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おこぼれ話128 進化のためなら歩きますよ

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小4の頃、ペンギンの問題の「変身カウンター」というホビーにはまっていたことがある。
これは主人公・木下ベッカムを模した歩数計。形状的にはたまごっちに近いものを想像してもらえばわかりやすいだろう。
歩いて歩数をためることによって、ベッカムが様々な姿に変身していくという歩くのが楽しくなることうけあいのおもちゃだ。

買ってもらった初日は家の中だけで使ったが、頑張って1万歩以上ためてレベル3の進化まで進むことができた。
といってもところどころ走ったり手で本体を振ったりしたけどねwでもちゃんと歩いたからここまでは正義のキャラに変身していた。
このホビーはきちんと真面目に歩けば正義のキャラに、走ったり、ズルして本体を手でふってカウンターをすすめたりすると悪玉キャラやギャグキャラに、サボって放置しているとメタボになってしまうという仕様になっている。なんとか正義キャラのまま最終レベルまで行くのが目標であった。

その翌日の放課後、帰宅後カウンターを腰につけて散歩へ。いつも放課後の外出は自転車だが、カウンターを進めるためだ。大嫌いな徒歩も苦にはならない。自分の歩く道は己のベッカムを正義の道へ導く道だ。
歩いてる途中でカウンターが鳴ったら進化の合図。進化の度に僕は腰からカウンターを外し、画面を確認する。
その時には進化の音に反応して、周りに見ず知らずの子たちによる人だかりができたものだ。
変身の後は必ずそのベッカムの解説文を確認していたが、桃太郎ベッカムの解説文を確認したときは人だかりの中の見ず知らずの年上の少年に「お前桃太郎の話知らねえのかw」とツッコまれた。ほっといてくれ。どんなキャラでも解説を確認するのがオレのポリシーなんだ(ちなみに桃太郎の物語はきちんと知っているのでご安心を)。
途中でギャグキャラになってしまったこともあるが、次の進化では正義キャラに戻り一安心。その後も毎日のように歩いて、レベル9ぐらいまで進んだ。

だがある日からしばらく使う機会がなく、数日ぐらい放置してしまった。
そして久しぶりに起動すると突然画面が暗転して不気味なBGMとともに不穏なテロップが流れ始めた
「勇者は滅びた…もう一度で直してこい!」
…その後、電源が切れ、再起動すると再びベッカムが初期段階に戻ってしまった。
最初買ってもらった時よく説明書を見なかったのだが、読み返した結果「しばらく放置するとバットエンド」と書いていた。それにしてもあのバットエンド演出は子供心にトラウマであった。逆に今考えれば「こうならないように次は放置せず頑張ろう」という気にさせるという作り手の狙いがあったのかもしれない。
だがこれを機に挫折してしまい僕はまたしばらく放置してしまうのであった…飽きっぽいんだから…
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