無自覚なふたりの厄介ごと

散りぬるを

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第一話

踏み越えた先にあるもの(3)*

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 ベッドの上、カルロの両脚の間に、ヴェルナは床に脚を下ろした状態で座っていた。
 
(もう一生、酒なんて飲まない……)

 ヴェルナは憂鬱な面持ちで天井を仰いだ。

「触るぞ」

 落とした視線の先、大きな手がヴェルナの両胸をやんわりと包んだ。胸の張りを確かめるように撫でて、太い指がゆっくりと膨らみに沈んでいく。その動き一つ一つを、ヴェルナは息を止めて見つめていた。

「すげー……本物だ……」
 
 掬うように持ち上げ、体の中心に向かって引き寄せては離す。

「痛くないか?」
 
 静かで、それでいて響くような低い声が耳朶じだに触れる。
 ビクッと肩を震わせるヴェルナに、カルロは「わりぃ」と吐息混じりに言った。
 痛いと勘違いさせたのか、胸を揉む手つきが、いっそう優しいものになる。
 ヴェルナは息が苦しくなって、はぁと深い呼吸をした。それがまたカルロを勘違いさせ、胸への愛撫が止まらなかった。

「下、なにも着けてねーのか」
「あっ、たり前だろ……日中は男なんだから」

 胸の先端を指の腹でいじられた瞬間、声が跳ねてしまった。ごまかすように言葉を返したが、バレていないだろうか。

(やっぱりダメだ、こんなこと。恥ずかしすぎるっ)

 ヴェルナは慌ててカルロの手を掴んで、胸から引き剥がそうとした。
 
「これで分かっただろ。もうおしまいに」
「まだ、もう少し」
「調子に乗るな! ちょ、そこはっ」

 胸の先を押し込まれて、グリグリと円を描くようにこねられる。

「やっ、んんっ……」
「感じるのか?」
「やめろっ、変態!」
「ここ、立ってきた。布越しでもすぐ見つけられるくらい、コリコリしてる」

 ツンと尖って主張する先端を、カリカリと爪を立てて引っ掻かれる。
 なんとも言えない鈍い快楽がじんわりと広がり、ヴェルナは唇を噛んで身をよじった。

「ヴェルナ」

 胸の先をぎゅうっと摘まれると同時に囁かれ、ヴェルナは切なげに表情を歪めた。
 快感とは言い難い刺激にも関わらず、秘部がひくつきはじめた。下腹部の奥がキュンキュンと疼くのを感じる。

「だったか? 本当の名前」
「あ、ああっ」
「ヴェルナ……ふっ、あんまり呼び過ぎると、明日呼び間違えそうだな」
「もうやめ――」
「まだだ。下の方を確認しないと」
「付いてないって! カルロ!」

 カルロは片腕でヴェルナを拘束すると、無遠慮にヴェルナの腰ベルトを外して、緩んだズボンの中に手を突っ込んだ。大きな手は簡単に股を覆って、意地悪をするようにまさぐってくる。

「確かに無いな」
「離せ! 帰る!」
「待てって。まだ終わってない」
「終わらせろ! 強制的に終わらせろ! ひっ」

 下着の脇から指が侵入し、直接秘部に触れようとしてくる。身体の大きさと合っていない男物の下着は、難なく侵入を許してしまう。

「触ったら殺す! 絶対殺す!」

 ヴェルナは両手、両脚を懸命に動かして抗った。
 だが、そんな抵抗も虚しく、ゴツゴツと男らしい指が割れ目をそっと撫でた。
 カルロが、ふっと笑う。

「胸だけで濡れるって、お前そうとう溜まってるんだな」

 カッと火が出そうなほど顔が熱くなる。
 逃げようと前のめりになれば、腰を押さえつけられ、太い指が秘部に食い込んだ。身動きをすれば余計に指が奥へ奥へと入っていく。

「お前、一人でするとき、どっちの姿でやるんだ?」
「なに言って」
「男のアレをしごくのと、ココをこするの、どっちの方が気持ち良いんだ?」
「っ! そこはダメ!」

 硬く勃ち上がった肉芽を優しくこすられる。愛液で濡れた指が、肉芽をあっという間に潤していく。

「ダメってことは、いつもはこっちをいじってるのか」
「ちっ、ちが――」
「違わないだろ。さっきよりも濡れて、ぐっちゃぐちゃだ。普段から触ってないと、こうはならないだろ」
「んんっ、んあっ」

 ヴェルナは手で口を押さえた。声を抑えたいのに、次から次へと与えられる刺激に我慢ができなくなる。
 悔しい。自分で触る時よりもずっと気持ちが良い。
 カルロは片方の手でヴェルナの胸を揉み、もう片方の手で肉芽を執拗にこねまわした。
 ヴェルナは嫌々と頭を振る。
 
「むりっ、もうっ――」
「我慢すんな。そのまま、イけよ」
「く……っ!」

 ヴェルナはカルロの両腕を掴んで、ビクンッと背中をけ反らせた。
 突き抜けるような快楽に腰がガクガクと震え、なかが刺激を欲しがるようにうねった。
 快感が去った瞬間、ハッと息を吸う。乾いた空気が喉を通り抜け、ヴェルナはケホケホと咳き込んだ。

「大丈夫か?」

 カルロの腕の中でぐったりとするヴェルナ。

(やばい……眠く、なってきた……)

 どっと疲れが押し寄せ、まぶたが重くなる。酔い潰れて眠っていたところを起こされたのだ。眠気が残っていて当たり前だった。しかし、ここで寝るわけにはいかない。何をされるか、分かったものじゃない。
 ヴェルナは眠気をごまかすように、カルロを仰いで睨んだ。

「はぁ、はぁ、これで気が済んだ?」
「あー、まぁ、いや、うん……」

 カルロは、気まずそうに目を逸らした。
 待て、嫌な予感がする。

「……勃った」
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