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魔女の悪巧み
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・・・え?なんで?なんで?なんで?
目を覚まして、私はパニックに襲われた。
よく漫画であるシチュエーション「目を覚ましたら、見知らぬ男と寝てました」的な。
いや、レオナードは見知らぬ男じゃないけど。なんで彼が隣で寝てるの?
というか、いつの間に私、寝たの?
昨日・・・そうだ、キリウスの手紙を読んで・・・
そう、すごく・・・すごくショックで、悲しかった記憶がある。それから、自分がどうなったのかがわからない。
きっと何かとてつもないことがあったのだろうと思う。じゃなきゃ、レオナードがいっしょに寝てるはずはない。
いったい何があったのだろうとベッドの中で思案していたら、レオナードが起きたらしく、静かに目を開けた。
「おはよう、レオナード」と私が声をかけると、レオナードは「おはようございます、レーナさ・・・」
言いかけてガバッとはね起きた。
「わ、私は、いつの間に寝て・・・ああっ、申し訳ありません、私としたことが・・・あ、でも、レーナ様、私は別にやましいことは何も・・・ただ、レーナ様が抱いてほしいとおっしゃるので」
「ええっ、私が?」
今度は私が真っ赤になって焦る番だった。「私が、抱いて・・・って。え、じゃあ、私たち・・・してしまったの?」
「大丈夫です。何もしていません。踏みとどまりまし・・・いえ、ただ、温めて差し上げただけです。誓って、何もしていません」
そういえば、レオナードも私もちゃんと服を着てる。
私は恥ずかしさに穴があったら埋まりたい気分だった。
「ごめんなさい。レオナード・・・なんか、ホントにごめんなさい」
侍従は服をきれいに整えると、いつもの沈着冷静な表情になった。
「いえ、それよりもレーナ様、ご気分はいかがですか?朝食は召し上がりますか?」
私は頷いた。
食べよう。食べないと力も元気も出ない。
私は扉を開けて部屋を出ようとしている侍従を呼び止めて、微笑んだ。
「ありがとう、レオナード。私・・・昨日はどうかしてたの。あんな、手紙なんかで、キリウスことを信じられなくなるなんて」
「ええ、私も、キリウス様に何かあったのだと思います。大臣たちが、確認を急いでおりますので、レーナ様はキリウス様を信じていてください」
レオナードが穏やかに微笑む。キリウスが信頼してるだけあって、やっぱりよい人だ。彼が隣で寝てくれたおかげで久しぶりにちゃんと眠れた気がする。
メソメソしててもしょうがない。
キリウスに会って、きちんと言葉を聞かないと私も納得できない。
身重の体でヨークトリア国までの馬車は無理だ。何かいい移動手段がないか調べてみよう。前向きな気分になった私は召使いが運んできてくれた朝食を全部たいらげた。
なぜ、こんなことになってる。
喉の渇きで目が覚めたキリウスは、自分の足首ががっちり足枷で拘束されているのを見て、顔を顰めた。
眠り薬で眠らさせて、起きたらベッドとテーブル、椅子しかない殺風景な部屋にいて、しかも足枷付きだ。
理由がわからない。
窓のない部屋で灯りは燭台のロウソクだけだ。今が朝か夜かさえも定かではない。でも、喉の渇きと飢えからずいぶんと時はたった気がする。
足枷は鉄製の頑丈なもので、素手では外せそうにもなかった。鎖は備え付けのベッドの足に括られている。ベッドを引きずっても移動はできそうにない。
レーナは、どうしているだろうか。キリウスの頭にレーナの顔が浮かぶ。
約束の日に帰らない俺をさぞかし心配しているだろう。
自分のこの状況をレーナやローマリウスの大臣たちは知ってるのだろうか。いや、知ってたら何か手を打つはずだ。
コツコツと足音が聞こえた。歩幅が小さく、体重が軽い足音だ。女か子供かとキリウスは耳を欹てた。
「あら、やっと起きたのね」
扉が開いて、燃えるような赤い髪をした派手な顔の作りをした女が入ってきた。
「マーガレッタ王女?」
「眠り薬が強力すぎたみたいね。丸2日も目を覚まさなくて心配したわ]
王女がベッドに腰かけているキリウスの横にもたれかかるように腰をかけた。避けようとしたが足枷に阻まれてキリウスは顔を顰めた。
「お腹がすいたでしょ?お食事はいかが?」マーガレッタ王女は色っぽい眼差しでキリウスを見上げた。
「食事などいらない。それよりも、俺をここから出せ」
「あら、それは駄目よ」
意味ありげに赤い唇の端を上げて王女が笑いながら、キリウスの太ももに手をのせた。
「なぜだ」
端正な顔を嫌悪に歪めながらキリウスは太ももに添えられた手を払った。
「貴方はここで私と愛し合うの。わかる?裸になって交わるのよ」
王女の率直な言葉にキリウスの顔の険がますます深くなる。「だから、それは断ったはずだが?」
「じゃあ、ここから出してあげない。貴方が私と愛し合うまでは、絶対出してあげない」
王女には自信があった。交わってしまえば、自分は男を虜にできる、という絶大な自信。
レーナのような小便臭い小娘では味わえない快楽を自分は齎してやれる。ローマリウスの王も私の性戯の虜になるに決まってる。
「俺が王女を抱くことはない」
キリウスの断言にマーガレッタ王女は眉をひそめた「なぜ、そう言いきれるの?」
「俺が抱きたいのはレーナだけだからだ」
マーガレッタ王女は目に怒りを宿して、笑った。
「そう、今はそうでも、そのうち気が変わるわ。人って弱いものだものね」
例えば、と、王女は言った。
「一杯の冷たい水欲しさに人を殺めることもあるわ」
キリウスは急に喉の渇きを覚え、悪寒が走った。
「水や食べ物が欲しかったら、呼んでね。懇願を聞かせてちょうだい」
マーガレッタ王女は艶然と笑うと、部屋を出ていった。
「マーガレッタ王女」
年老いた宰相が側近も連れずに廊下を歩いているマーガレッタ王女を呼び止めた。
「ローマリウスのベネジクト大臣がローマリウス王に会わせろと、おっしゃってますが」
再三の催促に宰相は困り果て、疲れを顔に張り付かせていた。
「あら、残念ね。ローマリウス王は私の褥にいらっしゃるわ。まだお国には帰りたくないそうよ。大臣のお顔も見たくないそうよ。そう大臣には伝えてちょうだい」
宰相は眉尻を下げて
「王女、火遊びもたいがいになさってください。ローマリウスと事は構えたくはありません」
「なによ、恋愛は自由でしょ。ローマリウスの王は私を愛してるっておっしゃってるのよ」
つんと唇を尖らせるマーガレッタ王女に宰相は暗い眼差しを向けた。
成人しても政治のことなど何も分からない姫にモノをいうのは無駄だとあきらめた顔だ。
しかし、レーナ女王への溺愛ぶりが有名なあのローマリウスの王がうちの姫などに篭絡されるものだろうか、と宰相は疑心の目を向けた。
「あ、それから、何かローマリウス王が直筆で書かれた書文ってあるかしら?」
マーガレッタ王女の問いに宰相は首を傾げながら
「たしか、誕生祝いのパーティに出席の旨をしたためた書簡があったと思いますが」
マーガレッタ王女は「それはよかったわ」と悪だくみをする魔女のように楽しそうに笑った。
目を覚まして、私はパニックに襲われた。
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いや、レオナードは見知らぬ男じゃないけど。なんで彼が隣で寝てるの?
というか、いつの間に私、寝たの?
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そう、すごく・・・すごくショックで、悲しかった記憶がある。それから、自分がどうなったのかがわからない。
きっと何かとてつもないことがあったのだろうと思う。じゃなきゃ、レオナードがいっしょに寝てるはずはない。
いったい何があったのだろうとベッドの中で思案していたら、レオナードが起きたらしく、静かに目を開けた。
「おはよう、レオナード」と私が声をかけると、レオナードは「おはようございます、レーナさ・・・」
言いかけてガバッとはね起きた。
「わ、私は、いつの間に寝て・・・ああっ、申し訳ありません、私としたことが・・・あ、でも、レーナ様、私は別にやましいことは何も・・・ただ、レーナ様が抱いてほしいとおっしゃるので」
「ええっ、私が?」
今度は私が真っ赤になって焦る番だった。「私が、抱いて・・・って。え、じゃあ、私たち・・・してしまったの?」
「大丈夫です。何もしていません。踏みとどまりまし・・・いえ、ただ、温めて差し上げただけです。誓って、何もしていません」
そういえば、レオナードも私もちゃんと服を着てる。
私は恥ずかしさに穴があったら埋まりたい気分だった。
「ごめんなさい。レオナード・・・なんか、ホントにごめんなさい」
侍従は服をきれいに整えると、いつもの沈着冷静な表情になった。
「いえ、それよりもレーナ様、ご気分はいかがですか?朝食は召し上がりますか?」
私は頷いた。
食べよう。食べないと力も元気も出ない。
私は扉を開けて部屋を出ようとしている侍従を呼び止めて、微笑んだ。
「ありがとう、レオナード。私・・・昨日はどうかしてたの。あんな、手紙なんかで、キリウスことを信じられなくなるなんて」
「ええ、私も、キリウス様に何かあったのだと思います。大臣たちが、確認を急いでおりますので、レーナ様はキリウス様を信じていてください」
レオナードが穏やかに微笑む。キリウスが信頼してるだけあって、やっぱりよい人だ。彼が隣で寝てくれたおかげで久しぶりにちゃんと眠れた気がする。
メソメソしててもしょうがない。
キリウスに会って、きちんと言葉を聞かないと私も納得できない。
身重の体でヨークトリア国までの馬車は無理だ。何かいい移動手段がないか調べてみよう。前向きな気分になった私は召使いが運んできてくれた朝食を全部たいらげた。
なぜ、こんなことになってる。
喉の渇きで目が覚めたキリウスは、自分の足首ががっちり足枷で拘束されているのを見て、顔を顰めた。
眠り薬で眠らさせて、起きたらベッドとテーブル、椅子しかない殺風景な部屋にいて、しかも足枷付きだ。
理由がわからない。
窓のない部屋で灯りは燭台のロウソクだけだ。今が朝か夜かさえも定かではない。でも、喉の渇きと飢えからずいぶんと時はたった気がする。
足枷は鉄製の頑丈なもので、素手では外せそうにもなかった。鎖は備え付けのベッドの足に括られている。ベッドを引きずっても移動はできそうにない。
レーナは、どうしているだろうか。キリウスの頭にレーナの顔が浮かぶ。
約束の日に帰らない俺をさぞかし心配しているだろう。
自分のこの状況をレーナやローマリウスの大臣たちは知ってるのだろうか。いや、知ってたら何か手を打つはずだ。
コツコツと足音が聞こえた。歩幅が小さく、体重が軽い足音だ。女か子供かとキリウスは耳を欹てた。
「あら、やっと起きたのね」
扉が開いて、燃えるような赤い髪をした派手な顔の作りをした女が入ってきた。
「マーガレッタ王女?」
「眠り薬が強力すぎたみたいね。丸2日も目を覚まさなくて心配したわ]
王女がベッドに腰かけているキリウスの横にもたれかかるように腰をかけた。避けようとしたが足枷に阻まれてキリウスは顔を顰めた。
「お腹がすいたでしょ?お食事はいかが?」マーガレッタ王女は色っぽい眼差しでキリウスを見上げた。
「食事などいらない。それよりも、俺をここから出せ」
「あら、それは駄目よ」
意味ありげに赤い唇の端を上げて王女が笑いながら、キリウスの太ももに手をのせた。
「なぜだ」
端正な顔を嫌悪に歪めながらキリウスは太ももに添えられた手を払った。
「貴方はここで私と愛し合うの。わかる?裸になって交わるのよ」
王女の率直な言葉にキリウスの顔の険がますます深くなる。「だから、それは断ったはずだが?」
「じゃあ、ここから出してあげない。貴方が私と愛し合うまでは、絶対出してあげない」
王女には自信があった。交わってしまえば、自分は男を虜にできる、という絶大な自信。
レーナのような小便臭い小娘では味わえない快楽を自分は齎してやれる。ローマリウスの王も私の性戯の虜になるに決まってる。
「俺が王女を抱くことはない」
キリウスの断言にマーガレッタ王女は眉をひそめた「なぜ、そう言いきれるの?」
「俺が抱きたいのはレーナだけだからだ」
マーガレッタ王女は目に怒りを宿して、笑った。
「そう、今はそうでも、そのうち気が変わるわ。人って弱いものだものね」
例えば、と、王女は言った。
「一杯の冷たい水欲しさに人を殺めることもあるわ」
キリウスは急に喉の渇きを覚え、悪寒が走った。
「水や食べ物が欲しかったら、呼んでね。懇願を聞かせてちょうだい」
マーガレッタ王女は艶然と笑うと、部屋を出ていった。
「マーガレッタ王女」
年老いた宰相が側近も連れずに廊下を歩いているマーガレッタ王女を呼び止めた。
「ローマリウスのベネジクト大臣がローマリウス王に会わせろと、おっしゃってますが」
再三の催促に宰相は困り果て、疲れを顔に張り付かせていた。
「あら、残念ね。ローマリウス王は私の褥にいらっしゃるわ。まだお国には帰りたくないそうよ。大臣のお顔も見たくないそうよ。そう大臣には伝えてちょうだい」
宰相は眉尻を下げて
「王女、火遊びもたいがいになさってください。ローマリウスと事は構えたくはありません」
「なによ、恋愛は自由でしょ。ローマリウスの王は私を愛してるっておっしゃってるのよ」
つんと唇を尖らせるマーガレッタ王女に宰相は暗い眼差しを向けた。
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しかし、レーナ女王への溺愛ぶりが有名なあのローマリウスの王がうちの姫などに篭絡されるものだろうか、と宰相は疑心の目を向けた。
「あ、それから、何かローマリウス王が直筆で書かれた書文ってあるかしら?」
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