8 / 17
明日の投稿
しおりを挟む
SNSの投稿は、俺のちょっとした趣味だった。
昼に食べたラーメンの写真や、通勤途中の空、猫の動画のリポスト――
誰かに見せたいというより、日記代わりだ。
タイムラインに自分の記録が並んでいくのが、なんとなく心地よかった。
それは、ある朝のことだった。
いつものようにスマホを開くと、自分のアカウントに見慣れない投稿があった。
「電車にスマホを置き忘れて、1時間遅刻。最悪の朝。」
……そんなこと、俺は書いていない。
アカウントの乗っ取りかと慌てて確認するも、ログイン履歴は自分のスマホのみ。
パスワードも変更し、二段階認証もオンにした。
少し気味が悪かったが、「寝ぼけて投稿したのかも」と思い直す。
けれど、翌日――
俺は本当にスマホを電車に置き忘れ、会社に1時間遅刻した。
まさか、と思った。
けど、偶然だろうと自分に言い聞かせた。
だが数日後、また知らない投稿が表示された。
「上司に提出ミスを怒鳴られて、気まずい空気。」
もちろん俺はそんなことしていない。
念のため投稿を削除し、ログイン情報も再確認した。
すべて正常。誰も不正に入ってはいない。
……にもかかわらず、翌日、俺は本当に上司に怒鳴られた。
以降、同じような投稿が3日に1回のペースで現れ始めた。
投稿の内容はどれも、**“明日起こること”**だった。
初めての胃痛、落とした財布、知らない番号からの無言電話。
すべて、前日の投稿に書かれていた。
投稿は決まって、午前3時ちょうどにされている。
その時間、俺は確実に寝ている。
もう、偶然なんて言えなかった。
俺はスマホを初期化し、パスワードも10桁のランダム文字列に変えた。
アプリの連携もすべて切った。
それでも、“明日の投稿”は止まらなかった。
投稿は、どこか俺の生活を覗いているようだった。
日常の小さな出来事を、ひとつずつ先回りして綴っていた。
そして、ある晩――
午前3時前に目覚めた俺は、投稿の瞬間を見てやろうと待ち構えた。
2時58分、2時59分……
3時00分――
その瞬間、スマホの通知が鳴った。
【投稿されました】
「今日、すべてを知ってしまう。もう後戻りはできない。」
心臓が跳ね上がった。
震える手でその投稿を開く。
「いいね」はゼロ。コメントもゼロ。
でもそこには、知らない“タグ”が付いていた。
#視てるよ
#記録は続く
#お前は誰だ
誰かが――俺を見ている?
背筋が冷たくなり、スマホを落としかけた。
逃げるようにアプリを閉じたが、今度は通知がもう一度鳴った。
【あなたの下書きに保存されました】
開いてみると、そこには新しい投稿の草稿が表示されていた。
「今日、彼は気づく。
彼の“投稿”は、誰かの“観察記録”だったということに。」
投稿者は俺じゃない。
じゃあ、誰が俺の生活を――
気づいたときには、またスマホが震えていた。
画面には、新たな通知。
【あなたのアカウントに、次の投稿が予約されています】
「明日、彼は消える。」
昼に食べたラーメンの写真や、通勤途中の空、猫の動画のリポスト――
誰かに見せたいというより、日記代わりだ。
タイムラインに自分の記録が並んでいくのが、なんとなく心地よかった。
それは、ある朝のことだった。
いつものようにスマホを開くと、自分のアカウントに見慣れない投稿があった。
「電車にスマホを置き忘れて、1時間遅刻。最悪の朝。」
……そんなこと、俺は書いていない。
アカウントの乗っ取りかと慌てて確認するも、ログイン履歴は自分のスマホのみ。
パスワードも変更し、二段階認証もオンにした。
少し気味が悪かったが、「寝ぼけて投稿したのかも」と思い直す。
けれど、翌日――
俺は本当にスマホを電車に置き忘れ、会社に1時間遅刻した。
まさか、と思った。
けど、偶然だろうと自分に言い聞かせた。
だが数日後、また知らない投稿が表示された。
「上司に提出ミスを怒鳴られて、気まずい空気。」
もちろん俺はそんなことしていない。
念のため投稿を削除し、ログイン情報も再確認した。
すべて正常。誰も不正に入ってはいない。
……にもかかわらず、翌日、俺は本当に上司に怒鳴られた。
以降、同じような投稿が3日に1回のペースで現れ始めた。
投稿の内容はどれも、**“明日起こること”**だった。
初めての胃痛、落とした財布、知らない番号からの無言電話。
すべて、前日の投稿に書かれていた。
投稿は決まって、午前3時ちょうどにされている。
その時間、俺は確実に寝ている。
もう、偶然なんて言えなかった。
俺はスマホを初期化し、パスワードも10桁のランダム文字列に変えた。
アプリの連携もすべて切った。
それでも、“明日の投稿”は止まらなかった。
投稿は、どこか俺の生活を覗いているようだった。
日常の小さな出来事を、ひとつずつ先回りして綴っていた。
そして、ある晩――
午前3時前に目覚めた俺は、投稿の瞬間を見てやろうと待ち構えた。
2時58分、2時59分……
3時00分――
その瞬間、スマホの通知が鳴った。
【投稿されました】
「今日、すべてを知ってしまう。もう後戻りはできない。」
心臓が跳ね上がった。
震える手でその投稿を開く。
「いいね」はゼロ。コメントもゼロ。
でもそこには、知らない“タグ”が付いていた。
#視てるよ
#記録は続く
#お前は誰だ
誰かが――俺を見ている?
背筋が冷たくなり、スマホを落としかけた。
逃げるようにアプリを閉じたが、今度は通知がもう一度鳴った。
【あなたの下書きに保存されました】
開いてみると、そこには新しい投稿の草稿が表示されていた。
「今日、彼は気づく。
彼の“投稿”は、誰かの“観察記録”だったということに。」
投稿者は俺じゃない。
じゃあ、誰が俺の生活を――
気づいたときには、またスマホが震えていた。
画面には、新たな通知。
【あなたのアカウントに、次の投稿が予約されています】
「明日、彼は消える。」
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる