辺境伯の5女ですが 加護が『液体』なので ばれる前に逃げます。

サラ

文字の大きさ
71 / 103

71. 茶ピンク・・・

しおりを挟む
 茶ピンクさんとラクアート様には取り合えず責任者不在なので一旦、帰ってもらって改めて連絡するとノヴァ神官が穏やかに話をした。
 しかし、茶ピンクさんが名乗り出た聖女の為に特別な部屋が大神殿に用意されているはずだから、儀式までその部屋に滞在したいと言い出した。
 ラクアート様も討伐メンバーなので並びの部屋があるはずだと言われ、どうしてその事を知っているのかと問われた茶ピンクさんは自信満々で、

「女神から詳しい話は聞いております。とりあえず儀式まではその部屋に滞在いたします。ラクアートも一緒ですし、明日からは討伐メンバーの選別に移りたいと思っています。平民の中にメンバーがいるはずですから」
「いえ、まだ聖女の存在については伏せておきたいので」
「では仕方がないので、儀式まではここに滞在します」
「まだ、聖女と決まったわけでは」
「ですので、儀式をするんでしょう! 貴方、良くない気を纏っているようですけど聖女に逆らう気ですか」
「良くない気?」

「ええ、何となくですけど貴方に近づきたいとは思いません。それに神官長を差し置いて勝手な発言をしないでくれますか」
「いや、彼は聖女が現れた時はお世話係になりますので」
「では、担当を変えて下さい。私はこの世界のために魔王を討伐するのですから」
「いえ、魔王は討伐ではなく封印、」
「封印より、討伐してしまえばこれで終わりでしょう! とにかく、責任者は神殿長ですよね。お帰りになったら私の所に来るように伝えて下さい。そこの貴方、聖女の部屋に案内して」

 茶ピンクさんは偉そうにドアの所に控えていた神官に声をかけた。
 ノヴァ神官は凄く嫌そうな顔をしたが、

「聖女のための控えの間に案内しておいて」
 と神官に声をかけた。

 神官は「宜しいのでしょうか」と聞いてきたが「いいに決まっているでしょう」という茶ピンクさんに押されるように部屋を出ていった。


 ふーっとため息をついたノヴァ神官と新官長がドアを開けて茶ピンクさんたちが居なくなったことを確認してから私達のいる部屋にやって来た。

「あいつ、ムカつくな。リーナに対する態度が特に」
「女神様とリーナ様に対する敬意が見当たりません。しかも、割と言葉は丁寧なようでいて言っていることや態度は傲慢です」
「ラクアートは一体どうして、しょうもない女にばかり引っかかるんだろう」
「自称聖女たちがラクアート様は一応公爵家の嫡男だし、性格的にも与し易しと見て取り込んでいるんじゃないでしょうか」
「アイツ、煽てられると調子に乗るところがあるから」
「それにしても、ピンクと茶ピンクがリーナの事を簡単に利用できる相手として見ているのが本当に頭にくる。リーナ、何時までも優しい顔をしていないで、アイツらまとめて殲滅してしまえ」
「もう、お兄様」

 久々にお兄様の殲滅してしまえ! が聞こえてきた。
 でも、どうしましょう。これまでの伝承にある通りに茶ピンクさんは不思議な夢を見ると申し出てきたけど、魔王こと、小太郎さんの封印に関しては『魔王討伐』と言っていたのが気になる。
 それに、ピンクさんが言っていた通りに7人でチームを組むと言っていたし、どうして私がシーフの役割になるのか分からない。

「なにより、魔王復活の際には桜の花は全開になる。全開になってから聖女の申し出があるはずなのに、今回の桜はまだ七分咲きだ」
「俺たちの、というか前世だと七分咲きは満開という認識になるが、この世界の桜の全開までは後三分ある。魔王の封印は解けていない。それに魔王を討伐してどうするんだ。魔王の封印はこの世界の要だ。小太郎さんを解放するにも討伐してはダメだろう」

「多分だけど、茶ピンクは乙女ゲームの知識からこの夏が魔王封印の時だと判断して、夢も見てないのに聖女の名乗りを上げたんじゃないか。討伐に関しては勝手に封印よりは討伐してしまえ! とでも思ったとか」
「そして、何故かリーナを近くに置きたがるのはリーナの『水魔法の加護』を何とかして奪い取ろうとしているんだと思う」
「リーナ様の『水魔法の加護』を奪うためには多分、リーナ様からの申し出が必要で、その為にリーナ様の心を折ろうとしているのでは」

 ノヴァ神官の『真実の目の加護』は聖女に関しての真実を見る事ができるが、それは聖女が杖を手にしてからわかるもので、今の茶ピンクさんを見ても嫌な気持ちになる、という事だけしかわからないそうだ。
 アルファント殿下とノヴァ神官、お兄様とランディ様からは色々な意見が出たが、私達は茶ピンクさんの言動に怒っていて、冷静ではないのでまた改めて明日にでも話し合いをする事になった。

 しばらく、茶ピンクさんは様子見となったが、聖女として名乗り出た為、神殿の奥にある聖女の控え部屋に滞在する事になった。
 聖女の部屋は神殿の中でも特別に美しく整えられているのだけれど、聖女の控えの間は急に豪華な部屋に案内されると委縮する聖女の方もいらっしゃるので、聖女の部屋よりは少し控えめに作られている。
 その部屋に案内された茶ピンクさんは

「実際に見るとそこまで豪華でもないのね。でも、まぁ良いモノが置いてあるようだからいいか。私の為の侍女を呼んでお茶を入れてちょうだい。食事もこちらへ運ばせて。神殿の簡素な食事ではなく、闘いに行くのだからしっかりとお肉料理を中心にいいモノを用意してね。今すぐは無理でも明日からはちゃんとした御持て成し料理を期待しているから」

 とおっしゃったそうである。
 茶ピンクさんは物凄く自己主張が強い。

 前世でもああやって生きてきたのかしら。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

その聖女は身分を捨てた

喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。 その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。 そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。 魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。 こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。 これは、平和を取り戻した後のお話である。

処理中です...