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第四章 歪んだ愛の形
乱入者
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「あの島は金鉱脈ですわ」
騒然とする謁見の間。私の話が事実であれば、即決できる内容に違いなかったのですから。
だけど、問題は事実かどうか。私が信頼できるかどうかです。
「もしも金が採掘できなければ、私を処刑してくださいな? 全て予知にて知った事実ですわ。何なら性奴隷としてもらっても結構ですけれど?」
これで折れなきゃサルバディール皇国は終わりね。
せっかく赴いたサルバディール皇国だけど、私を信用しないのなら貴方たちは滅びるだけよ。
「皇様、発言を失礼いたします! アナスタシア様の予知は信用できます。どうか彼女の話を真剣に議論してください!」
リックが声を張った。雲行きが怪しいのは彼にも分かったみたいね。
でも、私は別に頼み込む側じゃないの。悪役令嬢としてこの地に来ているのですから。
「皇様、私は急いでおりますの。信用するのかしないのかどちらです?」
「無礼だぞ、貴様ァァ!」
即座に側近が剣を抜いた。
いや、ホント滅びる未来は確定しているのかな。
サルバディール皇国はその名に反して議会制を採用している。重要な政策は議会を通過しないことには決められない仕組み。
最終決定権こそ皇様にありましたが、議会で認証された議事に皇様が反対することは困難であったりする。
「死にたくなければ、剣を納めてくださらない? 私、これでも強大な魔法を操りますの。このお城くらいは吹き飛ばせるほどに」
やはりサルバディール皇国は切り捨てよう。
私はもう決断していました。斬りかかられたのなら、反撃するだけ。正当防衛を主張するだけよ。
「やめろ! そこまでだ!」
ここで大きな声が謁見の間に轟く。
それはまるで想定していないことでした。
確かに現れてもおかしくはないのですけれど、得体の知れない火竜の聖女と皇太子が顔を合わせるなんて許可されないはずなのに。
「カルロ殿下……」
「ほう、俺を知っているのか? 火竜の聖女……」
割と攻撃的な口調は仕方ありません。
何しろ、私は皇様と対立し始めていたのですから。
「もちろんですわ。ソフィア姫殿下についても。あのお方はグレン大臣でありますし、私に剣を向けた無礼な男はドナテロ准男爵……」
再び、ざわめく謁見の間。しかし、雑音を掻き消すような甲高い笑い声が響き渡ります。
「ふはは! 父上、気が強い聖女様をあまり怒らせるものではないですよ? ドナテロは任官されて間もない。それどころか授爵されたのは三日前じゃないですか?」
ああ、そうだったのね。
ゲームでも殆ど出て来なかったから、私は准男爵であるとしか知らない。それにしても三日前に授爵とかタイムリーすぎるね。
「俺は金鉱脈を手に入れるべきだと考えます。もしも金鉱脈がなければ、彼女は処刑しても構わないと言っているのに、どうして疑うのです?」
流石は攻略対象だわ。一発で全員を黙らせてしまった。
「カルロ殿下、失礼ながら申し上げます。帝国と揉めるのは良くありません。負け戦を始めたいのであれば仕方ありませんけれど……」
「おい貴様、また!?」
再び脳筋准男爵が声を上げますが、気にしない。
私は迎える未来を口にしているだけなのです。このままではサルバディール皇国は滅びるだけなのだと。
「それも予知か?」
やはりカルロは信頼できそう。
無礼な物言いだけでなく、内容も屈辱的な話であったというのに、彼には私の話を聞く余裕がある。
「現状から最も可能性の高い未来ですわ……」
私は全てを伝えている。戦争を始めた両国の行く末。最終的な勝利者が誰であるのかを。
ざわめきが収まりませんでしたが、カルロは頷いています。
今の話を理解できるとすれば彼だけだ。戦争を始めてしまう重鎮たちには分からないことでしょう。
さてさて、迎える結末を聞いた皇太子殿下はどんな反応を見せてくれるのでしょうかね。
騒然とする謁見の間。私の話が事実であれば、即決できる内容に違いなかったのですから。
だけど、問題は事実かどうか。私が信頼できるかどうかです。
「もしも金が採掘できなければ、私を処刑してくださいな? 全て予知にて知った事実ですわ。何なら性奴隷としてもらっても結構ですけれど?」
これで折れなきゃサルバディール皇国は終わりね。
せっかく赴いたサルバディール皇国だけど、私を信用しないのなら貴方たちは滅びるだけよ。
「皇様、発言を失礼いたします! アナスタシア様の予知は信用できます。どうか彼女の話を真剣に議論してください!」
リックが声を張った。雲行きが怪しいのは彼にも分かったみたいね。
でも、私は別に頼み込む側じゃないの。悪役令嬢としてこの地に来ているのですから。
「皇様、私は急いでおりますの。信用するのかしないのかどちらです?」
「無礼だぞ、貴様ァァ!」
即座に側近が剣を抜いた。
いや、ホント滅びる未来は確定しているのかな。
サルバディール皇国はその名に反して議会制を採用している。重要な政策は議会を通過しないことには決められない仕組み。
最終決定権こそ皇様にありましたが、議会で認証された議事に皇様が反対することは困難であったりする。
「死にたくなければ、剣を納めてくださらない? 私、これでも強大な魔法を操りますの。このお城くらいは吹き飛ばせるほどに」
やはりサルバディール皇国は切り捨てよう。
私はもう決断していました。斬りかかられたのなら、反撃するだけ。正当防衛を主張するだけよ。
「やめろ! そこまでだ!」
ここで大きな声が謁見の間に轟く。
それはまるで想定していないことでした。
確かに現れてもおかしくはないのですけれど、得体の知れない火竜の聖女と皇太子が顔を合わせるなんて許可されないはずなのに。
「カルロ殿下……」
「ほう、俺を知っているのか? 火竜の聖女……」
割と攻撃的な口調は仕方ありません。
何しろ、私は皇様と対立し始めていたのですから。
「もちろんですわ。ソフィア姫殿下についても。あのお方はグレン大臣でありますし、私に剣を向けた無礼な男はドナテロ准男爵……」
再び、ざわめく謁見の間。しかし、雑音を掻き消すような甲高い笑い声が響き渡ります。
「ふはは! 父上、気が強い聖女様をあまり怒らせるものではないですよ? ドナテロは任官されて間もない。それどころか授爵されたのは三日前じゃないですか?」
ああ、そうだったのね。
ゲームでも殆ど出て来なかったから、私は准男爵であるとしか知らない。それにしても三日前に授爵とかタイムリーすぎるね。
「俺は金鉱脈を手に入れるべきだと考えます。もしも金鉱脈がなければ、彼女は処刑しても構わないと言っているのに、どうして疑うのです?」
流石は攻略対象だわ。一発で全員を黙らせてしまった。
「カルロ殿下、失礼ながら申し上げます。帝国と揉めるのは良くありません。負け戦を始めたいのであれば仕方ありませんけれど……」
「おい貴様、また!?」
再び脳筋准男爵が声を上げますが、気にしない。
私は迎える未来を口にしているだけなのです。このままではサルバディール皇国は滅びるだけなのだと。
「それも予知か?」
やはりカルロは信頼できそう。
無礼な物言いだけでなく、内容も屈辱的な話であったというのに、彼には私の話を聞く余裕がある。
「現状から最も可能性の高い未来ですわ……」
私は全てを伝えている。戦争を始めた両国の行く末。最終的な勝利者が誰であるのかを。
ざわめきが収まりませんでしたが、カルロは頷いています。
今の話を理解できるとすれば彼だけだ。戦争を始めてしまう重鎮たちには分からないことでしょう。
さてさて、迎える結末を聞いた皇太子殿下はどんな反応を見せてくれるのでしょうかね。
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