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第8章

第386話 いじめっ子 ラーニー=チゼSIDE①

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両親から至急家に帰るようにと連絡があった。この間長期休暇で帰ったばかりなのに、一体何の用事だろう。不思議に思いながら居間の扉を開けると、すぐそこに母がいた。

「ただいま帰りま……ぶへっ」

え? 

一瞬何が起きたのかわからなかった。でもジンジンした痛みに頬を打たれたのだと知る。なぜ? いつも猫可愛がりしてくれる母がまた手を振り上げ、鬼のような形相で俺をにらんでいた。

「ラーニー、あなたという子は! なんということをしたのです!」
「何をって、え?」

混乱するばかりだ。母を怒らすようなことをしただろうか。考えてみるが心当たりはない。


後ろにいる父に助けを求めようと目をると、そちらも見たことがないほど怒っている。顔が真っ赤で今にも血管が切れそうだ。しかし、父は母よりは冷静なのか、低い静かな声で言う。

「学園から連絡があった。お前は退学だと」
「た、退学!? そんな、もうすぐ卒業なのに?」

(6年生の2学期で退学なんて、そんなことがあり得るのか? 何かの間違いでは?) 

学園を卒業するかどうかで、今後の人生は天と地ほど変わる。王立魔法学園の名はそれほどに大きい。それを退学になるなんて絶対にあってはならない。成績は結構優秀な方で、少し苦手な魔法の実技も平均レベル以上はキープしている。授業態度だって問題はないはず。なのになぜ?

動揺していると、父が分厚い紙束を見せてきた。何枚もあるそれは全て俺の調査報告らしい。


そこにはびっしり細かい文字で、ここ数週間の自分の行動が事細かに記載されている。朝起きてから寝るまで(何色の歯ブラシを使って何を食べて何時に部屋を出たか、まで)のことが全部書いてある。

(なんだこれ、気持ち悪っ!! こんなのどうやって調べたんだ? いや、それより)

「どうして俺が退学なのですか!?」
「キルナ=フェルライト様に嫌がらせをした罪で、お前は退学になった」
「え、そんなことで?」
「ここに書いてあることが、か? 救いようのない馬鹿だな、お前は!」

父に怒りのまま報告書を叩きつけられた。

ノロノロとそれを拾いながらその内容に目を走らせた。もしかしたら自分がやってないことまで書かれているかもしれない。そうであったなら抗議できるかもという思いから、何枚もある報告書をめくり、端から端まで読んでいく。

しかし、見たところ報告内容は全て正しい。

(でも……納得がいかない)

確かに俺は、キルナ様に嫌がらせをした。人から聞いた噂話を同じように流したり、通りかかったところをわざとぶつかってみたり、足を引っかけたり、靴の中に小石を入れたり。けど、どれも些細ささいなもので、退学になるほどのことをしたとは思えない。

(『死ね』とか『消えろ』って書いたのは、まぁ少し悪かったかな~とは思うけど、すぐ消せるように鉛筆で書いたし、俺の足につまずいて転けて怪我をしたのは本人が鈍臭いからだ。俺だったらあんなの簡単に避けられる)

だから俺はそんなに悪くないはず。

なのにどうして退学なんてことになるんだ!?
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