いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

日色

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第7章

第331話 悪役活動の続き①

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(今日はどんな意地悪をしようか)

魔力風邪から完全に復活し、サプライズパーティーも成功? させ、僕はまたまた悪役活動にいそしんでいる。

とはいえ、クライスの傍を離れないと約束してしまった今、できることはほとんどなかった。悪役メモを取り出して真剣に見つめるものの、なかなかいい案が浮かばない。

(クライスの目の前でユジンの机に落書きするわけにはいかないし……)


考えた末、ユジンに一年生の教科書を借りに行くことにした。放課後、チャイムが鳴ると同時に、クライスを連れて一年生の教室へと向かう。

「キル兄様!? どうされたのですか?」

教室に入るとすぐにユジンがこちらに気づいて、声をかけてくれた。

「1年生の数術の教科書無くしちゃって。貸してくれる? 復習したいの」
「ええ、もちろん構いませんよ!」
「急にユジンの教室に行きたいというから、なんの用事かと思えば。キルナ、教科書なら俺のを使えばいい。もう使わないから、おまえにやる」

クライスは優しいからそう言うであろうことは、なんとなく予想していた。

「えと、セントラとの勉強で今すぐ必要だから、今日はユジンに借りるよ」

どうだ! 嘘は苦手だけど、スムーズな展開になるように何度もシミュレーションしたから大丈夫なはず。

「……わかった」

クライスは渋々だけど納得してくれたみたい。ユジンは鞄からさっと教科書を取り出し、僕に渡してくれた。すごく丁寧に使っているのか、折れ目ひとつなく新品同様の美しさだ。

「キル兄様のお役に立ててうれしいです」
「補習が終わったら寮の部屋に返しにいくよ」



なんとかそんなかんじでユジンの教科書をゲットした僕は、いつも通りセントラとの補習を終えた後、自分が使ってたボロボロの教科書を紙袋に入れて、寮にあるユジンの部屋まで持って行くことにした。

これでなんとか悪役活動2つ目、教科書をすり替える、という項目を達成できる。これじゃ犯人が僕だとバレバレだけど、この際仕方がない。

ただ、やっぱりピカピカをボロボロに替える罪悪感は半端じゃなくて、罪滅ぼしにユジンが好きな甘いお菓子も入れておいた。お見舞いに色々持ってきてもらったし、そのお礼も兼ねて。

「教科書ありがと、助かったよ。マドレーヌを焼いたから食べて」

「温かい……。もしかして作りたてですか?」

「うん。ユジンは外側がさくっとした作りたてのものが好きでしょ? たくさん入れたから食べて」

「キル兄様の作ったお菓子が食べられるなんて。また何か困ったことがあったら、いつでも言ってください! そうだ。せっかくですし、一緒に食べましょう。お茶を淹れます」

どうしようかな、と迷っていると、一緒に来ていたクライスがぶっきらぼうな声で答える。

「いや、結構だ。もう帰るからな」

寮の中だしさすがに付いてこなくていいよ、と言ったのだけど、どうしても心配だというので彼も連れてきていた。どうやら早く帰りたいらしく、外に向かって腕をぐいぐい引っ張ってくる。

「お忙しいのですね。では王子は先にお帰りください。キル兄様は、後で僕が部屋まで送りますから」
「何? 俺がキルナだけ残して帰るなどありえない。ましてやお前と二人きりにさせるなど……」

なぜかばちばちと火花が散っているような気がするのは、気のせいかな? まだゲームが始まってすぐだから好感度が低いのか、二人はあまり仲が良さそうじゃない。それもそのはず。クライスは僕の看病にかかりっきりで、ユジンと話す時間なんてなかった。

(これは…もしや…魔力風邪なんてひいた僕のせいなんじゃ?)

いけない。これではいけない……と心の中で、泣き出しそうな七海が僕の袖を引っ張る。

「クライス、お茶飲んでいこうよ。ユジンの部屋とか初めて来たし、どんなのか気になる」
「……ああ、わかった。キルナがそういうなら」
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