青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

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最終章 世界に光を

光の聖女と

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 アマンダへの祈り済ませ、私は一人大聖堂をあとにしていました。

 大扉を潜った瞬間、

「アナスタシア様!」

 私はまたも声をかけられています。しかしながら、それはよく知った声です。

 親友の一人に違いありません。

「エリカ、貴方、王城での仕事は?」

 現れたのはエリカでした。

 昼間はシャルロットの勉強に付き合っているはずなのに。

「今日は議事会があるのでお休みになりました。シャルロット殿下も気が気でないとのことで……」

 ああ、そういうこと。

 確かに王子殿下二人の婚約について審議するのだから、妹としては勉強に集中できないのかもね。

「それでアナスタシア様、おめでとうございます!」

 屈託のない笑みが向けられています。

 まあ知っているよね。シャルロットとも話をするだろうし。

「ありがとう。でもさ、私はまだ貴方の夢を叶えたいと思ってる……」

 ずっと考えてきたことだ。清浄なる光エリカ・ローズマリーの幸せについて。

 人知れず世界を光で満たしてきた彼女は幸福を得るべきだと。

「え? どういうことでしょうか?」

「いや、大した男じゃないのだけど、貴方をお姫様にできる人を紹介したいと思ってね」

「えええ!? しょ、紹介ですか!?」

 前世ではセシルと婚約したエリカ。私が転生する以前なら、ルークと婚約していたのよ。

 家格は完全に落ちるのだけど、貴方が良ければお姫様になって欲しいの。

「そうよ。北の大地の城主様。割といい男よ?」

「いや、北の大地ってアナスタシア様が領主になられるのでしょう!?」

「そうだけど、私はいずれ王家に嫁ぐからね。領主はその折りに代替わりするの」

 目を丸くするエリカはまるで理解していないみたい。

 代替わりといっても、公になっていない話しだし無理もないかな。

「どなたなのでしょうか……?」

 何だか怖がっているみたいだけど、安心して良いわ。

 選択権はエリカにあるのだし。

「私の息子よ!」

 ドヤ顔をして。

 何だか面白いね。十七歳にして子供がいるなんてさ。

「アナスタシア様の息子!? いつお産みになられたのでしょう!?」

「いやいや、産んでないって。実は養子を迎えたのよ。六歳年上だけど、元貴族だし育ちは悪くないわ。口は悪いけどね……」

 あの男に恋心なんてあるのか不明だけど、私に提示できるのはリックしかいません。

 お姫様になりたいというエリカの夢を叶えてあげるには……。

「はぁ、私などで構わないのでしょうか?」

「全然問題ないわ。寧ろ、リックには勿体ないくらい。とりあえず、会って話をしてから考えてくれないかしら?」

 エリカは遠い親戚でもあるのだし、家族になれるのなら私も嬉しい。

 二人が上手く行けば万々歳ってとこね。

「教会には私が話をつけておくから。近いうちに北へ行きましょ」

 もうエリカの背中を押しても構わない。何しろ黒竜は討伐されたのですから。

「そいや、エリカ。あの痣は消えてなくなったんじゃない?」

 一応は確認しておきましょうか。

 アマンダの様子から分かりきっていたけれど。

「あ、そうなんです! 急になくなっていました!」

「そかそか。乙女の肌に痣があるなんて無粋なことだものね?」

 ニシシと笑う私にエリカは頬を膨らませる。

 やっぱ私は救世主かもしれない。光の聖女にあった呪印まで取り除いてしまったのだから。

「合同結婚式とか面白いわねぇ……」

「からかわないでください! まだ私が気に入ってもらえるかどうか……」

 この分だとエリカも乗り気みたいね。

 きっと愛を見つけられると思う。貴方の献身と容姿があれば、攻略対象じゃなくてもノックアウトできるはずよ。

「楽しみになってきたわ! また連絡するから。よろしくね?」

「あ、はい! 私こそよろしくお願い致します!」

 エリカを気に入らない男性なんて存在しないわ。

 どうせ滅茶苦茶になった世界線だし、最後まで私は世界線を動かし続けよう。

 私の親友たち全員が、笑顔でいられるように……。
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