赤い靴から始まるAYAKASHI殺人事件

サラ

文字の大きさ
8 / 18

8. 首無し地蔵と第二の殺人

しおりを挟む
傘地蔵は山の奥の峠道に並んでいた。
昔はこの峠道を通って一山超えて隣の村に行っていたそうだ。昔からこの村は『妖の隠れ里』だったが『本当の隠れ里』の前に目くらましをする為の外向きの村として存在していた。

『本当の隠れ里』は峠道とは反対側の小さな滝つぼを潜り抜けた窪地に存在していて、そこには人型を取る事のできない『妖』がひっそりと暮らしていた。本当の隠れ里には妖怪の他にも霊魂だけの存在や人でありながら人の理から外れた者も寄り添うように暮らしている。

傘地蔵も一時は『本当の隠れ里』に居たこともあったのだが、寿命がないので峠道にて過ごしたいという願いの元、峠道で村人や僅かに通る人々を眺めていたのだが、ここ最近は眠りについていることが多かった。
さて、山の奥の峠道に続く道はこの村に来るために通った道の先にあった。どこからどう見ても、ところどころ岩が突き出ている山道になっている。

「ここを登るんですか?」
「ああ、山道だが、一応街道だ」
「リーちゃん、靴を登山靴に変えなよ」

そう言いながら、店員Sはスマホの画面を見せてきた。そこには赤い登山靴が写っている。そのまま、店員Aは屈んでスマホの画面をリナの履いている黒い靴(元赤い靴)に見せた。
すると、黒い靴は一瞬、ピカッと光ったかと思うと、画面と同じ赤い登山靴に変化した。ご丁寧に登山用の靴下付きで。

「おお、凄いな。さすが、赤い靴!」

店員Aが手を叩くと、それに答えて赤い登山靴はピカピカと光った。
翼とナキンは呆れて見ていたが、白い髭の村長は驚いて叫んだ。

「何だ! その靴は?! 変化の靴か? まさか、防具の一つじゃあるまいな!」
「防具?」
「ああ、そういえば、靴じゃない、えーと、 甲懸 こうがけといったか。足の甲を保護するための小具足で甲冑の一部にそんなのがあったな。あれもばらけた防具の一つか」
「なんで、その子がその防具を身に付けているんじゃ?」
「これは勝手に憑いて離れないんです。私が望んでこの靴を履いているわけではないんです」

リナは又、新しい情報が出て来たので泣きそうな気持になった。由緒とか所以とかいらないので、是非ともこの靴から解放してほしいと思う。

「しかし、防具は主に合わせてその大きさを変えるという。その娘は靴の主なのか?」
「あーっ、仮の主らしいぞ。だから離れないけど、靴は割と勝手に行動する」
「でも、意思疎通はできるようになったんですよ。用途に合わせて変化するのも仮の主に気を使っているからで」
「いや、仮とはいえ、防具の主が出て来たというのが問題じゃ。何か起こらなければいいが」
「もう、起こったみたいです。ほら、タヌキ親父が殺されたし」
「タヌキ親父! まさかあの、ふざけた名前の田塗の奴か」
「そう、田塗大善は殺された。腹、割かれて、心臓から魔石を抜かれて」
「なんと、魔石を!」
「そう、タヌキの魔石はそれほど大きくはない、と思うけど何に使うつもりなんだか」
「うーん、田塗の奴が……誰が、何のために、」

話しているうちにいつの間にかお地蔵さんが立ち並んでいる場所に着いた。ズラズラっとお地蔵さんが並んで……、一つのお地蔵さんだけ頭がなかった。肩の所でスパっと切られているようだけど、どうしたらこんなに鮮やかな切り口になるんだろう。

「アーッ、村長だ」
「村長! 頭、見つけただ」
「だけど、何か人が死んでいるのも見つけた」
「はぁっ?!」

ガサガサと藪をかき分けて出て来たのは二人の村人だろうか、がっしりとした中年の男性と体格の良い小学生くらいの男の子が村長に声をかけてきた。

「死体だと?」
「切り裂かれた死体だ」
「まさか!?」
「リーちゃん、そこに居て。こっちに来ちゃだめだよ」

ナキンと翼、店員Aは急いで死体を見つけたという現場を見に行った。一足遅れて村長が続く。そこには、仰向けになった中年の男性が胸を切り裂かれて死んでいた。側にはお地蔵様の頭が転がっていた。

「こいつ、見たことある。タヌキの息子だ。確か、田塗広善。名前に善がついているが、悪い奴だ」
「何で、こんなとこで殺されているんだ? また、心臓の魔石が抜かれている。一体、何に使っているんだ」
「取り合えず、警察ですね。で、そのお地蔵様の頭は……兜が無いようですが」
「おお、兜が無くなっている。どこに行ったんじゃ。大事な預かりものなのに」
「お地蔵様は首を切られても寝たままですか」
「うーん。眠りが深いようだ。とりあえず、元に戻すか」

そうして、本来は現場保存をしなければいけないはずなのに、ナキンはヒョンとお地蔵様の頭を宙に浮かせ、そのまま他の傘地蔵の所まで持っていった。
傘地蔵のとこには所在なさげにリナが立っていた。
が、その頭の上には赤い兜が浮かんでいる。頭の上だが、かなり上なのでリナはまだ気が付いていない。戻ってきた人々は思わずリナの上を凝視した。

「えっ、何、どうかしたんですか?」

リナは皆が上を見てるので自分も上を見てみたがリナのちょっと後ろの上なので何も見えなかった。

「リーちゃん、驚かないでね」
「ええ、何でしょうか?」
「リーちゃんの頭の上のほうに兜が浮かんでいるんだ」
「兜!」

リナが兜と口に出した途端、その赤い兜はリナの頭に吸い付くように乗っかった。かなり高い位置に浮かんでいたはずなのにまるで瞬間移動でもしたかのように、一瞬の出来事だった。

「ええっ、なにこれ!」
「今度は兜か?」
「リーちゃん、主になるのか!」

リナは混乱していた。頭にいきなり兜がはまれば、誰だって驚くと思う。
(赤い靴はまだ誤魔化せるけど、兜なんてかぶっている人、何処にもいないのに! どうしよう!)

赤い兜は嬉しそうに点滅していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

番を辞めますさようなら

京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら… 愛されなかった番。後悔ざまぁ。すれ違いエンド。ゆるゆる設定。 ※沢山のお気に入り&いいねをありがとうございます。感謝感謝♡

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

6年前の私へ~その6年は無駄になる~

夏見颯一
恋愛
モルディス侯爵家に嫁いだウィニアは帰ってこない夫・フォレートを待っていた。6年も経ってからようやく帰ってきたフォレートは、妻と子供を連れていた。 テンプレものです。テンプレから脱却はしておりません。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...