リョーマ的Y2K子供文化史考

一刀星リョーマ

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第4部 漫画・出版史

コロコロのちょっとマイナーな漫画たち

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今回は00年代~10年代初頭に月刊・別冊コロコロで連載されたマイナー(と自分が思う)漫画の中から風変わりな(とこれまた自分が思う)作品たちを分析していこう。

最初は月刊2009年2月号~2010年4月号連載のボクシング漫画「STAND UP!」。
いじめられっ子の中学生「赤亀あゆむ」がボクシングと出会い、少しずつ強くなっていくというコロコロ版はじめの一歩ともいうべき王道熱血ストーリーだ。
長いコロコロの歴史でバトル物は数あれど、意外に格闘技漫画(ボクシングだの柔道だの実在の格闘技を題材とした漫画という意味ね)は少なかった。総合格闘技ブームの時期にはK-1創設者石井和義氏監修で、アンディ・フグが実名で登場した「K-1ダイナマイト」やボブ・サップ本人公認のギャグマンガ「さっぷくん」などが連載されていたが、K-1ブームが下火になっていくと同時に格闘技ものは姿を消していた。小学生はファンタジーなバトルは好きだけどリアルな格闘はそこまで好きじゃない、野球やサッカーなどの球技ものに比べて格闘技は低年齢受けがあまりよくないといった事情もあるのだろう。そんな中での本格ボクシング漫画の登場は新鮮そのものであった。
ボクシングという血と汗の世界を描きながらキャラの性格は軽かったり個性的だったりするものが多い。
あゆむはボクシングを始めたその日から食事中も授業中もジャブをしまくって腕が恐ろしいぐらいに腫れ上がるほどの練習バカで、客席から落ちてきたポップコーンをキャッチして食べるなどのお茶目な部分もある。
あゆむがボクシングと出会うきっかけとなった白鳥翔は下記の拳祭の最年少チャンピオンでありながらチャンピオンとは思えないぐらい軽くてチャラい。
あゆむをいじめていた不良の黄豚は実はボクシングマニアで白鳥のことも知っており、話が進むにつれてあゆむの応援団となっていき、客席からエールを送ったり激を飛ばしたりする最大のサポーターとなった。かつてのいじめっ子が応援してくれるという胸アツ展開だ。
こういったバラエティ豊かなキャラたちによってボクシングの汗臭いイメージが和らぎ、読者が入りやすくなっている。
最初の数話であゆむとボクシングの出会い、そして特訓が描かれ、開始から4話ほどでいきなり「拳祭(ナックルカーニバル)」というアマチュアボクサー最大の大会に出場するというテンポの速い展開。個人的にも「早すぎじゃない?」と当時思いながら読んでいた。
でも考えればコロッケ!だって2話でいきなりバンカーサバイバルだったわけだし、読者が飽きないうちに大会に入っちゃおうという判断であろう。それにコロコロが月刊誌だから週刊誌のようにノロノロ話を進められないなんて事情もあったであろう。
子供たちのボクシングの入口としてはこの上ない出来ではあったと思うが、残念ながら1年ちょっとで終了。やはりコロコロで格闘技は受けなかった。無念のノックアウト。

次は別冊コロコロ2006年12月号から2010年8月号まで連載された「世にも奇怪な物語Xゾーン」。1話完結型のオムニバスホラーだ。
といっても別冊オンリーの連載作の中では3年半以上と比較的長期連載であるからマイナーとも言い切れないかもしれない。実際別冊を読んでいたまわりの子にもファン多かったし。でも別冊読んでないと知らない人も多いだろうからここで触れることとする。
前述の通りこの作品はオムニバス形式のために毎回主人公は変わる。レギュラーキャラは各話の冒頭と最後に登場するストーリーテラー的役割の「案内人」ただひとりのみ。いわば彼は世にも奇妙な物語におけるタモリのようなポジションであるのだが、回によってはその回の主人公の前に現れて干渉したり、警告を促したりすることもある。
また彼のセリフの吹き出しは他のキャラと違ってキャラクターに向かって伸びるとがった部分のないまん丸な形状のため、テレパシーのようなもので語りかけている可能性も示唆している。
子供向けのホラーと侮ることなかれ、回によっては救いようのない結末を迎えることもあるのがこの作品。個人的に救いようがなくて怖すぎたと思う回をいくつかピックアップしてみよう。
ある少年がクモに襲われていた蝶を助けた後、その蝶の化身である美少女が転校してきて彼女と仲良くなるという回ではやがてそのクモの化身の少年が転校してきて、蝶を助けた少年は正体を現してクモの化け物となった彼に食べられてしまう…という結末。
ある少年が案内人から使っていいのは1回だけという約束で時間を巻き戻せるリセットボタンを受け取った回では約束を破って20回以上使った挙句、トラックにひかれそうになった時に巻き戻そうとしたもののトラックがくる直前に戻るどころか、巻き戻りがとまらなくなり、やがて自分の体も縮んでいき最後はおぎゃあとなきながら消えてしまうという自分の人生そのものまでリセットしてしまったという結末。約束を守らなかったから自業自得とはいえ救いようがなさすぎる…

3番目に紹介するのは別冊コロコロ2010年8月号~2011年4月号まで連載された「超熱ゲームキッド!!クリエイ太」。コロコロのレジェンド、のむらしんぼ先生入魂のゲームクリエイターストーリーだ。元々読み切りだったのがそのまま連載に。個人的にもしんぼ先生の作品がラチェット&クランク以来好きだったのでうれしかった。
主人公・鋭太は小学生ゲームクリエイター。毎回彼が大人でもド肝を抜かれるようなアイデア満載のゲームを生み出していき、時にゲーム対決にも挑んでいく。ゲームセンターあらしや同じしんぼ先生のとどろけ一番などを彷彿とさせるコロコロストーリーの原点回帰ともいえるフォーマットに現代の子供たちのあこがれの職業であるゲームクリエイターをミックスした新王道ともいえる作品だ。
物語にはニンテンドーDSをはじめとする当時の現役ハードが実名で登場し、物語にリアリティを生んでいる。
登場するゲームのアイデアは実際にやってみたくなるようなものばかり。
2話で登場した「たたかえ漢字ファイター」はDSのスクリーンに漢字を書くことによってその漢字に応じたアイテムや魔法を出して敵を倒していくRPG。例えば「剣」と書けばキャラクターが剣を持ち、「雷」と書けば雷攻撃を放つ。さらに強力プレイではふたりで「火」という字を書いてそれを合体させて「炎」となるなど漢字を合体させて有利に戦闘を進められる。
リアルサッカーは通信プレイで本当のサッカーのように11人でチームを組んで対戦できるDSのゲーム。本来DSは最大4人対戦のはずだがこの際は漫画なので目をつぶっておこう。
鋭太の所属する楽天堂のプロデューサーである鮫島が開発した「モンスタークエスト」はタッチペンをスライドして次々と現れるモンスターを斬っていくアクションRPG。同じモンスターでもスライドの方向やスピードで経験値の量が変わるのが特徴。
あとこの頃のしんぼ先生といえば自身も認めるほど他作品のパk…オマージュが入ってるが本作でもゲームセンターあらしのパ…オマージュ的要素が入っている。
最終回では当時発売したばかりの3DSが登場。鋭太が開発した3DS用格闘ゲーム「リアルファイター」の対戦で勝った相手からソフトを奪っていく不良ゲーマーとのクリエイターとしての威信をかけた対決が描かれた。
ゲームクリエイターという時代を反映したテーマにコロコロ古来の対決要素やぶっ飛び要素を盛り込んだ「平成のとどろけ一番」とも言うべき作品であった。

最後に紹介するのは別冊コロコロ2011年2月号~同年8月号まで連載された「パズブレイク」。
突如謎の孤島に飛ばされた主人公が風の能力を武器に「ゲーム」と称して何者かによって島に集められた他の参加者と戦いながらパズルを集めていき、脱出を目指すバトルストーリー。登場人物たちはヴェントと呼ばれる手のひらの穴から能力を発動する。
いわゆる「能力もの」「属性バトルもの」という定番ジャンルに「謎解き」の要素を加えた本作。キーアイテムとなるパズルは戦って奪うほかにピースに書かれた謎を解いて見つけ出すという入手方法も存在。
さらにストーリーには科学知識も一部取り入れられている。主人公・ミライの相棒であるツヨシの能力は「発酵」というバトル物では異例の能力。その名の通り食べ物を発酵させるガスを放つのだが当然人間には無害なのでダメージは与えられない。だが第2話で相手の飛び道具を吸収して倍にして放つ能力者の昴と対峙した際、島に生えていた豆を発酵させて納豆に変えたことによりそれを吸収した昴のヴェントはふさがって能力の発動を防いだ。
ラスト2話で戦った水の能力者は再生可能な能力の持ち主で勝ち目はないかと思われたが、後ろにあったロケットを破壊し、その燃料が漏れたことによって液体化した体が凍り付いてミライが勝利。
そして最終回のラストはゲームの主催者である「ドゥーム」との最終決戦。体中に無数のヴェントを持ち、あらゆる能力を使う彼の前に歯が立たず敗戦。その1年後に仲間たちとともにドゥームとのリターンマッチに挑むところで終了という典型的な打ち切りエンドであった。設定は面白かったためにあっさり打ち切りエンドだったのが残念だった。
謎解きブームの今ならもう少し人気が取れたか?
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