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第七章 光が射す方角

ルイ・ローズマリーの未来は……

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 キャサリン・デンバーの誕生パーティーイベントを終えた私は安穏とした毎日を過ごしていました。

 リセットの原因となるイセリナは側にいるのだし、エリカの動向も分かっています。

 このまま何となく最後まで上手く完結しないだろうかと密かに考えていました。


 今日も今日とて、私はスラム街での清掃を終えています。本日は治癒院での仕事があったというのに、どうしてかエリカが姿を見せていました。

「ルイ様、王城で雇ってもらえることになったのです!」

 満面の笑みを浮かべてエリカが言いました。

 どうやら、報告に来たみたいね。

(そういえば、もう十五歳になるのか……)

 エリカが王城での仕事を得るシーンはゲームのプロローグ部分です。

 まあでも、私は咎めるつもりなどありません。こんなにも喜んでいるエリカに水を差すような真似はできませんでした。

 ただ王子殿下の二人とは仲良くしないで欲しいな。無駄な望みであることは分かっているけれど、願うくらいはさせて欲しい。

「良かったじゃない? これで貧乏とはおさらばできるわね」

「ルイ様のおかげです。色々な魔法を教えていただきましたし。シャルロット殿下にも魔力操作から魔法の発動までしっかり教えたいと思います」

 私のおかげではないね。少なくとも本来は自力で勝ち取る地位だもの。

 どのような世界線であったとしても、貴方は授爵をして王家勤めとなるはずよ。


 本日の清掃作業を終えた私はエリカと別れて、屋敷へと戻る。

 心穏やかな毎日。私は何気なく生きているだけですが、心配もしていました。

 なぜなら、現状のセーブポイントは間違いなくカルロにキスされる場面。もしも今、何か起きたとすれば、十三歳まで巻き戻ってしまう。

 再びスラム街の清掃から始めなくてはならず、キャサリン・デンバーの誕生パーティーにも挑む必要があるからです。

(ぶっきらぼうなあの皇子殿下は私に何もしてこないし……)

 私を所有物扱いしているというのに、キスしたあとは手を握ることすらありませんでした。

 せめて抱き寄せて熱いキスくらいしてくれたなら、きっとアマンダは嬉々としてセーブするはずなのに。

「只今、戻りました」

 私が屋敷に戻ると、マリィが飛んできました。

 もう火竜の聖女であることは知られているので、屋敷の中だけは自由に飛びまわれるようになっています。

「ルイ、早かったのね?」

「ええ、今日は炊き出しじゃないし。あ、そうそう、エリカが授爵するのよ」

 出迎えてくれたイセリナに私はエリカの話をしています。

 彼女が授爵すること。王家勤めとなることについて。

「シャルロット殿下の教育係はスラムから選ばれたの?」

「エリカは光属性の持ち主だからね。勉強も熱心だし、魔法の扱いも秀でてる。王家としては私みたいに国外へ逃げられたくないのよ」

 残念ながらエリカの努力が認められたのではなく、根底にあるのは光属性です。

 水属性や風属性の治癒魔法とは一線を画する神聖魔法の使い手は、やはり貴重な人材に他なりません。

「ルイも手を挙げたらよろしいのに?」

「王家には関わらない。それは決めているの」

「でも、貴族院には入るのでしょ?」

 以前にも話した記憶があるような気もしますが、イセリナは私が貴族院に入らないことを知らないみたい。

 来年にはカルロの妹であるソフィア姫殿下もルナレイクに住むことですし、着々と計画は進行中なのよ。

「貴族院には入らないわ……」

 私はもうスカーレット子爵家の長女ではなく、サルバディール皇国のルイ・ローズマリー枢機卿なのよ。

 受験しなければ入学できないし、入るつもりもない。

「どうして? ワタクシは貴族の務めとして入りますわよ? ルイが一緒なら心強いのですけれど」

「そりゃそうだけど、私は異国の人間。優先的に入る資格はないのよ」

 理由を口にしたけれど、どうしてかイセリナは首を振った。

「ならば受験しなさい。ワタクシはルイとオリビアの三人で過ごしたいわ」

 なんて我が侭なんでしょう。私の気も知らないで、受験しろだなんて。

「私は受験しません。絶対に」

「費用ならワタクシが払うわ。絶対に合格しなさい!」

 何とまあ強引なことで。

 しかし、私は受験する気はありませんし、イセリナの頼みごとでも断るつもりよ。

 ところが、面倒な人が現れてしまいます。

 その人物は私の都合など考えずに、意見を押し付けるだけでした。

「ルイは受験しろ……」
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