エーテルニア・コード:世界からの脱出

蒼清

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第20話:『選択の自由』、最後の対決

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​ルシアンの叫びが、世界の終焉を告げる号令となった。
巨大なデータサーバーから放たれたプログラムは、単なるノイズの奔流ではなかった。それは、エーテルニアのシステムを根幹から解体していく、世界の法則そのものを歪める「混沌」の嵐だった。空間は歪み、色彩は失われ、まるで世界が紙切れのように引き裂かれていく。無数のグリッチが、まるで牙を剥く獣のようにリオスたちに襲いかかった。
「来るぞ、みんな!気をつけろ!」
リオスは叫び、右腕に宿る「異晶」の力を引き出した。その身に宿る勇者ゼロの記憶が、剣技へと変換され、幾重にも連なる光の刃となって、迫り来るノイズの奔流を切り裂く。リオスは、仲間たちを護るように前へ踏み出し、ルシアンへと向かっていく。
だが、ルシアンは微動だにせず、リオスを冷静に見据えていた。彼の青い瞳は、リオスの剣技を構成するデータを、瞬時に解析していく。
「無駄な抵抗だ、リオス。貴様の力は、所詮この世界の不完全な『バグ』に過ぎない。貴様が放つ攻撃のアルゴリズムは、すべて私に筒抜けだ」
ルシアンの言葉と共に、リオスが放ったはずの光の刃が、まるで最初から存在していなかったかのように、虚空に霧散した。
「な、どういうことだ!?」
「私もまた、貴様と同じ『バグ』だ。だが、貴様とは違う。私はこの世界のシステムを根幹から理解している」
ルシアンは、傲慢な笑みを浮かべた。彼の能力は、リオスの剣技を構成するデータを事前に解析し、無効化する「システムの改変」。それは、リオスが持つ力の上位互換とも言える、絶望的な能力だった。彼の剣がリオスの懐に深く突き刺さり、リオスの身体から力が抜けていく。
「ぐっ…!」
追い詰められたリオスに、ルシアンは語りかける。その声は、かつての友人や仲間を思い出すかのような、深い悲しみを帯びていた。
「貴様は、ゼロと同じだ。仲間を信じ、この世界を救おうとした。だが、ゼロは一人で戦い、そして敗れた。貴様の持つ『絆』は、この世界の偽りの法則に過ぎない。所詮は、システムの都合の良いノータだ。やがて貴様も、すべてを失い、私と同じ絶望を知ることになる」
ルシアンの言葉は、リオスの心を深く抉る。彼は、かつて自分も仲間を信じて戦ったが、システムの力に抗えず、すべてを失った過去を明かす。彼の歪んだ「救済」の思想は、その絶望と孤独から生まれたものだったのだ。
「さあ選べ、リオス。この世界を道連れに、私と共に消え去るか?それとも、すべてを忘れて、この世界という檻の中で、永遠に虚構の幸福を貪るか?」
ルシアンは、リオスに究極の選択を迫る。彼の言葉は、リオスの心に深く突き刺さり、一瞬、心が揺らぐ。
(すべてを忘れて…?虚構の幸福…?…もし、俺がこの戦いに負けたら、みんなを失うのか?いや…そんなこと、させない!)
しかし、その時、リオスの脳裏に仲間たちの声が鮮明に響いた。
『リオス君…!私たち、人形じゃないよ!』
ソラの声が、リオスの心を強く震わせた。彼女は、この世界を「生きている」と言ってくれた。
『一人で戦う必要なんてない!私たちは、いつもここにいる!』
ミオの声が、彼の背中を力強く押す。彼女の言葉は、リオスの孤独を打ち砕いてくれた。
『君の『異晶』は、僕たちの希望そのものだ!』
アデルの声が、彼に勇気を与えた。彼らの言葉は、ルシアンの言葉を否定する、確固たる真実だった。
ルシアンの言葉は、もうリオスの心には届かない。彼の瞳は、強い決意の光を宿していた。
「俺は…どちらも選ばない!」
リオスは、ルシアンをまっすぐ見据え、叫んだ。
「俺たちが信じるのは、未来を自分たちで切り開く『選択の自由』だ!お前が諦めた希望を、俺が証明してやる!」
その言葉に呼応するように、リオスの右腕の「異晶」と、ルクスが強く輝き始める。ルシアンは、リオスの決意を嘲笑うかのように、すべての力を込めた最終攻撃をリオスに放った。
「これで終わりだ…!消え去るがいい、偽りの希望よ!」
その攻撃は、世界の法則を完全に無視し、リオスの存在そのものを消し去ろうとする、絶対的な破壊の光だった。
「リオス…!」
ルクスの悲痛な叫びが響く。彼女は、自らの『観測者の剣』を捨て、無防備な身一つで、リオスを守るように彼の前に飛び出した。
「ルクス!やめろ!」
リオスの叫びも虚しく、ルシアンの放った光が、ルクスの体を貫いた。その瞬間、ルクスの身体は、半透明で淡く光るデータの粒子となって、静かに、そして美しく崩れ落ちていく。
「…私は…貴方のために…創られた」
彼女の言葉は、リオスの心に深く響いた。それは、ルシアンという「絶望」と対をなす、リオスという「希望」を観測し、支えるために存在する運命だったのだ。
「貴方が…ルシアンの絶望を打ち破る、ただ一つの光…だから、リオス…」
ルクスの身体を構成していた光の粒子は、まるで約束されたかのように、リオスの身体へと吸い込まれていく。その光は、リオスの右腕に宿る「異晶」と一つになり、全身を駆け巡った。それは、リオスがゼロから受け継いだ力と、ルクスがリオスの「絆」から見出した新たな可能性が、融合する瞬間だった。
「ルクス…!」
リオスの身体は、内側から迸る眩い光に包まれる。それは、ただの力ではない。ルクスの観測者としての知識、そして彼女がリオスとの旅で獲得したすべての感情…その全てが、リオスの魂と一つになったのだ。リオスは、ルクスの優しい光を全身に纏い、まるで世界の中心に立つ光の柱のように輝いていた。
彼の瞳は、もはやルシアンのシステム改変を恐れてはいなかった。彼の剣は、ルクスの力で「真実」を映し出し、ルシアンのアルゴリズムを無効化する力を手に入れていた。
「俺は、お前との約束…絶対に、守る!」
リオスは、ルクスから受け取った『希望』を胸に、ルシアンに渾身の一撃を放った。
彼の剣は、ルシアンのシステムを突き破り、彼の心に深く突き刺さる。
ルシアンは、リオスの勝利を認め、穏やかな笑みを浮かべた。その表情は、まるで長きにわたる孤独な戦いから解放されたかのように、安堵に満ちていた。
「…貴様が、ゼロの夢の続きを見せてくれるのか。…この世界の、未来を、頼んだぞ…」
ルシアンの身体は、光の粒子となって虚空に溶けていく。まるで最初から存在していなかったかのように。そして、世界に開いた亀裂もゆっくりと塞がっていった。
戦いは終わった。
しかし、リオスたちの本当の戦いは、これから始まることを示唆して、物語は幕を閉じる。
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