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とある山荘での殺人
悲劇の始まり
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リビングに戻ると、例の男が熱心にゲームをしていた。
「よし、そこだ! いいぞ。今度は僕が銃撃する番だ!」
美少女ゲームの次はアクションか。
「よし、このポジションならいけるぞ」
だが、男が歓声をあげることはなかった。
「くそ、なんでいい場面で回線が切れるんだよ!」
ゲーム機を放り投げながら悪態をつく。そりゃあ、電波が不安定な山荘でオンラインゲームをしている方が悪いだろ、と心の中でつぶやく。
梶田は読書を諦めたのか、腕を組んで考えごとをしていた。
「山荘と言えば東野圭吾の『ある閉ざされた雪の山荘で』を思い出すな」梶田がポツリと言う。
「残念ながら、今回は雪や嵐はないが」
「クローズド・サークルだね。でもそんな状況下で殺人なんて、都合が良すぎないか?」
僕は酒で酔った勢いで本音を漏らす。
「小説と現実をごちゃまぜにするのは感心しないな。クローズド・サークルは有栖川有栖が名作をたくさん書いている。『月光ゲーム Yの悲劇"88』なんかは傑作だ。なにしろ火山の噴火で閉じ込められるなんて、今までの常識を覆している」
「梶田は新本格に肩入れしているけれど、社会派の方がいいに決まってる。美文とロジカルさを両立しつつ、リアリティがある事件の背景も丁寧に描写されてるし」
「君は記者として全国をかけずり回っているから、好みでもあるんだろう? 刑事が靴底を減らしてやっと犯人を捕まえるなんて、どこが面白いんだい?」
「そう一蹴するのは関心できないな。特に松本清張なんかは――」
僕の熱弁が続くことはなかった。
山荘中に悲鳴が響き渡る。
「おい、何かあったらしいぞ。声からするに佐々木さんのものだな。何事にも動じなく見える彼が悲鳴をあげるとは、よっぽどのことがあったに違いない」
梶田はそう言うが早いか、声の方向へ走り出した。とっさのことで何が起きたかさっぱり分からなかったが、僕も梶田に続く。
声のした個室前に着くと、腰を抜かした佐々木さんがいた。
「佐々木さん、何があったんですか?」
僕たちを見るなり部屋の中を指さす。焦げ臭い匂いが辺りを包んでいる。火事か!
初期消火すれば間に合うに違いない。そう思いま部屋を覗いたが、僕の考えは見事に外れた。
部屋の中にあったのは――焼き焦げた女の死体だった。
梶田が異変に気づくなり死体に駆け寄る。手早く調査をしようとしたその時だった。
「ちょっと待て! そいつに触れるな!」
後ろから怒声がする。声の主は鷹の目をした男だった。
「素人が何を言ってるんだ!」
僕はムッとして思わず言い返す。
「そいつは俺のセリフだ」
そう言うなり男はポケットから手帳を取り出して見せつけてきた。そこにはこう書かれていた。「超能力事件課 鹿島一」と。
「よし、そこだ! いいぞ。今度は僕が銃撃する番だ!」
美少女ゲームの次はアクションか。
「よし、このポジションならいけるぞ」
だが、男が歓声をあげることはなかった。
「くそ、なんでいい場面で回線が切れるんだよ!」
ゲーム機を放り投げながら悪態をつく。そりゃあ、電波が不安定な山荘でオンラインゲームをしている方が悪いだろ、と心の中でつぶやく。
梶田は読書を諦めたのか、腕を組んで考えごとをしていた。
「山荘と言えば東野圭吾の『ある閉ざされた雪の山荘で』を思い出すな」梶田がポツリと言う。
「残念ながら、今回は雪や嵐はないが」
「クローズド・サークルだね。でもそんな状況下で殺人なんて、都合が良すぎないか?」
僕は酒で酔った勢いで本音を漏らす。
「小説と現実をごちゃまぜにするのは感心しないな。クローズド・サークルは有栖川有栖が名作をたくさん書いている。『月光ゲーム Yの悲劇"88』なんかは傑作だ。なにしろ火山の噴火で閉じ込められるなんて、今までの常識を覆している」
「梶田は新本格に肩入れしているけれど、社会派の方がいいに決まってる。美文とロジカルさを両立しつつ、リアリティがある事件の背景も丁寧に描写されてるし」
「君は記者として全国をかけずり回っているから、好みでもあるんだろう? 刑事が靴底を減らしてやっと犯人を捕まえるなんて、どこが面白いんだい?」
「そう一蹴するのは関心できないな。特に松本清張なんかは――」
僕の熱弁が続くことはなかった。
山荘中に悲鳴が響き渡る。
「おい、何かあったらしいぞ。声からするに佐々木さんのものだな。何事にも動じなく見える彼が悲鳴をあげるとは、よっぽどのことがあったに違いない」
梶田はそう言うが早いか、声の方向へ走り出した。とっさのことで何が起きたかさっぱり分からなかったが、僕も梶田に続く。
声のした個室前に着くと、腰を抜かした佐々木さんがいた。
「佐々木さん、何があったんですか?」
僕たちを見るなり部屋の中を指さす。焦げ臭い匂いが辺りを包んでいる。火事か!
初期消火すれば間に合うに違いない。そう思いま部屋を覗いたが、僕の考えは見事に外れた。
部屋の中にあったのは――焼き焦げた女の死体だった。
梶田が異変に気づくなり死体に駆け寄る。手早く調査をしようとしたその時だった。
「ちょっと待て! そいつに触れるな!」
後ろから怒声がする。声の主は鷹の目をした男だった。
「素人が何を言ってるんだ!」
僕はムッとして思わず言い返す。
「そいつは俺のセリフだ」
そう言うなり男はポケットから手帳を取り出して見せつけてきた。そこにはこう書かれていた。「超能力事件課 鹿島一」と。
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