無属性魔術師、最強パーティの一員でしたが去りました。

ぽてさら

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『セントパール魔術学園~学園ダンジョン編~』

第二章:プロローグ~『迷宮に挑む者』 前編

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 ―――そこは、草原だった。見渡す限りの広大な自然。一際強い風が吹くと緑の絨毯が波のように靡いていた。


「ヌゥゥゥン、ッハァァァ!!…………フンッ、やはり戦は最高じゃのう! 全身に流れる血が滾って頭がカッカしてくるわい!!」
「はぁ…………ちょっとちょっとぉ、なぁに一人で熱くなっちゃってんのさぁ…………あんまり一人で先行しすぎないでよぉ…………」
「ガッハッハッハッ!! お主は相も変わらずテンションが低いのう、そんなだから身長が伸びないんじゃ!!」
「全くそんなこと関係ないでしょぉ! これだから脳筋は…………だいたい僕はいま成長期真っ盛りなんですぅ! これからなんですぅ!」


 他愛も無い会話を繰り広げながら前に進むのは二人の男性。


 一人は大柄で筋骨隆々、質実剛健といった言葉が凄まじく似合う老人。ピンと直角に伸びる特徴的なベージュ色の髭を生やしているスキンヘッドな彼は一目で見て分かる褐色の肌を晒している。彼はその逞しい肉体を駆使しながら様々なポージングを取っていた。
 隣を歩くもう一人は、老人と背を比べると低く気怠けだるげな雰囲気を漂わせながら明るく青みがかった紫髪で目元を隠した少年。フードで頭をすっぽりと隠しており猫背が一層目立つ。幾分かねっとりとした声音で話しながら老人の斜め後ろをついていくように歩く。

 変声したての背伸びする子供のように声を荒げた少年はずんずんと歩幅を広げながら「これだから脳筋は苦手なんだ……」と呟いた。
 一方の老人はその呟きが聞こえなかったのか微笑ましいものを見るかのように、


「アヤ坊、その台詞は前から何度も聞いておるが大して伸びた試しもないじゃろうが。剛健・壮健・筋肉! 至高の肉体を作り上げるのは自分なのだぞ! その為には肉だ! 肉を食え肉をォ!」
「はぁ…………僕もその台詞は何回も聞いたんだけどなぁ。良い? 僕は肉は苦手なんだよぉ。どちらかというと野菜の方が大好きな位。流石にエーヤ兄が言ってた菜食主義者ベジタリアンとまではいかないけどぉ……。というかさ、一応言っておくけど僕がこんな中身の無い会話をするのは冒険者パーティであるみんなだけなんだからねぇ…………」
「まぁったく、前からお主は極度の人見知りじゃからのう。だから周りに友達がいないんじゃ」
「大きなお世話ですぅ!…………ローグ爺は良いよねぇ、考えナシに行動するだけで………はぁ、それだけでたくさんの人が寄って来るんだからぁ……………」
「ガッハッハッハッ!!! それはほれ、儂の肉体美に宿る熱きハートとこの鍛え上げた拳が答えじゃよ!!」
「意味わっかんない……鍛えるだけで友達が出来るんだったら世の中に争いは起こらないよぉ。はぁ……」
 

 "ローグ爺"と呼ばれた老人が言い放つ抽象的な文言に少年は溜息交じりにゆっくりと返答する。その話の内容から察することが出来るように、二人はとあるパーティに所属するメンバーのようだ。
 年齢は見るからに大幅に差があるが、お互いに付き合いが長いのかそこには一切の遠慮や謙虚さなど無いにも等しい。寧ろ自らの意見を隠す事無く言える関係。
 そう、この二人の様子は傍から見ればまるで祖父と孫のようで。


 だが、そんな温かな雰囲気をぶち壊すように彼らが歩く背後には大量の魔物であろう残・・・・・・・・・・骸が散らばっていた・・・・・・・・・。ここには二人しかいない状況なので、誰がやったのかは明白。


 ―――さて、先程からそんな血生臭い光景とは無縁な会話している二人は今どこにいるのかというと、


「でもさぁ、なぁんで僕らがまた第六宮シックススに来ないといけなかったのぉ? ついこの前踏破したばっかりじゃぁん。僕、今日は城で惰眠を貪るつもりだったのにぃ………。もうこのダンジョン・・・・・には何も無いよぉ………」
「なぁにを腑抜けた事を言っておるんじゃ。いいか、確かに儂らは以前この迷宮を踏破した。じゃが、女神に戦いを挑んだ事により儂らが積み上げてきた出来事が全て巻き戻った・・・・・んじゃ。そしてそれは、この『七大迷宮』も同じ事」
「そんなことは分かってるよぉ。だからまた全ての七大迷宮を踏破して神に挑む資格を手に入れるのが僕らの目的でしょ? 僕が訊いているのは『また潜る必要があったのか』ってことぉ。あれから三年もかけてやっと一週間前くらいに踏破したばっかりじゃん」

 
 いつの間にか、先程まで戦闘を繰り広げていた魔物の亡骸が全部消え去っていた。二人の背後には光り輝く魔力の残滓が舞い上がる。
 今彼らがいるのはだだっ広い草原だけが存在するただのダンジョンではない。そもそもそれだけならばとあるパーティ・・・・・・・のメンバーである彼ら・・・・・・・・・・がいる意味がないからだ。





 このダンジョンの名は第六宮シックスス・ガーデン『草原の恵み』。





 原初にして原点『七大迷宮』の一つであり、過去に続き再び今回踏破されたダンジョンである。地上に散らばる迷宮と何が違うのかというとその迷宮に漂う"魔素"の濃さ、そして何より通常の迷宮と比較して判る常軌を逸脱した圧迫感と―――人間の本能的な部分に警鐘を鳴らす程の『狂気』。そしてこれは、この空気は他の『七大迷宮』と同じモノだとも言える。

 そう、このダンジョンは明らかに『異質』であった。だがそんな場所を平然と歩いているこの二人もまた然り。


「………アヤ坊、もしかして定例会議の時間寝ておったのか?」
「…………………ソンナコトナイヨォ」
「うむ、今の反応で丸分かりじゃな!―――だが性質・・に引っ張られるとはいえ、今回ばかりは『怠惰』にすぎるぞ」
「でもでもそれが僕だからねぇ。ローグ爺こそなぁに普段は熱いのに真面目なトーンになっちゃってんのぉ? どうせいつものメンバーでいつもの同じ内容の話でしょぉ。僕一人ぐらいがちゃんと聞いていなかったとしても問題は無い筈じゃなぁい?」


 普段ならば怒声に等しい大声で喋る老人だが、今ばかりは鋭い眼光を向けながらそう静かに忠告する。が、少年はそれに対し態度は変わらずあっけらかんにそう返答した。
 何一つ物怖じしない少年の様子に老人は深い溜息を吐く。


「あのじゃなぁ、お主はもっと力在るべき者として自覚するべき………む?」
「あ、来た来たぁ」


 ふと、目の前の気配が大きく歪む感覚に気が付く二人。それはまるで誰かの進行を妨げている何か・・を無理矢理こじ開ける行為のよう。前方に広がる景色は一面の緑。だが、それはあくまで視覚のみに頼った場合の情報だ。


 改めて言おう。『七大迷宮』は、通常のダンジョンを遥かに凌駕するほどの異質性を兼ね備えている。
 次の瞬間、その感覚の正体が露わになった。








「―――『絶刀技ぜつとうぎ驟雨之乱しゅううのらん』」
「―――『書冊閲覧リストアップ第一章ページ・ワンー風の小人は舞い踊るー』」







 その場に響く、異なる二人の女性の凛々し気な声。それは老人と少年が立つ前方の空間から聞こえて来たもの。
 刹那、目の前の景色が膨らんだと思ったらべろりと上から下にかけて剥がれ落ちる。明らかに非現実的な現象だが、その様子を見届ける二人に驚きは無い。そこから現れたのは―――、



「あらぁ、ローちゃんにアヤちゃん。やっぱり二人ともここに居たのねぇ。ワタシの勘も捨てたものじゃないわぁ」
「お前のは勘などという偶発的なものではないだろうユリア。だが、これでようやく二人とも合流した訳だ」



 
 二人の女性だった。




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