オレ様傲慢王子は最強! ~王位継承権は低いが、精霊神が与えし最強の瞳を駆使して女を漁る~

ぽてさら

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第1章

第23話 『メルトVS暗殺者 ~前編~』

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 ―――時はローランドが地下室へ向かったところまでさかのぼる。

 もぬけの殻となった店内には、それぞれ武器を構えながら二人の人物が対峙していた。自らの主であるローランドが、ドロシー救出の為に地下室へ向かったのを確認したメルトはやがて口を開く。


「……おや、案外すんなりと見逃しましたね。先程はあの御方の力に反応したのでしょう?」
もっとも精霊に近しい存在に与えられると云われる『精霊眼エレメンタル・アイ』……っ、エルフ族でもないあの者が、何故ヒトの身に過ぎた寵愛・・を受けているっ………!?』


 極限まで張り詰めた空気の中、特に鋭い殺意が黒い外套で覆われた人物からほとばしる。
 性別の区別はつかなく、フードにより表情も垣間かいま見えないが―――。

 メルトは一瞬で目の前の外套の人物に肉薄した。


「貴方―――、もしかしてエルフ族ですか?」
『………ッ!!? ―――くっ……!』


 メルトが流れるような動作で鯉口こいくちると、鞘に納められた白銀の刀身が牙を剥いた。刃の表面に浮かぶ波紋はもんが空中に綺麗なあとえがく。
 もちろん本気ではなく、まずは様子見だ。

 外套の人物はメルトの素早い跳躍ちょうやくと、その言葉により一瞬反応が遅れたようであったが、手に持つ漆黒の大鎌おおがまを間に滑り込ませながら剣筋を逸らす。

 ついでとばかりに足蹴りで追撃しようとするが、難なくメルトは回避し一旦距離を取った。
 再び愛剣である『破魔の剣』をかちん、と納刀すると、涼しげな表情をしながら向き合う。


『……何故そう思う』
「単純にその『精霊眼エレメンタル・アイ』という名称をご存じだった事と、”寵愛”という言葉を口にしていたからです。『精霊』が先祖であるエルフ族は、何よりも精霊やそれに関する事を神聖視しんせいししていますからね。たとえ悟られぬように隠していても、根付いた癖は言葉の節々ふしぶしに表れるものです」
『っ………ふん、だがもしそれが分かったところで私には関係ない。―――余計なおしゃべりはここまでだ。貴様はここで始末する』


 メルトの推測に明確な肯定は示さなかったが、おそらく正解だろう。半月状に湾曲した刃を下段に構えると外套を靡かせながら襲い掛かる。


「もう少しだけお話に付き合っても良いでしょうに、ねっ!」
『貴様は危険だ。敵意や殺意は上手く隠せているが、私の一挙一動を観察しながらも、絶対に逃がすつもりは無いのだろう? 有意義な情報を得ようといわんばかりに虎視眈々と機会を窺っているのがその証拠……ッ』
「命令ですので……ふっ」


 基本的にメルトにとってローランドによる命令は絶対だ。壁になれと言われれば喜んでなるし、逃がすなと言われれば必ず逃がさない。
 なによりもこの目の前の存在は、『精霊の雫』を手引きした者、もしくは組織の関係者。精霊に選ばれた存在であるローランドをこれ以上悲しませない為にも、決して逃がす訳にはいかなかった。

 両者が鋭く振るう『破魔の剣』と大鎌が盛大にぶつかり合い、火花が散る。その激しい衝撃で空気が揺れた。

 メルトの剣の実力は実は王国の中でも五本の指に入るほどなのだが、その動きについてこれる辺り外套の人物も、相当な実力を持っている事は明白。背丈ほどある大鎌という特殊な武器を自らの手足のように扱い、そのリーチを活かした意表をつく攻撃は非常に厄介だった。

 一閃一閃の剣戟が彼女らの耳朶に力強く打ち鳴らすが、発生するその衝撃は凄まじい。その勢いは建物自体が振動するほどだ。

 しばらく刃同士の煌めきは止まないが、その刃の切先きっさきが互いの身体に吸い込まれることもない。

 やがて剣を振るう手を休めずに、メルトはふと今気が付いたかのように口を開いた。


「そういえばさっきから大鎌を振り回してばかりですね、魔法は、使わないんですかっ?」
『黙れ……ッ』
「―――今一瞬動揺しましたね。……あぁ、もしかして使えない・・・・とか?」
『黙れと言っている……ッ!!』
「くっ………っ」


 逆手で大鎌を構えると、柄の先端がメルトの腹部に直撃。勢い良く吹っ飛んだ身体が壁に衝突、元々剣戟の衝撃で脆くなっていたのか壁が崩れてそのまま街中に転がり出る。

 建物の壁が一部崩れた事により辺りは砂煙に包まれる。いきなり武器を持った人間が壁をぶち抜いてきたという事もあり、街の往来にいた『王国都市オータル』の住民はそれぞれ悲鳴をあげながら一目散に逃げていった。

 ローランド同様、メルトも認識阻害の仮面を被っているので正体がばれる事はないだろうが、街中まちなかに出て人々を驚かせてしまったことに思わずメルトは端正な表情を歪める。この違法薬物店で決着をつける算段だったからだ。

 メルトは剣で支えながら立ち上がるが、衝撃が想像以上に大きかったのか口の中に血の味が広がる。

 そして瞬時に頭の中で軌道修正。ローランドにより『逃がすな』という命令を受けていたが、こうして街中に出てしまった以上は、あの外套の人物が住民を無差別に攻撃するという可能性も否めない。

 ―――人の少ない場所へ誘導しながら戦闘続行。もし住民を狙った場合、人命を最優先にしつつ相手を無力化する。


(むぅ、逃がすなとローランド様に言われたのでいざという時の為に余力を残しながら戦っていましたが、どうやら相手の実力を少しだけ見誤っていましたね……どうやら先程の言葉が琴線に触れたようですが………?)


 そうメルトが心の中で呟いていると、店の入り口から外套の人物が何かをりながら歩いてきた。
 その正体はローランドに投げ飛ばされて気絶したこの店の店主。彼は首を掴まれ、引き摺られる痛みに表情を歪めながらも、それらしい抵抗はない。

 外套の人物は繊維や殺意の他に、僅かながら怒気を含ませてメルトに言い放つ。


『殺す、貴様は殺す。しゃくさわることばかり言って………っ!』
「図星、ですか……っ、それは申し訳ありませんね……」


 フードの下の表情は覗けないが、やはりメルトが内心思った通り彼、もしくは彼女の琴線に触れるものであったらしい。

 相手がメルトへ近づこうとすると、ふと悲鳴が聞こえた。メルトが気配だけは相手に固定し、視線だけで周囲をぐるりと見渡すが、どうやらあちこちからメルトと外套の人物の様子を伺っている『王国都市オータル』の住民がまだちらほらと残っていたようだった。

 メルトは内心しまったと思う。先程懸念していた可能性が現実のものとなりそうだったからだ。

 ここから離れた別の場所へ誘導しようと行動に移そうとした瞬間、メルトは予想外の提案を相手から聞く。


『………チッ、余計な視線が増えたな―――おい貴様、場所を移すぞ』
「……へぇ、王国の住人を無差別に襲ったりしないんですね」
『勘違いするな。あんな生きているだけで無価値な石ころなぞいつでも簡単に殺せる。それをしないのは、今回私たちの目的・・・・・・は既に達しているからだ』
「目的………?」
『そしてこの下種げすは人質だ。元々、生み出した副産物・・・を試す為に利用したが―――貴様らにとって、こんなくずでも貴重な情報源だろう? 黙ってついてこい』
「………えぇ、わかりました」


 そういって、外套の人物は人質である店主の首根っこを掴んで建物の屋根を飛び乗ると移動する。そしてメルトは差を開ける事無くそれに追従した。
 相手は大鎌と店主をそれぞれ片手に持ちながら、軽々と重量を感じさせない動きを見せる。


(この俊敏さと気配の消し方……そしてローランド様と同様、魔力で筋力を増強する事に特化した者……やはり『暗殺者アサシン』ですかね)


 メルトは、目の前の追従する相手が変な行動をしない様に、その蒼く鋭い双眸で射抜いていた。


(命令なので逃がす気は決してありません。利害の一致で今は怒りで私を殺す方向に向いていますが、移動の途中で気が変わり人々を襲うという事も十分に考えられます。―――いつでも抜けるように気を張っておきましょう……!)


 全身に先程は見せなかった僅かな殺気を迸らせながら、メルトは改めて決意する。



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