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派遣勇者の進む道
133.霧を抜けて
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■北の洞窟 霧の中
~第12次派遣2日目~
タケル達は霧が立ち込める狭い通路を、不自然なぐらい大きな声で話をしながら歩き続けた。先頭のタケルには左右の壁と足元の地面以外は真っ白で何も見えない。後ろをついて歩く3人にも前を歩く人間の姿しか見えない状態が長く続き、不安が募っていた。
会話はとりとめのない物だった、この世界に来てからの話や現世での話、アキラさん以外の3人がかわるがわる話しながら狭い通路を進んで行った。洞窟は足元の感触では上りで緩やかに右へ曲がっているようだ。途中に分岐点も無く、魔獣が出てくることも無い。ダイスケに借りている機械式時計を見ると既に1時間以上も霧の中に歩いてきたことになる。
「このまま、出られへんってことは・・・」
「マユミ、フラグを立てるなよ!」
「大丈夫だよ。神に愛されている俺が一緒だからね」
不安になって来たのはタケルも同じだったが、これも神の導きだと信じている自分が居る。
-きっと大丈夫。いつも神は優しく微笑む。
タケルの心が通じたようだ、顔に緩やかな風が当たって来たのを感じる。
「風が吹いて来た、そろそろ出口じゃないかな」
「ホンマですか!?」
白い霧が立ち込めているのは変わらないが、通路の前方が少し明るくなっているようにも感じて、両側の狭い壁がなくなった。
「通路から出たね」
「出ましたね」
両側の壁がなくなり天井も見えなくなったから通路を出ることは出来た。しかし、周囲は全てきりに覆われている。かえって厄介な状況になった。どっちに進んでいいのかが全然わからない。迷いの森へ行ったときはシルバーが導いてくれたから、何とかなったが、今日は一緒について来ていない。
「風が吹いている方向に進んでみよう」
「何でですか?」
「・・・何となくだね」
マユミの問いに頼りない答えをしたが、その方が霧は晴れるような気がしたのだ。風は洞窟の中よりも強く吹いている気がしていた。引き続き、幼稚園児のように前の人間の槍や手を持って歩いて行く・・・。
突然、霧が晴れた! 目の前には草原と小さな森がある。シベル大森林のような背の高い木が生えている場所ではないが、日当たりのよい場所で緑が綺麗に見えている。後ろを振り返ると、白い壁のように霧で覆われていて、既にどこから来たかは全く分からない。
「この場所だけが霧がないんですかね」
「そうだね、ここに連れてきてくれたんだろう」
森の向こうや草原の横にも霧の壁があるのが見えている。コーヘイが言うとおり、この空間だけに霧が無いのだ。
「草原にはなにもなさそうだから、森のまで行ってみようか」
幼稚園児の行列を解消して、横に並んで歩き始めた。手を離すときにマユミが残念そうな表情を浮かべたのをタケルは見逃さなかった。本当にアキラさんを気に入っているのかもしれない。
久しぶりに浴びる日の光と心地よい風で、草原を歩いていると長い地下道でたまった鬱屈した気分が解き放たれた。気温も随分と高いので、着込んだ毛皮を脱いでリュックの中に入れて行く。
「ここって、何処なんでしょうか?」
「判らないね、何処でもないのかもしれない・・・」
「なんですか、それ?」
コーヘイの問いに答えたタケルにもわかっていないが、霧がある以上は物理的な常識は通用しないはずだと思っている。
森の中に入ったタケルは5分もしないうちに、導かれた先を見つけたと思った。前方には綺麗な泉と石造りの大きな建物が見えている。たどり着いた泉には透き通るような水が満ちていて、底から水が湧き出してくるのが見えていた。せっかくなので、膝を着いて顔を洗った。泉から10メートル程離れた石造りの建物には窓は無かったが木製の大きなドアがあるのが見えている。行ってみるしかないだろう・・・。
-ドン、ドン、ドン、
「こんにちは。スタートスから来たタケルと言います。誰かいますか?」
「・・・」
返事がなかったので、ドアをゆっくりと引いてみる・・・。建物には天井に明り取りの窓が何か所か開いていて、建物の奥まで見えている。中には両側に水路がひかれていて、浅い小川のように水が流れていた。正面には王が座るような大きな椅子があったが誰も座っていない。
-神殿のような場所?
「ここって、なんでしょう? 椅子以外になにもありませんよね」
タケルに続いて入って来たマユミも建物の中を見回して不思議そうにしている。後ろの二人も建物に入ってきた。
-バーン!
突然、入ってきた扉が閉まった。
「エッ! マジで!? ・・・開かないですよ!」
最後尾のコーヘイが扉に取り付いて、開けようとしているが押しても引いても扉はびくともしない。男3人で押しても分厚い木でできている扉は全く動かなかった。
-いざとなれば、ゴッドブローで・・・
「タケル! あれ!」
マユミの声でタケルが振り向くと、さっきまで誰も座っていなかった玉座に人が座っている。
-いや、人? なのか?
座っているのは綺麗な女性だったが、服を着ていなかった。長い赤い髪を素肌に垂らして、足を優雅に組んで座っている。口元には笑みを浮かべていたが、タケル達に向けて声を発することも無かった。
「あのー、タケルと言います。勝手に入ってすみませんでした」
「・・・」
とりあえず、不法侵入をお詫びしてみたが返事は無い。重たい沈黙が建物の中を支配していく。
「出て行きたいのですが、扉が・・・!」
タケルの目の前に綺麗な顔が突然現れた!座っていたはずの女性だ!と思ったら・・・、いきなり唇を重ねられていた。
その瞬間に頭の中で声が聞える。
-我は水の神の使いし者・・・そなたの旅へ力を貸そう。
-水の神? 使いし者? 旅って何?
タケルは頭の中で問いかけたが、冷たい唇の感触を残したまま目の前にいた女性は突然消えた。
「ちょ、ちょっと、タケルさん何してるんですか? マリンダさんに叱られますよ!」
「いや、俺にも何が何だか・・・」
マユミは憤っていたが、タケルにも突然の事に思考がついて行かなかった。
「今の人は誰なんですか?」
「水の神の使いし者って言ってたけど・・・、俺の旅に力を貸してくれるって」
「旅? って魔竜討伐ですか?」
「さあ・・・?」
コーヘイの質問に対しての答えはタケル自体が知りたかった。一体何だったのだろう?でも、ひょっとすると・・・
「アキラさん、扉が開かないかな?」
アキラさんが扉を押すと、何の抵抗も見せずに扉は開いた。だが、外の景色は先ほどの森とは異なる場所だった・・・
~第12次派遣2日目~
タケル達は霧が立ち込める狭い通路を、不自然なぐらい大きな声で話をしながら歩き続けた。先頭のタケルには左右の壁と足元の地面以外は真っ白で何も見えない。後ろをついて歩く3人にも前を歩く人間の姿しか見えない状態が長く続き、不安が募っていた。
会話はとりとめのない物だった、この世界に来てからの話や現世での話、アキラさん以外の3人がかわるがわる話しながら狭い通路を進んで行った。洞窟は足元の感触では上りで緩やかに右へ曲がっているようだ。途中に分岐点も無く、魔獣が出てくることも無い。ダイスケに借りている機械式時計を見ると既に1時間以上も霧の中に歩いてきたことになる。
「このまま、出られへんってことは・・・」
「マユミ、フラグを立てるなよ!」
「大丈夫だよ。神に愛されている俺が一緒だからね」
不安になって来たのはタケルも同じだったが、これも神の導きだと信じている自分が居る。
-きっと大丈夫。いつも神は優しく微笑む。
タケルの心が通じたようだ、顔に緩やかな風が当たって来たのを感じる。
「風が吹いて来た、そろそろ出口じゃないかな」
「ホンマですか!?」
白い霧が立ち込めているのは変わらないが、通路の前方が少し明るくなっているようにも感じて、両側の狭い壁がなくなった。
「通路から出たね」
「出ましたね」
両側の壁がなくなり天井も見えなくなったから通路を出ることは出来た。しかし、周囲は全てきりに覆われている。かえって厄介な状況になった。どっちに進んでいいのかが全然わからない。迷いの森へ行ったときはシルバーが導いてくれたから、何とかなったが、今日は一緒について来ていない。
「風が吹いている方向に進んでみよう」
「何でですか?」
「・・・何となくだね」
マユミの問いに頼りない答えをしたが、その方が霧は晴れるような気がしたのだ。風は洞窟の中よりも強く吹いている気がしていた。引き続き、幼稚園児のように前の人間の槍や手を持って歩いて行く・・・。
突然、霧が晴れた! 目の前には草原と小さな森がある。シベル大森林のような背の高い木が生えている場所ではないが、日当たりのよい場所で緑が綺麗に見えている。後ろを振り返ると、白い壁のように霧で覆われていて、既にどこから来たかは全く分からない。
「この場所だけが霧がないんですかね」
「そうだね、ここに連れてきてくれたんだろう」
森の向こうや草原の横にも霧の壁があるのが見えている。コーヘイが言うとおり、この空間だけに霧が無いのだ。
「草原にはなにもなさそうだから、森のまで行ってみようか」
幼稚園児の行列を解消して、横に並んで歩き始めた。手を離すときにマユミが残念そうな表情を浮かべたのをタケルは見逃さなかった。本当にアキラさんを気に入っているのかもしれない。
久しぶりに浴びる日の光と心地よい風で、草原を歩いていると長い地下道でたまった鬱屈した気分が解き放たれた。気温も随分と高いので、着込んだ毛皮を脱いでリュックの中に入れて行く。
「ここって、何処なんでしょうか?」
「判らないね、何処でもないのかもしれない・・・」
「なんですか、それ?」
コーヘイの問いに答えたタケルにもわかっていないが、霧がある以上は物理的な常識は通用しないはずだと思っている。
森の中に入ったタケルは5分もしないうちに、導かれた先を見つけたと思った。前方には綺麗な泉と石造りの大きな建物が見えている。たどり着いた泉には透き通るような水が満ちていて、底から水が湧き出してくるのが見えていた。せっかくなので、膝を着いて顔を洗った。泉から10メートル程離れた石造りの建物には窓は無かったが木製の大きなドアがあるのが見えている。行ってみるしかないだろう・・・。
-ドン、ドン、ドン、
「こんにちは。スタートスから来たタケルと言います。誰かいますか?」
「・・・」
返事がなかったので、ドアをゆっくりと引いてみる・・・。建物には天井に明り取りの窓が何か所か開いていて、建物の奥まで見えている。中には両側に水路がひかれていて、浅い小川のように水が流れていた。正面には王が座るような大きな椅子があったが誰も座っていない。
-神殿のような場所?
「ここって、なんでしょう? 椅子以外になにもありませんよね」
タケルに続いて入って来たマユミも建物の中を見回して不思議そうにしている。後ろの二人も建物に入ってきた。
-バーン!
突然、入ってきた扉が閉まった。
「エッ! マジで!? ・・・開かないですよ!」
最後尾のコーヘイが扉に取り付いて、開けようとしているが押しても引いても扉はびくともしない。男3人で押しても分厚い木でできている扉は全く動かなかった。
-いざとなれば、ゴッドブローで・・・
「タケル! あれ!」
マユミの声でタケルが振り向くと、さっきまで誰も座っていなかった玉座に人が座っている。
-いや、人? なのか?
座っているのは綺麗な女性だったが、服を着ていなかった。長い赤い髪を素肌に垂らして、足を優雅に組んで座っている。口元には笑みを浮かべていたが、タケル達に向けて声を発することも無かった。
「あのー、タケルと言います。勝手に入ってすみませんでした」
「・・・」
とりあえず、不法侵入をお詫びしてみたが返事は無い。重たい沈黙が建物の中を支配していく。
「出て行きたいのですが、扉が・・・!」
タケルの目の前に綺麗な顔が突然現れた!座っていたはずの女性だ!と思ったら・・・、いきなり唇を重ねられていた。
その瞬間に頭の中で声が聞える。
-我は水の神の使いし者・・・そなたの旅へ力を貸そう。
-水の神? 使いし者? 旅って何?
タケルは頭の中で問いかけたが、冷たい唇の感触を残したまま目の前にいた女性は突然消えた。
「ちょ、ちょっと、タケルさん何してるんですか? マリンダさんに叱られますよ!」
「いや、俺にも何が何だか・・・」
マユミは憤っていたが、タケルにも突然の事に思考がついて行かなかった。
「今の人は誰なんですか?」
「水の神の使いし者って言ってたけど・・・、俺の旅に力を貸してくれるって」
「旅? って魔竜討伐ですか?」
「さあ・・・?」
コーヘイの質問に対しての答えはタケル自体が知りたかった。一体何だったのだろう?でも、ひょっとすると・・・
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