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第四章 歪んだ愛の形
新しい出会い
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ラルクレイドを拠点にしてから十ヶ月が経過していました。
冒険者ギルドのランクはCランクとなりまして、現在は上級冒険者といわれるBランクを目指しているところです。
「時間がない。Bランクへの昇格条件って多すぎないかしら?」
既に十三歳となっています。前世ではコンラッドとの接触を始めている頃でしょうか。
Bランクへの条件すらままならないのですから、Aランクに上がるには何年かかるのか分かりません。
魔物の討伐は問題なかったのですけれど、Bランクへ上がるには街の清掃であったり、要人警護といった時間がかかる依頼を一定数こなさねば試験すら受けさせてもらえないのです。
「まいったな。もうあの時間軸には戻りたくないよ……」
愛する人に絶縁を突きつけたのです。
正直にあれが最後であって欲しい。もう二度と見たくないよ。ルークが咽び泣く姿なんて……。
嘆息しつつも、宿を出て冒険者ギルドへと向かう。
セーブポイントへ戻されないためにも、早くAランク冒険者になるだけなのだと。
細い路地を走り抜けて、大通りに差し掛かったとき、
「うおお!?」
私は通行人とぶつかってしまいました。
「すみません! 急いでいたもので!」
とりあえず平謝り。貴族風の男性にぶつかるなんてついていない。
どう見ても平民にしか見えない私は酷い罰を受けるかもしれません。
「んん?」
男性は私を凝視しています。
品定めかと思われましたが、どうも彼は肩に乗るマリィを見ている感じ。
一応はオオトカゲという魔物ということにしています。
羽は服を縫ったので、ずんぐりとしたトカゲに見えなくもないのですけれど。
「えっと、私はこれで……」
深々と礼をして立ち去ろうというとき、
「貴方はアナスタシア様ですね?」
彼は私の名を呼んだ。今はルイという冒険者である私の本名を。
眉根を寄せた私は思わず問いを投げています。
「貴方、誰?」
しかし、聞いた瞬間に私は気付いていました。
男性はラルクレイドで出会うはずもない人。そもそもこの時間帯にセントローゼス王国にいるはずもない人でした。
「リック!?」
迂闊にも私は声に出してしまう。
流石に驚いていたのは彼でした。
お忍びであったのか、彼は私の手を引いて、裏路地へと誘導していきます。
「どうして私の名前を? 貴方様はアナスタシア様ですよね? 肩に乗るトカゲは火竜でしょうし……」
どうやらリックはマリィに気が付いたみたい。
流石は皇太子殿下の右腕です。
リックは何を隠そう隣国であるサルバディール皇国の皇太子カルロ・サルバディールに仕える従者でした。
「ご内密にお願いいたしますわ。今の私は冒険者ルイを名乗っております。また貴方様を知っていた背景は語ると長くなりますが、簡単にいうと私の予知スキルによるものですわ」
リックは私の状況を理解したのか、頷いて答える。
この分だと私の捜索をしていたのではないのでしょう。
「ではルイ様、このような場所で何をしておられるのです?」
このあと私はとんでもない話を聞かされてしまう。
噂されているという驚愕の内容をリックは口にしていました。
「貴方様は亡くなったことになっております」
冒険者ギルドのランクはCランクとなりまして、現在は上級冒険者といわれるBランクを目指しているところです。
「時間がない。Bランクへの昇格条件って多すぎないかしら?」
既に十三歳となっています。前世ではコンラッドとの接触を始めている頃でしょうか。
Bランクへの条件すらままならないのですから、Aランクに上がるには何年かかるのか分かりません。
魔物の討伐は問題なかったのですけれど、Bランクへ上がるには街の清掃であったり、要人警護といった時間がかかる依頼を一定数こなさねば試験すら受けさせてもらえないのです。
「まいったな。もうあの時間軸には戻りたくないよ……」
愛する人に絶縁を突きつけたのです。
正直にあれが最後であって欲しい。もう二度と見たくないよ。ルークが咽び泣く姿なんて……。
嘆息しつつも、宿を出て冒険者ギルドへと向かう。
セーブポイントへ戻されないためにも、早くAランク冒険者になるだけなのだと。
細い路地を走り抜けて、大通りに差し掛かったとき、
「うおお!?」
私は通行人とぶつかってしまいました。
「すみません! 急いでいたもので!」
とりあえず平謝り。貴族風の男性にぶつかるなんてついていない。
どう見ても平民にしか見えない私は酷い罰を受けるかもしれません。
「んん?」
男性は私を凝視しています。
品定めかと思われましたが、どうも彼は肩に乗るマリィを見ている感じ。
一応はオオトカゲという魔物ということにしています。
羽は服を縫ったので、ずんぐりとしたトカゲに見えなくもないのですけれど。
「えっと、私はこれで……」
深々と礼をして立ち去ろうというとき、
「貴方はアナスタシア様ですね?」
彼は私の名を呼んだ。今はルイという冒険者である私の本名を。
眉根を寄せた私は思わず問いを投げています。
「貴方、誰?」
しかし、聞いた瞬間に私は気付いていました。
男性はラルクレイドで出会うはずもない人。そもそもこの時間帯にセントローゼス王国にいるはずもない人でした。
「リック!?」
迂闊にも私は声に出してしまう。
流石に驚いていたのは彼でした。
お忍びであったのか、彼は私の手を引いて、裏路地へと誘導していきます。
「どうして私の名前を? 貴方様はアナスタシア様ですよね? 肩に乗るトカゲは火竜でしょうし……」
どうやらリックはマリィに気が付いたみたい。
流石は皇太子殿下の右腕です。
リックは何を隠そう隣国であるサルバディール皇国の皇太子カルロ・サルバディールに仕える従者でした。
「ご内密にお願いいたしますわ。今の私は冒険者ルイを名乗っております。また貴方様を知っていた背景は語ると長くなりますが、簡単にいうと私の予知スキルによるものですわ」
リックは私の状況を理解したのか、頷いて答える。
この分だと私の捜索をしていたのではないのでしょう。
「ではルイ様、このような場所で何をしておられるのです?」
このあと私はとんでもない話を聞かされてしまう。
噂されているという驚愕の内容をリックは口にしていました。
「貴方様は亡くなったことになっております」
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