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第2部 女児向けアニメ史
女児向けアイドル一番星~きらりん☆レボリューションの躍進~
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2006年、苦戦するスプラッシュスターを脅かす存在がふたつあった。「ラブ&ベリー」と「きらりん☆レボリューション」である。この2作品のヒットがスプラッシュスターの低迷に拍車をかけたとの見解も強い。
だが本章は「女児向けアニメ史」。ラブ&ベリーについては劇場版はあるけどTVシリーズは作られてないわけだし、この項目で触れるのはお門違い…というかアーケードカードゲーム史でしっかりと解説しているのでそちらを参照していただくとして、今回はきらレボをたっぷり分析しよう。
まず、「きらりん☆レボリューション」がいかなる作品か?
原作は当時ちゃおで連載していた中原杏先生によるアイドル漫画。
主人公・月島きらりは一目ぼれした男性アイドルユニット・「SHIPS」の星司に近づくために自らもアイドルになることを決心。やがて「あこがれの人に近づくチャンスを作る」という目的ではじめたアイドルという職業そのものにも真剣に取り組むようになる…という主人公のアイドルとしての成長物語だ。
2004年末にはちゃおのふろくでドラマCD化、同じちゃお連載の「ミルモでポン!」のアニメが終了したタイミングからちゃおの背表紙をミルモに変わって本作のなーさんが飾るようになるなどアニメ開始前のタイミングでちゃおの看板作品のひとつとして君臨していた。
そのような流れの中で2006年4月、アニメがスタートしたのであった。
開始するやいなや瞬く間に人気が拡大し、3年間のロングランとなり、この時期を代表する女児向けのヒット作となった。
ここからはきらレボのヒットの要因を様々な角度から分析していこう。
ひとつは「放送時間」。
放送時間はテレ東の夕方18:00。同じ小学館系列の作品でのりスタ内に移動したハム太郎の実質後番組(正確にはハム太郎より放送時間が30分繰り上がっているが)として始まったので、3月までハム太郎を観ていた視聴者がそのままの流れできらレボに流れ込んだことで多くのファンを獲得することができた。
さらにハム太郎を遅れネットしていた地方局においてもすべてではないがハム太郎の後番組としてそのまま放送した局も多く、テレ東系のない地域においても早い段階でその人気が拡大したであろう(当時はまだ見逃し配信なんてモンはない時代である)。
ふたつ目は「そもそもアイドルアニメというジャンルが当時少なかった」
「アイドルアニメ」や「アイドルを主人公にしたアニメ」というジャンル自体は昭和期は「クリィミーマミ」などが、平成に入ると「アイドル伝説えり子」などがヒットするなどすでに存在しており、一定の支持と成績を収めていた。だが2006年当時は今よりもその数が少なく、断続的に散見される程度であり、まだまだ珍しかったのだ。
そんな中で登場したきらレボは新鮮さがあったに違いない。アイドル・芸能界というのは子供、特に女児にとってあこがれの世界でありながらそれを舞台にした作品はあまりなかった。そこに本物のアイドル(詳しくは後述)を使ったきらレボの登場はとても大きかった。
3つめは「現実とアニメの融合(=2.5次元)」
これが間違いなく最大のヒットの要因。きらレボは「本物のアイドルを使った」と先ほど書いたが、アニメで主人公きらりの声を担当したのは当時モーニング娘。のメンバーであった久住小春さん。本物のアイドルがアイドルを演じたのだ。本物のアイドルとのタイアップで生まれた「アイドル伝説えり子」ですら主人公役は本職声優だったのだから、アイドルが本物のアイドルを演じるのは画期的な試みだ(他にはファンタジーの世界であるハム太郎映画のミニハムずを除けばおジャ魔女どれみの瀬川おんぷぐらいか?おんぷちゃんは正確にはチャイドルだし、宍戸留美さんは当時すでに本職声優に転向していたけど。)。
久住氏は「月島きらり」として主題歌も担当してきたが、おはスタやイベントに出演するときは「久住小春」としてではなく「月島きらり」としてきらりの衣装とヘアメイクで出演したのだ。まだ「2.5次元アーティスト」という言葉が存在しない時代にそのはしりと言える試みだ。
声優がキャラクターとして歌うことは昭和の時代から数あれど、声優が生身の姿でもしっかりとキャラクターを演じるのは当時としては画期的な試みであった。子供たちにとっても「きらりが現実に飛び出した」ようで嬉しかったのだ。なんたって本物のアイドルがアイドルを演じているのだから。本物のアイドルがアニメのアイドルの名を借りて、現実世界で歌い踊る…そんな演出に夢を見ない子供が果たしているだろうか?
モー娘。サイドから考えてもメンバーよりも下の年齢層の新たなファンを獲得するのに一役買ったに違いない。すでに低年齢層をターゲットにした戦略は「ミニモニ」が社会現象と言われるほどの成功を収めているわけだから、きらりは実質ミニモニの後継企画ともいえる。当時の子供たちにとっては「久住小春」よりも「月島きらり」の名のほうが浸透した。僕も今でも久住さんのことを「きらり」と呼んでしまうぐらいだ。きらレボ世代の多くがきっとそうだろう。
「本物のアイドルにアニメのアイドルを演じさせ、アイドルのキャラクターとしてアーティスト活動を行わせる」…この試みが成功したことは以下アニメ3年間の「月島きらり」名義のシングル(ユニットで出したものも含む)のオリコンチャート成績が証明している。(ユニット名義のものはカッコ内にユニット名を併記)
恋☆カナ 12位
バラライカ 8位
ハッピー☆彡 2位
はなをぷーん(きら☆ぴか) 9位
チャンス! 9位
アナタボシ(MilkyWay) 3位
タンタンターン!(MilkyWay)8位
パパンケーキ 11位
はぴ☆はぴ サンデー! 9位
…このようにシングル9曲中、実に7曲がトップ10入りを果たしているのだ。
きらレボファンはもちろん、本来のモー娘。ファンや久住さんファンにもしっかり支持されたことがこの成功の要因だろう。
ちゃおと同じ小学館の「コロコロコミック」がホビーとのタイアップ路線を貫いているのはミニ四駆が登場した80年代、当時黄金期だった週刊少年ジャンプに対抗するために「ジャンプのマンガは面白いけど体験はできない。でもコロコロのマンガには実際に体験できるホビーがある」との色を強く打ち出したのが大きな影響となっている。
それと同じようにちゃお・きらレボサイドも「体験できる・すなわち実在してるからイベントで会いに行ける」アイドルとして「久住小春による月島きらり」を生み出したのだ。
「会いに行けるアイドル」を打ち出したAKB48の結成は前年だが、当時はブレイク前。月島きらりは「会いに行けるアイドルのもうひとりのパイオニア」といっても過言ではないはずだ。
…「実在するアイドル」を武器にした新勢力に押されてしまってるプリキュアがそのままやられっぱなしなはずは当然ない。
次回は女王の座をかけたプリキュアの再起を分析してみよう。
だが本章は「女児向けアニメ史」。ラブ&ベリーについては劇場版はあるけどTVシリーズは作られてないわけだし、この項目で触れるのはお門違い…というかアーケードカードゲーム史でしっかりと解説しているのでそちらを参照していただくとして、今回はきらレボをたっぷり分析しよう。
まず、「きらりん☆レボリューション」がいかなる作品か?
原作は当時ちゃおで連載していた中原杏先生によるアイドル漫画。
主人公・月島きらりは一目ぼれした男性アイドルユニット・「SHIPS」の星司に近づくために自らもアイドルになることを決心。やがて「あこがれの人に近づくチャンスを作る」という目的ではじめたアイドルという職業そのものにも真剣に取り組むようになる…という主人公のアイドルとしての成長物語だ。
2004年末にはちゃおのふろくでドラマCD化、同じちゃお連載の「ミルモでポン!」のアニメが終了したタイミングからちゃおの背表紙をミルモに変わって本作のなーさんが飾るようになるなどアニメ開始前のタイミングでちゃおの看板作品のひとつとして君臨していた。
そのような流れの中で2006年4月、アニメがスタートしたのであった。
開始するやいなや瞬く間に人気が拡大し、3年間のロングランとなり、この時期を代表する女児向けのヒット作となった。
ここからはきらレボのヒットの要因を様々な角度から分析していこう。
ひとつは「放送時間」。
放送時間はテレ東の夕方18:00。同じ小学館系列の作品でのりスタ内に移動したハム太郎の実質後番組(正確にはハム太郎より放送時間が30分繰り上がっているが)として始まったので、3月までハム太郎を観ていた視聴者がそのままの流れできらレボに流れ込んだことで多くのファンを獲得することができた。
さらにハム太郎を遅れネットしていた地方局においてもすべてではないがハム太郎の後番組としてそのまま放送した局も多く、テレ東系のない地域においても早い段階でその人気が拡大したであろう(当時はまだ見逃し配信なんてモンはない時代である)。
ふたつ目は「そもそもアイドルアニメというジャンルが当時少なかった」
「アイドルアニメ」や「アイドルを主人公にしたアニメ」というジャンル自体は昭和期は「クリィミーマミ」などが、平成に入ると「アイドル伝説えり子」などがヒットするなどすでに存在しており、一定の支持と成績を収めていた。だが2006年当時は今よりもその数が少なく、断続的に散見される程度であり、まだまだ珍しかったのだ。
そんな中で登場したきらレボは新鮮さがあったに違いない。アイドル・芸能界というのは子供、特に女児にとってあこがれの世界でありながらそれを舞台にした作品はあまりなかった。そこに本物のアイドル(詳しくは後述)を使ったきらレボの登場はとても大きかった。
3つめは「現実とアニメの融合(=2.5次元)」
これが間違いなく最大のヒットの要因。きらレボは「本物のアイドルを使った」と先ほど書いたが、アニメで主人公きらりの声を担当したのは当時モーニング娘。のメンバーであった久住小春さん。本物のアイドルがアイドルを演じたのだ。本物のアイドルとのタイアップで生まれた「アイドル伝説えり子」ですら主人公役は本職声優だったのだから、アイドルが本物のアイドルを演じるのは画期的な試みだ(他にはファンタジーの世界であるハム太郎映画のミニハムずを除けばおジャ魔女どれみの瀬川おんぷぐらいか?おんぷちゃんは正確にはチャイドルだし、宍戸留美さんは当時すでに本職声優に転向していたけど。)。
久住氏は「月島きらり」として主題歌も担当してきたが、おはスタやイベントに出演するときは「久住小春」としてではなく「月島きらり」としてきらりの衣装とヘアメイクで出演したのだ。まだ「2.5次元アーティスト」という言葉が存在しない時代にそのはしりと言える試みだ。
声優がキャラクターとして歌うことは昭和の時代から数あれど、声優が生身の姿でもしっかりとキャラクターを演じるのは当時としては画期的な試みであった。子供たちにとっても「きらりが現実に飛び出した」ようで嬉しかったのだ。なんたって本物のアイドルがアイドルを演じているのだから。本物のアイドルがアニメのアイドルの名を借りて、現実世界で歌い踊る…そんな演出に夢を見ない子供が果たしているだろうか?
モー娘。サイドから考えてもメンバーよりも下の年齢層の新たなファンを獲得するのに一役買ったに違いない。すでに低年齢層をターゲットにした戦略は「ミニモニ」が社会現象と言われるほどの成功を収めているわけだから、きらりは実質ミニモニの後継企画ともいえる。当時の子供たちにとっては「久住小春」よりも「月島きらり」の名のほうが浸透した。僕も今でも久住さんのことを「きらり」と呼んでしまうぐらいだ。きらレボ世代の多くがきっとそうだろう。
「本物のアイドルにアニメのアイドルを演じさせ、アイドルのキャラクターとしてアーティスト活動を行わせる」…この試みが成功したことは以下アニメ3年間の「月島きらり」名義のシングル(ユニットで出したものも含む)のオリコンチャート成績が証明している。(ユニット名義のものはカッコ内にユニット名を併記)
恋☆カナ 12位
バラライカ 8位
ハッピー☆彡 2位
はなをぷーん(きら☆ぴか) 9位
チャンス! 9位
アナタボシ(MilkyWay) 3位
タンタンターン!(MilkyWay)8位
パパンケーキ 11位
はぴ☆はぴ サンデー! 9位
…このようにシングル9曲中、実に7曲がトップ10入りを果たしているのだ。
きらレボファンはもちろん、本来のモー娘。ファンや久住さんファンにもしっかり支持されたことがこの成功の要因だろう。
ちゃおと同じ小学館の「コロコロコミック」がホビーとのタイアップ路線を貫いているのはミニ四駆が登場した80年代、当時黄金期だった週刊少年ジャンプに対抗するために「ジャンプのマンガは面白いけど体験はできない。でもコロコロのマンガには実際に体験できるホビーがある」との色を強く打ち出したのが大きな影響となっている。
それと同じようにちゃお・きらレボサイドも「体験できる・すなわち実在してるからイベントで会いに行ける」アイドルとして「久住小春による月島きらり」を生み出したのだ。
「会いに行けるアイドル」を打ち出したAKB48の結成は前年だが、当時はブレイク前。月島きらりは「会いに行けるアイドルのもうひとりのパイオニア」といっても過言ではないはずだ。
…「実在するアイドル」を武器にした新勢力に押されてしまってるプリキュアがそのままやられっぱなしなはずは当然ない。
次回は女王の座をかけたプリキュアの再起を分析してみよう。
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