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3話 結婚ですか?
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「いけません、キリウス様。どうかお戻りを・・・!」
悲鳴に近い声をあげる若い女性召使いの静止を無視して、部屋に押し入ってきたのは黒いロン毛に顔の半分が黒いヒゲに覆われた長身の男だった。
熊男!?
私は口をあんぐり開けて、男の異様な姿を見た。
獣人?・・・・・いや、違う、たぶん人間。
よく見たら男には頭髪とヒゲ以外に毛は生えてない。
だけど、その様相はまるで漫画で見るような獣人。肉食獣のしなやかな筋肉を服の下に隠しているような長身だ。
「キリウス様。ここは王女の私室です。許可なく入室は許されません」侍女のサラさんは泣き顔の召使いにあごで退室するように命じると、冷たい目で黒い熊のような男と向き合った。
「侍女は下がれ。俺はレーナ姫に会いに来た」
姿にふさわしい、重さを感じる声だ。口調からすると、サラさんに命令できる立場の人みたい。
「なりません。レーナ様にお会いしたくば、まず謁見のお申し込みをなさってください」
森の殺戮者のような熊男と対峙してもたじろがないサラさんは、まるで静かなる暗殺者、猫科の肉食獣みたいだ。
私は妙なところで感心した。
「謁見などと大げさなものではない。俺は姫に会いにきただけだ」熊男は声から荒さを消したけど、引き下がる様子はない。
「会いに来るという行為が謁見だと申し上げているのです」
睨み合うサラさんと男の間に、肉食獣同士が牽制しあうようなオーラを感じて、食物連鎖の底辺みたいな私は首をすくめた。
「お戻りくださいませ」サラさんの妥協を許さない刃物のような尖った声の一撃。
「俺にはわびに来る権利がある」男が言い放つ。サラさんの冷たい声音など気にも留めていないみたい。
「レーナ姫を馬に乗せて落馬させたのは俺だからな」
!!
お前が元凶か!・・・と、ツッコミは心の中でやって、私は目を大きく開けて黒熊・・・男を見た。
「ですから、キリウス様には追って、沙汰が」サラさんはそこで詰まったように言葉を止めた。
男は口の端をゆがめると(ヒゲでよく見えないけど、ゆがめたように見えた)
「沙汰?いったい誰が沙汰を出すというんだ?あの国王陛下か?」
「無礼ですよ!いくらキリウス様でも」目に怒りをにじませて抗議するサラさんの脇をするりと抜けると、男は私のほうに向かってドカドカとやって来た。
「ひいっ」と声にならない声を上げて、私は身を守るように布団を口元まで引き上げた。
熊・・・もとい男はベッドの横に来ると膝を折った。
たぶん、私の顔は恐怖に青ざめて見えると思う。男は少し眉根を寄せた。
「レーナ姫、不慮の事故とはいえ姫に深い傷を負わせたことは、このトマール・デ・キリウス、一生の不覚。姫が目覚めたとの知らせを受け、はせ参じた次第にございます。お目通りの許可もなく面前に立つ無礼をお許しください」
なんだかまるでお芝居のセリフみたいな口上に私はどんな反応していいのか分からない。
それに、誰、あなた。私(レーナ姫)とどんな関係なの。
熊・・・じゃない、男はしばらく青い鋭い目で観察するように私を見ていたけど「姫の記憶がないというのは本当のことのようですね。私のことも覚えていらっしゃらないようだ」
はい、わかりません。
私は黙ったまま、肯定の意思をにじませた。
近くで見ると、中世の騎士のような服はかなり仕立てのよい生地で、黒いマントには紋章のようなものが銀の糸で刺繍してある。
私にでも男の身分の高さがわかった。でも野性味がありすぎて、その高さがよく分からない。
ふーーっと、男の黒いヒゲの間から大げさとも思える溜息がもれた。
「なんとおいたわしい。将来の夫となるべき男の顔もお忘れだとは」
・・・・・・・・・・・・・
はいぃぃぃ!?
夫!?夫ってゆったよね!?今、夫って、あの・・・
えぇ?なに、このヒゲづらのおっさんが私・・・いや、レーナの!?
「お・・・夫?」
「キリウス様!!」私の声にサラさんの怒気をはらんだ声が上書きされた。
「まだキリウス様が王女の婿と決まったわけではありません。めったなことは口になさらぬように」
「ふん」男は鼻でせせら笑う。「俺以外の誰が婿になるっていうんだ?家柄も地位も身分も、他の奴らより抜きん出ていると思うが?」
あ。そうか、ここは異世界で、感覚としたら中世なんだ。王族ともなれば愛や恋で結婚するわけじゃない。政略結婚は当たり前。
よかった~~野生の肉食獣みたいなのがレーナの趣味なのかと焦っちゃったよ・・・
って、そういう問題じゃないわ!
安堵したのも束の間。私は安堵してる場合じゃないことに気がついた。
え、もしかしたら私、この熊と結婚しなきゃいけないの!?
長話は姫のお体に障りますゆえ、と、男は来たときと同様、荒々しく扉を開けて出ていった。
そっとサラさんを見ると無表情に怒りのオーラをまとっている。
ここが日本なら「塩をまいときなさい」とでも言うのだろう。
「サラさん、今のクマ・・・殿方はいったいどなた?」
サラさんは私の布団を整えながら「私のことはサラとお呼び捨てくださいませ」と言った。
「はい」従順なのが私の取り柄だ。
よろしい、とサラさんは頷くと教科書を読むように説明を始めた。
「今のおかたは国王陛下の重臣となる4名の大臣の中の一人で、トマール・デ・キリウス公爵様でございます。先月、父君のカエサル・デ・キリウス公爵様が身罷われましたので、爵位を継ぎました」
それから、とサラさんは続けた「先月までは病床の父君の変わりに大臣代理を務めておりましたが、父君ご逝去の折り、正式に大臣の任に就きました」
なんか複雑だな、と思いながら私は真面目な生徒のようにサラさんの説明に耳を傾ける。
「キリウス様は大臣位にある貴族の中では、地位、身分、資産、武勲、どれをとっても申し分のないおかたです」
それだけ聞けば立派な人物だと思う・・・けど。
「ただ・・・何事も武力で解決しようという傾向があり・・・少々思慮に欠けるというか、傍若無人・・・いえ、おおらか過ぎるところがおありになるというか・・・」
サラさん、苦しい。どう表現をオブラートにくるんでマイルドにしても要するに体育会系バカってことでしょ?
そんな男と私は
「私は彼と結婚しなければならないのですか?」
琥珀色の瞳を潤ませて鈴の声を不安げに震わせてみた。全面的に『結婚なんか嫌よ』感を漂わせてみたのだけど。
「さようでございますね」一刀両断された。
「けれど、必ずしもキリウス様と結婚、というわけではございません」
「はい?」
「大臣は4名おりますゆえ、その中のどなたかをお選びになれます」
婿候補の選択肢はあるってこと?でも、そもそも結婚はするのが大前提なの?
「この国の法律ですから」
まるで私の心を読んだようにサラさんが答えた。なんだか怖いよ、この人。
「この国の法律を説明する前に、レーナ様には国王陛下にお会いしていただく必要があります」
国王に・・・父親に会う?
「そのほうが納得していただけると存じますので」
納得?どういうことだろう?
しかし、いくら父親でも一国の王となると、寝間着にスリッパで部屋を訪ねるわけにはいかず。私もまだ、歩けるほどには回復していない。
王との謁見は後日、ということになった。
国王と会う。いったいレーナの父親ってどんな人なんだろう。
父親の前で他人の私にちゃんと娘らしい振る舞いができるのだろうか。ぼろが出るような言動をしてしまったらどうしよう。不安な気持ちを抑えながら私は眠りについた。
昏睡から目覚めて7日目の朝だ。
頭の包帯も取れ、脈も正常。もう普通の食事でもよかろうと、レイブラント医師の判断で出された朝食は目を見張るものだった。
ふわふわのマシュマロみたいに柔らかい白いパン。野苺、ブドウ、柑橘系果物のジャムに仔牛肉のロースト、季節の野菜のサラダにと、ベッドテーブルでは収まりきれないほどの皿数だ。
銀のスプーンで温かく湯気をたてるスープを口に運びながら、私は昨日まで朝昼晩と食べていたオートミールのような味のないドロドロとしたものを思い出す。
アレがこの世界での普段の食事だったら、そのうちブチ切れた私が、「こんなもん喰えるかーっ」って日本の古代儀式『ちゃぶ台返し』をしていただろう。
食べるものは実に人間の生きるモチベーションになるのだと、優しく体に染み入るスープの味を堪能しながら私は得心した。
朝食を終えると、私の旺盛な食欲と顔色を見ていたサラさんが、体力の回復を確信して国王に会うための着替えを召使いに命じた。
単に着替えって言っても、これが大仕事だった。
高貴なやんごとない姫君は一人では風呂に入ることすら許されず、どんなに固辞しても無駄で、私は3人の少女召使いに猫足の白いバスタブに沈められ、体の隅々まで洗われることになった。
とんだ羞恥プレイだ。
救いは私の、つまりレーナの体が人前に晒しても恥ずかしくないほど、見事なプロポーションだったってこと。
水をはじくシミひとつない真っ白な肌に彫像のように均整のとれた体。
この顔にこの体は反則やろ。とオッサンみたいなつぶやきは少女召使いたちには聞こえなかったみたいだけど。
それにしても。私の貧相な顔と体に転移したであろうレーナ姫には、本当に申し訳ない。
遠い現実世界にいるはずのレーナ姫に私は心から詫びた。
お風呂でピカピカに磨き上げられた後は、召使いたちの手によって豪華に飾り立てられていく。
袖口と胸元にふんだんにレースがあしらわれ、細部にまで刺繍がほどこされた空色のドレス。トルコマリンに似た宝石を散りばめたティアラ。どれも小島美里だったときには見たこともない贅沢品だった。
服を着るだけで1時間以上はかかった。これから出勤なら完全に遅刻だ。
私の出来栄えを最終チェックしたサラさんは「では、まいりましょう」と、先に立って優雅に歩き出す。
いざ、国王陛下のもとへーーーー
悲鳴に近い声をあげる若い女性召使いの静止を無視して、部屋に押し入ってきたのは黒いロン毛に顔の半分が黒いヒゲに覆われた長身の男だった。
熊男!?
私は口をあんぐり開けて、男の異様な姿を見た。
獣人?・・・・・いや、違う、たぶん人間。
よく見たら男には頭髪とヒゲ以外に毛は生えてない。
だけど、その様相はまるで漫画で見るような獣人。肉食獣のしなやかな筋肉を服の下に隠しているような長身だ。
「キリウス様。ここは王女の私室です。許可なく入室は許されません」侍女のサラさんは泣き顔の召使いにあごで退室するように命じると、冷たい目で黒い熊のような男と向き合った。
「侍女は下がれ。俺はレーナ姫に会いに来た」
姿にふさわしい、重さを感じる声だ。口調からすると、サラさんに命令できる立場の人みたい。
「なりません。レーナ様にお会いしたくば、まず謁見のお申し込みをなさってください」
森の殺戮者のような熊男と対峙してもたじろがないサラさんは、まるで静かなる暗殺者、猫科の肉食獣みたいだ。
私は妙なところで感心した。
「謁見などと大げさなものではない。俺は姫に会いにきただけだ」熊男は声から荒さを消したけど、引き下がる様子はない。
「会いに来るという行為が謁見だと申し上げているのです」
睨み合うサラさんと男の間に、肉食獣同士が牽制しあうようなオーラを感じて、食物連鎖の底辺みたいな私は首をすくめた。
「お戻りくださいませ」サラさんの妥協を許さない刃物のような尖った声の一撃。
「俺にはわびに来る権利がある」男が言い放つ。サラさんの冷たい声音など気にも留めていないみたい。
「レーナ姫を馬に乗せて落馬させたのは俺だからな」
!!
お前が元凶か!・・・と、ツッコミは心の中でやって、私は目を大きく開けて黒熊・・・男を見た。
「ですから、キリウス様には追って、沙汰が」サラさんはそこで詰まったように言葉を止めた。
男は口の端をゆがめると(ヒゲでよく見えないけど、ゆがめたように見えた)
「沙汰?いったい誰が沙汰を出すというんだ?あの国王陛下か?」
「無礼ですよ!いくらキリウス様でも」目に怒りをにじませて抗議するサラさんの脇をするりと抜けると、男は私のほうに向かってドカドカとやって来た。
「ひいっ」と声にならない声を上げて、私は身を守るように布団を口元まで引き上げた。
熊・・・もとい男はベッドの横に来ると膝を折った。
たぶん、私の顔は恐怖に青ざめて見えると思う。男は少し眉根を寄せた。
「レーナ姫、不慮の事故とはいえ姫に深い傷を負わせたことは、このトマール・デ・キリウス、一生の不覚。姫が目覚めたとの知らせを受け、はせ参じた次第にございます。お目通りの許可もなく面前に立つ無礼をお許しください」
なんだかまるでお芝居のセリフみたいな口上に私はどんな反応していいのか分からない。
それに、誰、あなた。私(レーナ姫)とどんな関係なの。
熊・・・じゃない、男はしばらく青い鋭い目で観察するように私を見ていたけど「姫の記憶がないというのは本当のことのようですね。私のことも覚えていらっしゃらないようだ」
はい、わかりません。
私は黙ったまま、肯定の意思をにじませた。
近くで見ると、中世の騎士のような服はかなり仕立てのよい生地で、黒いマントには紋章のようなものが銀の糸で刺繍してある。
私にでも男の身分の高さがわかった。でも野性味がありすぎて、その高さがよく分からない。
ふーーっと、男の黒いヒゲの間から大げさとも思える溜息がもれた。
「なんとおいたわしい。将来の夫となるべき男の顔もお忘れだとは」
・・・・・・・・・・・・・
はいぃぃぃ!?
夫!?夫ってゆったよね!?今、夫って、あの・・・
えぇ?なに、このヒゲづらのおっさんが私・・・いや、レーナの!?
「お・・・夫?」
「キリウス様!!」私の声にサラさんの怒気をはらんだ声が上書きされた。
「まだキリウス様が王女の婿と決まったわけではありません。めったなことは口になさらぬように」
「ふん」男は鼻でせせら笑う。「俺以外の誰が婿になるっていうんだ?家柄も地位も身分も、他の奴らより抜きん出ていると思うが?」
あ。そうか、ここは異世界で、感覚としたら中世なんだ。王族ともなれば愛や恋で結婚するわけじゃない。政略結婚は当たり前。
よかった~~野生の肉食獣みたいなのがレーナの趣味なのかと焦っちゃったよ・・・
って、そういう問題じゃないわ!
安堵したのも束の間。私は安堵してる場合じゃないことに気がついた。
え、もしかしたら私、この熊と結婚しなきゃいけないの!?
長話は姫のお体に障りますゆえ、と、男は来たときと同様、荒々しく扉を開けて出ていった。
そっとサラさんを見ると無表情に怒りのオーラをまとっている。
ここが日本なら「塩をまいときなさい」とでも言うのだろう。
「サラさん、今のクマ・・・殿方はいったいどなた?」
サラさんは私の布団を整えながら「私のことはサラとお呼び捨てくださいませ」と言った。
「はい」従順なのが私の取り柄だ。
よろしい、とサラさんは頷くと教科書を読むように説明を始めた。
「今のおかたは国王陛下の重臣となる4名の大臣の中の一人で、トマール・デ・キリウス公爵様でございます。先月、父君のカエサル・デ・キリウス公爵様が身罷われましたので、爵位を継ぎました」
それから、とサラさんは続けた「先月までは病床の父君の変わりに大臣代理を務めておりましたが、父君ご逝去の折り、正式に大臣の任に就きました」
なんか複雑だな、と思いながら私は真面目な生徒のようにサラさんの説明に耳を傾ける。
「キリウス様は大臣位にある貴族の中では、地位、身分、資産、武勲、どれをとっても申し分のないおかたです」
それだけ聞けば立派な人物だと思う・・・けど。
「ただ・・・何事も武力で解決しようという傾向があり・・・少々思慮に欠けるというか、傍若無人・・・いえ、おおらか過ぎるところがおありになるというか・・・」
サラさん、苦しい。どう表現をオブラートにくるんでマイルドにしても要するに体育会系バカってことでしょ?
そんな男と私は
「私は彼と結婚しなければならないのですか?」
琥珀色の瞳を潤ませて鈴の声を不安げに震わせてみた。全面的に『結婚なんか嫌よ』感を漂わせてみたのだけど。
「さようでございますね」一刀両断された。
「けれど、必ずしもキリウス様と結婚、というわけではございません」
「はい?」
「大臣は4名おりますゆえ、その中のどなたかをお選びになれます」
婿候補の選択肢はあるってこと?でも、そもそも結婚はするのが大前提なの?
「この国の法律ですから」
まるで私の心を読んだようにサラさんが答えた。なんだか怖いよ、この人。
「この国の法律を説明する前に、レーナ様には国王陛下にお会いしていただく必要があります」
国王に・・・父親に会う?
「そのほうが納得していただけると存じますので」
納得?どういうことだろう?
しかし、いくら父親でも一国の王となると、寝間着にスリッパで部屋を訪ねるわけにはいかず。私もまだ、歩けるほどには回復していない。
王との謁見は後日、ということになった。
国王と会う。いったいレーナの父親ってどんな人なんだろう。
父親の前で他人の私にちゃんと娘らしい振る舞いができるのだろうか。ぼろが出るような言動をしてしまったらどうしよう。不安な気持ちを抑えながら私は眠りについた。
昏睡から目覚めて7日目の朝だ。
頭の包帯も取れ、脈も正常。もう普通の食事でもよかろうと、レイブラント医師の判断で出された朝食は目を見張るものだった。
ふわふわのマシュマロみたいに柔らかい白いパン。野苺、ブドウ、柑橘系果物のジャムに仔牛肉のロースト、季節の野菜のサラダにと、ベッドテーブルでは収まりきれないほどの皿数だ。
銀のスプーンで温かく湯気をたてるスープを口に運びながら、私は昨日まで朝昼晩と食べていたオートミールのような味のないドロドロとしたものを思い出す。
アレがこの世界での普段の食事だったら、そのうちブチ切れた私が、「こんなもん喰えるかーっ」って日本の古代儀式『ちゃぶ台返し』をしていただろう。
食べるものは実に人間の生きるモチベーションになるのだと、優しく体に染み入るスープの味を堪能しながら私は得心した。
朝食を終えると、私の旺盛な食欲と顔色を見ていたサラさんが、体力の回復を確信して国王に会うための着替えを召使いに命じた。
単に着替えって言っても、これが大仕事だった。
高貴なやんごとない姫君は一人では風呂に入ることすら許されず、どんなに固辞しても無駄で、私は3人の少女召使いに猫足の白いバスタブに沈められ、体の隅々まで洗われることになった。
とんだ羞恥プレイだ。
救いは私の、つまりレーナの体が人前に晒しても恥ずかしくないほど、見事なプロポーションだったってこと。
水をはじくシミひとつない真っ白な肌に彫像のように均整のとれた体。
この顔にこの体は反則やろ。とオッサンみたいなつぶやきは少女召使いたちには聞こえなかったみたいだけど。
それにしても。私の貧相な顔と体に転移したであろうレーナ姫には、本当に申し訳ない。
遠い現実世界にいるはずのレーナ姫に私は心から詫びた。
お風呂でピカピカに磨き上げられた後は、召使いたちの手によって豪華に飾り立てられていく。
袖口と胸元にふんだんにレースがあしらわれ、細部にまで刺繍がほどこされた空色のドレス。トルコマリンに似た宝石を散りばめたティアラ。どれも小島美里だったときには見たこともない贅沢品だった。
服を着るだけで1時間以上はかかった。これから出勤なら完全に遅刻だ。
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