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Ⅰ-44 魔法の練習
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■バーン南東の荒地
三人の中で一番早くに起きてきたのは、ミーシャだった。
サーフパンツにタンクトップだけを着て、おへそが丸出しのスレンダー美少女に朝からときめいたが、俺は笑顔だけ見せてタオルを用意してやった。
ミーシャには洗顔と歯磨きを既に教えてある。せっかくの美人なのだからできるだけ綺麗で居て欲しいのだ。
朝食はこちらの世界にあわせて、いつもパン中心にしているが、そのうち米と味噌汁にも挑戦してもらおう。
今日のところは焼きたてパンを何種類か用意してやる。
パンもこの世界とは次元の違う完成度だから、3人とも感動しながら毎回食べてくれる。
そもそもが中にソーセージやクリーム、チョコ等が入った物は存在していないのだろう。
ハンスの爆食が落ち着いた頃を見計らって、今日の予定というか希望を伝えた。
「ハンスさん、今日は魔法について教えて欲しいんですけど、そもそも魔法ってどうやって炎とかを出しているんですか?」
リッグスは呪文も魔導書も無いと言っていた。
「炎の魔法なら、火の神グレン様に祈りを捧げて実現します。この世界の魔法は全て神が与える恩恵の一つですから」
リッグスと同じか・・・
「本当にお願いするだけで、炎が出るのですか?」
「ええ、もちろん出るようになるまで時間が掛かる、炎が強い、弱いと人によって魔法の適性に差がありますが、心を込めてお祈りすれば必ず神は願いをかなえてくれます。それに、伝承通りであれば異世界から来たサトル殿は神に愛されているはずですから、願いが届きやすいはずです」
俺が神に愛されている?
いや、それだけは無いはずだ、自分で言うのもなんだが、俺が神ならこんな面倒くさいヤツの願いは二度と聞きたくないだろう。
だが・・・、そうか、この世界の神と俺をここに送ってきた神は全く異なる存在なのだろう、この世界には他にも神が居ると言っていたし。
「炎の神がグレン様なら、他の神様はなんていう名前なんですか?」
「水の神はワテル様、風の神はウィン様、土の神はガイン様、そして光の神アシーネ様です」
なるほど、5つの魔法種類があって、5つの神が居る。しかし光の神が治療を・・・?
「ハンスさんは、火と水と光の魔法が使えるんですよね?それぞれの魔法を使うときはそれぞれの神に祈りを捧げるということですか?その時には合言葉とか合図みたいなしぐさは無いのでしょうか?」
呪文でなくても、何か合図とかきっかけがあるんじゃないか?
「合図は人によって違います、手を使って魔法を発現させる方向を示したり、祈りを口に出したりしますが、決まったやり方がある訳ではありません。やり方が違っても、それぞれの神に願いを叶えてもらう点は共通しています」
いくら聞いていても答えにたどり着きそうに無い、見せてもらうしかないな。
「じゃあ、今からハンスさんの魔法を見せてもらって良いですか?」
「ええ、私もそのつもりです。サトル殿とサリナにはロッドを試していただきたいと思っていますので」
伝説のロッドか。俺にも使えると言っていたが、いまだに信じられない。
俺は周囲を双眼鏡で確認して、武器を装備してからキャンピングカーの外に出た。
車の下も確認したが、魔獣は隠れていなかった。
ミーシャに周囲の警戒を頼んで、俺とサリナはハンス先生の魔法授業を受けることにした。
「では、まず炎を出します。私は手を差し出して、その上に炎を出すようにグレン様へお祈りを捧げます」
何も言わずに無造作に大きな右手を上に向けて差し出すと、手の上には30cm位の炎が立ち上がった!
リッグスもこんな感じだったよな。
「じゃあ、サリナが先にやってみなさい。グレン様に祈りを捧げるのですよ」
「グレン様・・・、アシーネ様じゃなくて?」
「そうだ、お前には今まで嘘を教えていたからね、魔法は全てアシーネ様が叶えてくれるとね。だが、魔法によって祈る神は違う、これからは全ての魔法を使って構わない」
サリナはずっと騙されて・・・、それを信じてたって言うの!?
他で魔法のことを聞いてこなかったのか?
「うん、判った。グレン様にお祈りする」
サリナはハンスとお同じように右手を差し出すと目を瞑った。
「ワァッ!」
俺は思わず大きな声を上げた。
あっさりと炎が出た!
ハンスと同じぐらいの大きさの炎がサリナの手の上に浮かんでいる!
「やったー! 私もこれでお母さん達と同じ大魔法士になれる!」
サリナが叫ぶと同時に炎は消えた。
全然理屈がわからない。しかし、そもそも魔法は現代人の科学とは違うから、理屈で考えていると永遠に頭が付いていかないだろう。この世界では『神への祈りで魔法を出現できる』、そんな風に割り切ることにしておこう。
「では、サトル殿もやってみましょう。きっとできるはずです」
俺には全く無い自信をみなぎらせてハンスが俺に促す。
しかし、サリナが出来たのを見て俺も出来るかも?
少しだけ、そう思うようになって来た。
俺も二人と同じように右手を突き出して、目を瞑って神に祈りを捧げた。
-火の神、グレン様、私の手のひらの上に炎を与えてください。
「出たー!」
サリナの大声で目を開けると・・・、炎がある!
手のひらの30cmぐらい上に、頭の中でイメージした大きさの炎が立ち上っていた!
「マジで!」
自分で大声を出した途端に炎は忽然と消えた。
「あれ?あれ? 消そうと思わなくても消えるんですか?」
俺は内心で滅茶苦茶喜びながら、消えた理由が知りたくなった。
勝手に消えるのでは炎が出ても役に立たない。
「それは、サトル殿が声を上げられた時にグレン様への祈りが途絶えたからでしょう」
「炎を出し続けるためには、ずっと祈り続けないといけないんですか?」
「殆どのものはそうですが、修練を積んで決まった時間の間だけ炎を出す魔法士も居ます」
タイマーみたいな感じ? それなら色々使い道はあるかもしれないな。
しかし、俺にも炎が出た!
魔法が使える、何の練習もしていないのに・・・、本当にこれで良いのか?
「それでは、二人はもっと大きな炎を出せるように練習してみてください」
「大きな炎ってどうやるんですか?」
俺はすっかりやる気になっていた。
「グレン様に祈ってください。それだけで大丈夫です」
相変らずの回答だが、既にできた以上は疑う理由がない。
それでも、俺は少し下がってサリナがやるのを見てみることにした。
さっきと同じように手のひらを差し出して・・・、出た!
1メートル近い炎が縦に伸びている。
これは負けていられない、俺は頭の中でサリナの三倍ぐらいの炎ををイメージした、巨大な蝋燭の炎が俺の手の上から出る感じだ。
目を瞑って、右手を高く差し上げてから神へ祈った。
-火の神、グレン様、私の手の上に大きな炎を与えてください。
「ワァァー! 大きい! サトル、凄い!!」
サリナの声で目を開けると、予定通り3メートル位の炎が右手頭上に立ち上っている。
今回は集中して声を上げずに火を消さないようにした・・・、だが、急にめまいがして、立って居られなくなった。
手を下ろして、地面に片膝をついてうずくまる。
「サトル殿、大丈夫ですか! あのように大きな炎をいきなり出してはいけません。まだ、修練を積んでいないのですから!」
どうやら、調子に乗ってやりすぎたようだ。
体全体がだるい、気分が悪いわけではないが足に力が入らない。
「すみません、魔法の練習は一旦休憩にさせてください」
俺は魔法練習を30分足らずでリタイアして、キャンピングカーに戻ることになった。
それでも、魔法が使えたことが思った以上に嬉しくて、体は重いが気分は晴れやかだった。
三人の中で一番早くに起きてきたのは、ミーシャだった。
サーフパンツにタンクトップだけを着て、おへそが丸出しのスレンダー美少女に朝からときめいたが、俺は笑顔だけ見せてタオルを用意してやった。
ミーシャには洗顔と歯磨きを既に教えてある。せっかくの美人なのだからできるだけ綺麗で居て欲しいのだ。
朝食はこちらの世界にあわせて、いつもパン中心にしているが、そのうち米と味噌汁にも挑戦してもらおう。
今日のところは焼きたてパンを何種類か用意してやる。
パンもこの世界とは次元の違う完成度だから、3人とも感動しながら毎回食べてくれる。
そもそもが中にソーセージやクリーム、チョコ等が入った物は存在していないのだろう。
ハンスの爆食が落ち着いた頃を見計らって、今日の予定というか希望を伝えた。
「ハンスさん、今日は魔法について教えて欲しいんですけど、そもそも魔法ってどうやって炎とかを出しているんですか?」
リッグスは呪文も魔導書も無いと言っていた。
「炎の魔法なら、火の神グレン様に祈りを捧げて実現します。この世界の魔法は全て神が与える恩恵の一つですから」
リッグスと同じか・・・
「本当にお願いするだけで、炎が出るのですか?」
「ええ、もちろん出るようになるまで時間が掛かる、炎が強い、弱いと人によって魔法の適性に差がありますが、心を込めてお祈りすれば必ず神は願いをかなえてくれます。それに、伝承通りであれば異世界から来たサトル殿は神に愛されているはずですから、願いが届きやすいはずです」
俺が神に愛されている?
いや、それだけは無いはずだ、自分で言うのもなんだが、俺が神ならこんな面倒くさいヤツの願いは二度と聞きたくないだろう。
だが・・・、そうか、この世界の神と俺をここに送ってきた神は全く異なる存在なのだろう、この世界には他にも神が居ると言っていたし。
「炎の神がグレン様なら、他の神様はなんていう名前なんですか?」
「水の神はワテル様、風の神はウィン様、土の神はガイン様、そして光の神アシーネ様です」
なるほど、5つの魔法種類があって、5つの神が居る。しかし光の神が治療を・・・?
「ハンスさんは、火と水と光の魔法が使えるんですよね?それぞれの魔法を使うときはそれぞれの神に祈りを捧げるということですか?その時には合言葉とか合図みたいなしぐさは無いのでしょうか?」
呪文でなくても、何か合図とかきっかけがあるんじゃないか?
「合図は人によって違います、手を使って魔法を発現させる方向を示したり、祈りを口に出したりしますが、決まったやり方がある訳ではありません。やり方が違っても、それぞれの神に願いを叶えてもらう点は共通しています」
いくら聞いていても答えにたどり着きそうに無い、見せてもらうしかないな。
「じゃあ、今からハンスさんの魔法を見せてもらって良いですか?」
「ええ、私もそのつもりです。サトル殿とサリナにはロッドを試していただきたいと思っていますので」
伝説のロッドか。俺にも使えると言っていたが、いまだに信じられない。
俺は周囲を双眼鏡で確認して、武器を装備してからキャンピングカーの外に出た。
車の下も確認したが、魔獣は隠れていなかった。
ミーシャに周囲の警戒を頼んで、俺とサリナはハンス先生の魔法授業を受けることにした。
「では、まず炎を出します。私は手を差し出して、その上に炎を出すようにグレン様へお祈りを捧げます」
何も言わずに無造作に大きな右手を上に向けて差し出すと、手の上には30cm位の炎が立ち上がった!
リッグスもこんな感じだったよな。
「じゃあ、サリナが先にやってみなさい。グレン様に祈りを捧げるのですよ」
「グレン様・・・、アシーネ様じゃなくて?」
「そうだ、お前には今まで嘘を教えていたからね、魔法は全てアシーネ様が叶えてくれるとね。だが、魔法によって祈る神は違う、これからは全ての魔法を使って構わない」
サリナはずっと騙されて・・・、それを信じてたって言うの!?
他で魔法のことを聞いてこなかったのか?
「うん、判った。グレン様にお祈りする」
サリナはハンスとお同じように右手を差し出すと目を瞑った。
「ワァッ!」
俺は思わず大きな声を上げた。
あっさりと炎が出た!
ハンスと同じぐらいの大きさの炎がサリナの手の上に浮かんでいる!
「やったー! 私もこれでお母さん達と同じ大魔法士になれる!」
サリナが叫ぶと同時に炎は消えた。
全然理屈がわからない。しかし、そもそも魔法は現代人の科学とは違うから、理屈で考えていると永遠に頭が付いていかないだろう。この世界では『神への祈りで魔法を出現できる』、そんな風に割り切ることにしておこう。
「では、サトル殿もやってみましょう。きっとできるはずです」
俺には全く無い自信をみなぎらせてハンスが俺に促す。
しかし、サリナが出来たのを見て俺も出来るかも?
少しだけ、そう思うようになって来た。
俺も二人と同じように右手を突き出して、目を瞑って神に祈りを捧げた。
-火の神、グレン様、私の手のひらの上に炎を与えてください。
「出たー!」
サリナの大声で目を開けると・・・、炎がある!
手のひらの30cmぐらい上に、頭の中でイメージした大きさの炎が立ち上っていた!
「マジで!」
自分で大声を出した途端に炎は忽然と消えた。
「あれ?あれ? 消そうと思わなくても消えるんですか?」
俺は内心で滅茶苦茶喜びながら、消えた理由が知りたくなった。
勝手に消えるのでは炎が出ても役に立たない。
「それは、サトル殿が声を上げられた時にグレン様への祈りが途絶えたからでしょう」
「炎を出し続けるためには、ずっと祈り続けないといけないんですか?」
「殆どのものはそうですが、修練を積んで決まった時間の間だけ炎を出す魔法士も居ます」
タイマーみたいな感じ? それなら色々使い道はあるかもしれないな。
しかし、俺にも炎が出た!
魔法が使える、何の練習もしていないのに・・・、本当にこれで良いのか?
「それでは、二人はもっと大きな炎を出せるように練習してみてください」
「大きな炎ってどうやるんですか?」
俺はすっかりやる気になっていた。
「グレン様に祈ってください。それだけで大丈夫です」
相変らずの回答だが、既にできた以上は疑う理由がない。
それでも、俺は少し下がってサリナがやるのを見てみることにした。
さっきと同じように手のひらを差し出して・・・、出た!
1メートル近い炎が縦に伸びている。
これは負けていられない、俺は頭の中でサリナの三倍ぐらいの炎ををイメージした、巨大な蝋燭の炎が俺の手の上から出る感じだ。
目を瞑って、右手を高く差し上げてから神へ祈った。
-火の神、グレン様、私の手の上に大きな炎を与えてください。
「ワァァー! 大きい! サトル、凄い!!」
サリナの声で目を開けると、予定通り3メートル位の炎が右手頭上に立ち上っている。
今回は集中して声を上げずに火を消さないようにした・・・、だが、急にめまいがして、立って居られなくなった。
手を下ろして、地面に片膝をついてうずくまる。
「サトル殿、大丈夫ですか! あのように大きな炎をいきなり出してはいけません。まだ、修練を積んでいないのですから!」
どうやら、調子に乗ってやりすぎたようだ。
体全体がだるい、気分が悪いわけではないが足に力が入らない。
「すみません、魔法の練習は一旦休憩にさせてください」
俺は魔法練習を30分足らずでリタイアして、キャンピングカーに戻ることになった。
それでも、魔法が使えたことが思った以上に嬉しくて、体は重いが気分は晴れやかだった。
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