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8. 首無し地蔵と第二の殺人
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傘地蔵は山の奥の峠道に並んでいた。
昔はこの峠道を通って一山超えて隣の村に行っていたそうだ。昔からこの村は『妖の隠れ里』だったが『本当の隠れ里』の前に目くらましをする為の外向きの村として存在していた。
『本当の隠れ里』は峠道とは反対側の小さな滝つぼを潜り抜けた窪地に存在していて、そこには人型を取る事のできない『妖』がひっそりと暮らしていた。本当の隠れ里には妖怪の他にも霊魂だけの存在や人でありながら人の理から外れた者も寄り添うように暮らしている。
傘地蔵も一時は『本当の隠れ里』に居たこともあったのだが、寿命がないので峠道にて過ごしたいという願いの元、峠道で村人や僅かに通る人々を眺めていたのだが、ここ最近は眠りについていることが多かった。
さて、山の奥の峠道に続く道はこの村に来るために通った道の先にあった。どこからどう見ても、ところどころ岩が突き出ている山道になっている。
「ここを登るんですか?」
「ああ、山道だが、一応街道だ」
「リーちゃん、靴を登山靴に変えなよ」
そう言いながら、店員Sはスマホの画面を見せてきた。そこには赤い登山靴が写っている。そのまま、店員Aは屈んでスマホの画面をリナの履いている黒い靴(元赤い靴)に見せた。
すると、黒い靴は一瞬、ピカッと光ったかと思うと、画面と同じ赤い登山靴に変化した。ご丁寧に登山用の靴下付きで。
「おお、凄いな。さすが、赤い靴!」
店員Aが手を叩くと、それに答えて赤い登山靴はピカピカと光った。
翼とナキンは呆れて見ていたが、白い髭の村長は驚いて叫んだ。
「何だ! その靴は?! 変化の靴か? まさか、防具の一つじゃあるまいな!」
「防具?」
「ああ、そういえば、靴じゃない、えーと、 甲懸 といったか。足の甲を保護するための小具足で甲冑の一部にそんなのがあったな。あれもばらけた防具の一つか」
「なんで、その子がその防具を身に付けているんじゃ?」
「これは勝手に憑いて離れないんです。私が望んでこの靴を履いているわけではないんです」
リナは又、新しい情報が出て来たので泣きそうな気持になった。由緒とか所以とかいらないので、是非ともこの靴から解放してほしいと思う。
「しかし、防具は主に合わせてその大きさを変えるという。その娘は靴の主なのか?」
「あーっ、仮の主らしいぞ。だから離れないけど、靴は割と勝手に行動する」
「でも、意思疎通はできるようになったんですよ。用途に合わせて変化するのも仮の主に気を使っているからで」
「いや、仮とはいえ、防具の主が出て来たというのが問題じゃ。何か起こらなければいいが」
「もう、起こったみたいです。ほら、タヌキ親父が殺されたし」
「タヌキ親父! まさかあの、ふざけた名前の田塗の奴か」
「そう、田塗大善は殺された。腹、割かれて、心臓から魔石を抜かれて」
「なんと、魔石を!」
「そう、タヌキの魔石はそれほど大きくはない、と思うけど何に使うつもりなんだか」
「うーん、田塗の奴が……誰が、何のために、」
話しているうちにいつの間にかお地蔵さんが立ち並んでいる場所に着いた。ズラズラっとお地蔵さんが並んで……、一つのお地蔵さんだけ頭がなかった。肩の所でスパっと切られているようだけど、どうしたらこんなに鮮やかな切り口になるんだろう。
「アーッ、村長だ」
「村長! 頭、見つけただ」
「だけど、何か人が死んでいるのも見つけた」
「はぁっ?!」
ガサガサと藪をかき分けて出て来たのは二人の村人だろうか、がっしりとした中年の男性と体格の良い小学生くらいの男の子が村長に声をかけてきた。
「死体だと?」
「切り裂かれた死体だ」
「まさか!?」
「リーちゃん、そこに居て。こっちに来ちゃだめだよ」
ナキンと翼、店員Aは急いで死体を見つけたという現場を見に行った。一足遅れて村長が続く。そこには、仰向けになった中年の男性が胸を切り裂かれて死んでいた。側にはお地蔵様の頭が転がっていた。
「こいつ、見たことある。タヌキの息子だ。確か、田塗広善。名前に善がついているが、悪い奴だ」
「何で、こんなとこで殺されているんだ? また、心臓の魔石が抜かれている。一体、何に使っているんだ」
「取り合えず、警察ですね。で、そのお地蔵様の頭は……兜が無いようですが」
「おお、兜が無くなっている。どこに行ったんじゃ。大事な預かりものなのに」
「お地蔵様は首を切られても寝たままですか」
「うーん。眠りが深いようだ。とりあえず、元に戻すか」
そうして、本来は現場保存をしなければいけないはずなのに、ナキンはヒョンとお地蔵様の頭を宙に浮かせ、そのまま他の傘地蔵の所まで持っていった。
傘地蔵のとこには所在なさげにリナが立っていた。
が、その頭の上には赤い兜が浮かんでいる。頭の上だが、かなり上なのでリナはまだ気が付いていない。戻ってきた人々は思わずリナの上を凝視した。
「えっ、何、どうかしたんですか?」
リナは皆が上を見てるので自分も上を見てみたがリナのちょっと後ろの上なので何も見えなかった。
「リーちゃん、驚かないでね」
「ええ、何でしょうか?」
「リーちゃんの頭の上のほうに兜が浮かんでいるんだ」
「兜!」
リナが兜と口に出した途端、その赤い兜はリナの頭に吸い付くように乗っかった。かなり高い位置に浮かんでいたはずなのにまるで瞬間移動でもしたかのように、一瞬の出来事だった。
「ええっ、なにこれ!」
「今度は兜か?」
「リーちゃん、主になるのか!」
リナは混乱していた。頭にいきなり兜がはまれば、誰だって驚くと思う。
(赤い靴はまだ誤魔化せるけど、兜なんてかぶっている人、何処にもいないのに! どうしよう!)
赤い兜は嬉しそうに点滅していた。
昔はこの峠道を通って一山超えて隣の村に行っていたそうだ。昔からこの村は『妖の隠れ里』だったが『本当の隠れ里』の前に目くらましをする為の外向きの村として存在していた。
『本当の隠れ里』は峠道とは反対側の小さな滝つぼを潜り抜けた窪地に存在していて、そこには人型を取る事のできない『妖』がひっそりと暮らしていた。本当の隠れ里には妖怪の他にも霊魂だけの存在や人でありながら人の理から外れた者も寄り添うように暮らしている。
傘地蔵も一時は『本当の隠れ里』に居たこともあったのだが、寿命がないので峠道にて過ごしたいという願いの元、峠道で村人や僅かに通る人々を眺めていたのだが、ここ最近は眠りについていることが多かった。
さて、山の奥の峠道に続く道はこの村に来るために通った道の先にあった。どこからどう見ても、ところどころ岩が突き出ている山道になっている。
「ここを登るんですか?」
「ああ、山道だが、一応街道だ」
「リーちゃん、靴を登山靴に変えなよ」
そう言いながら、店員Sはスマホの画面を見せてきた。そこには赤い登山靴が写っている。そのまま、店員Aは屈んでスマホの画面をリナの履いている黒い靴(元赤い靴)に見せた。
すると、黒い靴は一瞬、ピカッと光ったかと思うと、画面と同じ赤い登山靴に変化した。ご丁寧に登山用の靴下付きで。
「おお、凄いな。さすが、赤い靴!」
店員Aが手を叩くと、それに答えて赤い登山靴はピカピカと光った。
翼とナキンは呆れて見ていたが、白い髭の村長は驚いて叫んだ。
「何だ! その靴は?! 変化の靴か? まさか、防具の一つじゃあるまいな!」
「防具?」
「ああ、そういえば、靴じゃない、えーと、 甲懸 といったか。足の甲を保護するための小具足で甲冑の一部にそんなのがあったな。あれもばらけた防具の一つか」
「なんで、その子がその防具を身に付けているんじゃ?」
「これは勝手に憑いて離れないんです。私が望んでこの靴を履いているわけではないんです」
リナは又、新しい情報が出て来たので泣きそうな気持になった。由緒とか所以とかいらないので、是非ともこの靴から解放してほしいと思う。
「しかし、防具は主に合わせてその大きさを変えるという。その娘は靴の主なのか?」
「あーっ、仮の主らしいぞ。だから離れないけど、靴は割と勝手に行動する」
「でも、意思疎通はできるようになったんですよ。用途に合わせて変化するのも仮の主に気を使っているからで」
「いや、仮とはいえ、防具の主が出て来たというのが問題じゃ。何か起こらなければいいが」
「もう、起こったみたいです。ほら、タヌキ親父が殺されたし」
「タヌキ親父! まさかあの、ふざけた名前の田塗の奴か」
「そう、田塗大善は殺された。腹、割かれて、心臓から魔石を抜かれて」
「なんと、魔石を!」
「そう、タヌキの魔石はそれほど大きくはない、と思うけど何に使うつもりなんだか」
「うーん、田塗の奴が……誰が、何のために、」
話しているうちにいつの間にかお地蔵さんが立ち並んでいる場所に着いた。ズラズラっとお地蔵さんが並んで……、一つのお地蔵さんだけ頭がなかった。肩の所でスパっと切られているようだけど、どうしたらこんなに鮮やかな切り口になるんだろう。
「アーッ、村長だ」
「村長! 頭、見つけただ」
「だけど、何か人が死んでいるのも見つけた」
「はぁっ?!」
ガサガサと藪をかき分けて出て来たのは二人の村人だろうか、がっしりとした中年の男性と体格の良い小学生くらいの男の子が村長に声をかけてきた。
「死体だと?」
「切り裂かれた死体だ」
「まさか!?」
「リーちゃん、そこに居て。こっちに来ちゃだめだよ」
ナキンと翼、店員Aは急いで死体を見つけたという現場を見に行った。一足遅れて村長が続く。そこには、仰向けになった中年の男性が胸を切り裂かれて死んでいた。側にはお地蔵様の頭が転がっていた。
「こいつ、見たことある。タヌキの息子だ。確か、田塗広善。名前に善がついているが、悪い奴だ」
「何で、こんなとこで殺されているんだ? また、心臓の魔石が抜かれている。一体、何に使っているんだ」
「取り合えず、警察ですね。で、そのお地蔵様の頭は……兜が無いようですが」
「おお、兜が無くなっている。どこに行ったんじゃ。大事な預かりものなのに」
「お地蔵様は首を切られても寝たままですか」
「うーん。眠りが深いようだ。とりあえず、元に戻すか」
そうして、本来は現場保存をしなければいけないはずなのに、ナキンはヒョンとお地蔵様の頭を宙に浮かせ、そのまま他の傘地蔵の所まで持っていった。
傘地蔵のとこには所在なさげにリナが立っていた。
が、その頭の上には赤い兜が浮かんでいる。頭の上だが、かなり上なのでリナはまだ気が付いていない。戻ってきた人々は思わずリナの上を凝視した。
「えっ、何、どうかしたんですか?」
リナは皆が上を見てるので自分も上を見てみたがリナのちょっと後ろの上なので何も見えなかった。
「リーちゃん、驚かないでね」
「ええ、何でしょうか?」
「リーちゃんの頭の上のほうに兜が浮かんでいるんだ」
「兜!」
リナが兜と口に出した途端、その赤い兜はリナの頭に吸い付くように乗っかった。かなり高い位置に浮かんでいたはずなのにまるで瞬間移動でもしたかのように、一瞬の出来事だった。
「ええっ、なにこれ!」
「今度は兜か?」
「リーちゃん、主になるのか!」
リナは混乱していた。頭にいきなり兜がはまれば、誰だって驚くと思う。
(赤い靴はまだ誤魔化せるけど、兜なんてかぶっている人、何処にもいないのに! どうしよう!)
赤い兜は嬉しそうに点滅していた。
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