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第七章 光が射す方角
過去の愛に縋る
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「前世はイセリナ・イグニス・ランカスタでした……」
流石にセシルは息を呑んでいます。
私の愛は想像よりも、ずっと奥深い。心の奥底にまで根を張っているのです。
「イセリナだった前世はルークと結ばれました。私は生涯に亘って愛されていたのです。でも、その世界線でも魔王因子が発現してしまう。セシル殿下、貴方様のひ孫が魔王を産んでしまったのです」
誰も悪くない。
全員が愛を求めた結果なのです。強いて言えば攻略に勤しんだ私だけが悪者だったはず。
「だから、やり直しを命じられました。プロメティア世界の時間は再び巻き戻され、私はアナスタシア・スカーレットとして生まれ変わったのです」
「いや、どうしてアナスタシア様になったのです? 僕のお相手をどうこうすれば済む話じゃないのですか?」
セシルの問いには首を振る。
もう隠すつもりもありません。私の本心を知ってもらうには洗いざらい告げるしかないのですから。
「それじゃあ駄目。何しろ、ルークも魔王因子を発現させる可能性が高いのです。しかし、イセリナと結ばれた彼は魔王因子を発現させない。それが分かったからこそ、私は別人として生まれ変わりました。魔王因子を発現させる第三王子殿下を何とかするために」
もうセシルにも分かったかもしれません。
先に伝えた話ですもの。ルークの相手はイセリナで決まっていたのだと。
「ルーク兄様とイセリナ様の結婚は生まれるよりも前に決まっていたのですか?」
「そうなります。私の人生経験がイセリナには残っている。だから、自然と婚約という形に落ち着いたのだと思います」
恐らくは正解だと考えられる。
私のクリアデータを二人共が反映されているんだもの。急に惹かれ合ったとして、何も間違っちゃいないわ。
「それでは女神様が決めた僕の相手とは……」
もう確定したと思えていたことでしょう。
何しろイセリナがルークと婚約してくれたのなら、使徒である私はもう一方の攻略が可能となるのだから。
「私です――――」
誤魔化すつもりはない。
私は堂々と口にする。拒否しようとしている話は実をいうと女神アマンダが決めた相手であるのだと。
「ルイ様は……使徒なのでしょう?」
信じられないでしょうが、私は使徒でありセシルの攻略を仰せつかっています。
けれど、私はそれ以外のルートを選んだ。傍観者という逃げの一手を。
「私自身はセシル殿下と婚約するつもりがないのです。自分の気持ちを偽れない。だからこそ、私は卑怯にも逃げまくっているのですよ。真実の愛を求めることなく……」
セシルだけでなく、カルロもまた首を振っている。
使命の重さについて同情したのか、或いは女神の意向を無視しているからか。
「実をいうとイセリナ・イグニス・ランカスタであった時代は千年以上も繰り返していました。あの頃の指示はルークと結婚するだけで良かったのです。使命は楽だったけど、毒殺や刺殺、冤罪での追放や断罪までイセリナの敵は多かったわ。その都度、私は死に戻って同じ時間をやり直しています。だから予知と言えるほど未来を知っているの。あらゆる世界線を経験していたから……」
何を口走っているのか、自分でも分からない。
でも、私は余計な事を口にする意志を止められませんでした。
「ようやくルークに見初められたのよ。それでも死に戻りはあった。でもね、私は幸せだったの。ルークに愛されていたから……」
こんな今も思い出す。
鬱陶しいほどに纏わり付いてくるルークの姿。面倒にも感じていた時間は現在から考えると至福のときでした。
愛する人に愛されるだけ。そんな些細な時間は私の中で輝いていたのです。
だから私は感情をさらけ出す。
できることなら、セシルが引いてくれはしないかと。
「あの愛こそが私の全てよ――」
流石にセシルは息を呑んでいます。
私の愛は想像よりも、ずっと奥深い。心の奥底にまで根を張っているのです。
「イセリナだった前世はルークと結ばれました。私は生涯に亘って愛されていたのです。でも、その世界線でも魔王因子が発現してしまう。セシル殿下、貴方様のひ孫が魔王を産んでしまったのです」
誰も悪くない。
全員が愛を求めた結果なのです。強いて言えば攻略に勤しんだ私だけが悪者だったはず。
「だから、やり直しを命じられました。プロメティア世界の時間は再び巻き戻され、私はアナスタシア・スカーレットとして生まれ変わったのです」
「いや、どうしてアナスタシア様になったのです? 僕のお相手をどうこうすれば済む話じゃないのですか?」
セシルの問いには首を振る。
もう隠すつもりもありません。私の本心を知ってもらうには洗いざらい告げるしかないのですから。
「それじゃあ駄目。何しろ、ルークも魔王因子を発現させる可能性が高いのです。しかし、イセリナと結ばれた彼は魔王因子を発現させない。それが分かったからこそ、私は別人として生まれ変わりました。魔王因子を発現させる第三王子殿下を何とかするために」
もうセシルにも分かったかもしれません。
先に伝えた話ですもの。ルークの相手はイセリナで決まっていたのだと。
「ルーク兄様とイセリナ様の結婚は生まれるよりも前に決まっていたのですか?」
「そうなります。私の人生経験がイセリナには残っている。だから、自然と婚約という形に落ち着いたのだと思います」
恐らくは正解だと考えられる。
私のクリアデータを二人共が反映されているんだもの。急に惹かれ合ったとして、何も間違っちゃいないわ。
「それでは女神様が決めた僕の相手とは……」
もう確定したと思えていたことでしょう。
何しろイセリナがルークと婚約してくれたのなら、使徒である私はもう一方の攻略が可能となるのだから。
「私です――――」
誤魔化すつもりはない。
私は堂々と口にする。拒否しようとしている話は実をいうと女神アマンダが決めた相手であるのだと。
「ルイ様は……使徒なのでしょう?」
信じられないでしょうが、私は使徒でありセシルの攻略を仰せつかっています。
けれど、私はそれ以外のルートを選んだ。傍観者という逃げの一手を。
「私自身はセシル殿下と婚約するつもりがないのです。自分の気持ちを偽れない。だからこそ、私は卑怯にも逃げまくっているのですよ。真実の愛を求めることなく……」
セシルだけでなく、カルロもまた首を振っている。
使命の重さについて同情したのか、或いは女神の意向を無視しているからか。
「実をいうとイセリナ・イグニス・ランカスタであった時代は千年以上も繰り返していました。あの頃の指示はルークと結婚するだけで良かったのです。使命は楽だったけど、毒殺や刺殺、冤罪での追放や断罪までイセリナの敵は多かったわ。その都度、私は死に戻って同じ時間をやり直しています。だから予知と言えるほど未来を知っているの。あらゆる世界線を経験していたから……」
何を口走っているのか、自分でも分からない。
でも、私は余計な事を口にする意志を止められませんでした。
「ようやくルークに見初められたのよ。それでも死に戻りはあった。でもね、私は幸せだったの。ルークに愛されていたから……」
こんな今も思い出す。
鬱陶しいほどに纏わり付いてくるルークの姿。面倒にも感じていた時間は現在から考えると至福のときでした。
愛する人に愛されるだけ。そんな些細な時間は私の中で輝いていたのです。
だから私は感情をさらけ出す。
できることなら、セシルが引いてくれはしないかと。
「あの愛こそが私の全てよ――」
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