いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

日色

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第7章

第328話 サプライズ誕生日パーティー⑥※

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※大人の魔道具を食べ物に見立てる表現がありますので、苦手な方はご注意ください。


温めたオムライスをすごい勢いで食べるクライスのために、クッキーとマフィンとシフォンケーキも保存箱から取り出して、テアとリリーがやってくれた通りにテーブルに並べた。テーブルクロスやお花は昨日のままにしてあるから、あとはキャンドルに火をつけてと。

火つけ石(ライターみたいな魔道具)を使って火を灯すと一気にロマンチックな雰囲気になる。ん、いいかんじ!

「クライスこれも食べて」
「全部キルナが作ったデザートだな。もちろん食べる」 
「おいしぃ?」
「ああ、うまい。ケーキがしっとりと柔らかくて口の中でとろける。すごいな、シフォンケーキまで作れるとは知らなかった」
「一番シンプルで簡単なやつならなんとかね。ベンスみたいに、口の中で消える魔法のケーキは無理だけど」

メレンゲ作りのおかげで右腕が痛い。今度クライスにハンドミキサーみたいな魔道具を作ってもらわねば。

「それにしても豪勢だな。テーブルもこんなに綺麗に飾って……何かのお祝いか? もしかして俺は何か大切なイベントを忘れてるのか?」

う~ん、と必死に思い出そうとしている彼が微笑ましい。でも考えたってわかるわけない。今日は本来何もない日だから(彼の誕生日はまだ先だし、僕の誕生日はもっと先)


ポケットの中で握りしめた固い箱の感触に、思わず笑みが漏れる。僕はそれを彼に差し出した。

「はいこれ、誕生日プレゼント」
「誕生日って、俺の?」
「うん! お誕生日おめでと」

クライスは頭に疑問符を浮かべているみたいだったけど、「ありがとう」と言って受け取ってくれた。


「開けてみて」

小さな箱の中から現れたのは、金色の懐中時計。パチっとボタンを押して蓋を開くと、黒い文字盤。真ん中は中が見えるようスケルトンになっていて青い宝石がキラキラ輝いているのが見えた。

ーーようやく渡せた。

ここまで長かった。湖の底に沈みながらもうダメだと諦めかけたこともあった。だけどこうして無事クライスに渡すことができたのだと思うと、何か胸に込み上げるものがある。

目がうるうるっとするのは気のせいってことにしておこう。プレゼントをもらった側ならともかく、渡した方が泣くのは変だから。

「これは……懐中時計。もらっていいのか?」 
「ん、クライスに似合うと思って作ったの。だから使って」
「キルナの手作りなのか!?」
「うん……そう……」

あんなに渡したいと思っていたのに、いざ渡すと照れてしまう。作る工程のこととか、時計の機能とか、色々説明しようと思っていたのに真っ赤な顔で頷くことしかできなかった。


(どうかな? 時計、気に入ってくれたかな?)

懐中時計の性能自体は、セントラが完璧に作ってくれたから喜ばれるはず。宝石はテアが選んでくれたから間違いない。でも色や蓋のデザインは一人で決めたからそこは僕のセンスが問われる訳で。

(嫌いなデザインだったらどうしよう……)

緊張しながら彼の様子を窺うと、手のひらに載せた懐中時計を瞬きもせずにじっと見つめていた。

「綺麗だ。青い宝石のひとつひとつが金色の光を帯びている。キルナの魔力が込められた魔宝石……なのか。それに裏蓋は王家の紋章が丁寧に刻印されている。表蓋のこれは……」

クライスが目を輝かせて時計に見入っている……のをぼんやり眺めてる場合じゃなかった。

(よし、今のうちに)

彼に気づかれないよう、そろそろと忍足でその場を離れた。


浴室に駆け込んで、ささっと用意していたに着替える。スケスケの白ワンピとTバック(よかった。昨日洗ったのがちゃんと乾いてる)。そしてうさ耳を装着(なんかカチューシャみたいな形だけど、一度つけると簡単には取れないようになってる)。そして尻尾は……。

あれ? 白くて丸いうさぎの尻尾にベビーピンクの串団子みたいなものが付いている。装着の仕方がわからないな、と悩んでいると箱の奥に説明書が入っていた。なになに?『ローションなどを塗ってから、お尻の穴にゆっくり挿入してください』だって!?(親切なことに挿入の絵まで描いてある)

なんてこと!

このコロンと丸いフォルムの可愛らしい尻尾が、まさかの大人の魔道具だったなんて!

(ううう……恥ずかしすぎる。こんなの自分でできるはずない)

と一瞬たじろいだけど、考えてみればここは浴室で大きな鏡もあるし、準備するにはお誂え向きだった。迷っている時間はない! と僕は覚悟を決める。

(せっかくリリーとテアが用意してくれたのだし、今日は全力でクライスを喜ばせようと決めている。やるしかない!!)

浴室の引き出しからセントラ作の特製ローションを出し中指に塗って、つぷっと指の先をお尻に挿れた。

「ふあ、冷たっ……」

しばらくしてローションの媚薬成分が効き始めると、ちゅぷちゅぷ音を立てて指が奥へと入っていく。気持ちいい。

「……っんぁ」

ダメ……声出したらバレちゃう。僕はバスタオルを噛んで声を出さないよう努めながら慎重に穴を解していく(自分で準備する方法もしっかり習ったから今回は大丈夫)。

「くふぅ……ぅんん……はぁ…はぁ……」

(そろそろ尻尾も入るかな?) 

ローションをたっぷり塗すとみたらし団子みたいに見えるそれを、お尻に押し込んでみる。しばらく苦戦したものの、程なくして直径3センチくらいの玉がつぷっと一つ入り込んだ。お尻の穴が玉を呑み込み、呑み込んだあと自動的にきゅうっと穴が締まる感覚が、あまりにも新鮮で気持ちよくて……「ひあぅ」と声が漏れてしまう。


「キルナ…何をしてるんだ?」

あ……しまった。

僕がいないことに気付いて、彼が探しにきてしまった。もちろん彼が見つけたのは、四つん這いになりお尻を鏡に向けて尻尾(お団子1個目)を入れているうさぎになりかけの僕の姿。隠れるにしてもこんな状態では動けない。

「「…………」」

お互い無言。

うわああんやばい! 何か言わなきゃ、どうしよ、どうしよ、とテンパって出てきた言葉は、なぜか敬語で。

「あの……まだ…準備中なので…少々…お待ちください」
「……ああ、それならここでゆっくり待たせてもらう。準備を続けてくれ」

店員と客みたいな会話になった。

僕を見下ろす彼の強い視線に、なんかとんでもないことになっちゃってるような……と思った時には後の祭りだった。
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