それ行け!! 派遣勇者(候補)。33歳フリーターは魔法も恋も超一流?

初老の妄想

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勇者候補たちの想い

23.魔法槍発動

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■スタートス 聖教会 転移の部屋

前回と同じように、倉庫奥の部屋から一瞬で周囲の景色が変わった。
タケル達3人は、聖教石が5本立っている木に囲まれた部屋へ移動していた。

部屋の扉を開けて出ると、マリンダさんが笑顔で迎えてくれた。

「おはようございます。マリンダさん」
「おはようございます。勇者の皆様」

ノックス司祭に西條からの手紙を渡して、荷物を部屋に置きに行く。
今回は3人とも布製のバッグに色々なものを入れて持ってきたようだ。
アキラさんのは外見で想像がついたが・・・、中身は昼食時にみんなで披露することにしてある。

宿舎の食堂では、ミレーヌとリアンが迎えてくれた。
「タケル様、この間は本当にありがとう。それと、また来てくれて嬉しいよ。」
ミレーヌにいつもの笑顔が戻っている。

リアンはまだ恥ずかしいようだが、ミレーヌに押し出されて、タケルに白い1輪の花を差し出した。

「ゆーしゃさま、ありがとう!」

「お花をありがとう、リアンはもう痛いところとかは無いかい?」

屈んで花を受け取ったが、リアンはうなずいて、すぐにミレーヌの後ろに戻ってしまった。
まだ、リアンのヒーローにはなれないようだ。

荷物を置いて、麻の上下に着替えてから裏の空き地へ向かう。
空き地では、オスワリでシルバーが迎えてくれた。

明るい場所で見ると、改めて大きさを痛感する。
座った状態で頭の位置がタケルの肩ぐらいある。

「おはよう、シルバー。元気かい?」
首筋に抱きついてやると、嬉しそうに尻尾を振る。

タケル達を離れてみていたマリンダさんに近づいて聞く。
「彼は、ずっとここに居たんですか?」
「いえ、夜はミレーヌの家のそばに居たようですが、昼間は姿が見えませんでした。」

(ちゃんと、俺のお願いを聞いてくれたんだね。ありがとう。)
木陰で丸まったシルバーに、心の中で礼を言った。

午前中は魔法の練習に再度取り組むことにした。
ダイスケとアキラさんも炎の大きさが安定してきたので、離れた場所へ炎を出す練習を始める。

タケルは二つ挑戦したいと思っていた。

ひとつは、炎を離れた場所で一定時間燃やし続ける。
もうひとつは、魔法槍だ。

戦いで魔法を使うなら、このぐらいが出来ないと役に立たないと思っていた。

マリンダに紐とマキを2本用意してもらい、水で濡らしてから木の枝にぶら下げた。

最初に10秒ぐらい燃え続けるイメージをグレン様にお祈りする。
(グレン様 本日もよろしくお願いします)
(「ファイア」と言いますので、手をおろしても10数える間は燃やし続けるようにしてください。)

ぶら下がったマキから20メートルぐらい離れて、右足を引いて構える。
目をつむり祈りを捧げて、つぶやく。
「ファイア」

的にしたマキが炎に包まれた。手を下ろしても、そのまま燃え続けている。
(グレン様 ありがとうございます)

火が消えた後のマキと紐は水に濡れていて、引火していない。

今度は連続でやってみる。
祈りを捧げ、つぶやく。
「ファイア」

最初の炎が燃えたのを見て、すぐに右手をもうひとつのマキに向ける。
「ファイア」

もうひとつのマキも炎に包まれた。
両方のマキがしばらく燃えて火が消えた。

練習のため、炎が消えるたびに20回ほど連続で左右の的へ炎を放つ。
「ファイア」と言う言葉と魔法がスムーズに連動している。
これなら、戦いでも使えそうだ。

マキにもう一度水をかけていると、マリンダが近寄ってきた。

「タケル様、そんなに一度に魔法をお使いになって大丈夫ですか?」
「特に、異常は無いですけど。どうしてですか?」
「離れた場所へあの大きさの炎をだすのには、大きな祈りが必要になります。何度も続けると、倒れてしまうかもしれません。」
「聖教石が助けてくれるんじゃないんですか?」
「確かにそうですが、石の力はあくまで助けですので・・・」

「じゃあ、むしろ限界を知っておく必要がありますね。倒れたら介抱してくださいね。」
そういって、マリンダにウィンクした。

(グレン様 今度は100連発行きますので、引き続きよろしくお願いします)

100連発が終わったが、タケルの体に異常は無かった。
マリンダは心配するのをあきらめたようで、ダイスケ達の指導に戻っている。

「ダイスケ、どんな感じ?」
「思うように炎が飛ばないです。」
「『飛ばす』、じゃ無くて、離れた場所にいきなり火がつくイメージでやってみて。手の上で火をつける代わりに、手の先10メートルで火がつく。っ感じで。」

少し場所を変えてダイスケをみていたが、離れた場所に火がつくようになった。
タケルをみて、嬉しそうにうなずいている。
アキラさんはダイスケとの会話を聞いていたはずだから、頑張ってくれるだろう。

炎魔法は十分に満足したので、午前中だが魔法槍にチャレンジすることにした。

槍を取りに部屋へ戻りながら、イメージを固める。
(グレン様にどう伝えるかが鍵だ。)
(名前は「ファイアランス」で決まってるんだけど)
(炎の力を槍にどう付け加えてもらうか?・・・)

準備運動をしてから、前回やった突きの練習を麻袋の的(マト)へ50回ぐらい繰り返す。
「踏み込み」と「突き」のタイミングが合ってきた。

麻袋の的へ水をかけて、グレン様にイメージを伝えて祈る。
(グレン様、今度は私の槍にお力を与えてください)
(「ファイアランス」と叫びます。)
(槍を突き出した先へ、真っ直ぐ強い炎の力を与えてください。)

右腰に槍を構えて、膝を軽く曲げて構える。
目を閉じて、槍先から1直線に細く延びた強い炎をイメージする。

静かに息を吸ってから、一気に前へ飛び出して槍を突き出した。

「ファイアランス!」

タケルの叫びとともに槍の穂先から、赤い光が走る!

「バン! バシーン!!」
的にしていた麻袋に槍の穂先が当たった瞬簡に、はぜる様な大きな音がした!

穂先は麻袋を結んだ太い木の幹に刺さった。
槍を引いて、息を整える。
胸がチリチリしているし、一気に体が重くなった感じがする。

的の麻袋を確認すると槍で穴が開いていて、少し焦げたような匂いがする。
手応えは十分だったが、見る限りでは槍だけより効果が大きいのかがわからない。

「タケル様、何をされたのですか?」少し険しい顔のマリンダが後ろにいた。
「魔法槍の練習です。勝手にやってはダメでした? 出来たと思ったんですけど、疲れた割には、少し焦げた程度みたいで。」

「少しだなんて・・・、ダメではございませんが、こちらへお越しください。」
マリンダは的の裏側へタケルを連れて行き、木の幹を指差した。

幹に綺麗な穴が開いていた。

「これはすごい!大成功ですよ、マリンダさん。予想以上だ。」
「それだけではございません。」

マリンダは的の木から指先を動かして、2メートルほど先にある背の低い木を指差した。
細い幹の途中が、縦に二つに割れている。

「タケル様の槍はあそこまで届いています。横から拝見していると、赤い線が槍から真っ直ぐ延びたように見えました。」
「でしたら、イメージ通りです。いやぁ、すごい!グレン様ありがとうございます!」

ご機嫌なタケルを置いて、マリンダはブラックモアと相談すると言って立ち去った。
(叱られるのかなぁ?)

木陰で寝ているシルバーが気持ちよさそうだったので、地面に座って後ろ足に寄りかからせてもらった。
気持ちのいいクッションだ。
シルバーは嫌がらずに大きな尻尾をゆっくり振ってくれている。

目を閉じると、けだるい体に木陰の風が気持ち良い。
そのまま、ウトウトし始めた。
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