いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

日色

文字の大きさ
236 / 304
第8章

第372話 生徒会

しおりを挟む
えっとこの書類はこっち、この本はこっち。で、あの本がいるんだよね。ん~届かない……。
つま先立ちになって本棚の上の方に見える目的の本に手を伸ばしていると。

「これですね」
「あ、そう、ありがと」

背の高いリオンが取ってくれた。

生徒会室の正面奥にある机に座って仕事をしているクライスが顔を上げ、僕に向かって微笑みながら言う。

「キルナ、無理はしなくていいから」
「うん」
「キル兄様は座っててください。僕が二人分働きますから」
「え? なんで? 僕もやるよ」


僕とユジンは今日から生徒会に入ることになった。(なぜかは不明)

今年の生徒会は攻略対象者で構成されている。生徒会長はクライス、副会長はリオンとロイル、会計がノエル、書記がギア。

僕は生徒会長補佐になった。ユジンは副会長補佐。つまり、僕はクライスの仕事を手伝って、ユジンはリオンとロイルの仕事を手伝うらしい。

とは言っても、急に入った僕にできることなんてまだほとんどない。頼まれた書類を種類ごとに分けたり、資料を生徒会専用の本棚から探して持ってきたり、掃除したり。それくらいだ。

「クライス、他に何か仕事ある?」
「ん? ああ、こっちはそろそろ終わるから大丈夫だ。休憩用のソファに座って今日の宿題でもしていろ。昨日やってた問題集も途中だっただろう?」
「う…うん。(まだいっぱい残ってる)」
「兄様、僕も一緒に……」
「ユジンはこれを全部計算しておけ」
「これ全部ですか!?」
「キルナに手伝わせるつもりか?」
「いえ、やります」

山のような書類を机に積み上げてシャキシャキと計算をはじめるユジン。どんどん数字を書いていき凄まじいペースで計算をこなしていく。

「ユジン、すごい計算早いんだね」
「キル兄様に褒めていただけるなんて……もっともっと頑張ります」
「ふふ、頑張って」

ふへへと可愛らしく笑ったユジンは、さっき以上の速さで計算を続けた。


ホテルのスイートルームみたいに超豪華でだだっ広い生徒会室にはフッカフカの大きなソファがある。僕はそこに座って、これまた広いテーブルに宿題を広げた。テストは来週だ。勉強勉強。

えっと……古代魔法文字を20回ずつ書く……か。コレ難しいんだよね。古い文字は蛇みたいにグネグネしていて書きにくい。でも正確に書けないと、魔法が発動しないのだって。前世のお習字みたいにお手本を見ながら丁寧に書いていく。

「できたっ!」
「キルナ様、その文字は最後左にハネるんですよ」
「え? あ、ほんとだ。とめちゃってた」

リオンに指摘された箇所を消してもう一度書き直す。

(はぁ、難しい……。昔の人は本当にこんな文字を使っていたのかしら)

簡略化した現代文字を使い慣れている自分からしたらちょっと信じられない。


宿題をなんとかやり遂げ、さらに問題集の続きに取り掛かる。『基礎呪文一問一答』を5ページと魔法史の記述問題を2問終わらせたところで、クライスがそろそろ帰ろうと促してきた。

「終わったの?」
「ああ、今日の分の仕事は済んだ。早く帰って風呂に行こう」
「ん、そだね。今日は僕もなんだか疲れたし」
「何かあったのか?」
「ん~ん、別に」
「そうか、ならいいが」
しおりを挟む
感想 714

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。