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第8章
第372話 生徒会
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えっとこの書類はこっち、この本はこっち。で、あの本がいるんだよね。ん~届かない……。
つま先立ちになって本棚の上の方に見える目的の本に手を伸ばしていると。
「これですね」
「あ、そう、ありがと」
背の高いリオンが取ってくれた。
生徒会室の正面奥にある机に座って仕事をしているクライスが顔を上げ、僕に向かって微笑みながら言う。
「キルナ、無理はしなくていいから」
「うん」
「キル兄様は座っててください。僕が二人分働きますから」
「え? なんで? 僕もやるよ」
僕とユジンは今日から生徒会に入ることになった。(なぜかは不明)
今年の生徒会は攻略対象者で構成されている。生徒会長はクライス、副会長はリオンとロイル、会計がノエル、書記がギア。
僕は生徒会長補佐になった。ユジンは副会長補佐。つまり、僕はクライスの仕事を手伝って、ユジンはリオンとロイルの仕事を手伝うらしい。
とは言っても、急に入った僕にできることなんてまだほとんどない。頼まれた書類を種類ごとに分けたり、資料を生徒会専用の本棚から探して持ってきたり、掃除したり。それくらいだ。
「クライス、他に何か仕事ある?」
「ん? ああ、こっちはそろそろ終わるから大丈夫だ。休憩用のソファに座って今日の宿題でもしていろ。昨日やってた問題集も途中だっただろう?」
「う…うん。(まだいっぱい残ってる)」
「兄様、僕も一緒に……」
「ユジンはこれを全部計算しておけ」
「これ全部ですか!?」
「キルナに手伝わせるつもりか?」
「いえ、やります」
山のような書類を机に積み上げてシャキシャキと計算をはじめるユジン。どんどん数字を書いていき凄まじいペースで計算をこなしていく。
「ユジン、すごい計算早いんだね」
「キル兄様に褒めていただけるなんて……もっともっと頑張ります」
「ふふ、頑張って」
ふへへと可愛らしく笑ったユジンは、さっき以上の速さで計算を続けた。
ホテルのスイートルームみたいに超豪華でだだっ広い生徒会室にはフッカフカの大きなソファがある。僕はそこに座って、これまた広いテーブルに宿題を広げた。テストは来週だ。勉強勉強。
えっと……古代魔法文字を20回ずつ書く……か。コレ難しいんだよね。古い文字は蛇みたいにグネグネしていて書きにくい。でも正確に書けないと、魔法が発動しないのだって。前世のお習字みたいにお手本を見ながら丁寧に書いていく。
「できたっ!」
「キルナ様、その文字は最後左にハネるんですよ」
「え? あ、ほんとだ。とめちゃってた」
リオンに指摘された箇所を消してもう一度書き直す。
(はぁ、難しい……。昔の人は本当にこんな文字を使っていたのかしら)
簡略化した現代文字を使い慣れている自分からしたらちょっと信じられない。
宿題をなんとかやり遂げ、さらに問題集の続きに取り掛かる。『基礎呪文一問一答』を5ページと魔法史の記述問題を2問終わらせたところで、クライスがそろそろ帰ろうと促してきた。
「終わったの?」
「ああ、今日の分の仕事は済んだ。早く帰って風呂に行こう」
「ん、そだね。今日は僕もなんだか疲れたし」
「何かあったのか?」
「ん~ん、別に」
「そうか、ならいいが」
つま先立ちになって本棚の上の方に見える目的の本に手を伸ばしていると。
「これですね」
「あ、そう、ありがと」
背の高いリオンが取ってくれた。
生徒会室の正面奥にある机に座って仕事をしているクライスが顔を上げ、僕に向かって微笑みながら言う。
「キルナ、無理はしなくていいから」
「うん」
「キル兄様は座っててください。僕が二人分働きますから」
「え? なんで? 僕もやるよ」
僕とユジンは今日から生徒会に入ることになった。(なぜかは不明)
今年の生徒会は攻略対象者で構成されている。生徒会長はクライス、副会長はリオンとロイル、会計がノエル、書記がギア。
僕は生徒会長補佐になった。ユジンは副会長補佐。つまり、僕はクライスの仕事を手伝って、ユジンはリオンとロイルの仕事を手伝うらしい。
とは言っても、急に入った僕にできることなんてまだほとんどない。頼まれた書類を種類ごとに分けたり、資料を生徒会専用の本棚から探して持ってきたり、掃除したり。それくらいだ。
「クライス、他に何か仕事ある?」
「ん? ああ、こっちはそろそろ終わるから大丈夫だ。休憩用のソファに座って今日の宿題でもしていろ。昨日やってた問題集も途中だっただろう?」
「う…うん。(まだいっぱい残ってる)」
「兄様、僕も一緒に……」
「ユジンはこれを全部計算しておけ」
「これ全部ですか!?」
「キルナに手伝わせるつもりか?」
「いえ、やります」
山のような書類を机に積み上げてシャキシャキと計算をはじめるユジン。どんどん数字を書いていき凄まじいペースで計算をこなしていく。
「ユジン、すごい計算早いんだね」
「キル兄様に褒めていただけるなんて……もっともっと頑張ります」
「ふふ、頑張って」
ふへへと可愛らしく笑ったユジンは、さっき以上の速さで計算を続けた。
ホテルのスイートルームみたいに超豪華でだだっ広い生徒会室にはフッカフカの大きなソファがある。僕はそこに座って、これまた広いテーブルに宿題を広げた。テストは来週だ。勉強勉強。
えっと……古代魔法文字を20回ずつ書く……か。コレ難しいんだよね。古い文字は蛇みたいにグネグネしていて書きにくい。でも正確に書けないと、魔法が発動しないのだって。前世のお習字みたいにお手本を見ながら丁寧に書いていく。
「できたっ!」
「キルナ様、その文字は最後左にハネるんですよ」
「え? あ、ほんとだ。とめちゃってた」
リオンに指摘された箇所を消してもう一度書き直す。
(はぁ、難しい……。昔の人は本当にこんな文字を使っていたのかしら)
簡略化した現代文字を使い慣れている自分からしたらちょっと信じられない。
宿題をなんとかやり遂げ、さらに問題集の続きに取り掛かる。『基礎呪文一問一答』を5ページと魔法史の記述問題を2問終わらせたところで、クライスがそろそろ帰ろうと促してきた。
「終わったの?」
「ああ、今日の分の仕事は済んだ。早く帰って風呂に行こう」
「ん、そだね。今日は僕もなんだか疲れたし」
「何かあったのか?」
「ん~ん、別に」
「そうか、ならいいが」
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