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第3章
第138話 ジーンの花びらのフレーバーティー
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刺繍も無事終わり、ティータイム。ベルトが用意してくれたティーセットはこの前のものとは違うもので、ティーカップの外側にも内側にも花柄が描かれている。すごく可愛らしいカップだ。
「ふわぁ、この紅茶花の香りがする、おいしっ」
茶葉を褒めるとベルトが目を輝かせて言った。
「さすが、キルナにはわかるんだな。このお茶、実は乾燥させたジーンの花びらが入ってるんだ」
「ええ? そうなの? 僕ね、花の中でジーンの花が一番好きなの。あの花が紅茶に入っているなんて素敵!!」
ベルトの説明を聞くと、飲んでいた紅茶がよりおいしく感じられる。花の香りにつられて妖精たちも寄ってきた。僕のティーカップに口をつけようとしている。でも熱いから飲めないみたい。
「今度うちに来た時は好きな香りをブレンドして自分だけのお気に入りを作ってみたらいい。花や果実を乾燥させたものと色々な茶葉を混ぜて自分の好きなフレーバーティーを作るんだ。キルナがどんなお茶を作るのか俺様もすごく興味がある」
「ほぇ? そんなこと、できるの? 楽しそう! やってみたい!」
「じゃあ、長期休暇にでもまた来……」
「僕も!! それ、飲んでみたい。ベルト様ぁ、行っていいでしょお? 長期休暇中ずうっとあのぐっちゃぐちゃの男だらけの実家に行くのは嫌だし僕も入れてぇ~」
リリーは猫撫で声でベルトにお願いしまくり、渋々オッケーをもらった。
「まぁ、キルナだけ呼んだりしたらクライス王子にどう思われるかわからないからな。猫被りも連れておいた方が無難か」
ぼそぼそとベルトが何か言っているけど、紅茶に夢中で聞き逃してしまった。
この紅茶、ジーンの花の見た目と同じ様に高貴な香りがする……目を閉じると花がそこにあるような気がしてくる。
僕がうっとりと目を閉じていると、リリーがどっしりと重いため息をついた。
「あ~あ、家に帰りたくないな」
「ふぇ? なんで?」
「ちびどもがうるさいし。家はぐちゃぐちゃだし。ごはんもまずいから」
「ああ、たくさん兄弟がいるって言っていたね。でも、可愛いでしょ? 弟」
僕が尋ねると、リリーはぶんぶん首を横に振った。
「もうね、可愛いとか言う次元じゃないんだよ。やんちゃばかりするし僕の服で遊ぶし勉強の邪魔するし家は散らかすし」
「それはお前もだろ」
ベルトに突っ込まれているけど、リリーには聞こえてないらしく、そのまま無視して話を続けた。
「しばらくはメガネのクッキーも食べられないのかぁ」
……珍しくリリーが弱っている。そんなに実家が嫌だなんて、なんだかかわいそう、と思っていると、彼は何かを思い付いたのか、ぱっと顔を上げた。
「そうだ、メガネ。うちにおいでよ。そんで美味しいクッキー作ってよ! 小さい子が好きなら、きっと楽しいよ。足の踏み場もないお屋敷だから、メガネ絶対気にいるよ!!」
リリーは玄関、自分の部屋、兄弟の部屋、キッチン、ありとあらゆるところがどれだけ酷い散らかりようかを事細かに教えてくれた。
「おいおい、そんな不衛生な場所にキルナを誘うな」
ベルトは呼んでないし、関係ないでしょ~っと頬を膨らませるリリーとベルトがまた口論を始めた。
今リリーに聞いた内容が本当ならすごい。この部屋を初めてみた時もびっくりしたけれど、それをはるかに超えた、足の踏み場もない汚屋敷……。
(なにそれ!? 行ってみたい。小さい子も大好きだし!)
「行きたい!!」
あ、ティータイム中にこんな大きな声、お行儀悪かったな……。ふふっ、でもいいか。いまは友達しかいないから。(セントラやルゥに怒られることはないし)
「よし決定! じゃあまたメガネの都合のいい日を教えてよ、うちはいつでも構わないし。ただ、ものすごい田舎で馬車で片道一日かかるからたっぷり時間がある時に来て。どうせなら一週間くらい泊まっていってよ」
一週間もお泊まり!
前世も合わせてそんな経験は全くない。
僕は行けなかった修学旅行のことを思い出しながら、うんうん行く行く!! と満面の笑みで答えた。
「お父様が良いと仰ったら、手紙で連絡するね」
ベルトの家とリリーの家、どちらもすごく楽しみだ。
ユジンやお父様、ルゥたちにも会いたい。(なんだかんだ忙しくて全然帰ることができなかったし)
早く学校終わって長期休暇にならないかな??
ただ一つ、
ダンスパーティーのことだけが気がかりだけど、きっとそれは大丈夫だ。
だって(僕はハンカチを入れたポケットの上をそうっと撫でた。)
クライスが一緒にいてくれると言っていた。
だから
ーー大丈夫。
「ふわぁ、この紅茶花の香りがする、おいしっ」
茶葉を褒めるとベルトが目を輝かせて言った。
「さすが、キルナにはわかるんだな。このお茶、実は乾燥させたジーンの花びらが入ってるんだ」
「ええ? そうなの? 僕ね、花の中でジーンの花が一番好きなの。あの花が紅茶に入っているなんて素敵!!」
ベルトの説明を聞くと、飲んでいた紅茶がよりおいしく感じられる。花の香りにつられて妖精たちも寄ってきた。僕のティーカップに口をつけようとしている。でも熱いから飲めないみたい。
「今度うちに来た時は好きな香りをブレンドして自分だけのお気に入りを作ってみたらいい。花や果実を乾燥させたものと色々な茶葉を混ぜて自分の好きなフレーバーティーを作るんだ。キルナがどんなお茶を作るのか俺様もすごく興味がある」
「ほぇ? そんなこと、できるの? 楽しそう! やってみたい!」
「じゃあ、長期休暇にでもまた来……」
「僕も!! それ、飲んでみたい。ベルト様ぁ、行っていいでしょお? 長期休暇中ずうっとあのぐっちゃぐちゃの男だらけの実家に行くのは嫌だし僕も入れてぇ~」
リリーは猫撫で声でベルトにお願いしまくり、渋々オッケーをもらった。
「まぁ、キルナだけ呼んだりしたらクライス王子にどう思われるかわからないからな。猫被りも連れておいた方が無難か」
ぼそぼそとベルトが何か言っているけど、紅茶に夢中で聞き逃してしまった。
この紅茶、ジーンの花の見た目と同じ様に高貴な香りがする……目を閉じると花がそこにあるような気がしてくる。
僕がうっとりと目を閉じていると、リリーがどっしりと重いため息をついた。
「あ~あ、家に帰りたくないな」
「ふぇ? なんで?」
「ちびどもがうるさいし。家はぐちゃぐちゃだし。ごはんもまずいから」
「ああ、たくさん兄弟がいるって言っていたね。でも、可愛いでしょ? 弟」
僕が尋ねると、リリーはぶんぶん首を横に振った。
「もうね、可愛いとか言う次元じゃないんだよ。やんちゃばかりするし僕の服で遊ぶし勉強の邪魔するし家は散らかすし」
「それはお前もだろ」
ベルトに突っ込まれているけど、リリーには聞こえてないらしく、そのまま無視して話を続けた。
「しばらくはメガネのクッキーも食べられないのかぁ」
……珍しくリリーが弱っている。そんなに実家が嫌だなんて、なんだかかわいそう、と思っていると、彼は何かを思い付いたのか、ぱっと顔を上げた。
「そうだ、メガネ。うちにおいでよ。そんで美味しいクッキー作ってよ! 小さい子が好きなら、きっと楽しいよ。足の踏み場もないお屋敷だから、メガネ絶対気にいるよ!!」
リリーは玄関、自分の部屋、兄弟の部屋、キッチン、ありとあらゆるところがどれだけ酷い散らかりようかを事細かに教えてくれた。
「おいおい、そんな不衛生な場所にキルナを誘うな」
ベルトは呼んでないし、関係ないでしょ~っと頬を膨らませるリリーとベルトがまた口論を始めた。
今リリーに聞いた内容が本当ならすごい。この部屋を初めてみた時もびっくりしたけれど、それをはるかに超えた、足の踏み場もない汚屋敷……。
(なにそれ!? 行ってみたい。小さい子も大好きだし!)
「行きたい!!」
あ、ティータイム中にこんな大きな声、お行儀悪かったな……。ふふっ、でもいいか。いまは友達しかいないから。(セントラやルゥに怒られることはないし)
「よし決定! じゃあまたメガネの都合のいい日を教えてよ、うちはいつでも構わないし。ただ、ものすごい田舎で馬車で片道一日かかるからたっぷり時間がある時に来て。どうせなら一週間くらい泊まっていってよ」
一週間もお泊まり!
前世も合わせてそんな経験は全くない。
僕は行けなかった修学旅行のことを思い出しながら、うんうん行く行く!! と満面の笑みで答えた。
「お父様が良いと仰ったら、手紙で連絡するね」
ベルトの家とリリーの家、どちらもすごく楽しみだ。
ユジンやお父様、ルゥたちにも会いたい。(なんだかんだ忙しくて全然帰ることができなかったし)
早く学校終わって長期休暇にならないかな??
ただ一つ、
ダンスパーティーのことだけが気がかりだけど、きっとそれは大丈夫だ。
だって(僕はハンカチを入れたポケットの上をそうっと撫でた。)
クライスが一緒にいてくれると言っていた。
だから
ーー大丈夫。
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