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第三章 存亡を懸けて
報告
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待機中である強襲部隊。痺れを切らせていたものの、ようやくと打ち上がった青い発光弾に全員が安堵している。
「少将、奇襲班がやり遂げましたよ!」
喜々として玲奈が声を上げる。正直に最悪の事態も考えていたけれど、とりあえず全滅は避けられたのだと分かった。
程なく魔道士による一斉照射が始まる。魔力が尽きるまで撃ち続ける手筈となっており、黄色の発光弾が打ち上げられるや、強襲部隊の出番となる。
「お? 少佐から通信が入った」
既に戦場を離れただろう奇襲班から川瀬に通信が届く。恐らくは任務の報告に違いない。
興奮する玲奈を制してから、川瀬は応答に出る。
「ああ、川瀬だ……」
『浅村です』
ヒカリの声を聞くや、安堵の息を吐く。やはり共和国がこの先も存続するのであれば、浅村ヒカリの存在は必要不可欠。無謀な作戦を生き抜いた彼女に改めてそう思う。
『我ら奇襲班は任務を完遂しました。現在は追撃班と合流し、待機中です』
魔道士による攻撃が始まったこと。任務の完遂は明らかであったけれど、ヒカリはまず任務を遂げたことから始めた。
『ネームドオークキングとネームドオークエンペラーが出現しております。それを含め合計八体の進化級オークを討伐しました。また天主の姿は見られませんでした』
川瀬はとんでもない報告を聞かされている。苦戦していたのは分かりきっていたけれど、まさかネームドモンスターが二体も出現したなんて考えもしないことだ。あまつさえ進化したオークが八体もいたという話は……。
「それで被害はどうなんだ?」
気になるのはその一点のみ。川瀬はある程度の返答を予測していたものの、それは確認すべき事項であって指揮官として問うている。
『金剛少尉が右手に怪我を負いました……』
眉根を寄せる川瀬。被害報告を聞いたのは自身であるけれど、聞きたかったことは怪我などではない。被害とは人員が失われたかどうかであったのだから。
「いや、死者はいないのか?」
怪我程度なら作戦は大成功といえるだろう。従って川瀬は被害の詳細を知りたがる。
少しばかりの間。返答を待つ川瀬は割と緊張していた。
『奇襲班四名は健在です――――』
息を呑む川瀬。どうにも信じられない。怪我の報告から始まっていたこと。期待はしていたけれど、全員が生き残っただなんて考えられなかった。
「ネームド二体を怪我だけで乗り越えたというのか!?」
『もちろん。川瀬少将、事前に話したではないですか?』
ヒカリの話には何度も首を振る。彼女とは招集前に話をしたけれど、ネームドモンスターの出現など予定していない。当初は五体のオークキングと考えられていただけなのだ。
しかし、川瀬は知らされている。告げられたとして納得できるはずもない理由を。
『いずれも腕前は保証しますと――――』
確かにそんな話を聞いた。だが、それは候補生としてが前提にある。正直に川瀬は候補生にオークキングの討伐まで期待していなかった。
『私と優子で四体、奥田少尉と金剛少尉もまた四体。ツーマンセルにて挑んだ結果です』
平然と告げられている。川瀬は発光弾の数から予測していたけれど、その報告は事前の話し合いとまるで異なっている。奇襲班は剣士四人によってオークキングを討伐していくという計画であったはず。なのに彼女らは、ただでさえ少ない人員を分けて戦ったらしい。
「事前に聞いていなかったぞ? ツーマンセルだなんて……」
『伝えていたら反対したでしょう? 私は奥田一八という剣士を買っている。更には金剛莉子という剣士も。私と優子のコンビと比較しても見劣りしないと考えていました』
淡々と告げられてしまうけれど、ヒカリが話す通りだと思う。間違いなく反対したはずで、一体ずつを仕留めるよう命令したはずだ。
「まったく、君には恐れ入る。最悪の事態を想定していないのではないか? 私もネームドがいるとは考えていなかったが、指揮官とはいつ何時も危機を見据えて動くべきだ」
『この作戦事態が既に異常でしょう? 縋る価値もないほどの確率しかない。奇襲が成功するためには時間をかけられませんでした。それだけの話です……』
ヒカリは間違いだと認めない。立案からここまで全てが彼女の予定通りであるのだと。実際にやり遂げた今となっては何をいっても無駄であるように思われた。
『さあ、そろそろ魔道士も打ち止めです。少将の手腕を拝見させていただきます』
最後には皮肉的に返されてしまう。どうにも納得できない川瀬であったけれど、強襲部隊の掃討により奇襲作戦が完遂となる。言われずとも最後を締めくくる戦いは全力を尽くすつもりだ。
「任せておけ。オーク共しかいないのなら、立ち所に排除して見せよう。茶でもすすっておけばいいさ……」
言って川瀬は部隊に号令をかける。ヒカリの返答を聞くまでもなく。
このあと三時間に亘り強襲部隊が基地内のオークを排除してまわった。大部分のオークが基地から逃げ出すという結果になっていたが、元よりそれは予定通りである。彼らの任務はオークの殲滅ではなく、生存者の救助であったのだから。
マイバラ基地が陥落してから僅か二日。緊急的に実行された作戦により、キンキ共和国は天軍の排除に成功している……。
「少将、奇襲班がやり遂げましたよ!」
喜々として玲奈が声を上げる。正直に最悪の事態も考えていたけれど、とりあえず全滅は避けられたのだと分かった。
程なく魔道士による一斉照射が始まる。魔力が尽きるまで撃ち続ける手筈となっており、黄色の発光弾が打ち上げられるや、強襲部隊の出番となる。
「お? 少佐から通信が入った」
既に戦場を離れただろう奇襲班から川瀬に通信が届く。恐らくは任務の報告に違いない。
興奮する玲奈を制してから、川瀬は応答に出る。
「ああ、川瀬だ……」
『浅村です』
ヒカリの声を聞くや、安堵の息を吐く。やはり共和国がこの先も存続するのであれば、浅村ヒカリの存在は必要不可欠。無謀な作戦を生き抜いた彼女に改めてそう思う。
『我ら奇襲班は任務を完遂しました。現在は追撃班と合流し、待機中です』
魔道士による攻撃が始まったこと。任務の完遂は明らかであったけれど、ヒカリはまず任務を遂げたことから始めた。
『ネームドオークキングとネームドオークエンペラーが出現しております。それを含め合計八体の進化級オークを討伐しました。また天主の姿は見られませんでした』
川瀬はとんでもない報告を聞かされている。苦戦していたのは分かりきっていたけれど、まさかネームドモンスターが二体も出現したなんて考えもしないことだ。あまつさえ進化したオークが八体もいたという話は……。
「それで被害はどうなんだ?」
気になるのはその一点のみ。川瀬はある程度の返答を予測していたものの、それは確認すべき事項であって指揮官として問うている。
『金剛少尉が右手に怪我を負いました……』
眉根を寄せる川瀬。被害報告を聞いたのは自身であるけれど、聞きたかったことは怪我などではない。被害とは人員が失われたかどうかであったのだから。
「いや、死者はいないのか?」
怪我程度なら作戦は大成功といえるだろう。従って川瀬は被害の詳細を知りたがる。
少しばかりの間。返答を待つ川瀬は割と緊張していた。
『奇襲班四名は健在です――――』
息を呑む川瀬。どうにも信じられない。怪我の報告から始まっていたこと。期待はしていたけれど、全員が生き残っただなんて考えられなかった。
「ネームド二体を怪我だけで乗り越えたというのか!?」
『もちろん。川瀬少将、事前に話したではないですか?』
ヒカリの話には何度も首を振る。彼女とは招集前に話をしたけれど、ネームドモンスターの出現など予定していない。当初は五体のオークキングと考えられていただけなのだ。
しかし、川瀬は知らされている。告げられたとして納得できるはずもない理由を。
『いずれも腕前は保証しますと――――』
確かにそんな話を聞いた。だが、それは候補生としてが前提にある。正直に川瀬は候補生にオークキングの討伐まで期待していなかった。
『私と優子で四体、奥田少尉と金剛少尉もまた四体。ツーマンセルにて挑んだ結果です』
平然と告げられている。川瀬は発光弾の数から予測していたけれど、その報告は事前の話し合いとまるで異なっている。奇襲班は剣士四人によってオークキングを討伐していくという計画であったはず。なのに彼女らは、ただでさえ少ない人員を分けて戦ったらしい。
「事前に聞いていなかったぞ? ツーマンセルだなんて……」
『伝えていたら反対したでしょう? 私は奥田一八という剣士を買っている。更には金剛莉子という剣士も。私と優子のコンビと比較しても見劣りしないと考えていました』
淡々と告げられてしまうけれど、ヒカリが話す通りだと思う。間違いなく反対したはずで、一体ずつを仕留めるよう命令したはずだ。
「まったく、君には恐れ入る。最悪の事態を想定していないのではないか? 私もネームドがいるとは考えていなかったが、指揮官とはいつ何時も危機を見据えて動くべきだ」
『この作戦事態が既に異常でしょう? 縋る価値もないほどの確率しかない。奇襲が成功するためには時間をかけられませんでした。それだけの話です……』
ヒカリは間違いだと認めない。立案からここまで全てが彼女の予定通りであるのだと。実際にやり遂げた今となっては何をいっても無駄であるように思われた。
『さあ、そろそろ魔道士も打ち止めです。少将の手腕を拝見させていただきます』
最後には皮肉的に返されてしまう。どうにも納得できない川瀬であったけれど、強襲部隊の掃討により奇襲作戦が完遂となる。言われずとも最後を締めくくる戦いは全力を尽くすつもりだ。
「任せておけ。オーク共しかいないのなら、立ち所に排除して見せよう。茶でもすすっておけばいいさ……」
言って川瀬は部隊に号令をかける。ヒカリの返答を聞くまでもなく。
このあと三時間に亘り強襲部隊が基地内のオークを排除してまわった。大部分のオークが基地から逃げ出すという結果になっていたが、元よりそれは予定通りである。彼らの任務はオークの殲滅ではなく、生存者の救助であったのだから。
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