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第五章 心の在りか

告白

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 コンラッドと契約を終え、私は美味しかった串焼きを再び購入。宿の部屋で食べようと戻って来ました。

 すると宿の入り口に大きなフード付きマントを被った男性が立っています。

 気にせず通り過ぎようとするも、私は声をかけられていました。

「部屋に入ってもいいか?」

 私は立ち止まる。私のことを知る者は少ない。

 加えて聞き覚えのある声に私は頷いて返しています。

(考えていたより早いな……)

 皇国の貴族を殺めた私を受け入れるのは苦労すると考えていたというのに。

「どうぞ、不審者様……」

 目を合わせず、手招きをします。

 怪しい男はカルロ皇太子殿下に他なりません。この宿を取ってくれた方であり、一応は私を信用してくれているはずです。

 部屋に入るや、カルロ皇子はフードを外しました。

「満喫しているようじゃないか?」

「串焼き食べます? 美味しいですよ」

 皇子殿下を気にすることなく、私はマリィと串焼きをシェアしています。

 何の肉なのか分かりませんが、とにかく柔らかくて味付けも好みです。

「君は本当に貴族の令嬢なのか?」

 串焼きにかぶりつく私を無作法に感じたのでしょうかね。軽蔑の視線のようにも見えました。

「いらないのならあげません……」

「ああいや、食うよ。せっかくの機会だからな」

 皇子殿下が街の露店で買い食いなどできるはずもないよね。

 でも、それは高級品なのよ。露店では端銭単位が基本だけど、それは銅貨一枚もするんだから。

「美味いな!」

「でしょ? かぶりつくのが平民の礼儀。ナイフとフォークじゃ味わえませんよ」

 このあと二人して無言で食べ続けました。熱々の内に食べなきゃ美味しさが半減してしまいますし。

 一息ついたあと、私はカルロに話しかけます。

「殿下にも理解できないことがあるのですよ。知ろうとしなければ分からないことが……」

 よそ者の私が美味しい串焼きを知っていた。

 それは、この地を治めるカルロには分からなかったことです。

「予知のことか?」

 変装してまで宿に現れたカルロが皇様や議会の承認を得られたとは思えない。

 吉報を届けに来たのではなく、秘密裏に会いに来たのだと考えられます。

「あそこまで口にして信じてもらえないのです。全てを語ったとして斜めに構えられては届きませんよ……」

 私としては既にコンラッドを雇った。だから最低限のことはできたと思う。

 ただサルバディール皇国の協力を取り付けるのは難しいとも考えます。

「まだ何か隠しているんだろ? 教えてくれ。俺は父上たちを説得したいんだ……」

 どうやら失敗したからこそ現れたみたいね。でも、准男爵を殺めた私を庇護するなんて無理な話よ。

「絶対に理解できませんよ?」

 少しばかり逡巡するけれど、二人きりだし話しても良いかなと思える。

 千年以上に亘り、誰にも話したことのない世界の事実を。

 頷くカルロを見るや、私は語り始めます。この身を地獄に引きずり込んだ忌々しい話の顛末を……。

「私は転生者なのです――」
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