195 / 304
第7章
第331話 悪役活動の続き①
しおりを挟む
(今日はどんな意地悪をしようか)
魔力風邪から完全に復活し、サプライズパーティーも成功? させ、僕はまたまた悪役活動に勤しんでいる。
とはいえ、クライスの傍を離れないと約束してしまった今、できることはほとんどなかった。悪役メモを取り出して真剣に見つめるものの、なかなかいい案が浮かばない。
(クライスの目の前でユジンの机に落書きするわけにはいかないし……)
考えた末、ユジンに一年生の教科書を借りに行くことにした。放課後、チャイムが鳴ると同時に、クライスを連れて一年生の教室へと向かう。
「キル兄様!? どうされたのですか?」
教室に入るとすぐにユジンがこちらに気づいて、声をかけてくれた。
「1年生の数術の教科書無くしちゃって。貸してくれる? 復習したいの」
「ええ、もちろん構いませんよ!」
「急にユジンの教室に行きたいというから、なんの用事かと思えば。キルナ、教科書なら俺のを使えばいい。もう使わないから、おまえにやる」
クライスは優しいからそう言うであろうことは、なんとなく予想していた。
「えと、セントラとの勉強で今すぐ必要だから、今日はユジンに借りるよ」
どうだ! 嘘は苦手だけど、スムーズな展開になるように何度もシミュレーションしたから大丈夫なはず。
「……わかった」
クライスは渋々だけど納得してくれたみたい。ユジンは鞄からさっと教科書を取り出し、僕に渡してくれた。すごく丁寧に使っているのか、折れ目ひとつなく新品同様の美しさだ。
「キル兄様のお役に立ててうれしいです」
「補習が終わったら寮の部屋に返しにいくよ」
なんとかそんなかんじでユジンの教科書をゲットした僕は、いつも通りセントラとの補習を終えた後、自分が使ってたボロボロの教科書を紙袋に入れて、寮にあるユジンの部屋まで持って行くことにした。
これでなんとか悪役活動2つ目、教科書をすり替える、という項目を達成できる。これじゃ犯人が僕だとバレバレだけど、この際仕方がない。
ただ、やっぱりピカピカをボロボロに替える罪悪感は半端じゃなくて、罪滅ぼしにユジンが好きな甘いお菓子も入れておいた。お見舞いに色々持ってきてもらったし、そのお礼も兼ねて。
「教科書ありがと、助かったよ。マドレーヌを焼いたから食べて」
「温かい……。もしかして作りたてですか?」
「うん。ユジンは外側がさくっとした作りたてのものが好きでしょ? たくさん入れたから食べて」
「キル兄様の作ったお菓子が食べられるなんて。また何か困ったことがあったら、いつでも言ってください! そうだ。せっかくですし、一緒に食べましょう。お茶を淹れます」
どうしようかな、と迷っていると、一緒に来ていたクライスがぶっきらぼうな声で答える。
「いや、結構だ。もう帰るからな」
寮の中だしさすがに付いてこなくていいよ、と言ったのだけど、どうしても心配だというので彼も連れてきていた。どうやら早く帰りたいらしく、外に向かって腕をぐいぐい引っ張ってくる。
「お忙しいのですね。では王子は先にお帰りください。キル兄様は、後で僕が部屋まで送りますから」
「何? 俺がキルナだけ残して帰るなどありえない。ましてやお前と二人きりにさせるなど……」
なぜかばちばちと火花が散っているような気がするのは、気のせいかな? まだゲームが始まってすぐだから好感度が低いのか、二人はあまり仲が良さそうじゃない。それもそのはず。クライスは僕の看病にかかりっきりで、ユジンと話す時間なんてなかった。
(これは…もしや…魔力風邪なんてひいた僕のせいなんじゃ?)
いけない。これではいけない……と心の中で、泣き出しそうな七海が僕の袖を引っ張る。
「クライス、お茶飲んでいこうよ。ユジンの部屋とか初めて来たし、どんなのか気になる」
「……ああ、わかった。キルナがそういうなら」
魔力風邪から完全に復活し、サプライズパーティーも成功? させ、僕はまたまた悪役活動に勤しんでいる。
とはいえ、クライスの傍を離れないと約束してしまった今、できることはほとんどなかった。悪役メモを取り出して真剣に見つめるものの、なかなかいい案が浮かばない。
(クライスの目の前でユジンの机に落書きするわけにはいかないし……)
考えた末、ユジンに一年生の教科書を借りに行くことにした。放課後、チャイムが鳴ると同時に、クライスを連れて一年生の教室へと向かう。
「キル兄様!? どうされたのですか?」
教室に入るとすぐにユジンがこちらに気づいて、声をかけてくれた。
「1年生の数術の教科書無くしちゃって。貸してくれる? 復習したいの」
「ええ、もちろん構いませんよ!」
「急にユジンの教室に行きたいというから、なんの用事かと思えば。キルナ、教科書なら俺のを使えばいい。もう使わないから、おまえにやる」
クライスは優しいからそう言うであろうことは、なんとなく予想していた。
「えと、セントラとの勉強で今すぐ必要だから、今日はユジンに借りるよ」
どうだ! 嘘は苦手だけど、スムーズな展開になるように何度もシミュレーションしたから大丈夫なはず。
「……わかった」
クライスは渋々だけど納得してくれたみたい。ユジンは鞄からさっと教科書を取り出し、僕に渡してくれた。すごく丁寧に使っているのか、折れ目ひとつなく新品同様の美しさだ。
「キル兄様のお役に立ててうれしいです」
「補習が終わったら寮の部屋に返しにいくよ」
なんとかそんなかんじでユジンの教科書をゲットした僕は、いつも通りセントラとの補習を終えた後、自分が使ってたボロボロの教科書を紙袋に入れて、寮にあるユジンの部屋まで持って行くことにした。
これでなんとか悪役活動2つ目、教科書をすり替える、という項目を達成できる。これじゃ犯人が僕だとバレバレだけど、この際仕方がない。
ただ、やっぱりピカピカをボロボロに替える罪悪感は半端じゃなくて、罪滅ぼしにユジンが好きな甘いお菓子も入れておいた。お見舞いに色々持ってきてもらったし、そのお礼も兼ねて。
「教科書ありがと、助かったよ。マドレーヌを焼いたから食べて」
「温かい……。もしかして作りたてですか?」
「うん。ユジンは外側がさくっとした作りたてのものが好きでしょ? たくさん入れたから食べて」
「キル兄様の作ったお菓子が食べられるなんて。また何か困ったことがあったら、いつでも言ってください! そうだ。せっかくですし、一緒に食べましょう。お茶を淹れます」
どうしようかな、と迷っていると、一緒に来ていたクライスがぶっきらぼうな声で答える。
「いや、結構だ。もう帰るからな」
寮の中だしさすがに付いてこなくていいよ、と言ったのだけど、どうしても心配だというので彼も連れてきていた。どうやら早く帰りたいらしく、外に向かって腕をぐいぐい引っ張ってくる。
「お忙しいのですね。では王子は先にお帰りください。キル兄様は、後で僕が部屋まで送りますから」
「何? 俺がキルナだけ残して帰るなどありえない。ましてやお前と二人きりにさせるなど……」
なぜかばちばちと火花が散っているような気がするのは、気のせいかな? まだゲームが始まってすぐだから好感度が低いのか、二人はあまり仲が良さそうじゃない。それもそのはず。クライスは僕の看病にかかりっきりで、ユジンと話す時間なんてなかった。
(これは…もしや…魔力風邪なんてひいた僕のせいなんじゃ?)
いけない。これではいけない……と心の中で、泣き出しそうな七海が僕の袖を引っ張る。
「クライス、お茶飲んでいこうよ。ユジンの部屋とか初めて来たし、どんなのか気になる」
「……ああ、わかった。キルナがそういうなら」
315
あなたにおすすめの小説
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。