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まさかのしくじり
しおりを挟む段々と人の姿がおおくなってきたころ、馬車は王都についた。
詳しく言うならば、王都の端っこの方である、まだまだ田舎境だ。けれど、竜たちがすんでいる教会があるのはその北の北の地域であり、ここ以上の田舎であったため、市場があるここは十分、いや、人里だと言う事が十分竜たちには新鮮味があることだった。
ここで、この田舎で、竜たちは降りることになっている。
なっている.....筈なのだが。
「zzZZZ zzZZZ 」と、竜は鼻息荒く眠っており、その他の者たちも静かなスースーと言う寝息をたてて寝むっていた。
なんと言うことか。
かくして、少しほどの時間がたち、馬車の操縦者がもう客が降りない事を確認し、出発した────
─────ちょっと、お客さん!
そんな声が竜の耳に木霊するのと同時に、竜は揺さぶられている感覚に、うとうとだが、目を覚まし始めていた。
「起きてください! お客さん! こっからもう、馬車運行は終わりですよ!」
中年のおばあさんが、そのねぶとい声で竜を起こそうとする。
「...んっ、 ん? んぇ?」
だが、寝ぼける竜。
そんな竜に中年のおばあさんは、もとい馬車の運転手は呆れる表情になった。
「はぁー、駄目だわこの客。完全に目が座ってる」
深くため息をし、運転手のおばあさんは「仕方ない、最後の手段でいくか...」と竜の耳元まで、顔を近づけ、こう囁く。
「起きないと、チューをしちゃいますよ?」
その瞬間、竜は急な寒気を覚え、身を翻し眠気の奥底から一気に引きづられた。竜起床の瞬間である。
「あ、あのなんかすみませんでした」
竜は低い声で謝った。
それを聞きおばはんは、「いいですよ」と、社交辞令のように竜の言葉を、腰に手をあてながらやれやれといったように、返した。
そして、数秒の無言の後、竜はあることに気づき身をビクッとさせ、露骨に驚きを表現した。
「あ、あの、すみません。ここって王都トロッコ境ですよね?」
王都トロッコ境とは、竜たちが行く筈だった目的地だ。
しかし、それはもう、途方も無いほどまで通りすぎている。その事実にまだ竜は気づいてはいない。だが、薄々「ヤバイ」という感情は芽生えていた。
「はぁ? ここは王都の中央部。王都バルドラド境だよ。まだ寝ぼけてんのかい?」
「.....ハハハ...やっちゃた」
薄い笑みと共に、竜はため息をつくように諦めを呟いた。
それをおばはんは細い目で見つめながら、「それじゃ、早く周りの子をおこして、早々に出てってくださいな」と、念を竜におして、足軽にこの車両から出ていった。
「ハァー、やっちまったぁ.....」
深いため息をするが現状は変わらない。
「ふぅ、起こすか」
そこからはいつも通り、皆を起こしていく。
これは余談なのだが、カエデの例の症状は不思議なことに朝にしか出ないというものであって、今ここでは発症しなかった。
しかしながら、他の皆は以前同様、起こすのに非常に竜は労力を使ったことは言うまでもない。
「んっ、ん~~~~っ」
ノアは眠った体を起こすように、伸びを行った。
加えてノエもカエデもキャロも、このような動作を行う。その様子を竜は方目で見ながら、ひとり荷物を纏めていた。
しかし、ここは人が多い。
いや、人だけではない。
人ならざる者。つまり亜人。
猫耳や犬耳、はたまた蛇のような鱗(うろこ)を纏う龍人。長い耳のエルフ、そしてこれはゴブリン人と言えばいいのか。
見た目まんまゴブリンの種族も、その人混みの中に悠然と紛れていた。
やがて支度を整えた竜が皆の所へとその荷物を持って早足ぎみに寄っていった。
「んじゃ、行くぞ」
竜は皆に言う。
「本当の目的地、寝過ごしちゃったんですよね? どこに行くんですか?」
ノアは問う。
そして、問われた竜に、その他の四人の視線も集まる。
どうやら、3人もノアと同様、これからどうするか気になるようである。
「ま、やることは一緒だ。まずは宿をとって、それから仕事を探して、観光して、学校施設に行ってみる。そんな感じだ」
竜はできる限り簡潔に言い、すぐに行動へと移す。
「さ、行くぞ!」
その一言で、王都中央部の色々な模索が始まった。
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