いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

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第7章

第318話 悪役活動①※

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(なんか、とんでもなく忙しい……)

クライスと一緒に登校し、6年生の授業を必死で受け、放課後理事長室でセントラと特訓。知恵熱が出そうなくらい勉強させられ、ぐったりした状態で部屋に戻って、大浴場でちょっと回復して、ご飯食べて明日の用意と寝る準備。そこからクライスとベッドで魔力操作の練習……でふにゃふにゃになって寝落ち、みたいな生活が続いていた。

(おかしい。こんなはずじゃなかったのに……)

夜ご飯のデザートのキャラメルシフォンケーキを食べながら僕は考えにふける。
あむ、もぐもぐもぐ、この香ばしい苦味が甘さにマッチして、おいし。

「キルナ、口にキャラメルソースがついたままだぞ」
「んむ……も、舐めないで……ふぁ……ちょっ…なんで舌入れてくるの…んぅ」

(おかしい。どうして予定通りいかないのだろう……)

「可愛い。キスしただけでまたトロトロだな。今日は早めに魔力操作の練習しようか」

(おかしい。こんなことしてる場合じゃない…のに……)

「あ゛…やぁクライス……も、だめぇ……はぁ」
「気持ちいいのか?」
「よくな……」
「なら触らない方がいいか?」
「あ。嘘……そこきもちいぃよぉ。あん……」
「どうしてほしい?」
「んやぁああもうさわって!! もっと突いて! 奥までぐちゃぐちゃにしてぇ!」 

(僕は悪役活動をしなくちゃいけないのにぃ!)



そこで、今日はめちゃくちゃ早起きした。(朝は苦手なのにすごく頑張った!)
クライスがランニングに行っている間に『今日は一人でいくね』というメモを置いて登校し、ユジンの靴箱を探す。

え~と……あった。ユジン=フェルライトって書いてある。
上靴(この世界の靴は全部ブーツの形をしているから簡単には気づかれないはず)に、魔法で作った水の花を入れて……と。左右それぞれ10個ずつ入れて任務完了!

「ふぅ。ちょっと入れすぎたかな? 大丈夫かな?」

怪我はしないはずだけど……。もうちょっと減らす? 試行錯誤を繰り返し、結局元の10個ずつに落ちついた。あんまり少なすぎてインパクトがないのも困ると思って。

水の花を見たら、ユジンはすぐに犯人が僕だとわかると思う。これは何度も見せたことがある魔法だし、どうしても形には作る人の個性が出るから。(僕が作るとなぜか金平糖みたいな形になる)

『すごぉい! キルにいたまのつくるおはなはキラキラしててきれい』

これを作るといつも喜んでくれていた。なのに、こんな風に嫌がらせに使うなんて。

(ユジンに嫌われちゃうだろうな……)

あの笑顔がもう見られないと思うと無性に悲しくて、靴箱の前から動けない。やっぱりやめたい。でもやらないと。二つの思いが心の中で激しくぶつかっている。


「……どうされたのですか? 顔色が悪いようですが、大丈夫ですか?」

急に声をかけられビクッと振り返ると、校舎の入り口付近にリオンがいた。いつからいたんだろ。何してたか、見られてないよね? 額に嫌な汗が流れる。

「あ……リオン……早いね」
「キルナ様こそ。クライス様はご一緒じゃないのですか?」
「ん、えと、僕…その…植物係になったから……、お花の水遣りをしようと思って……一人で来たの」
「……そうですか。頑張ってください。でもご無理はされないように」
「うん、が、頑張るね」

しどろもどろの説明にリオンは納得してくれたのか、靴を履き替え教室に向かって歩いていく。僕は緊張しながら彼の後ろ姿を見送った。

見送りながら彼の情報を頭に思い浮かべる。ゲームが始まった今、攻略対象者の動きを観察することはとても重要だ。ユジンがクライスではなく、攻略対象者のうちの誰かを好きになる可能性もある。


リオンは歩き方も動きも優雅で、おまけに見た目も美しい。綺麗な容姿だけれど、背が高く鍛え上げられたしなやかな体からは男らしさを感じる(くそぅ。綺麗なのにちゃんと格好いいなんてずるい)。

彼の上品な笑顔にやられている人間は数知れず……ファンも多いのだって(テアとリリーの情報)。艶やかなエメラルドグリーンの長髪は後ろで緩く束ねられていて、髪紐には高級そうな宝石がいくつも付いているけれど、彼がつけるとおしゃれで嫌味がない。

いつも笑顔を絶やさない彼だけど、ゲームでは裏表のある性格で、実はクライスとその学友以外には心を開いていないのだとか。でも主人公ユジンと接するうちに、だんだん心を開いていき、やがて恋に落ちていく……。というのがリオンルートのストーリーだったはず(うろ覚えだけど)。


彼の姿が見えなくなると、僕はほっと息を吐いた。悪いことするって本当に大変。これから先もこうやって悪役活動をたくさんするのだから慣れないと。

リオンが来たということはランニングが終わった時刻ということだ。グズグズしていると他の生徒もきちゃう。早くここから離れよう。

「よし、温室にいこ」

植物係になったというのは本当だ。一番興味があっておもしろそうだったし、こうして朝早く一人で行動しても不審に思われないし一石二鳥だと思って。


トコトコ歩いて温室に着くと、ガラスの扉を開けた瞬間に高貴な花の香りが漂ってきた。うっとり心地よい香りに、さっきまで強張っていた気持ちがほわっと和らぐ。

ジーンの花、ラーズの花の他にも色とりどりの花が咲いている。たくさんの花が咲き乱れるこの広大な温室は庭師が管理しているから、水遣りするのは植物係の生徒が育てている花壇だけ。

僕はここに謎の種を植えようと持ってきていた。実はこの種。妖精の世界でカーナにもらったものなのだけど、見たことのない虹色の種だった。形や大きさはアーモンドにそっくり。

スコップで土を柔らかくほぐし、指でくぼみを作る。中に種を入れて薄く土を被せ、最後にたっぷりのお水をあげて完成。

「どんな花が咲くんだろ。楽しみっ」

妖精たちが僕の周りを踊ったり歌ったりしながら飛び回っている。ふふっ、可愛い、この子たちはいつ見ても癒される。

「ね~いっしょにうたお~よ~」
「んと、水やりが終わってからね」
「まりょくのみず~ちょうだい~」
「もちょっと待ってね」

生徒用花壇の水撒きが全部終わって妖精たちに魔力の水を飲ませると、僕はベンチにゴロンと横になった。

「ふぁねむぃ」

汗だくになりながら徒歩で登校し、しかも慣れない早起きをしたせいで猛烈に眠い。ちょっと横になるつもりが、一瞬にしてすやすやモードに。

当然忍び寄る気配には気づかなかった。
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