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5章 開拓編

112話 LV5

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「うぐっ、ここは……」

「お目覚めになられましたかレイ様!」

「ん? どういう状況だっけ?」

「それが……スラリン様から念話がありまして、ご主人様が倒れたとのことだったので急いで駆けつけた次第です」

 視界いっぱいにリューエルの心配そうな顔を覗かせ、その後ろには他の幹部の姿が見える。
 この状況を考えるにどうやらレイが倒れたという報告に跳んできたようだ。
 大体の状況を把握したあと、なぜ自分がこの状況に陥ったのか分析すると思い当たる節が一つある。
 鋒山竜ことタイラントマウンテンの設置が完了してあれこれ調べている内に名前が無いこと気づいたのだ。
 その時は特に深く考えず名前を付けてしまったがどうやらそれが原因らしい。

「あーあれって名前を付けたことになるのか……」

 取り敢えず皆には事情を説明して心配を掛けたことに対して謝罪をしておいた。
 一応部下ではあるがこう言う些細な事で溝ができたりするのを元の世界で学んでいるので自然と謝罪は口から出ていた。
 終始心配そうな顔を見せるリューエルに大丈夫だと説得するのに少し時間は掛かったものの、他の者達は現状を理解したようで各自戻っていった。
 今回の事を踏まえて安易な名前付けはしないように肝に銘じることにした。
 内臓が引き絞られるような感覚はもう勘弁してもらいたいと思うレイであった。

 その後、今回の元凶であるタイラントマウンテンこと鋒山竜ルナについてタマちゃんを交えて考察しつつ、イベントで手に入れた報酬を眺めていると〈コア強化券〉に目がいく。
 ダンジョンコアがレベル4になってから大分時間が経つ。
 その間、冒険者が沢山訪れたり数人だが犠牲になったりしているが、それでもレベルが上がる気配が感じられない。
 レベルが上がる条件が他にあるのかもしれないが、早急に上げないといけないという訳ではない。
 だが、ここまでレベルが上がらないとなるとこの先大変になるのだろうなと思ったりしているところに強化券だ。
 これは使うほかないだろう。

「というわけでコア強化券使おうと思うんだけど、どうかな?」

≪どうって? 僕は賛成だけど≫

「いや、特にこれと言った理由はないんだけど、念の為にね。レベルが上がったら何か起こるかと思ってさ」

≪なるほどね、レベル4になった時は念話が使えるようになったもんね。それを踏まえると何か起きるかも≫

 レベルが上がる事で何かしら機能の開放がされるのではと期待を込めて使用することにした。
 その際、タマちゃんにその辺のことを聞いてみたが分からないようだった。

【ダンジョンレベルが5に上がりました。コアの化身化が開放されました】

 コア強化券を使用してレベルが上昇したコアはダンジョンレベルと同じだということがわかった。
 ダンジョンレベルが上がった事で解放されたコアの化身化。
 化身化ということは何かしらに変化するのだろうと予想できる。
 それで解放された化身化を早速タマちゃんにお願いしてみたところ、何と白髪の少女の様な姿になった。

「タマちゃんが人に変身したよ……」

「おおぉーー!! これが化身化!?」

 タマちゃんはそう言ってはしゃぎながら自分の体を眺め、コア部屋を眺めと生まれたての雛みたく見るもの全てが新鮮なようだ。

「嬉しいのはわかるんだけど……全裸はまずいって!! 服を着ないと! 一応聞くけど性別ってどっちなの? 見た感じそういうのはなさそうだけど」

 レイはタマちゃんの性別を判断する為、掌から隙間を空けてチラチラするがこれと言って分からなかった。
 何故なら人間についているモノがないのだ。
 そもそも人じゃないし、ダンジョンコアなので化身化したからと言ってそこまで再現されている訳でもなさそうだ。

「ん~どっちだろうね? そもそもダンジョンコアに性別って概念がないから判断に困るなぁー」

「そうだよねー、ダンジョンコアに性別があるとは思えないし。まぁそれは兎も角、服は早急に何とかしないとだね」

 右手を振る動作でタブを出現させ、服の項目をスクロールしてタマちゃんに合いそうな服を選んでいく。
 最終的に選んだのは、首周りにモフモフのファーが印象的な黒いコートに、内側は白のシャツ、下はハーフパンツにブーツと言った具合だ。
 全体的に黒っぽいが、その分真っ白なショートヘアの白髪が映える。

「人の服って案外窮屈なんだね。コアだった頃とは大違いだよ」

 服を着たタマちゃんはそう呟きながら窮屈そうに首回りを引っ張っている。
 その様子に苦笑いを浮かべるレイだが、元が人なのでその感覚は理解できないという顔をしている。
 服以外にも剣や杖を渡してみると、これが案外器用に使いこなしているのだ。
 少なくとも今のレイよりは実力はありそうだ。
 因みに剣以外にも魔法も使えるようで、神聖魔法の光球を放つライトボールを使って見せドヤ顔をきめるタマちゃんだが、正直ネタとしか思えない魔法だった。

「あぁー折角タマちゃんが擬人化できたのに外に出れないのは残念だねー」

「あっ、そのことについてなんだけど…………」

 タマちゃんを見ながら思ったことを口にしたのだが、何やらそのことについて苦々しい顔で答えた。
 それもとても言いにくそうな表情で。
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