神官様は今日も協会の子達のために奮闘する。

なかたか

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神官様の日常の様なもの。

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 ある雪が降っている季節だった。街の辺境にある教会の中。

「神官様~、お腹がすいたよ~」

 まだ年端もゆかない七歳くらいの少女が、キッチンで料理をしている神官に抱きつきながら言った。

「はいはい、待ってね。もう少しでシチューが出来るから」

 神官と呼ばれる男の名は嵩牟礼 竜(たかむれ りゅう)
 竜はそんな少女の頭をポンポンと撫でた。

「ん~、わたし、神官様にあたまをなでてもらうの大好き~」
 
 にっこりと少女は神官を見上げながら言った。神官はその少女の姿にほほえましく思ったのだろう。神官の表情がゆるまった。

「ノエは可愛いいな~」
  
 そうやって竜が惚けている時、物影でそれをうらめしそうに見ている一つの人影があった。
 竜はそれに気づき、目をそこへとやる。
 そこには、すごい目力で見てくる少女がいたので竜はぎょっとした。

「......ど、どうしたんだノアそんな所で?」

「ノエばっかりずるいです! 私にもポンポンしてください!」
 
 その少女───ノアは物影からでて竜に詰め寄りながら言った。

「いや、ノアはもうポンポンするって年じゃないだろ」

「むー......はっ、そうでした! 神官様にポンポンされる年じゃなくてパンパンされる年でしたね。キャッ、神官様ってばエッチぃですね」

 ノアは修道女の黒服をひらめかせ頬を染めながら言った。

「おいまて。いったいどこでそんな知識を覚えてきたんだ?」

 竜はノエを片手に言った。
 
「地下の書庫にいっぱいそういうのがあったので、神官様と私とのこれからのために知識を詰めました」

「うん。地下の書庫は今日から出入り禁止だな。教育上によくない」

「えぇ! そんなぁ! 困ります! それじゃあ、もう勉強出来ないじゃないですか!?」

「お前は保健の勉強ではなく、数学の勉強をしろ!!」

「保健ってなんですか?」

 ノアは竜の言葉に小首をかしげた。

「お前とぼけるつもり.....あぁ、そうだな。ここでは無かった言葉だったな」

 いきなりだが、嵩牟礼 竜は転生者である。
 生まれ変わる前の記憶...もとい前世の記憶がある。だからこんな差異はことごとく経験してきていたので、すぐに順応した。

「つまり、性の勉強ってことだ」

 ああ、とノアは竜の言葉に理解をした。

「神官様~、性のお勉強ってななに? わたしはいつするの~? お勉強だいすきだからわたしいつでもいいよ!」

 竜に抱きついているノエが純粋無垢な眼差しで竜に向かっていった。
 嬉々としているノエの表情を見て、これではダメだと竜は思ったのだろう。
 すこし顔をしかめた。
 そして、それはまだノアには早いよと竜が喉の先まで出ていた瞬間、それを遮ってノアが言った。

「ま、まさか...! 神官様にロリコン属性があったなんて.....! 何歳までなら許容範囲なんですか!? 教えて下さい! 私、神官様の為なら頑張ってその年になる薬を作って神官様のお好きな姿になります!!」

「い、いや..ノア? 俺はロリコンじゃないぞ? そりゃあ、小さい子は好きだけども。てか、よくロリコンなんて言葉知ってたな」

「え? 本に書いてましたよ?」

(いったいどんな本なんだよ.....‼)

 竜は心のなかで衝撃を受けた。

「神官様~ロリコンってなに~?」

 なおも好奇心旺盛なノエは竜に問いかける。竜はこれはアカンと「ノエは知らなくて、いや知る必要の無い言葉だから意味なんて分からなくていいんだよ?」と優しく言った。

「んー、やだやだ。知りたい!」

「ノエ、ロリコンってのはねローリング・コンテストの略で、その名の通り、一体どれだけ凄い回転を見せれるかっていう競技なのよ」

 まことに真剣な顔でノアはノエに人差し指を立てながら言った。ノエは「本当なの!? 私コンテストに出たい!!」なんて言ってしまう始末。
 
「おいまてこら。なに無垢な子にそんな嘘教えてんだ。子供ってのはスポンジみたいなもんだから新しい事はほいほい何でも覚えるからな!?」

「えー、だってだって、ライバルは減らしたいですしー」

(ライバルて・・・・・・・いったいこいつはどこからどこまでかが敵だってのがほんとでたらめだな・・・・・・・)

 おいおいと言ったような表情に竜はなった。

「ノア、安心しろ。俺はノエに手を出すほど飢えてはないから」

「うっそだぁ。だって神官様昨日の夜皆が寝静まった頃に誰も居ない部屋に行ってなにやらごそごそしてたッ、む~~~!!」

 竜は目にも止まらぬ速さでノアの口を無理矢理ふさいだ。

「~~っぷはっ! いきなりなにするんですか!?」

「いきなり何言ってやがんだ!? たくっ、お前は子供なんだからそこまで執拗に下ネタを言うもんじゃないぞ」

「子供子供って、神官様はいつだってそう。私を子供って言って軽くあしらう。あの夜の事は遊びだったんですね。悲しいです。
 それに神官様とも二歳しか離れて無いじゃないですか!?」

「夜の事はまるで見に覚えはないが・・・はぁ、まあいい。それにこの国では十六歳は大人で十四才のお前は子供と決まってるんだよ」

「何故ですか!?」

「な、何故ですかって・・・・うーん、え? あ、そうだよ決まりは決まりだからだ」

「そんなの誰が決めたんですか!?」

「え、えぇ? お、王様じゃないの? ここ王国だし」

「じゃあ今から王様に十四才から大人だという法律を作ってくれって頼んできますね!!」

「ばか!! 王様が迷惑だろうが!」

「王様の諸事情なんて知りません! 必要なのは私と神官様の輝かしい未来の事だけです」

「・・・・・はぁー、たくお前は、どうしようもない奴だな」

「え? お前はなんて可愛いいやつだなですって。 もう、神官様ったら大胆何ですから!」

 バシバシと竜を叩きながらノアは片手を頬につけながら言った。

「俺は今、お前の耳の構造が気になって仕方がないよ」

 呆れ半ば飽きれの感情で竜は言った。
─────全く、俺は育て方を間違えた。
 と後悔するのもとうに遅く、教育に失敗した残念なそれはここには居た。
─────嫌という感情はない。反対に嬉しいという感情があるのは必然的で、だって、自分が好かれているのに、それを嫌うってのは中々出来ない事だ。まぁこれは個人的な意見であるので他の人には当てはまらないかも知れないが。
 と、竜はその残念極まりない少女、だが憎めない少女をちらっと見た。
 すると、何故か驚愕しているのである。
 それも後ずさりながら。

「ま、まさか神官様が私の耳の構造なんてマニアックな部分まで興味を持たれるなんて・・・・ッ」

「え? おい、ノア?」

 と、竜は心配そうに少しノアに駆け寄る。次の瞬間、ノアの表情は至福を味わったような恍惚な表情になりながら、竜の手をがっと取った。

「い!?」

 いきなりの行為で竜は驚く。だが、これだけで驚くなかれ、なんとノアはその次に竜の唇を奪ったのだ。
 数秒、数秒ではあったが、完全にこの場の時間が止まった。
 竜の頭の中はもう真っ白である。なにも考える事は出来ないし、動く事も出来ない。
 そして、ノアは竜の唇から離れ、     

「さぁ、神官様結婚しましょう!!」

 ノアの放った言葉の大きさで竜の正気は戻させられた。

「・・・・・・お、お前、いきなりなにしてんだよ!?」

 竜の表情は赤面そのもの。耳まで真っ赤になっていた。意外にも、いや、予想通り、予定通り、想定通り竜はうぶでピュア・・・・とまでは言わないが結構なシャイボーイだった。
 しかし、これが竜のはじめてであったし、生まれてこの方、合わせ、前世の記憶をたどってもキスをした事のない竜には妥当な反応だろう。

「フフッ、神官様ったら顔を真っ赤にして可愛いですね♪」

 満足と言いたげな顔でしゃあしゃあとロアは言った。当然彼女も初めてのキっスである。

「神官様~私にも~」

 シチュー近くにいたノエが恥じらいもなくそんなことを竜に言ってきた。

「いけませんっ!!」

 なおも顔を真っ赤にしながら竜は目をつぶり、恥ながら豪語した。
 






 



 ───夕飯も無事に済み、あとかたすることも片付けた竜は、食料庫の中で迷走していた。
 と言うのも、教会の食料がつきそうなのである。
 ───これは困った。そろそろうちの貯蔵資金も底をつきそうだし、加え、食料もないとくれば、ますます状況は悪化している。
 竜は困りに困っていた。元々この教会の資金源は前の神官が持っていた資金だけであった。
 前の神官とは竜の育ての親だった人だ。その人は厳格かつ思慮深い。情も深ければ考えも深い人だった。
 だが、もういない。病気で死んでしまったのだ。
 そして、竜はその時決意したのだ。必ず父が残したこの教会を守るのだと。
 そして、今は守るものは教会だけではなくなった。それは家族とも呼べる者たち。
 そこで竜は英断を迫られる。この問題を打破するような英断が。
 しかし、簡単な事であった。竜が知っている言葉で、このような言葉がある。 
────働かざる者食うべからず。
 そう、働けばよいのだ。働けば資金を調達できる。もう、それしかない。
 
「よし、街に下りて就活だ」

 淡い気合いに言葉を紡ぎながら竜は言った。
 竜は比較的怠惰な性分だ。楽は好きだし、苦は最大限避けたい。だが、働かなければいきられないならそれは仕方ないと、無理矢理自分で納得させた。
 だが、ここで一つの懸念資材がうまれてしまった。
 自分が街に仕事に行っている間、教会の子供達はどうする?
 子供達だけでは心配だ。

「ま、それは明日皆で話すか」

 めんどくさくなった竜はなげやる様にそう言い、もう、寝るために食料庫を出て、教会にある自室へと帰っていった。



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