203 / 306
第7章
第339話 悪役令息のきもだめし⑦
しおりを挟む
どうしよう。ユジンが死んじゃう。ここから出ないと!!!
嫌だ! 死なないで! ユジン!!!
***
休憩ポイントで腰を治してもらった僕は、ユジンと手をつないで元気に歩いていた。暗闇にもちょっと慣れてきたし、歌でも歌えば怖くないはず。と、油断したのがいけなかったのかな。
ずざぁ……。またしても盛大にこけてしまった。
「いったぁ」
「キル兄様!!」
(何もないところでコケちゃった。恥ずかしっ)
ユジンが慌てて急に隣で転んだ僕を起こしてくれる。擦りむいた傷もあっという間に治してくれた。
「何か、いたんですか? 僕には何も見えず……」
「えっと……」
(どうしよ。何もいなかったよ、一人で転んだだけ。と、ほんとのことを言うのは恥ずかしいような…。いやでも……言わないと何かいたかと不安にさせちゃうよね……)
僕がどうでもいいことに悩んでいると、可愛らしい鳴き声が聞こえた。
「きゅう! きゅうう!!」
ん? ユジンのポケットからみたい。もこもこと動くポケットを見守っていると、ポポが耳をパタパタさせて飛び出し、僕の肩にとまった。
「ポポ、なんかプルプルしてる。何かに怯えてるのかな?」
「変ですね。魔法生物がこんなふうに怯えるなんて。きもだめしの化け物には反応しないはずですが。闇の中に、何かタチの悪い生物が紛れ込んでいるのかもしれません」
「え? 何かって、なに?」
(きもだめしのおばけだけでも怖いのに。他にも何かいるなんて!)
ビクビクしながら暗闇に注意を向けると、荒い呼吸と足音が聞こえてきた。
「ユジン、あそこ、誰かが追いかけられてる!」
前方から走ってくる男の子とその後ろを走る獣の姿がある。よく見えないけれど、あのシルエットはオオカミ?
(今にも追いつかれそう。助けないと)
右手に水のナイフを作りオオカミらしきものに向かっていこうとしたら、ぐいっと腕を引かれて止められてしまう。ユジンは僕の体を隠すように前に出て、呪文を唱えた。
「キル兄様の周りに、光の結界を張りました。この中にあれは入ってこれませんから、ここで待っててください」
「え?」
どういうことか尋ねる間も無く、ユジンが走り去って暗闇へと消えていく。
「待って! 僕も一緒に……あいたっ……?」
コツンと何かがおでこにぶつかった。見えない壁があってそこから先に進めない。
(何これ。もしかして僕、結界の中に置いてきぼりにされた?)
「ユジン~~~~!!!」
返事はない。代わりに、火の矢が飛び、何かをザシュッと射抜いたような音と「ギャイイン」と獣の声がし、それ以降静かになった。オオカミを仕留めたのかな? 様子を窺おうにも暗くてほとんど見えないし、半径一メートルくらいの円から外には出られず、近づくこともできない。
(ああもぅ! どうやったら出られるの?)
なんとか出ようとして見えない壁をぺたぺた触りパントマイム状態になっていると、ユジンが一人の男の子を連れて戻ってきた。
ちょっと地味なかんじの容姿で、青みがかった白い髪の子。魔法が苦手でよく一緒に居残りさせられていた、補習仲間のアレンだ。
「ユジン! アレン!」
(よかったぁ、見たところ、二人とも怪我はないみたい)
「大丈夫? 怪我はない? あ、そだ…えと、水。はいっ」
携帯していた水を差し出すと、まだ呼吸の荒いアレンはぺこぺこ頭を下げ、それを飲んだ。
「はぁ…はぁ…キルナ様も……ご無事で……よかった。ユジン様、危ないところを救ってくださり、ありがとうございます」
「いえ、助けられてよかったです」
「アレンを追いかけてきてたあれって何なの?」
僕の質問に、たぶん…と前置きしてアレンが答える。
「はぁ…はぁ…あれは、魔獣かと。図鑑で…見たことが、あります……」
「ええ、ブォーウルフという黒い大型のオオカミに似た魔獣だと思います」
ユジンもその意見に頷く。
しばらくして息が整ってから、アレンはぽつぽつと、襲われた時の状況を話しはじめた。
「この先の休憩ポイントで一休みし、魔石スタンプを目指して歩いていると、急に横から魔物が襲いかかってきたのです。数も多く逃げるのに必死で、ペアの一年生とも逸れてしまいました。無事だと良いのですが……」
「奥は危険なようですね。ならば、一度手前の休憩ポイントに戻りましょう。そこで先生の応援を待つのが賢明です」
ユジンの言葉に、僕は頷くのをためらった。その方が安全には違いないけれど、この先にいるみんなが心配だ。クライスは、リリーは、テアは、ベルトは、大丈夫かな?
彼らを見なかったかと、アレンに聞いてみると驚くべき情報が飛び出した。
「そういえば、リリーさんとテアさんも魔獣と戦ってました。強力な魔法を駆使し、一年生を庇って勇敢に。僕もあんなふうに戦えたらよかったのに……。でも僕の下手くそな魔法では全然歯が立たなくて、こうして逃げることしかできなかったんです。情けない……」
え? リリーたちが戦ってる!?
「それ、どの辺で見たか教えて!?」
一気に鳥肌が立つのを感じた。
嫌だ! 死なないで! ユジン!!!
***
休憩ポイントで腰を治してもらった僕は、ユジンと手をつないで元気に歩いていた。暗闇にもちょっと慣れてきたし、歌でも歌えば怖くないはず。と、油断したのがいけなかったのかな。
ずざぁ……。またしても盛大にこけてしまった。
「いったぁ」
「キル兄様!!」
(何もないところでコケちゃった。恥ずかしっ)
ユジンが慌てて急に隣で転んだ僕を起こしてくれる。擦りむいた傷もあっという間に治してくれた。
「何か、いたんですか? 僕には何も見えず……」
「えっと……」
(どうしよ。何もいなかったよ、一人で転んだだけ。と、ほんとのことを言うのは恥ずかしいような…。いやでも……言わないと何かいたかと不安にさせちゃうよね……)
僕がどうでもいいことに悩んでいると、可愛らしい鳴き声が聞こえた。
「きゅう! きゅうう!!」
ん? ユジンのポケットからみたい。もこもこと動くポケットを見守っていると、ポポが耳をパタパタさせて飛び出し、僕の肩にとまった。
「ポポ、なんかプルプルしてる。何かに怯えてるのかな?」
「変ですね。魔法生物がこんなふうに怯えるなんて。きもだめしの化け物には反応しないはずですが。闇の中に、何かタチの悪い生物が紛れ込んでいるのかもしれません」
「え? 何かって、なに?」
(きもだめしのおばけだけでも怖いのに。他にも何かいるなんて!)
ビクビクしながら暗闇に注意を向けると、荒い呼吸と足音が聞こえてきた。
「ユジン、あそこ、誰かが追いかけられてる!」
前方から走ってくる男の子とその後ろを走る獣の姿がある。よく見えないけれど、あのシルエットはオオカミ?
(今にも追いつかれそう。助けないと)
右手に水のナイフを作りオオカミらしきものに向かっていこうとしたら、ぐいっと腕を引かれて止められてしまう。ユジンは僕の体を隠すように前に出て、呪文を唱えた。
「キル兄様の周りに、光の結界を張りました。この中にあれは入ってこれませんから、ここで待っててください」
「え?」
どういうことか尋ねる間も無く、ユジンが走り去って暗闇へと消えていく。
「待って! 僕も一緒に……あいたっ……?」
コツンと何かがおでこにぶつかった。見えない壁があってそこから先に進めない。
(何これ。もしかして僕、結界の中に置いてきぼりにされた?)
「ユジン~~~~!!!」
返事はない。代わりに、火の矢が飛び、何かをザシュッと射抜いたような音と「ギャイイン」と獣の声がし、それ以降静かになった。オオカミを仕留めたのかな? 様子を窺おうにも暗くてほとんど見えないし、半径一メートルくらいの円から外には出られず、近づくこともできない。
(ああもぅ! どうやったら出られるの?)
なんとか出ようとして見えない壁をぺたぺた触りパントマイム状態になっていると、ユジンが一人の男の子を連れて戻ってきた。
ちょっと地味なかんじの容姿で、青みがかった白い髪の子。魔法が苦手でよく一緒に居残りさせられていた、補習仲間のアレンだ。
「ユジン! アレン!」
(よかったぁ、見たところ、二人とも怪我はないみたい)
「大丈夫? 怪我はない? あ、そだ…えと、水。はいっ」
携帯していた水を差し出すと、まだ呼吸の荒いアレンはぺこぺこ頭を下げ、それを飲んだ。
「はぁ…はぁ…キルナ様も……ご無事で……よかった。ユジン様、危ないところを救ってくださり、ありがとうございます」
「いえ、助けられてよかったです」
「アレンを追いかけてきてたあれって何なの?」
僕の質問に、たぶん…と前置きしてアレンが答える。
「はぁ…はぁ…あれは、魔獣かと。図鑑で…見たことが、あります……」
「ええ、ブォーウルフという黒い大型のオオカミに似た魔獣だと思います」
ユジンもその意見に頷く。
しばらくして息が整ってから、アレンはぽつぽつと、襲われた時の状況を話しはじめた。
「この先の休憩ポイントで一休みし、魔石スタンプを目指して歩いていると、急に横から魔物が襲いかかってきたのです。数も多く逃げるのに必死で、ペアの一年生とも逸れてしまいました。無事だと良いのですが……」
「奥は危険なようですね。ならば、一度手前の休憩ポイントに戻りましょう。そこで先生の応援を待つのが賢明です」
ユジンの言葉に、僕は頷くのをためらった。その方が安全には違いないけれど、この先にいるみんなが心配だ。クライスは、リリーは、テアは、ベルトは、大丈夫かな?
彼らを見なかったかと、アレンに聞いてみると驚くべき情報が飛び出した。
「そういえば、リリーさんとテアさんも魔獣と戦ってました。強力な魔法を駆使し、一年生を庇って勇敢に。僕もあんなふうに戦えたらよかったのに……。でも僕の下手くそな魔法では全然歯が立たなくて、こうして逃げることしかできなかったんです。情けない……」
え? リリーたちが戦ってる!?
「それ、どの辺で見たか教えて!?」
一気に鳥肌が立つのを感じた。
343
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。