歪んだ日常の片隅で

暁基朋也

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明日の投稿

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SNSの投稿は、俺のちょっとした趣味だった。
昼に食べたラーメンの写真や、通勤途中の空、猫の動画のリポスト――
誰かに見せたいというより、日記代わりだ。
タイムラインに自分の記録が並んでいくのが、なんとなく心地よかった。

それは、ある朝のことだった。
いつものようにスマホを開くと、自分のアカウントに見慣れない投稿があった。

「電車にスマホを置き忘れて、1時間遅刻。最悪の朝。」

……そんなこと、俺は書いていない。
アカウントの乗っ取りかと慌てて確認するも、ログイン履歴は自分のスマホのみ。
パスワードも変更し、二段階認証もオンにした。
少し気味が悪かったが、「寝ぼけて投稿したのかも」と思い直す。

けれど、翌日――
俺は本当にスマホを電車に置き忘れ、会社に1時間遅刻した。

まさか、と思った。
けど、偶然だろうと自分に言い聞かせた。

だが数日後、また知らない投稿が表示された。

「上司に提出ミスを怒鳴られて、気まずい空気。」

もちろん俺はそんなことしていない。
念のため投稿を削除し、ログイン情報も再確認した。
すべて正常。誰も不正に入ってはいない。

……にもかかわらず、翌日、俺は本当に上司に怒鳴られた。

以降、同じような投稿が3日に1回のペースで現れ始めた。
投稿の内容はどれも、**“明日起こること”**だった。

初めての胃痛、落とした財布、知らない番号からの無言電話。
すべて、前日の投稿に書かれていた。

投稿は決まって、午前3時ちょうどにされている。
その時間、俺は確実に寝ている。

もう、偶然なんて言えなかった。

俺はスマホを初期化し、パスワードも10桁のランダム文字列に変えた。
アプリの連携もすべて切った。
それでも、“明日の投稿”は止まらなかった。

投稿は、どこか俺の生活を覗いているようだった。
日常の小さな出来事を、ひとつずつ先回りして綴っていた。

そして、ある晩――
午前3時前に目覚めた俺は、投稿の瞬間を見てやろうと待ち構えた。
2時58分、2時59分……
3時00分――

その瞬間、スマホの通知が鳴った。

【投稿されました】

「今日、すべてを知ってしまう。もう後戻りはできない。」

心臓が跳ね上がった。
震える手でその投稿を開く。
「いいね」はゼロ。コメントもゼロ。
でもそこには、知らない“タグ”が付いていた。

#視てるよ
#記録は続く
#お前は誰だ

誰かが――俺を見ている?

背筋が冷たくなり、スマホを落としかけた。
逃げるようにアプリを閉じたが、今度は通知がもう一度鳴った。

【あなたの下書きに保存されました】

開いてみると、そこには新しい投稿の草稿が表示されていた。

「今日、彼は気づく。
彼の“投稿”は、誰かの“観察記録”だったということに。」

投稿者は俺じゃない。
じゃあ、誰が俺の生活を――

気づいたときには、またスマホが震えていた。
画面には、新たな通知。

【あなたのアカウントに、次の投稿が予約されています】

「明日、彼は消える。」
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