神官様は今日も協会の子達のために奮闘する。

なかたか

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王都への道のり。

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 早朝の兆しが目覚めを伝える。

 竜は寒い冷気の朝に小暖かい日差しが指す協会の外へと出ていた。
 これは王都に行く前の準備ではない。竜の日課だ。
 なぜ、それをするのかと聞かれたら、早起きは三文の得、少しの眠気ざまし、ちょっとした見回りかな、と竜は咄嗟に答える事しかできないだろう。
 すなわち、意味は余り無いのである。
 ただ、早起きしてみっかと始まった単なる自分ルールがここまで続いたというだけのこと。

 しかし、確かに朝は気持ちよく、損は無いと竜は思っている。
 
 キョァー そんな鳥の鳴き声が木霊する。

 竜は何の鳥かは知らないが、鳴くならもうちょい綺麗に鳴きやがれホトトギス、と、ホトトギスでは明確に無い鳥に間髪いれずにそう心で突っ込んだ。
 竜は朝日を見ながら、

「よしっ! そろそろ皆を起こすか」

 協会の朝が始まった。

 竜はそれから、ぐだぐたに皆を起こしていく。
 はっきり言って、協会の子たちは竜以外みんな基本的朝に弱い。しかも筋金入りだ。
 何度も直させようと、竜はそんな改心をあいつらにさせようと試みるもあえなく断念。
 それほどまでに、協会の子たちは朝に弱いのだ。

「ほら! 起きろ! 定期馬車に間に合わなくなるぞ!」

 先ずは竜はノアやノエの寝室に行き、起こすために、二人が寝ているベッドを揺すりながら起こそうとしていた。
 だが、

「んぁーぃ、神官しゃま~」
 
 ノアはよだれをたらしながら幸せそうな表情のまま、布団を離そうとしない。
 竜は頭をかき、こいつは諦めたっ! と、次にノエに標準を会わせた。

 そして、先程と同じように揺さぶる。
 と、次の瞬間、

「...誰ですかー?その女?」

 薄笑いになるノエがそんな事を呟いた。
 ゾクッとした。それは、その冷たい声を発したのは紛れもなくノエだった。
 しかし、いつもの日常とは裏腹に今回の寝言は背筋を凍らせるような声をだしていた。
(い、いったいどんな夢見てんだ....!?)

 無垢な少女の裏を垣間見たと、竜は静かにこの部屋から出て、この姉妹は諦めた! と、次の部屋へと渋々歩くのだった。
 
 はー、あの二人の将来が心配だ。と、嘆息しながらも次の部屋へとついてしまった。
 この部屋で待ち構えているであろう人物はキャロだ。
 竜は二回ノックした後、寝ている事を確認し、扉を開いてみた。
 その部屋は正にTHE女の子の部屋と言うような感じで、部屋の中には縫いぐるみが沢山並んでいた。

 その縫いぐるみは神官を、つまりは竜をベースにしているものが大半であり、残りの少数はノアやノエ、カエデと言った、家族のものだった。
 
 驚くことに、これは全てキャロが大事に繕って作った縫いぐるみなのである。つまりは手作り。加えて、それはクオリティーが高く、どんな店に売っても、劣りばえはしないようなとても精度の高いものなのだった。つまるところ、キャロルは手先が器用だ。
 縫い物なら、彼女に頼べばまず間違いはない程。

 竜はそんなキャロを前回と同様揺すって起こそうとする。
               
 すると、竜に飛んできたのは針。
 それは紛れもなく、裁縫道具の針であり、刺されば、一大事なそれは竜の額へと一直線に向かっていく。

「ぅおっ!!」

 しかし、竜は驚異的反射神経を見せ、それを紙一重で回避した。
 針の出所はキャロだ。
 キャロは朝、起こされるとこのような行動をとる習性がある。全くはた迷惑で危ない話だ。

 キャロから放たれる針は避けることは至難だが、竜はそれを分かっている様に避けきったのだった。
 それもそのはず。
 竜は、このような事を毎日のように繰り返しているからだ。
─────これもキャロのグータラを直すための行動。
 そのような意識を持ちながら、竜は毎日のようにこれを行っていたのだ。
 
「ふぅ、まったく油断も隙もねぇっな!」

 冷や汗を吹きながら、竜はベッドに飛び込んだ。
 バタン! と衝撃音が鳴った後に、竜は布団に潜り込んだままのキャロに抱きつく。
 そして、そのまま転がり、地面に一直線した。
 当然、竜とキャロは強い衝撃が襲う。

 この時、始めてキャロは目を覚ますのだ。
 
 少し、手荒い起こしかたであり、犯罪臭もするが、こうでもしないとキャロが自身で隠し持っているであろう針が幾重も飛ぶからである。
 こうして、試行錯誤を繰り返し、出来た安全策がこれなのである。

「どうだ、キャロ。目は覚めたか?」

 抱きついたまま竜は勝ち誇ったように言った。

「ん、」

 静かにそうキャロは答える。その答えを竜は聞くなり。

「んじゃ、離す「ダメ」

 この状態を竜は元に戻そうとしたが、それは短い否定形の語句で返された。

「へいへい」

 ま、これもいつもの事である。しかし、竜はかわいい子に抱きつけて俺得なので、嫌ではなかった。むしろばっちこいだった。対するキャロも幸せそうな表情をしていた。
 それからと言うもの、数分がたち、キャロは竜のぬくもりを味わい満足したのか「んっ」と言って体を広げようとする。
 竜は、それに合わせ、抱きつき拘束を外すと立ち上がった。
 それに続け、キャロも、あどけなく立ち上がった。そして、キャロはベッドに腰を下ろす。

「もうちょい、目が覚めてから行く」

 ウトウトしているキャロルを一瞥し、「分かった。寝るなよ?」と、釘をさして、竜は部屋を出たのだった。

 次に竜が向かうのはカエデの部屋だ。
 はっきり言って一番、カエデを起こすのが最大に難しい。
 それは後になれば分かるのだが、とにかく一番難関を残したのは竜の後回し精神の結果と言えよう。

 竜はそれを自覚しつつもドアノブに手をかけた。
 そこで、竜は覚悟を決める。
 そして、ドアを開けた。
 そこに居たのは、静かな寝息をたてるカエデ。

 よし、今日は安心そうだ。と、気を緩めた時にそれは起こった。
 立ち上がる、カエデ。
 もちろんベッドの上にいながらだ。

 おもむろに立ち上がるカエデの姿を見て、竜は戦慄した。
 また、『あれ』が来るのだと。

 緩めた気を張り直し、竜は身構えた。刹那だッ!。
                   ・  ・ 
 カエデは竜に蹴り飛び、向かう。当然寝たままでだ
 
 それを竜は俊敏に避け、カエデの飛び攻撃はすかぶりに終わり、しかし、カエデはしゅたっとしゃがむように着地をした。
 
 そして、くらくらと体を揺らしながらカエデは立ったときの体制に戻す。
 
 竜もそれと同時に軽やかに立ち上がった。

 しかし、竜は安堵に浸れる程、暇は作れない。なぜならまだカエデは起きていないからだ。
 
 張った緊張を振りほどかない竜に、カエデはやはり竜に向かって飛びげる。

 はっきり言って、この状態のカエデは攻撃のレパートリーが少ない。
 寝ているのも原因かもしれないが、竜はそれに少しだけ助かっていた。
 何故なら攻撃のレパートリーが少なければ、次の行動を予測しやすいからだ。
 
 予測しやすい分、これも竜は簡単に避けれた。
 避けた矢先、竜が行った行動はハグだ。その名の通り抱きつきである。

「うぁぁ ぅぁ ぅあっ!」

 カエデはか細い体でそれをふりはずそうとするが、竜はそれを許さない。
 そして、竜はカエデの耳元で呟いたのだ。

「大丈夫。お前は一人じゃない。俺もいるし、ノエやノア、キャロだっているんだ。寂しくないし怖くない。大丈夫、大丈夫、大丈夫」
 
「うっ、う、ぅぁぁあああ″あ″あ″」

 竜がそう優しくカエデに言い聞かせると、カエデは泣いた。
 色々と訳の分からない事ばかりかもしれないが、これも色々とわけありなのだ。

 カエデの過去が今のカエデを作ってるわけで、過去に嫌なこと、トラウマが根強くつまった結果がこれだった。
 これになった切っ掛けや理由、カエデの過去は知りたいとは思うがそれはまたの機会にて。

「大丈夫、大丈夫、大丈夫」

 次第にカエデの荒い息も竜の優しい言葉に段々と落ち着いてきていた。
 ぽんぽんと、竜はカエデの背中を優しく叩いた。そのつね、止みならないカエデの小さい嗚咽。
 いつしか、それも静かになり、カエデは落ち着いたように静かな寝息に戻った。

(よし、これで五分後には普通にいつも通り起きるだろ)

 と、安心して、竜はカエデが起きぬよう、慎重にカエデをお姫様だっこした。
 
 そして、ベッドに寝かせる。

 竜はそんなカエデの緩やかになった表情を最後まで見ながら、カエデの部屋を後にした。

 それからは、戦争である。

 起こしても起きないノエとノアを何度もたたき起こして、やっとの思いでおきかたかと思えばまた眠ってしまう始末。
 カエデに関しては、起こしていたのに二度寝をいけしゃあしゃあと行ってる始末。
 この始末をどうつければよいのか分からない。
 竜は頭を悩ませながら朝を過ごした。



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