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クラスで人気の完璧美少女が殺意増し増しで怖いけど、いつの間にか彼女がデレデレになってた話。
しおりを挟むナイトプール。辺りが薄暗くなり、次第に夜の暗さに空が包まれる頃。暮人たち四人は念のために自宅から持ってきたシートを敷いて、打ちあがる予定の花火を今か今かと待ち望んでいた。
周囲を見回してみると、今までプールで遊んでいた子ども連れの家族やカップル、同性の友達同士が暮人たちと同じようにシートを敷いている。
暮人はがやがやと楽しそうに話している声や幼児が泣き叫ぶ声にぼんやりと耳を傾けながら視線を夜空へと向ける。―――そこにあったのは雲一つ見当たらない、綺麗な星がたくさん散りばめられた天穹だった。
「きっさらーぎさんっ、な~に黄昏ちゃってるんですかぁ。大丈夫? おっぱい揉む?」
「揉まないわっ! ………いやさ、これまでのこと振り返ってたんだよ。色々あったなぁって」
「ありましたねぇ。私が暮人さんの命を何度も狙って何度も失敗して。………あれ、今更ですけど私って女神ですよね? 勇者と女神の格の差とは?」
「おっぱい揉む?」辺りの発言から聖梨華の隣に並んでいる美雪と小梅から得体の知れない圧的なモノを感じたが恐らく嫉妬だろう。皆までは言うまい。
改めて女神としての存在意義を悩みだした聖梨華であったが、それに構わず暮人は言葉を続けた。
「多分、俺が『回避』の特性を持って生まれたことに理由なんてないのかもしれないね。偶然俺にその特性があった、ただそれだけ。そんな俺が居なくてもこの地球は回ってるし、なんだったら聖梨華さんの管理する異世界に転移して勇者として生活した方がもしかしたら世の為になるのかもって思う」
「………………………」
「―――でもさ、俺はみんなとこうして笑い合える世界が好きなんだなぁって改めて分かった」
「如月さん………」
「因みに、こういう気持ちを知れたのは聖梨華さんのおかげなんだよ? 感謝もしてる」
「私の、ですか?」
こてん、と首を傾げる聖梨華だが、暮人が彼女に感謝しているのは紛れもない本心だ。
「ただ漫然に生きるだけ日々に刺激を与えてくれた。両親が俺らを残して早くに死んで、大切な妹と幼馴染だけが生き甲斐だった俺だけど、聖梨華さんを見てたらもっと人生を楽しんでいいんだって思ったんだ」
「暮人………」
「にいに………」
確かに『回避』の特性を持つ勇者故に女神である聖梨華から命を狙われる事になった。しかし、この特性を持っていたからこそ彼女にも出会えたのだ。
これはある意味、偶然が繋いだ『運命』だろう。
「だからありがとう、聖梨華さん。キミに出逢えて、俺は今すごく充実してる」
「―――――――――」
暮人が今まで抱いていた気持ちを口にした瞬間、大きな花火が鳴った。夜空に散る連続的な火花は、しばらく途切れる事はない。「わぁ………!」と小さく美雪と小梅の声が聞こえる。
暮人も思わずその綺麗な光景に目を奪われていたが、聖梨華の視線は花火を見つめる暮人の横顔に固定されたまま。
すると、
「―――ちゅっ」
「………っ、ぇ?」
火薬と微かな甘いにおいが鼻を掠める。頬に残された僅かな感触に小さな声を洩らしながら聖梨華の方を見つめると、彼女は人差し指を口元に置いてはにかみながら暮人を見上げていた。
残念ながらその顔色は花火の色と重なって読み取れない。しかし花火よりもその魅力的な表情に目を奪われてしまったのも事実だ。
「―――んっ」
「――――――ッ!」
またも聖梨華は顔を近づけてキスをする。今度は、唇に。
激しい花火の音が周りの音を掻き消す。ゆっくり互いの唇が離れると、見つめ合った。暮人が何か言葉を紡ごうとする前に、聖梨華が口を開く。
「私、暮人さんの事が好きです。たっくさん迷惑かけてたっくさん命を狙っていきますけど―――私のことも、も~っとデレッデレにさせて下さいね!!」
華が咲き誇ったように満面の笑みを浮かべる聖梨華。
それは暮人にとって衝撃の夏の思い出であると同時に、彼女らとの関係が大きく変化する予感を感じさせるモノだった。
思わず暮人は心の中で叫ぶ。
『クラスで人気の完璧美少女が殺意増し増しで怖いけど、いつの間にか彼女がデレデレになってたーーーっ!?』
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