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序章
運命の交差点
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今日は五月十二日、僕の誕生日だ。十八歳になり、晴れて成人になった。それと反対に心は穏やかではなかった。
十年ほど前までは十八歳の誕生日は親や友人が祝うものだった。さぞかし楽しかったに違いない。しかし、今は違う。現に僕は小さな個室にいる。
それにしても、無機質な部屋だな。改めて見渡すとベッドにトイレ、机と最低限のものはあるがそれ以外のものはない。そして、コンクリート打ちっぱなしの壁と床。まあ、装飾があっても無駄だろう。一日でダメになる可能性もあるのだから。すっかり忘れていたが、この部屋には監視カメラが取り付けてある。まるで囚人になった気分だ。こんな場所はとっとと出たいところだが、残念ながらそうはいかない。
うつらうつらしていると、けたたましくブザーが鳴る。ひどい目覚ましだ。だが、これでこの部屋ともおさらばできる。程なくして扉の鍵が開く。そこにはがっちりした体つきの男が立っていた。まるで看守のようだ。
「それで、僕はどんな超能力に目覚めたんですか?」
「君の超能力はテレパシーのようだ。だが、数メートル先が限界だと思う。こればかりは試してみないとなんとも言えんな」
男がぶっきらぼうに言う。
テレパシー。超能力の中では便利な方だと思う。問題は有効距離と使用時の反動だ。場合によっては使い時を見極めなくては。さっきの男が言ったように、こればかりは試してみないと分からない。
僕は収容施設から出ても目の前にある公園のベンチで彼を待った。結局、その日帰宅することはなかった。
「おーい、生きてるかい?」
次の瞬間、世界がぐらぐらと揺れる。地震でも起きたか? がばっと体を起こすとそこには見慣れた友人の顔があった。どうやら居眠りしていたらしい。
「梶田か、びっくりさせるなよ……」
「そりゃあ、ベンチの上で眠ってたら心配するさ。一晩中待ってくれていたのかい?」
梶田の声からは嬉しさが滲み出ている。
「まあね。親友として当たり前だろ?」手を借りてベンチから起き上がる。
「それで、君はどんな超能力に目覚めたんだい?」
「テレパシーさ」
「うまく使えれば心強いな。いや、君なら心配無用だな。僕が保証するよ」
梶田の誉め言葉と裏腹に僕の心はどんよりとしていた。彼は一日中施設に拘束されていた。それが意味することは――。
「君は、その……」うまく言葉が続かない。
「ああ、残念ながら無能力者らしい。なに、君は自分のことのように悲しんでいるようだけど、かまわないさ。超能力がなくても、僕にはこれがある」
梶田はこめかみを叩く。
この日は僕にとって特別な日になった。僕がテレパシーに目覚めたからではない。彼が能力に目覚めなかった、それが重要だった。
十年ほど前までは十八歳の誕生日は親や友人が祝うものだった。さぞかし楽しかったに違いない。しかし、今は違う。現に僕は小さな個室にいる。
それにしても、無機質な部屋だな。改めて見渡すとベッドにトイレ、机と最低限のものはあるがそれ以外のものはない。そして、コンクリート打ちっぱなしの壁と床。まあ、装飾があっても無駄だろう。一日でダメになる可能性もあるのだから。すっかり忘れていたが、この部屋には監視カメラが取り付けてある。まるで囚人になった気分だ。こんな場所はとっとと出たいところだが、残念ながらそうはいかない。
うつらうつらしていると、けたたましくブザーが鳴る。ひどい目覚ましだ。だが、これでこの部屋ともおさらばできる。程なくして扉の鍵が開く。そこにはがっちりした体つきの男が立っていた。まるで看守のようだ。
「それで、僕はどんな超能力に目覚めたんですか?」
「君の超能力はテレパシーのようだ。だが、数メートル先が限界だと思う。こればかりは試してみないとなんとも言えんな」
男がぶっきらぼうに言う。
テレパシー。超能力の中では便利な方だと思う。問題は有効距離と使用時の反動だ。場合によっては使い時を見極めなくては。さっきの男が言ったように、こればかりは試してみないと分からない。
僕は収容施設から出ても目の前にある公園のベンチで彼を待った。結局、その日帰宅することはなかった。
「おーい、生きてるかい?」
次の瞬間、世界がぐらぐらと揺れる。地震でも起きたか? がばっと体を起こすとそこには見慣れた友人の顔があった。どうやら居眠りしていたらしい。
「梶田か、びっくりさせるなよ……」
「そりゃあ、ベンチの上で眠ってたら心配するさ。一晩中待ってくれていたのかい?」
梶田の声からは嬉しさが滲み出ている。
「まあね。親友として当たり前だろ?」手を借りてベンチから起き上がる。
「それで、君はどんな超能力に目覚めたんだい?」
「テレパシーさ」
「うまく使えれば心強いな。いや、君なら心配無用だな。僕が保証するよ」
梶田の誉め言葉と裏腹に僕の心はどんよりとしていた。彼は一日中施設に拘束されていた。それが意味することは――。
「君は、その……」うまく言葉が続かない。
「ああ、残念ながら無能力者らしい。なに、君は自分のことのように悲しんでいるようだけど、かまわないさ。超能力がなくても、僕にはこれがある」
梶田はこめかみを叩く。
この日は僕にとって特別な日になった。僕がテレパシーに目覚めたからではない。彼が能力に目覚めなかった、それが重要だった。
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