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第一章 前世と今世と

古代魔法再び

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 髭との契約後、即座に王家の別荘地を後にした私たちは馬車を走らせて問題の岩山へと来ていました。

 少しばかり懐かしい。足繁く通った岩山です。

 さりとて本日は吹き飛ばしに来たのだけれど。

「アナ、今さら冗談でしたとはいえんぞ!? これは岩というよりも山じゃないか!?」

 流石に狼狽える現在のパパ。いやまあ、それは普通の感想でしょうね。

 まさか私もこの岩山を吹き飛ばしてしまうなんて想定していなかったし。

「お父様、問題ありません。中にあったミスリル鉱脈を掘り尽くしているので、ほぼ空洞なのですわ」

 明確に嘘ですけど、そう言わないと涙目のお父様が本気で泣いてしまうからね。

 実際は髭にバレないよう土魔法で埋めてあります。

「それよりも、お父様。魔法を唱えますと、私は必ず昏倒します。責任を持って家まで連れ帰ってくださいまし」

 ここは女神によるリスタートの恐れはない。

 だからこそ、昏倒したあとはダンツに連れ帰ってもらうしかないのよ。

 こんなところで盗賊には出会わないだろうけど、魔物が現れると問題だからね。

 ダンツが無言で頷くと、私は詠唱を始める。昏倒しても構わないのだから、それこそ全力で吹き飛ばしてあげるわ!

「ロナ・メテオ・バァァアアアスト!!」

 あれから十四年。私はなお一層の魔法強化に励んできた。

 従って此度は以前よりも明らかに洗練されているはずです。

 巨大な魔法陣は記憶と同じ。あとは目一杯の魔力を注ぎ込めば古代魔法が発動する。

「貫けぇぇええええぇっっ!!」

 記憶以上の隕石が撃ち出されていました。

 魔法陣による障壁がなければ、術者ごと吹っ飛んでいると思える巨大な隕石。撃ち直しができないからと全力を出しすぎたのかもしれません。

 濛々と粉塵が立ち上ったあと、一陣の風が吹き抜けていく。

 薄れゆく意識の中で私は確認していました。

 眼前の視界が開けていることを……。

「ざまぁみなさい……」

 満足した私は静かに目を瞑る。これにより不安要素は取り除かれたはずと。

 悪役令嬢らしい高笑いでも披露したくなる状況ですけれど、生憎とそれは叶わない。

 私は小さく笑みを浮かべたまま意識を失っていました。
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