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8月の檻
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夏休み最終日――。
窓の外では、ジリジリと蝉が鳴いている。
太陽は眩しく、空はどこまでも青い。
だけど、少年・カズトの心は重く沈んでいた。
「終わってない、終わってない……!」
机の上には、白紙の宿題が山のように積まれている。
ドリル、読書感想文、自由研究、絵日記。
ひとつも手をつけていない。
遊び尽くした八月。
川遊びに、プールに、花火に、虫取り。
楽しい思い出ばかりが、日焼けした肌に刻まれている。
だけど現実は――地獄だ。
「もう無理だぁ……神様、お願いだよ。
毎日が夏休みだったらいいのに。ずっと八月だったら……!」
カズトは宿題の山に顔を伏せたまま、祈るように呟いた。
そのまま、意識が薄れていく。
そして――
目を覚ますと、カレンダーの日付は**「8月1日」**になっていた。
「え?」
何度見直しても、8月1日。
昨日までは確かに31日だったはず。
母に聞いてみても、「なに言ってるの?今日から夏休みでしょ?」と笑う。
友達も同じ反応だった。
「何言ってんだよカズト、今日からが夏休みじゃん!遊ぼーぜ!」
狐につままれたような気分だったが、次第にカズトは気づく。
――願いが、叶ったのだ。
最高の夏休みが、もう一度始まる。
それからカズトは、前よりも思いきり遊びまくった。
今度は宿題のことなど気にもせず、思うがままに。
だが、ふたたび8月31日を迎えた夜――
次の日のカレンダーも、また**「8月1日」**だった。
「……え?」
まただ。
母も、友達も、同じ反応。
「何寝ぼけてんの、今日から夏休みじゃん」
「カズトー!今日プール行こーぜ!」
再び始まった、夏休み。
そして、その次の31日も――また1日に。
カズトは、同じ1ヶ月を繰り返し始めた。
最初のうちは楽しかった。
繰り返すたびにやれることを増やし、試し、探検し、冒険もした。
でも――四回目のループを過ぎたころから、カズトはおかしなことに気づき始める。
友達との会話が、毎回まったく同じ。
言うタイミングも、笑う瞬間も、間違いなく同じ。
風景も、音も、空の雲の形まで、寸分違わない。
“新しいこと”をしようとすると、不思議なことが起きた。
例えばいつもと違う道を歩こうとすると、なぜか道が通行止めになっていたり。
お小遣いを使い切ってしまうと、次のループでは財布が空のままだったり。
ループの中で、“自由”が少しずつ失われていくような感覚。
やがて、カズトは気づく。
――これは、夢でも奇跡でもない。
――檻だ。
どれだけ夏休みを楽しんでも、どれだけ宿題から逃げても、
何も変わらない、変えられない。
終わらない夏休みが、まるで罰のように繰り返される。
願ったのは自分だ。
「ずっと八月だったら」と。
でも本当に望んでいたのは――“楽しい夏休みの終わり”だったのかもしれない。
そして、五度目の8月31日の夜。
カズトは机に向かい、白紙のドリルを開いた。
字を書く手が震える。
今さら何になるか分からない。
だけど、もしかしたら――
宿題を終わらせた先に、9月1日はあるかもしれない。
ページの端に「おわり」と書いた瞬間、
蝉の声がスッと消えた。
窓の外から、秋の虫の声が聞こえた気がした。
窓の外では、ジリジリと蝉が鳴いている。
太陽は眩しく、空はどこまでも青い。
だけど、少年・カズトの心は重く沈んでいた。
「終わってない、終わってない……!」
机の上には、白紙の宿題が山のように積まれている。
ドリル、読書感想文、自由研究、絵日記。
ひとつも手をつけていない。
遊び尽くした八月。
川遊びに、プールに、花火に、虫取り。
楽しい思い出ばかりが、日焼けした肌に刻まれている。
だけど現実は――地獄だ。
「もう無理だぁ……神様、お願いだよ。
毎日が夏休みだったらいいのに。ずっと八月だったら……!」
カズトは宿題の山に顔を伏せたまま、祈るように呟いた。
そのまま、意識が薄れていく。
そして――
目を覚ますと、カレンダーの日付は**「8月1日」**になっていた。
「え?」
何度見直しても、8月1日。
昨日までは確かに31日だったはず。
母に聞いてみても、「なに言ってるの?今日から夏休みでしょ?」と笑う。
友達も同じ反応だった。
「何言ってんだよカズト、今日からが夏休みじゃん!遊ぼーぜ!」
狐につままれたような気分だったが、次第にカズトは気づく。
――願いが、叶ったのだ。
最高の夏休みが、もう一度始まる。
それからカズトは、前よりも思いきり遊びまくった。
今度は宿題のことなど気にもせず、思うがままに。
だが、ふたたび8月31日を迎えた夜――
次の日のカレンダーも、また**「8月1日」**だった。
「……え?」
まただ。
母も、友達も、同じ反応。
「何寝ぼけてんの、今日から夏休みじゃん」
「カズトー!今日プール行こーぜ!」
再び始まった、夏休み。
そして、その次の31日も――また1日に。
カズトは、同じ1ヶ月を繰り返し始めた。
最初のうちは楽しかった。
繰り返すたびにやれることを増やし、試し、探検し、冒険もした。
でも――四回目のループを過ぎたころから、カズトはおかしなことに気づき始める。
友達との会話が、毎回まったく同じ。
言うタイミングも、笑う瞬間も、間違いなく同じ。
風景も、音も、空の雲の形まで、寸分違わない。
“新しいこと”をしようとすると、不思議なことが起きた。
例えばいつもと違う道を歩こうとすると、なぜか道が通行止めになっていたり。
お小遣いを使い切ってしまうと、次のループでは財布が空のままだったり。
ループの中で、“自由”が少しずつ失われていくような感覚。
やがて、カズトは気づく。
――これは、夢でも奇跡でもない。
――檻だ。
どれだけ夏休みを楽しんでも、どれだけ宿題から逃げても、
何も変わらない、変えられない。
終わらない夏休みが、まるで罰のように繰り返される。
願ったのは自分だ。
「ずっと八月だったら」と。
でも本当に望んでいたのは――“楽しい夏休みの終わり”だったのかもしれない。
そして、五度目の8月31日の夜。
カズトは机に向かい、白紙のドリルを開いた。
字を書く手が震える。
今さら何になるか分からない。
だけど、もしかしたら――
宿題を終わらせた先に、9月1日はあるかもしれない。
ページの端に「おわり」と書いた瞬間、
蝉の声がスッと消えた。
窓の外から、秋の虫の声が聞こえた気がした。
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