いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

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第7章

第339話 悪役令息のきもだめし⑦ 

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どうしよう。ユジンが死んじゃう。ここから出ないと!!!

嫌だ! 死なないで! ユジン!!!


***

休憩ポイントで腰を治してもらった僕は、ユジンと手をつないで元気に歩いていた。暗闇にもちょっと慣れてきたし、歌でも歌えば怖くないはず。と、油断したのがいけなかったのかな。

ずざぁ……。またしても盛大にこけてしまった。

「いったぁ」
「キル兄様!!」

(何もないところでコケちゃった。恥ずかしっ)

ユジンが慌てて急に隣で転んだ僕を起こしてくれる。擦りむいた傷もあっという間に治してくれた。

「何か、いたんですか? 僕には何も見えず……」
「えっと……」

(どうしよ。何もいなかったよ、一人で転んだだけ。と、ほんとのことを言うのは恥ずかしいような…。いやでも……言わないと何かいたかと不安にさせちゃうよね……)


僕がどうでもいいことに悩んでいると、可愛らしい鳴き声が聞こえた。

「きゅう! きゅうう!!」

ん? ユジンのポケットからみたい。もこもこと動くポケットを見守っていると、ポポが耳をパタパタさせて飛び出し、僕の肩にとまった。

「ポポ、なんかプルプルしてる。何かに怯えてるのかな?」
「変ですね。魔法生物がこんなふうに怯えるなんて。きもだめしの化け物には反応しないはずですが。闇の中に、何かタチの悪い生物が紛れ込んでいるのかもしれません」
「え? 何かって、なに?」

(きもだめしのおばけだけでも怖いのに。他にも何かいるなんて!) 


ビクビクしながら暗闇に注意を向けると、荒い呼吸と足音が聞こえてきた。

「ユジン、あそこ、誰かが追いかけられてる!」

前方から走ってくる男の子とその後ろを走る獣の姿がある。よく見えないけれど、あのシルエットはオオカミ? 

(今にも追いつかれそう。助けないと)

右手に水のナイフを作りオオカミらしきものに向かっていこうとしたら、ぐいっと腕を引かれて止められてしまう。ユジンは僕の体を隠すように前に出て、呪文を唱えた。

「キル兄様の周りに、光の結界を張りました。この中にあれは入ってこれませんから、ここで待っててください」
「え?」

どういうことか尋ねる間も無く、ユジンが走り去って暗闇へと消えていく。

「待って! 僕も一緒に……あいたっ……?」

コツンと何かがおでこにぶつかった。見えない壁があってそこから先に進めない。

(何これ。もしかして僕、結界の中に置いてきぼりにされた?)



「ユジン~~~~!!!」

返事はない。代わりに、火の矢が飛び、何かをザシュッと射抜いたような音と「ギャイイン」と獣の声がし、それ以降静かになった。オオカミを仕留めたのかな? 様子をうかがおうにも暗くてほとんど見えないし、半径一メートルくらいの円から外には出られず、近づくこともできない。

(ああもぅ! どうやったら出られるの?)

なんとか出ようとして見えない壁をぺたぺた触りパントマイム状態になっていると、ユジンが一人の男の子を連れて戻ってきた。

ちょっと地味なかんじの容姿で、青みがかった白い髪の子。魔法が苦手でよく一緒に居残りさせられていた、補習仲間のアレンだ。

「ユジン! アレン!」

(よかったぁ、見たところ、二人とも怪我はないみたい)

「大丈夫? 怪我はない? あ、そだ…えと、水。はいっ」

携帯していた水を差し出すと、まだ呼吸の荒いアレンはぺこぺこ頭を下げ、それを飲んだ。

「はぁ…はぁ…キルナ様も……ご無事で……よかった。ユジン様、危ないところを救ってくださり、ありがとうございます」
「いえ、助けられてよかったです」
「アレンを追いかけてきてたあれって何なの?」

僕の質問に、たぶん…と前置きしてアレンが答える。

「はぁ…はぁ…あれは、魔獣かと。図鑑で…見たことが、あります……」
「ええ、ブォーウルフという黒い大型のオオカミに似た魔獣だと思います」

ユジンもその意見に頷く。


しばらくして息が整ってから、アレンはぽつぽつと、襲われた時の状況を話しはじめた。

「この先の休憩ポイントで一休みし、魔石スタンプを目指して歩いていると、急に横から魔物が襲いかかってきたのです。数も多く逃げるのに必死で、ペアの一年生ともはぐれてしまいました。無事だと良いのですが……」

「奥は危険なようですね。ならば、一度手前の休憩ポイントに戻りましょう。そこで先生の応援を待つのが賢明です」

ユジンの言葉に、僕は頷くのをためらった。その方が安全には違いないけれど、この先にいるみんなが心配だ。クライスは、リリーは、テアは、ベルトは、大丈夫かな? 

彼らを見なかったかと、アレンに聞いてみると驚くべき情報が飛び出した。

「そういえば、リリーさんとテアさんも魔獣と戦ってました。強力な魔法を駆使し、一年生をかばって勇敢に。僕もあんなふうに戦えたらよかったのに……。でも僕の下手くそな魔法では全然歯が立たなくて、こうして逃げることしかできなかったんです。情けない……」

え? リリーたちが戦ってる!? 

「それ、どの辺で見たか教えて!?」

一気に鳥肌が立つのを感じた。
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