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第8章
第371話 悪役令息の机
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やると決めた日から、僕は猛烈に頑張った。起きている間はとにかく勉強漬けの日々を送った。休み中、勉強しかしていなかったと言っても過言ではない。
その他にやったことといえば、ユジンとクッキー作りをしたり(また失敗して全部ポポの餌になってしまった)、テアの部屋を訪問してその想像以上のスゴさに驚いたりしてたってくらいかな。あとクライスとの……。
そんな長い長い休みが終わり、今日からついに二学期、学園の授業が再開する。
「ふぁああねむたっ」
「遅くまで起きているからだ。もっと早く寝ろ」
「ん、わかってるけど……僕ちょっと……今、天王山だから。ふぁあ」
起きようと思うのに体が重くて起きられない……。ソファでコーヒーを飲んでいたクライスがやってきて腕を引っ張って起こしてくれた。そのまま顔を引き寄せ、甘いキスするのも忘れずに。
「ってんんっ、にがっ!」
全然甘くなかった。ブラックコーヒーの苦い味がして、驚きに目が覚める。クライスったら僕に口移しでコーヒーを流し込んできた。ん~いい香りが鼻に抜けるけど、苦いよぉ!! ようやく頭がはっきりして、僕は寝間着を脱いだ。
「んしょっ」
シワになってないか確認しながら制服を身につけていく。クライスはもう最初の頃みたいに僕がベッドの上で真っ裸になって着替えても狼狽えない。
(そりゃそうか、もう僕の裸なんて見慣れただろうし。毎晩のようにあんなことしてたら……)
変なことを思い出して顔が熱くなる。
「授業再開できてよかったね」
「怪我人たちの処置が済み、呪いを受けたものは全員地方の神殿に送った。医務室も空になってようやく落ち着いたからな」
呪いは地方にある神殿で解くらしい。この国、領地に一つは必ず神殿があるのだって。
「呪いを解くのってどれくらい時間がかかるのかな?」
「受けた呪いの量にもよるが、小さな呪い一つの解呪で一ヶ月程度だろう。軽い者たちはもう回復して学園に戻ってきていると思う。今回一番呪いを多く受けたものは半年以上かかりそうだと聞いた」
「…結構かかるんだね」
「呪いは一気に解こうとすると体に負担がかかるから、神官たちが毎日時間をかけて解呪していくことになる。神殿に行った大半の生徒は複数呪いを受けていたから、しばらく帰ってこないだろうな」
(半年って長い……。そんなに長いこと呪いに苦しめられるのは辛いだろうな)
「まぁでも神殿には学問所があるから学園に行けない間の勉強のフォローはきちんとしてくれる。そう心配しなくても大丈夫だ。さぁ、鞄を持て。そろそろいくぞ」
「ん」
校舎入り口まで転移魔法で飛ぶと、クライスは生徒会室に資料を置きにいくというからそこで別れた。僕は先に教室へ行くことにする。
「おはよっ」
「……」
(あれ? 聞こえなかったのかな?)
廊下ですれ違った子に挨拶したら、返事がなくて首を傾げる。その後もすれ違う子たちに挨拶をするけれど、誰も返してくれない。
なんだかちょっとモヤモヤしながら教室に着くと、クラスメイトたちは授業前のおしゃべりタイムを楽しんでいた。一見いつも通りの平和な光景だけど、3分の1ほどは空席だった。ぽつぽつと空いた席にきもだめしの爪痕がみえる。
荷物を置いて席に座ると、なんだろう? 机の端に何か書いてある。ごまつぶみたいな小さな字だけれど、近くで見たらわかった。
そこには『闇属性』『バケモノ』『死ね』と書いてあった。
その他にやったことといえば、ユジンとクッキー作りをしたり(また失敗して全部ポポの餌になってしまった)、テアの部屋を訪問してその想像以上のスゴさに驚いたりしてたってくらいかな。あとクライスとの……。
そんな長い長い休みが終わり、今日からついに二学期、学園の授業が再開する。
「ふぁああねむたっ」
「遅くまで起きているからだ。もっと早く寝ろ」
「ん、わかってるけど……僕ちょっと……今、天王山だから。ふぁあ」
起きようと思うのに体が重くて起きられない……。ソファでコーヒーを飲んでいたクライスがやってきて腕を引っ張って起こしてくれた。そのまま顔を引き寄せ、甘いキスするのも忘れずに。
「ってんんっ、にがっ!」
全然甘くなかった。ブラックコーヒーの苦い味がして、驚きに目が覚める。クライスったら僕に口移しでコーヒーを流し込んできた。ん~いい香りが鼻に抜けるけど、苦いよぉ!! ようやく頭がはっきりして、僕は寝間着を脱いだ。
「んしょっ」
シワになってないか確認しながら制服を身につけていく。クライスはもう最初の頃みたいに僕がベッドの上で真っ裸になって着替えても狼狽えない。
(そりゃそうか、もう僕の裸なんて見慣れただろうし。毎晩のようにあんなことしてたら……)
変なことを思い出して顔が熱くなる。
「授業再開できてよかったね」
「怪我人たちの処置が済み、呪いを受けたものは全員地方の神殿に送った。医務室も空になってようやく落ち着いたからな」
呪いは地方にある神殿で解くらしい。この国、領地に一つは必ず神殿があるのだって。
「呪いを解くのってどれくらい時間がかかるのかな?」
「受けた呪いの量にもよるが、小さな呪い一つの解呪で一ヶ月程度だろう。軽い者たちはもう回復して学園に戻ってきていると思う。今回一番呪いを多く受けたものは半年以上かかりそうだと聞いた」
「…結構かかるんだね」
「呪いは一気に解こうとすると体に負担がかかるから、神官たちが毎日時間をかけて解呪していくことになる。神殿に行った大半の生徒は複数呪いを受けていたから、しばらく帰ってこないだろうな」
(半年って長い……。そんなに長いこと呪いに苦しめられるのは辛いだろうな)
「まぁでも神殿には学問所があるから学園に行けない間の勉強のフォローはきちんとしてくれる。そう心配しなくても大丈夫だ。さぁ、鞄を持て。そろそろいくぞ」
「ん」
校舎入り口まで転移魔法で飛ぶと、クライスは生徒会室に資料を置きにいくというからそこで別れた。僕は先に教室へ行くことにする。
「おはよっ」
「……」
(あれ? 聞こえなかったのかな?)
廊下ですれ違った子に挨拶したら、返事がなくて首を傾げる。その後もすれ違う子たちに挨拶をするけれど、誰も返してくれない。
なんだかちょっとモヤモヤしながら教室に着くと、クラスメイトたちは授業前のおしゃべりタイムを楽しんでいた。一見いつも通りの平和な光景だけど、3分の1ほどは空席だった。ぽつぽつと空いた席にきもだめしの爪痕がみえる。
荷物を置いて席に座ると、なんだろう? 机の端に何か書いてある。ごまつぶみたいな小さな字だけれど、近くで見たらわかった。
そこには『闇属性』『バケモノ』『死ね』と書いてあった。
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