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20話 昇級
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鞄に入れた解毒薬の瓶を衝撃で割らないよう慎重にそれでいて急いで組合へ向かった。大瓶には衝撃を和らげるよう布を巻いてはいるが慎重に越したことはない。
十分ほどで組合へ到着したティカは早速、カウンターにいるアンナへ声を掛けた。
「アンナさん、解毒薬作ってきましたよ!」
「あっティカ様! もう作って来てくれたんですか!?」
アンナから依頼を受けたのがちょうどお昼過ぎ。現在は昼を四刻を過ぎた辺りなので三刻くらいかかった計算になる。驚きを隠せないアンナを他所に鞄から取り出した解毒薬の大瓶を日本取り出しカウンターへ置いた。
「20本分の解毒薬です。確認をお願いします」
「は、はい! 少々お待ちください!」
大瓶を抱えアンナは奥の部屋へ行ってしまった。何らかの魔道具での確認とか報酬の準備とかいろいろあるのだろう。しかしながら午後の受付当番であるシルビアはどうしたのだろうか。美人であるシルビア目的というわけではないが少々残念だ。アンナもかなり美人の分類に入るがシルビアのちょっと冷めたクールな雰囲気がいい。逆にアンナは女の子らしい可愛い系の人だからグッとくる人は来るのかもしれない。
ティカはどちらかと言えばお姉さんが好みなため、かわいい系のアンナよりクールなお姉さん系のシルビアの方が好みのようだ。
「あれ、ティカ君じゃないか! こんな所でどうしたの?」
「ん? あ、ヨハンさん……今ちょうど解毒薬を納品しに来たところです」
「解毒薬? んーなるほど、冒険者の件だね。そういや聞いたよぉー、E級にランクアップしたんだってね、おめでとう。これからも君の活躍を期待しているよ」
「E級にランクアップですか? 始めて聞きました」
「あれ? 受付の子から聞かなかった?」
「いえ、聞いてませんね。僕が来るときは二人とも忙しそうなので話す機会が無かったのかも」
ティカがアンナの帰りをカウンター越しに待っていると、ちょうど組合に帰ってきた組合長であるヨハンが声を掛けてきた。話によるとF級からE級に昇級したらしい。確かに、睡眠薬と各素材の納品で達成数が五つに達成したのでE級になったのだろう。
その件に関しては初耳だったが、これで一個上のD級の依頼まで受けられることになる。組合のランクが高いに越したことがないし、何かと便宜やら待遇やらがよくなると言っていた。なるべく早く上の位に行きたいものだ。
「確かに最近は特に忙しいからねぇ。僕も街道沿いに出現した魔物のことで冒険者ギルドに招集されてさっき終わったところだよ。負傷者が多いからなるべく薬の調達を頼むってさ。そんなこと言われてもこの町にいる薬師は君も入れて三人しかいないのに無理言うよあの人ら」
「僕以外にあと二人いるんですね。一人はネルダさんという高齢の方がいるのを聞きましたがもう一人は?」
「もう一人はルセアに居るよ。薬のことであちこち回っている人でさ、いつ戻ってくるかわからない……だから実質、この町には二人しか薬師がいないわけだね」
「えぇ、大丈夫なんですかそれ」
「まさか、大丈夫なわけないよ。唯でさえ薬師は少ないのに辺境の地ルイツに二人もいるのは奇跡に近いよ。他の地方なんかは、二つ三つの町にひとりだったりするから薬師に掛かる負担も桁違いだ。ティカ君も体調管理はしっかりするんだよ? 困ったことがあれば組合に何でも相談するといい、可能な限り対応するからさ。君の作る薬はどれも高品質だから本当に助かってるんだよ、いろいろと」
ヨハンの最後の言い方に含みを感じたのは気のせいではないだろう。ティカの作った薬を裏で販売して儲けているに違いない。組合の財政状況も厳しいらしいし、とは言ってもただの妄想かもしれないが。
ヨハンといろいろ情報交換をしていると、アンナが戻ってきた。
「あれ組合長、戻られたんですね」
「ちょうど今しがたね。それ、解毒薬の報酬かい?」
「はい、解毒薬の報酬です」
「シルビア君にも言ったけど、なるべく彼のサポートを頼むよ。些細なことだったらティカ君を優先していいからさ」
「わかりました! ……それではこちらが解毒薬の報酬銀貨6枚になります。ご確認ください」
一本当たり大銅貨三枚といったところか。手間や材料代を考えるとあまり利益が出ていないような気がするけど、これも組合のためと考えればいいだろう。
それはそうとE級の件についてアンナに聞いておかなければ。何か他にも知らないことがあるかもしれない。そう考えたティカはアンナに質問した。
「アンナさん、さっきヨハンさんから僕がE級に昇級したって聞いたんですけど……」
「そうでした! すみません、色々と忙しくタイミングが合わなくて。それはそうとE級への昇級おめでとうございます。これでひとつ上のD級までの依頼なら受けられます。あと会員証をご提示お願いできますか? E級への更新を行いますので」
「わかりました、どうぞ」
「ありがとうございます。では更新いたしますね」
E級への更新のため、会員証をアンナへ手渡した。手渡されたアンナはティカの会員証を魔道具へ入れ手続きを行う。数十秒ほどで会員証が帰ってきて、会員証の等級欄がE級へ変わっていた。
さてこれからどうするか。恐らく納品した解毒薬だけでは足りないと思われるからまた調合するか。樹蜜糖は暫くかかるようだし、その前に材料を殆ど使ってしまったから素材集めから始める必要があるな。露店で探せば少しくらいはあるかもしれないが。
「アンナさん、E級からD級に昇級するにはどのくらい依頼を達成すればいいんでしょうか?」
「D級に昇級するために必要な達成数は10になりますね。現在の等級の依頼達成で1つ、上の等級を達成すると2つとして加算されます」
「なるほど、なら最短でD級になろうと思えばD級の依頼を5つ達成すればいいわけですね!」
「そうなりますね。ティカ様の薬師としての腕前ならサクッと昇級できますよ!」
煽てるのが上手いアンナだ。ティカも満更でもない様子。ちなみに掲示板のE級の依頼を見てみると青の治癒薬や純魔水など比較的簡単なものが依頼としてある。D級からは魔力薬、痺れ薬、強化薬、赤の治癒薬など中級の魔法薬が並ぶ。
ティカがD級依頼に首を傾げているがどうしたのだろうか。
「ん? アンナさん赤の治癒薬って違法薬物じゃなかったでしたっけ?」
「赤の治癒薬ですか? はい、違法薬物ですけど……なるほど、その依頼書の内容をよく確認してみると謎が解けますよ」
そう言ってアンナはティカへ依頼書をよく見るよう促した。アンナの言葉に従ってその依頼書を見ると、確かに謎が解けたようだ。
違法薬物は、製造・販売・所持が禁止されている。理由は依存性の高さと人体への影響を考えてのこと。この依頼書には、そんな指定薬物である赤の治癒薬の情報提供が依頼内容として記載されてあった。
「なるほど、情報提供の依頼ですか」
「ええ、何でも王都の方では赤の治癒薬が蔓延してるらしく、その供給元がどうやら地方都市からのようでこうやって情報提供する依頼が各地で回っているようです」
どうやら王都では違法薬物が出回っているようだ。アンナの話を聞く限りでは地方都市が供給元になっているそうで、蔓延を防ぐために情報提供を呼び掛け供給元を押さえるということが水面下では行われているらしい。
情報提供者には報酬金貨三枚とある。情報の内容によって報酬金が上乗せされるとも備考欄に書かれていた。
違法薬物関係は置いておくとして、何か依頼でも受けて達成数を稼いだほうがよいか、はたまたこれから益々需要が出てくる解毒薬の材料を採取しに行くか悩ましいところだ。
「アンナさん、話は変わるのですがこの町に魔道具なんかが売られている場所ってありますか?」
「魔道具ですか? 魔道具なら魔道具専門店があったと思いますけど、なにか魔道具でも買われるんですか?」
「ええ、魔法鞄がないかなと思いまして。あると採取や物を運ぶのに便利なんですよね」
「それなら魔道具組合に行ってみるのもいいかもしれませんよ! 魔道具組合にも魔道具が売られていますので、もしかしたら魔法鞄もあるかもしれません」
ティカのこの後の予定は魔道具を買いに行くらしい。それも先ほど言っていた便利なアイテムである魔法鞄。空間魔法が施され鞄内の空間が拡張されているお陰で様々なものを入れることができる優れものだ。
アンナによると魔道具組合にも魔道具なんかが売られているとのこと。確か、薬師組合にへ来る途中にそれらしい建物を見た気がする。
組合というからにはやはり会員登録もできるのだろうか。
「わかりました。先に組合の方に行ってみます」
「はい、お気をつけて」
アンナに別れを告げ組合を出たティカは、アンナの言う魔道具組合とやらに行くことになった。ティカが探している魔法鞄があるといいのだが果たしてどうだろうか。
十分ほどで組合へ到着したティカは早速、カウンターにいるアンナへ声を掛けた。
「アンナさん、解毒薬作ってきましたよ!」
「あっティカ様! もう作って来てくれたんですか!?」
アンナから依頼を受けたのがちょうどお昼過ぎ。現在は昼を四刻を過ぎた辺りなので三刻くらいかかった計算になる。驚きを隠せないアンナを他所に鞄から取り出した解毒薬の大瓶を日本取り出しカウンターへ置いた。
「20本分の解毒薬です。確認をお願いします」
「は、はい! 少々お待ちください!」
大瓶を抱えアンナは奥の部屋へ行ってしまった。何らかの魔道具での確認とか報酬の準備とかいろいろあるのだろう。しかしながら午後の受付当番であるシルビアはどうしたのだろうか。美人であるシルビア目的というわけではないが少々残念だ。アンナもかなり美人の分類に入るがシルビアのちょっと冷めたクールな雰囲気がいい。逆にアンナは女の子らしい可愛い系の人だからグッとくる人は来るのかもしれない。
ティカはどちらかと言えばお姉さんが好みなため、かわいい系のアンナよりクールなお姉さん系のシルビアの方が好みのようだ。
「あれ、ティカ君じゃないか! こんな所でどうしたの?」
「ん? あ、ヨハンさん……今ちょうど解毒薬を納品しに来たところです」
「解毒薬? んーなるほど、冒険者の件だね。そういや聞いたよぉー、E級にランクアップしたんだってね、おめでとう。これからも君の活躍を期待しているよ」
「E級にランクアップですか? 始めて聞きました」
「あれ? 受付の子から聞かなかった?」
「いえ、聞いてませんね。僕が来るときは二人とも忙しそうなので話す機会が無かったのかも」
ティカがアンナの帰りをカウンター越しに待っていると、ちょうど組合に帰ってきた組合長であるヨハンが声を掛けてきた。話によるとF級からE級に昇級したらしい。確かに、睡眠薬と各素材の納品で達成数が五つに達成したのでE級になったのだろう。
その件に関しては初耳だったが、これで一個上のD級の依頼まで受けられることになる。組合のランクが高いに越したことがないし、何かと便宜やら待遇やらがよくなると言っていた。なるべく早く上の位に行きたいものだ。
「確かに最近は特に忙しいからねぇ。僕も街道沿いに出現した魔物のことで冒険者ギルドに招集されてさっき終わったところだよ。負傷者が多いからなるべく薬の調達を頼むってさ。そんなこと言われてもこの町にいる薬師は君も入れて三人しかいないのに無理言うよあの人ら」
「僕以外にあと二人いるんですね。一人はネルダさんという高齢の方がいるのを聞きましたがもう一人は?」
「もう一人はルセアに居るよ。薬のことであちこち回っている人でさ、いつ戻ってくるかわからない……だから実質、この町には二人しか薬師がいないわけだね」
「えぇ、大丈夫なんですかそれ」
「まさか、大丈夫なわけないよ。唯でさえ薬師は少ないのに辺境の地ルイツに二人もいるのは奇跡に近いよ。他の地方なんかは、二つ三つの町にひとりだったりするから薬師に掛かる負担も桁違いだ。ティカ君も体調管理はしっかりするんだよ? 困ったことがあれば組合に何でも相談するといい、可能な限り対応するからさ。君の作る薬はどれも高品質だから本当に助かってるんだよ、いろいろと」
ヨハンの最後の言い方に含みを感じたのは気のせいではないだろう。ティカの作った薬を裏で販売して儲けているに違いない。組合の財政状況も厳しいらしいし、とは言ってもただの妄想かもしれないが。
ヨハンといろいろ情報交換をしていると、アンナが戻ってきた。
「あれ組合長、戻られたんですね」
「ちょうど今しがたね。それ、解毒薬の報酬かい?」
「はい、解毒薬の報酬です」
「シルビア君にも言ったけど、なるべく彼のサポートを頼むよ。些細なことだったらティカ君を優先していいからさ」
「わかりました! ……それではこちらが解毒薬の報酬銀貨6枚になります。ご確認ください」
一本当たり大銅貨三枚といったところか。手間や材料代を考えるとあまり利益が出ていないような気がするけど、これも組合のためと考えればいいだろう。
それはそうとE級の件についてアンナに聞いておかなければ。何か他にも知らないことがあるかもしれない。そう考えたティカはアンナに質問した。
「アンナさん、さっきヨハンさんから僕がE級に昇級したって聞いたんですけど……」
「そうでした! すみません、色々と忙しくタイミングが合わなくて。それはそうとE級への昇級おめでとうございます。これでひとつ上のD級までの依頼なら受けられます。あと会員証をご提示お願いできますか? E級への更新を行いますので」
「わかりました、どうぞ」
「ありがとうございます。では更新いたしますね」
E級への更新のため、会員証をアンナへ手渡した。手渡されたアンナはティカの会員証を魔道具へ入れ手続きを行う。数十秒ほどで会員証が帰ってきて、会員証の等級欄がE級へ変わっていた。
さてこれからどうするか。恐らく納品した解毒薬だけでは足りないと思われるからまた調合するか。樹蜜糖は暫くかかるようだし、その前に材料を殆ど使ってしまったから素材集めから始める必要があるな。露店で探せば少しくらいはあるかもしれないが。
「アンナさん、E級からD級に昇級するにはどのくらい依頼を達成すればいいんでしょうか?」
「D級に昇級するために必要な達成数は10になりますね。現在の等級の依頼達成で1つ、上の等級を達成すると2つとして加算されます」
「なるほど、なら最短でD級になろうと思えばD級の依頼を5つ達成すればいいわけですね!」
「そうなりますね。ティカ様の薬師としての腕前ならサクッと昇級できますよ!」
煽てるのが上手いアンナだ。ティカも満更でもない様子。ちなみに掲示板のE級の依頼を見てみると青の治癒薬や純魔水など比較的簡単なものが依頼としてある。D級からは魔力薬、痺れ薬、強化薬、赤の治癒薬など中級の魔法薬が並ぶ。
ティカがD級依頼に首を傾げているがどうしたのだろうか。
「ん? アンナさん赤の治癒薬って違法薬物じゃなかったでしたっけ?」
「赤の治癒薬ですか? はい、違法薬物ですけど……なるほど、その依頼書の内容をよく確認してみると謎が解けますよ」
そう言ってアンナはティカへ依頼書をよく見るよう促した。アンナの言葉に従ってその依頼書を見ると、確かに謎が解けたようだ。
違法薬物は、製造・販売・所持が禁止されている。理由は依存性の高さと人体への影響を考えてのこと。この依頼書には、そんな指定薬物である赤の治癒薬の情報提供が依頼内容として記載されてあった。
「なるほど、情報提供の依頼ですか」
「ええ、何でも王都の方では赤の治癒薬が蔓延してるらしく、その供給元がどうやら地方都市からのようでこうやって情報提供する依頼が各地で回っているようです」
どうやら王都では違法薬物が出回っているようだ。アンナの話を聞く限りでは地方都市が供給元になっているそうで、蔓延を防ぐために情報提供を呼び掛け供給元を押さえるということが水面下では行われているらしい。
情報提供者には報酬金貨三枚とある。情報の内容によって報酬金が上乗せされるとも備考欄に書かれていた。
違法薬物関係は置いておくとして、何か依頼でも受けて達成数を稼いだほうがよいか、はたまたこれから益々需要が出てくる解毒薬の材料を採取しに行くか悩ましいところだ。
「アンナさん、話は変わるのですがこの町に魔道具なんかが売られている場所ってありますか?」
「魔道具ですか? 魔道具なら魔道具専門店があったと思いますけど、なにか魔道具でも買われるんですか?」
「ええ、魔法鞄がないかなと思いまして。あると採取や物を運ぶのに便利なんですよね」
「それなら魔道具組合に行ってみるのもいいかもしれませんよ! 魔道具組合にも魔道具が売られていますので、もしかしたら魔法鞄もあるかもしれません」
ティカのこの後の予定は魔道具を買いに行くらしい。それも先ほど言っていた便利なアイテムである魔法鞄。空間魔法が施され鞄内の空間が拡張されているお陰で様々なものを入れることができる優れものだ。
アンナによると魔道具組合にも魔道具なんかが売られているとのこと。確か、薬師組合にへ来る途中にそれらしい建物を見た気がする。
組合というからにはやはり会員登録もできるのだろうか。
「わかりました。先に組合の方に行ってみます」
「はい、お気をつけて」
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