クラスで人気の完璧美少女が殺意増し増しで怖い件。そしていつしかデレデレになる

ぽてさら

文字の大きさ
30 / 35

ジャンケン④ せーちゃん、アウトー。です

しおりを挟む






◇◆◇


 しばらく暮人が天照ちゃんとお話をしていると他の神様から連絡があったようだった。

 この不思議空間では暑さは感じないようで、縛られながらも快適(?)に過ごしていると、背後から聞き慣れた呼びかけが聞こえた。


「く、暮人………? うわぁ、本当に縛られてる。痛くない? 大丈夫?」
「美雪か………? よ、良かった。無事だったんだね」
「こっちのセリフだよぉ………はぁ、本当に良かった。もし暮人に何かあったら私………」
「え………?」
「あ! えっといやそのー………そ、そう! 『幼馴染』として、誰よりも一番のりじゃないといけないなーって。あははー」


 なんだか幼馴染という言葉が協調されていた気がするけど深くは気にしないことにした。

 ふと視線を横に向けてみると、なんだか可愛らしいクマの肉球のようなパーの形をした手がふわふわと浮いている。そして薬指には何故か銀色の指輪をしていた。


「もしかしなくてもそれが美雪の『従属手サーヴァント』?」
「う、うん………なんか強そうな感じの手を想像したらこんなのが出て来たんだ。毛は少しごわごわしてるけど、触ってると気持ちいいよ!」
「お、おう………頬に肉球当ててるけど確かに不思議な感覚だね」


 頬にぷにぷにとした感触がある。おそらく美雪の意志でこの『従属手サーヴァント』を操ることが出来るのだろう。しばらくこの感触を味わう。
 すると、


「え、えいっ」
「ちょっ、美雪さん!?」
「だって身体的接触がルールなんでしょ………? お、お願いだから何も訊かないでね! これ結構恥ずかしいんだからさ!!」
「え、え~………」


 突然美雪が背後から抱きしめてきた。急なことに思わず変な声を上げてしまうが、美雪のお願いとあっては無下には出来ない。
 俺の脇腹と美雪のひたいがくっついている感触がとても良く分かる。彼女の熱が、伝わる。

 くぐもった声が聞こえた。


「あ、のさ暮人。私さ、暮人の事が嫌いだから今まで顔を見て話しづらかったっていうわけじゃないよ。むしろ―――」
「あ、あぁ………」
「―――逆、だよ」
「それって………え?」


 美雪が耳元で囁きかけるように呟く。その言葉に込められた真意を聞こうと美雪に声を掛けようとするが、ドオゴォォォンッッ!! と突如爆音が響き渡る。

 その音源を確かめようと顔を正面に向けると、砂埃が舞っていた。良く見るとグラウンドの地面が大きく窪むようにしてへこんでいる。
 その中心にいたのは―――、


「そこまでです瀧水さん! それ以上如月さんの身体には指一本触れさせませんよっ!!」
「くっ、氷石、さん………!」


 落ち着く温かい感覚がなくなった事で気が付いた。後ろにまで視線を向けることが出来ないが、どうやら聖梨華が着地した衝撃で美雪が吹き飛ばされたようだった。

 身動きの取れない俺の顔にもぺチぺチと砂や小石が当たっており恨みがましい視線をどや顔の彼女へと向けるが、こちらには注視していない様子。


「えっへっへ、私が勝ってお願い事を聞いて貰うんですよぅ! 『一緒にお料理して下さい』って! 私にとってどう転んでもお得ですからねぇ、あわよくば事故に見せかけて転生させることも出来ますから!!」
「なにそれズルい! 暮人お料理上手だから私だってあんまりそんな機会ないのに!!」


 空中では美雪の『従属手サーヴァント』であるクマの手と、聖梨華が操っているであろうなんだか禍々しい悪魔のような手がグーの形を作りながら攻防を繰り広げていた。
 同時に、グラウンドでは煙をたてながらポカポカと美雪と聖梨華がキャットファイトをしている。

 二人の取っ組み合いを見ていたが、互いの『従属手サーヴァント』同士の衝突でよく二人の会話が聞こえない。ゲームということもあり、戦いを繰り広げていたとしても安心だろうと達観するようにぼうっと空を眺める。

 それでも、頭の中では先程の美雪の言葉が反芻していた。


「逆、ってつまり、え、そういうこと………?」


 "嫌い"の反対は"好き"な訳で。彼女の今までの行動は俺のことが好きだからあんな初々しい感じになったということなのだろうかと考える。

 ………………………、


「いやいやいや、俺もそこまで己惚れてないぞ。『幼馴染』として好きっていうことだよな。うん、わかるわかる」


 ときめきかけていた胸の高鳴りを無理矢理抑え込みながら静かに首を横に振る。用具室の一件で彼女への罪悪感もある手前、そう素直に受け取るのは若干無理があった。

(冷静になれ俺。距離が近いからといってすぐに恋愛に結び付けるな)

 そう思うと幾分か肩の力が抜けた。改めて視線を彼女らに向けると、肩で大きく息を吐きながらぜーはーと呼吸していた。
 

「はぁはぁはぁ、正直埒が明かないですね! ………まったく、こっちはこっそり強化してるのに如月さんへの想いどれだけ大きいんですか(ボソッ)」
「はぁはぁ………え、最後良く聞こえなかったんだけど!」
「これで決めるって言ったんですよー!!」


 聖梨華が片手をバッと天へ向けると頭上の空間がブラックホールのように黒くうねる。すると、今までぶつかり合っていた聖梨華と美雪の『従属手サーヴァント』が吸い込まれた。

 その空間が光り輝いた次の瞬間、その空間から現れたのは大きな形をした拳銃だった。


「な、なにそれ………そんなの、こっちに勝ち目ないよ」
「あっはっはー! 私の力で具現化したジャンケン、女神たる私が準備したのですから操る事は造作も無い事です!」
「ズルじゃん!!」


 聖梨華の行動に思わず突っ込んでしまった暮人。当の本人である聖梨華はなんとも無いようにあくどい笑みを浮かべると、


「でも『従属手サーヴァント』に干渉しちゃいけないなんてルール言ってないですよね?」
「ぐっ、確かに………!」
「グーチョキパーの三手を融合した究極の『従属手サーヴァント』、『無限手インフィニティ・サイン』。二十六年式拳銃の姿となりて顕現です!」
「何故そのチョイス!?」
「その黒光りしたフォルム、カッコいいからですよ!!」


 ジャンケンをしたものならば誰もが経験するグーチョキパーの三点の意味合いが含まれる手『無限チョキ』を繰り出してきた。恐らくその形状から拳銃を連想したのだろう。実にむちゃくちゃだ。

 美雪の様子を見てみると、ぺたんと地面に女の子座りをしながら俯いていた。こちらに表情を向けると、弱弱しく笑みを浮かべる。


「あはは………ダメだったなー。ねぇ暮人」
「美雪………?」
「私、これからも頑張るからさ。暮人もいつも通り接してね」
「………あぁ、わかった」


 その言葉の後の美雪の笑顔が忘れられない。まるで何か吹っ切れたような表情。

 ―――最高に、ドキッとした。

 しばらく見つめ合うが、その空間に入り込む者がいた。聖梨華である。


「むむ、………ふっ、別れ話は済みましたかー? これで終わり―――!」
『―――ででーん。せーちゃん、アウトー。です』
「………うぇっ、天照ちゃん!? なんで!?」


 突如、ここに来たばかりのときに会話した懐かしい声が聞こえた。聖梨華が空を見上げながらおろおろしているのが面白い。

 天照ちゃんがしっかり審判しているのは話していたので知っていたが、まさか自分以外にも話しかけてくるとは思わなかった。美雪はパチパチとまばたきを繰り返してる。


『せーちゃん、貴方が作ったルールと空間とはいえその手は流石にないです。汚いです。それに審判の役割がある以上、せーちゃんの行為を許容するわけにはいきません』
「そんなぁーー!!」
『それにそんな方法で勝ったとしても、くーさんは心から貴方の願いを叶えようとはしませんよ』
「くーさん!? それって如月さんのことですよね!? いつの間にそこまで仲良くなったんですか!?」
『せーちゃんたちが来る前です。ともかく、くーちゃんは反則負け。勝者は瀧水美雪さんです』
「え、私………? でも暮人に一分間触って無かったし………」
『私が審判です。つまり、私がルールなので大丈夫ですよ』


 天照ちゃんの柔らかい声が美雪に降りかかる。全てを包み込むような誠実さと威厳に満ちたその声音はじんわりと暮人と美雪の心に沁み込んだ。


「どーしてこうなるんですかぁ~~!!」


 聖梨華の泣き叫んだ言葉を最後に、このゲームは幕を閉じた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級の美少女たちの攻防戦〜

沢田美
恋愛
「ごめんね、八杉くん」 中学三年の夏祭り。一途な初恋は、花火と共に儚く散った。 それ以来、八杉裕一(やすぎ・ゆういち)は誓った。「高校では恋愛なんて面倒なものとは無縁の、平穏なオタク生活を送る」と。  だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。  • 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。  • 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。  • 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。  • オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。  恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。 教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。  「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」  鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。 恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...