たない期間であったけれど、二人共が全力を尽くしたのだ。その頑張りはお互いに理解している。

「俺はF組だがお前たちは何組だ?」
 ここで一八が聞いた。グランドは六面に区切られており試験はA組からF組に分かれて行う。この組分け次第で浅村ヒカリと対戦する可能性があった。
「私はE組です……」
「F組の1番だな!」
 来田は隣の試験場のよう。また玲奈は一八と同じF組であり一番目らしい。

 三人が雑談をしていると、壇上に一人の男性が現れた。魔道拡声器を前にコホンと咳払いをしたあと、
「あー諸君、これより剣術科の試験を始める。受付で渡した受験票の組を確認しろ。早速開始するので速やかに移動せよ」
 彼は命令口調で言った。
 受験生の動きをチェックする者たちの姿がある。どうやら既に試験は始まっているらしい。ぐずぐずしていると減点されてしまうはずだ。

 素早く移動し番号順に整列。騎士学校とはいえ、合格すれば軍人である。規律は何よりも重視すべきことであった。
 組ごとに分かれた先では担当の試験官が二人。一八たちのF組も他と同じように担当の試験官が話を始めている。

「よろしい。F組を担当するのは大原と小泉だ。本年度は受験生が多いのでな。早速と始めよう。まずは受験番号F01岸野玲奈!」
 いきなり玲奈の名が呼ばれる。彼女は一番手だ。ハイっと大きな声で返事をし、玲奈が試験場へと入っていく。

 受験生は軒並み岸野玲奈の登場に驚いていたけれど、声には出さず視線だけを送っている。騒ぎ立てようものなら容赦なく減点されていたことだろう。
 玲奈が試験場へと入ると、試験官の大原が話を始めた。
「岸野玲奈、これより実技試験を開始する。試験は剣術の試合とは違う。たとえ一撃をもらおうとも戦えるのであれば剣を振れ。審判が続行不可能と判定するまで戦うこと。また身の危険を感じたならば潔く降参するように」
 頷いたあと玲奈は鉄刀を抜く。一番手であるのは有り難かった。余計な思考をする暇もないのだ。だから彼女は声を張って毅然と答えるだけ。

「はい。いつでも問題ありません」
 玲奈がそう答えた直後、試験場がどよめいた。
 張り詰めていた空気が一度に緊張を解く。受験生の誰もが度肝を抜かれ、あろうことか目撃者の大半が声を上げてしまう。
 視線を送った先には剣を掲げる女性と膝をつく男性の姿。そこはE組の試験場であり、項垂れている男性は間違いなく受験生だった。

「浅村大尉――?」
 即座に察知する。隣の試験場の担当が浅村ヒカリであること。加えて開始早々に彼女が受験生を叩き斬ったのだと。思わず声を上げてしまうほどの剣戟があったのだと想像できた。

 E組といえば来田が入った試験場である。少しばかり気になったものの、玲奈は自身の試験に改めて集中していた。
 礼をしてから剣を構える。全てはこのときのため。余計な思考をしている場合ではない。磨きをかけた己の剣を振るうだけであった。

「行きます!」
 玲奈から仕掛けた。彼女はスピード勝負。カウンター攻撃も得意であったけれど、基本的に攻めのスタイルであって、手数により有利な態勢へともっていく。スピードであれば誰にも負けないと玲奈は剣を振り続ける。

 圧巻の攻防であった。凄まじい速度で繰り出される剣もさることながら、試験官もそれを受けて立っている。しかしながら、徐々に試験官は後退しており、玲奈が押しているのは傍目にも明らかだった。
 次の瞬間、キンっと空気を裂くような音が木霊する。と同時に受験生たちがアッと声を上げた。
 回転しながら青空に舞い上がった影。それは明らかに模造刀であった。試験官である大原が握っていたものに他ならない。

「そ、そこまで!」
 大原の喉元には玲奈の剣先が突き立てられている。それは明確に玲奈の勝利を意味した。
 審判を務める小泉が慌てて二人の間に割って入り、試験が終わったことを玲奈に告げている。

 これには流石に受験生たちは感嘆の声を漏らしてしまう。一戦目であり、体力だけでなく魔力も十分な試験官に勝利するだなんてあり得ないことであったからだ。
「岸野玲奈は下がれ。次、F02鹿島裕樹……」
 礼をしてから玲奈は試験場をあとにする。かといって帰りもまた恵美里の魔道車だ。
 玲奈は会場の脇にあるスタンドへと腰掛け、淡々と続けられる試験を眺めていた……。
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