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派遣勇者の進む道
137.獣人達の生活
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■獣人の村
~第12次派遣2日目~
タケルは波間でもがいている翼竜の頭部にファイアランスを撃ちこんで息の根を止めた。浜まで持って行こうと思っていたが、どう考えても船に乗る大きさでは無かった。胴体だけで船と同じぐらいの大きさで、翼長は10メートルぐらいある。悩んでいるタケルにサムスが助け船を出してくれた。
「ローブで縛って船で引っ張って行きましょうか?」
「できるなら、是非!」
サムスは船に乗っている村人に二人に指示をして、船を動かなくなった翼竜の翼と一体化した前足に近づけるとロープで器用に縛りあげた。ロープの反対側を船に括りつけると、漕ぎ手たちは浜へ向かって漕ぎ始めた。海面で引かれる翼竜の抵抗で力が必要なはずだが、漕ぎ手たちも行きよりも元気な笑顔をうかべている。
船が進んで行く浜には大勢の獣人達が集まっていたが、船が近づくにつれてさらに増え行く。船底が浜辺の砂地に着いた時には、コンサート会場ぐらいの人数が集まっている。3人の族長達も並んでタケル達と海に浮かんでいる翼竜を見ていた。
タケルは船から浜辺に飛び降りて、浜の上に船を引き上げるのを手伝ってから族長の元へ進んだ。
「とりあえず1匹は倒しました。大きいので浜に引き上げるのを手伝ってください」
「わ、わかった。ハンザ、皆で引き上げるのだ。ありがとうございました。まさか、こんなに早く・・・」
「いえ、たまたまですよ。夜ご飯を取りに行くついでに襲われたので仕方なく。それで、ハンザさんから獲れた魚の取り分は聞いてもらいましたよね?」
「ああ、聞いている。それで構わない。船も好きに使ってもらってよい。漁は我らよりもあの者たちの方が得意にしている」
なんとか漁業権は確保できたみたいだ。後は生活環境を良くするように頑張ってもらおう。
-ウワー!! ワー! 大きいぞ!
浜に上がって来た翼竜を見て、取り囲んでいる獣人達から歓声が上がり始めた。タケルも近寄ってもう一度確認したが、黒い体表は爬虫類のざらざらした手触りだった。細い顔の大部分は大きな口が占めている。ワニよりも細いが縦に長く伸びた口は、人の胴体を咥えることも出来る大きさだ。後ろ脚は速い速度であるのには適さないが、太いかぎ爪で獲物を捕まえて空中に飛び上がるには都合のよい大きさだろう。
「タケルさん! やりましたね!」
「ああ、タイミングが上手く合ったよ」
コーヘイとアキラさんが人垣をかき分けて近寄って来た。
「あそこで、止まるってわかってたんですか?」
「ああ、この前テレビでハヤブサの狩りを映像で見てたんだ。上から時速300㎞ぐらいで降りてくるけど、襲う直前は羽を広げて急激に速度を落とすのを見て感心してたんだよ」
何気なく見ていたテレビだったが非常に参考になった。猛禽類は横に飛ぶ速度よりも落ちてくる速度の方が圧倒的に速かった。旋回した翼竜も海面に居る俺達を見付ければ、同じように狙ってくるとタケルは考えて待ち構えてみた。もちろん、横から来た場合は巨大な火炎風で弾き飛ばすつもりだったが、その場合は追い払うだけで仕留めることは難しかっただろう。
「それよりも、魚がたくさん獲れたから。今晩はお魚パーティーだね。村の人はどんな生活してるか聞いてくれた?」
「いやぁ、かなり厳しいですね。生きて行くだけで精一杯って感じでしょうか。食い物も浜で獲れる貝とか海藻が多いみたいですし、家も土間に草を引いて寝ている状態です」
予想はしていたが、まさに奴隷の生活だ。タケルは族長達と再交渉が必要だと思った。
「族長、人間たちの家を修理する手伝いをしてください。とれた魚と交換で結構ですから」
「修理か・・・、我らの家も修理が必要なのだが、道具が殆ど残っておらんから、順番を待ってもらうしかないな」
「この村には鉄を作ったり、加工したりできる人は居ないんですか?」
「おらんのだ。刃物を研いだり、柄の交換をしたりはできるが。錆びてたものや、刃がだんだんと小さくなったものが増えて、使える道具は残り少ないのだ。
獣人の村は石器時代に戻ろうとしているようだ。そう言うタケル自身も鉄を鉄鉱石から作ることが出来るわけではない。鋸のようなものがないと家を修理するのは大変だろう。村人の生活水準を引き上げるためには、獣人達に道具を与えないと無理のようだ。
「じゃあ、あの翼竜を食べられるように切ってほしいんですけど、大きな包丁とかも無いですかね?」
「食べる!? あれをか!? ・・・、そうじゃな、小さい刃物を使って手分けすれば何とかなるかもしれんな」
-少し時間が掛かりそうだな・・・
「コーヘイ。この翼竜を三枚におろしてくれよ」
「三枚に!?」
「三枚は冗談だけど、胴体と翼を切り離して、胴体も50㎝ぐらいで輪切りにしてみて」
「わかりました、やってみます」
炎の刀の本来の使い方ではないだろうが、コーヘイは刃を振るって翼竜をぶつ切りにしてくれた。
「せっかくですから、みなさんで一緒に食べましょう。浜で肉を焼く用意をしてもらえますか?」
「ああ、それは構わんが、我らも食べても構わんのか?」
「もちろんです!遠慮なくどうぞ。その代わり、お酒があれば分けてもらえますか?」
「うむ、酒はやし酒があるから持ってこよう。お前たちには礼をせねばならんからな」
網で獲った魚と大物の翼竜を焼きながら、浜辺で大宴会を開催することにした。参加者の人数は数えきれないぐらいだ。肉も魚も木の串に刺して火であぶって行く、野性味あふれる調理法だった。
族長達は約束通り、ひょうたんに入った酒を大量に持って来てくれた。食糧事情が悪い割には、酒は潤沢にあるのが不思議だ。タケル達はマイカップにやし酒を注いでもらって、村人たちと乾杯をすることにした。
「それでは、獣人と人間の歴史的な和解を記念して、カンパーイ!」
「「カンパーイ!!」
声を出したのはメンバーだけだったが、村人たちが持っているボロボロの茶碗にタケルはカップをぶつけて回った。サムス達は驚いていたが顔は笑っていた。
この村でまだやることは沢山あるが、まずは奴隷制度の廃止が実現できた。後は魔獣を討伐して・・・、それよりもどうやって戻るのかが最大の問題だったことをタケルは思い出した。
-魔獣を倒せば戻れるんですよね? 神様?
結局は神の思し召し次第だ、とりあえず今夜はやし酒で酔っ払ってしまうことにしよう。
~第12次派遣2日目~
タケルは波間でもがいている翼竜の頭部にファイアランスを撃ちこんで息の根を止めた。浜まで持って行こうと思っていたが、どう考えても船に乗る大きさでは無かった。胴体だけで船と同じぐらいの大きさで、翼長は10メートルぐらいある。悩んでいるタケルにサムスが助け船を出してくれた。
「ローブで縛って船で引っ張って行きましょうか?」
「できるなら、是非!」
サムスは船に乗っている村人に二人に指示をして、船を動かなくなった翼竜の翼と一体化した前足に近づけるとロープで器用に縛りあげた。ロープの反対側を船に括りつけると、漕ぎ手たちは浜へ向かって漕ぎ始めた。海面で引かれる翼竜の抵抗で力が必要なはずだが、漕ぎ手たちも行きよりも元気な笑顔をうかべている。
船が進んで行く浜には大勢の獣人達が集まっていたが、船が近づくにつれてさらに増え行く。船底が浜辺の砂地に着いた時には、コンサート会場ぐらいの人数が集まっている。3人の族長達も並んでタケル達と海に浮かんでいる翼竜を見ていた。
タケルは船から浜辺に飛び降りて、浜の上に船を引き上げるのを手伝ってから族長の元へ進んだ。
「とりあえず1匹は倒しました。大きいので浜に引き上げるのを手伝ってください」
「わ、わかった。ハンザ、皆で引き上げるのだ。ありがとうございました。まさか、こんなに早く・・・」
「いえ、たまたまですよ。夜ご飯を取りに行くついでに襲われたので仕方なく。それで、ハンザさんから獲れた魚の取り分は聞いてもらいましたよね?」
「ああ、聞いている。それで構わない。船も好きに使ってもらってよい。漁は我らよりもあの者たちの方が得意にしている」
なんとか漁業権は確保できたみたいだ。後は生活環境を良くするように頑張ってもらおう。
-ウワー!! ワー! 大きいぞ!
浜に上がって来た翼竜を見て、取り囲んでいる獣人達から歓声が上がり始めた。タケルも近寄ってもう一度確認したが、黒い体表は爬虫類のざらざらした手触りだった。細い顔の大部分は大きな口が占めている。ワニよりも細いが縦に長く伸びた口は、人の胴体を咥えることも出来る大きさだ。後ろ脚は速い速度であるのには適さないが、太いかぎ爪で獲物を捕まえて空中に飛び上がるには都合のよい大きさだろう。
「タケルさん! やりましたね!」
「ああ、タイミングが上手く合ったよ」
コーヘイとアキラさんが人垣をかき分けて近寄って来た。
「あそこで、止まるってわかってたんですか?」
「ああ、この前テレビでハヤブサの狩りを映像で見てたんだ。上から時速300㎞ぐらいで降りてくるけど、襲う直前は羽を広げて急激に速度を落とすのを見て感心してたんだよ」
何気なく見ていたテレビだったが非常に参考になった。猛禽類は横に飛ぶ速度よりも落ちてくる速度の方が圧倒的に速かった。旋回した翼竜も海面に居る俺達を見付ければ、同じように狙ってくるとタケルは考えて待ち構えてみた。もちろん、横から来た場合は巨大な火炎風で弾き飛ばすつもりだったが、その場合は追い払うだけで仕留めることは難しかっただろう。
「それよりも、魚がたくさん獲れたから。今晩はお魚パーティーだね。村の人はどんな生活してるか聞いてくれた?」
「いやぁ、かなり厳しいですね。生きて行くだけで精一杯って感じでしょうか。食い物も浜で獲れる貝とか海藻が多いみたいですし、家も土間に草を引いて寝ている状態です」
予想はしていたが、まさに奴隷の生活だ。タケルは族長達と再交渉が必要だと思った。
「族長、人間たちの家を修理する手伝いをしてください。とれた魚と交換で結構ですから」
「修理か・・・、我らの家も修理が必要なのだが、道具が殆ど残っておらんから、順番を待ってもらうしかないな」
「この村には鉄を作ったり、加工したりできる人は居ないんですか?」
「おらんのだ。刃物を研いだり、柄の交換をしたりはできるが。錆びてたものや、刃がだんだんと小さくなったものが増えて、使える道具は残り少ないのだ。
獣人の村は石器時代に戻ろうとしているようだ。そう言うタケル自身も鉄を鉄鉱石から作ることが出来るわけではない。鋸のようなものがないと家を修理するのは大変だろう。村人の生活水準を引き上げるためには、獣人達に道具を与えないと無理のようだ。
「じゃあ、あの翼竜を食べられるように切ってほしいんですけど、大きな包丁とかも無いですかね?」
「食べる!? あれをか!? ・・・、そうじゃな、小さい刃物を使って手分けすれば何とかなるかもしれんな」
-少し時間が掛かりそうだな・・・
「コーヘイ。この翼竜を三枚におろしてくれよ」
「三枚に!?」
「三枚は冗談だけど、胴体と翼を切り離して、胴体も50㎝ぐらいで輪切りにしてみて」
「わかりました、やってみます」
炎の刀の本来の使い方ではないだろうが、コーヘイは刃を振るって翼竜をぶつ切りにしてくれた。
「せっかくですから、みなさんで一緒に食べましょう。浜で肉を焼く用意をしてもらえますか?」
「ああ、それは構わんが、我らも食べても構わんのか?」
「もちろんです!遠慮なくどうぞ。その代わり、お酒があれば分けてもらえますか?」
「うむ、酒はやし酒があるから持ってこよう。お前たちには礼をせねばならんからな」
網で獲った魚と大物の翼竜を焼きながら、浜辺で大宴会を開催することにした。参加者の人数は数えきれないぐらいだ。肉も魚も木の串に刺して火であぶって行く、野性味あふれる調理法だった。
族長達は約束通り、ひょうたんに入った酒を大量に持って来てくれた。食糧事情が悪い割には、酒は潤沢にあるのが不思議だ。タケル達はマイカップにやし酒を注いでもらって、村人たちと乾杯をすることにした。
「それでは、獣人と人間の歴史的な和解を記念して、カンパーイ!」
「「カンパーイ!!」
声を出したのはメンバーだけだったが、村人たちが持っているボロボロの茶碗にタケルはカップをぶつけて回った。サムス達は驚いていたが顔は笑っていた。
この村でまだやることは沢山あるが、まずは奴隷制度の廃止が実現できた。後は魔獣を討伐して・・・、それよりもどうやって戻るのかが最大の問題だったことをタケルは思い出した。
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